授業関係のお知らせのトップに戻る

インドネシア語専攻で勉強する人のために

2021年4月24日

大学の授業でもオンラインが当たり前になりました。卒論を作成するときにも、ぜひネット環境にあるパソコンの潜在力をフルに使ってください。ここでは、無料でも使えるアプリであるEvernoteとDropboxの活用方法を紹介します。いずれも有料プランがありますが、まずは無料版を使いこなすとよいでしょう。いずれもクラウド上にデータ/ファイルを保存するので、どのパソコン、スマホからでもアクセスすることができます。

Evernote

ネットで入手できるデータを一元的に管理するためには最強のツールです。適切な名前のNotebookを作ってデータを分類整理しましょう。Webクリッパーをブラウザに組み込むことでネットのデータの取得が効率的にできます。

  • ネットで見つけたウェブページの保存と管理
  • ネットで見つけたPDFの保存と管理
  • ネットで見つけた画像の保存と管理
  • ネットで見つけた動画URLの保存と管理
  • スマホで撮影した画像の保存と管理
  • スマホでスキャンした資料の保存と管理

Dropbox

自分で作成した資料を管理するためには最強のツールです。適切な名前のフォルダーを作ってファイルを分類整理しましょう。

  • Wordで作成した文章などの保存と管理
  • Excelで作成した表などの保存と管理
  • Powerpointで作成したスライドなどの保存と管理

Dropboxはネットで見つけたデータの保存と管理にも使えます。自分なりの使い分けを探してみてください。

2020年7月 5日

東京外国語大学の附属図書館ではオンラインジャーナル・データベースを提供している。初めて使う人は、まず以下のリソースから試してみるとよいでしょう。

なお、学外からアクセスするときにはVPNサービスを利用する必要があります。VPNサービスの使い方については「附属図書館のオンラインジャーナル・データベースに学外からアクセスする方法」を読んでください。

  • CiNii 国内の学術雑誌の検索
  • J-STAGE 国内のオンラインジャーナルの検索
  • JapanKnowledge Lib 『岩波 世界人名大辞典』『東洋文庫』などの日本語の参考図書の検索
  • 聞蔵IIビジュアル(朝日新聞) 朝日新聞の記事の検索
  • JSTOR 英語の人文・社会科学分野の学術雑誌の検索
  • Gale eBooks 英語の参考図書の検索

【練習問題】

初めてオンラインジャーナル・データベースを使う人は、以下の練習をして、使い方に慣れてみてください。

1. 「ヴァルター・シュピース(Walter Spies)」の生涯について、日本語と英語の人名辞典を使って調べてみよう。⇒JapanKnowledge LibとGale eBooksを利用

2. 「ケチャ(kecak)」について、日本語と英語の事典で調べてみよう。⇒JapanKnowledge LibとGale eBooksを利用

3. 「ケチャ」が日本で知られるようになったのはいつ頃からか調べてみよう。⇒聞蔵IIビジュアル(朝日新聞)を利用

4. 「ケチャ(kecak)」が初めて使われた映画について日本語と英語の論文で調べてみよう。⇒CiNii、J-STAGE、JSTORを利用。

オンラインジャーナルに収録された論文や記事のうち、オープンアクセス(Open Access)になっているものはPDFファイルで提供されているので、その場でファイルを閲覧したり、自分のパソコンにダウンロードしたりすることができます。

オンラインのPDFの文献を保存する場合、自分のパソコンにダウンロードするだけではなく、クラウドのストレージに保存すると効率的です。いろいろなクラウド・ストレージがありますが、文献の整理という観点からはEvernoteというクラウド・ストレージが便利です。EvernoteのWebクリッパーをあらかじめインストールしておくとブラウザーで表示されている情報をその場でEvernoteに保存することができます。自分で工夫して活用してみてください。

また、PDFの文献を読むときは、検索機能(Windowsではコントロール+F、Macではコマンド+F)を使ってキーワードを見つけると効率的です。

2020年4月28日

東京外国語大学附属図書館が提供しているオンラインジャーナル・データベースを学外から利用するためのVPN (Virtual Private Network) の設定方法と、VPNサービスを利用した学外からのアクセス方法について説明します。なお、オンラインジャーナル・データベースを学外から利用するためには「学認」サービスという方法もありますが、VPNサービスに比べて利用できる範囲が限られているので、VPNの利用がおすすめです。

1. VPNの設定方法(Windows10の場合)

学外から附属図書館オンラインジャーナル・データベースへのアクセスを可能とするためには、使っている自分のパソコンにDell SonicWall NetExtenderまたはCisco AnyConnect VPN Clientというソフトのいずれかをインストールします。どちらのソフトをインストールすべきかについては附属図書館で用意された説明を読んでください。VPNを設定するのは最初の一回だけです。

以下では、Windows10で使うDell SonicWall NetExtenderの場合について「簡易マニュアル」(下図参照)に即して説明します。

01-学外アクセス説明

Dell SonicWall NetExtenderのインストール

学外からブラウザでhttps://campus2.tufs.ac.jpにアクセスします。

ログイン画面で、ICCから発行されたアカウントのユーザ名とパスワード(赤パス・RASパスと呼ばれているもの)を入力し、ドメインのメニューから「tufs」を選択し、「ログイン」をクリックします(下図参照)。

02-学外アクセス説明

「Dell SonicWall仮想オフィスへようこそ」というページが表示されるので、「NetExtender」のアイコンをクリックします(下図参照)。

03-学外アクセス説明

「SMA Connect Agentをインストールしてください。」というメッセージが表示されるので、「ダウンロード」をクリックしてください(下図)。

04-学外アクセス説明

「手動でダウンロードするためにご使用のプラットフォームを選択してください。」というページが表示されるので、Secure Mobile Access (SMA) Connect Agentから、自分が使用しているパソコンのOSを選んでクリックしてください(下図参照)。

05-学外アクセス説明

指示にしたがってSMA Client Agentをインストールしてください。指示にしたがえば、NetExtenderも自動的にインストールされて起動します(下図参照)。

NetExtenderが起動している状態のとき、附属図書館のオンラインジャーナルやデータベースを利用することができます。利用が終わったら、「切断」をクリックし、右上の「x」をクリックしてNetExtenderを終了してください。

06-学外アクセス説明

2. VPNを利用した学外からのアクセス

学外からブラウザでhttps://campus2.tufs.ac.jpにアクセスします。

ログイン画面で、ICCから発行されたアカウントのユーザ名とパスワード(赤パス・RASパスと呼ばれているもの)を入力し、ドメインのメニューから「tufs」を選択し、「ログイン」をクリックします(下図参照)。

07-学外アクセス説明

「Dell SonicWall仮想オフィスへようこそ」というページが表示されるので、「NetExtender」のアイコンをクリックします(下図参照)。

08-学外アクセス説明

「SonicWall SMA Connect Agentを開きますか?」のメッセージが表示されるので「SonicWall SMA Connect Agentを開く」をクリックします(下図参照)。

09-学外アクセス説明

NetExtenderが起動します(下図参照)。NetExtenderが起動している状態のとき、附属図書館のオンラインジャーナルやデータベースを利用することができます。利用が終わったら、「切断」をクリックし、右上の「x」をクリックしてNetExtenderを終了してください。

10-学外アクセス説明


2020年1月 4日

毎年、年末になると学生のみなさんの卒論原稿をチェックする時期がきます。原稿の中には、論文の構成も明快だし、データもきちんと処理できているのに、読んでいて文意が伝わらないということがよくあります。

その理由は、多くの場合、日本語の書き方に問題があるためです。卒論での望ましい日本語とは、読み手を感動させる日本語ではなく、自分が伝えたいことが、誤解なく正しく読み手に伝わる日本語のことです。

ここでは、多くの論文に共通して見られる日本語の問題点について指摘しておきます。原稿が一通り完成したら、最初から最後まで読み直して、ここで挙げられている問題がないかチェックを行ってください。

書き始めのときは問題がなくても、何度も書き直しているうちに、文意が伝わらない日本語になっている場合があります。必ず提出前に全体を読み直しましょう。

以下の例文では、典型的な誤りと訂正した例を挙げています。例文は短いので、誤りにはすぐ気づけると思いますが、長い文になってくると、気づかない場合があります。文の構造に注意を払いながら読み直してください。

1. 主部と述部の照応ができていない。

  • オランダ植民地政庁によってイスラーム勢力を抑制した。
    ⇒オランダ植民地政庁がイスラーム勢力を抑制した。(能動態で照応)
    ⇒オランダ植民地政庁によってイスラーム勢力が抑制された。(受動態で照応)

2. 読点(、)のあるべきところに読点がない。
論文の場合、とくに、「条件を示す文」および「逆接の文」の区切りに読点を付けることで、読みやすさが大きく向上します。

  • 1998年にスハルト政権が崩壊すると華人に対する政策が大きく変わった。
    ⇒1998年にスハルト政権が崩壊すると、華人に対する政策が大きく変わった。(条件)
  • インドネシアは1945年に独立を遂げたが華人の地位についての明確な取り決めはまだなかった。
    ⇒インドネシアは1945年に独立を遂げたが、華人の地位についての明確な取り決めはまだなかった。(逆接)

このほかの読点の用法についてはことば研究館の説明が分かりやすいです。また、アイデムの説明もビジネス向きで有用です。

3. 語順が不適切である。
修飾関係にある語が離れすぎないよう注意してください。

  • この儀式は残念なことに神聖であるという理由から写真撮影が認められなった。
    ⇒この儀式は神聖であるという理由から残念なことに写真撮影が認められなかった。(「残念なことに...認められなった」の距離に注意)

2019年9月10日

英語の原稿を書くにあたって見逃しがちな記号等の表記上の注意点をあげます。あくまでも表記に関わる注意が目的なので、記号の使用方法については最小限のことしか触れていません。ユニコードの表示にはUnicode Character Table、文字の画像表示にはFileFormat.infoを参照しています。

なお、ブラウザの環境によっては記号が正しく表示されない場合があります(とくにエム・ダッシュとエヌ・ダッシュ)。右端の画像で正しい記号を確認してください。(2019-09-10)

英語原稿で使う記号は、英語フォントを使わないと正しく表示されない場合があります。どの英語フォントを使えばよいのか分からない場合には、Times New Romanを使うことを推奨します。(2020-11-13)

1. スペース space

空白のことです。ピリオド「.」、コンマ「,」、コロン「:」、セミ・コロン「;」のあとに文字や数字が続くときは、1字分のスペースを入れます。忘れることがあるので注意してください。

2. アポストロフィー apostrophe

パソコンでは「'」(ユニコードU+0027)で表記することが一般的ですが、出版物の原稿を書くときには正式な記号を用います。

  • アポストロフィー「ʼ」(ユニコードU+02BC)image of Unicode Character 'MODIFIER LETTER APOSTROPHE' (U+02BC)

右側の閉じる一重引用符に似ていますが、別物です。

3. シングル・クォーテーション・マーク single quotation mark

一重引用符のことです。左側の「開く引用符」と右側の「閉じる引用符」をセットで使います。パソコンでは左側も右側も同じ記号「'」(ユニコードU+0027)で表記することが一般的ですが、出版物の原稿を書くときには正式な記号を用います。

  • 左側の開く一重引用符「'」(ユニコードU+2018)
  • 右側の閉じる一重引用符「'」(ユニコードU+2019

右側の閉じる一重引用符はアポストロフィーに似ていますが、別物です。

4. ダブル・クォーテーション・マーク double quotation mark

二重引用符のことです。左側の「開く引用符」と右側の「閉じる引用符」をセットで使います。パソコンでは左側も右側も同じ記号「"」(ユニコードU+0022)で表記することが一般的ですが、出版物の原稿を書くときには正式な記号を用います。

  • 左側の開く二重引用符「"」(ユニコードU+201C)image of Unicode Character 'LEFT DOUBLE QUOTATION MARK' (U+201C)
  • 右側の閉じる二重引用符「"」(ユニコードU+201Dimage of Unicode Character 'RIGHT DOUBLE QUOTATION MARK' (U+201D)

5. エヌ・ダッシュとエム・ダッシュ en dash, em dash

英語のダッシュには、「短いダッシュ」のエヌ・ダッシュ(en dash)と「長いダッシュ」のエム・ダッシュ(em dash)の2種類があります。エヌ・ダッシュとは文字「n」の幅のダッシュ、エム・ダッシュとは文字「m」の幅のダッシュという意味です。

エヌ・ダッシュは二組の数字をつないで区間や間隔を表すときに使います。たとえば、「23ページから35ページまで」は「pp. 23-35」と書きます。パソコンではハイフン「」(ユニコードU+2010)でエヌ・ダッシュの代用とすることが一般的ですが、出版物の原稿を書くときには正式な記号を用います。

日本で一般にダッシュと呼んでいる記号はエム・ダッシュに相当します。

  • エヌ・ダッシュ「-」(ユニコードU+2013)image of Unicode Character 'EN DASH' (U+2013)
  • エム・ダッシュ「--」(ユニコードU+2014)image of Unicode Character 'EM DASH' (U+2014)

【補足】

MS Wordを使っているときにエヌ・ダッシュとエム・ダッシュを入力する方法を補足しておきます。

メニューから「挿入」>「記号と特殊文字」>「その他の記号」>「特殊記号」の順に移動します。ここに表示されている「全角ダッシュ」が「エム・ダッシュ」、「半角ダッシュ」が「エヌ・ダッシュ」に対応します。「全角ダッシュ」または「半角ダッシュ」を選んで「挿入」をクリックするか、以下のショートカット・キーを押してください。

  • 全角ダッシュ Alt+Ctrl+Num -
  • 半角ダッシュ Ctrl+Num -

6. ハワイ大学出版会の英語名 University of Hawaiʻi Press 

ハワイ大学出版会の正式な名称を書くときには、Hawaiʻiの2つのiの間にある記号に注意しましょう。この記号はオキナと呼ばれる声門閉鎖音を表すハワイ語の文字です。

  • オキナ「ʻ」(ユニコードU+02BB

左側の開く一重引用符に似ていますが、別物です。

2019年4月11日

インドネシア語を聞き取る力を向上させる方法の一つとしてNHK WORLD JAPAN Indonesianがお勧めです。日本やアジアのニュースを中心に標準的で自然なインドネシア語に耳を慣らすことができます。主な内容がテキストで表示されるので、内容をまず読んで理解したあと、耳だけで何度も聞くといった使い方ができます。

パソコンで聞く場合はウェブサイトにアクセスしてください:
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/id/

スマホで聞く場合はアプリ「NHKワールド JAPAN ラジオ」をApp StoreまたはGoogle Playからインストールしてください。なお、Android用のアプリは日経トレンディネットで紹介されています。

2019年1月 6日

卒論の作成を進めている人を念頭に、論文作成の効率をあげ、ストレスを減らすために便利なMS Wordの機能を紹介しておきます。

1. ページを変えるときは「改ページ」

たとえば目次のページを作成してあと、次は本文のページを作ろうとするとき、スペースを連打していませんか?これだと、あとで目次の分量が増減するたびにスペースの数を再調整しなければなりません。

もっとも効率的な方法は、目次の最後に「改ページ」を挿入することです。メニューからページレイアウト」>「ページ設定」>「区切り」>「改ページ」を選んでください。

2. 参考文献リストを作るときは「ぶら下がりインデント」

参考文献リストには、著者名、刊行年、書名などの情報が続きます。文献の数が増えれば増えるほど、全体の一覧性が悪くなります。

このようなときには、参考文献リストのスタイルを「ぶら下がりインデント」にすることで一覧性が改善できます。

ぶら下がりインデントを適用するためには、まず、「左インデント」の位置を右方向に4~5字程度移動します。次に、「1行目のインデント」の位置を元の位置に戻します。

メニューの「スタイル」に新しいスタイルとして登録しておくと、いつでも呼び出すことができてさらに効率的です。

3. 章や節には「スタイル」の「見出し1」、「見出し2」

卒論のようにページ数の多い原稿では、章や節の一覧性が悪くなります。作成する途中で目次のように一覧できたら便利だとは思わないでしょうか?

そういうときには、スタイルにある「見出し1」、「見出し2」(節の下が細かく分かれているときにはさらに「見出し3」)を適用すると効率的です。

章や節に「見出し」のスタイルを適用したあと、コントロール+Fを押してナビゲーションウィンドウを呼び出し、その中の「見出し」を表示させると、章は節が一覧で表示されます。

表示された章や節をクリックすると、その章や節にジャンプするので、卒論の中の特定の個所に直接ジャンプすることができ、大変に便利です。また、Wordの目次作成機能を使うと自動的に目次を作成することもできます。

なお、デフォルトの「見出し」のスタイルは太文字になったり、インデントが入っていたりして使いにくい場合があります。その場合は、自分の使いたいスタイルに変更したうえで、メニューの該当するスタイルを右クリックし、「選択箇所と一致するように〇〇を更新する」を選ぶことでスタイルを変更することができます。

4. 用語の統一には「検索」と「置換」

卒論では用語や表記を統一する必要があります。たとえば、「イスラーム」と「イスラム」、「したがって」と「従って」などの混用には注意が必要です。

それでは、論文作成の途中で異なった用語・表記の混用に気づいたとき、どうすればよいでしょうか?卒論の最初から最後まで読み返していては、時間もかかりますし、見落としの可能性もあります。

こういうときには、「検索」機能を使いましょう。コントロール+Fを押してナビゲーションウィンドウを呼び出し、検索窓に捜したい用語・表記を打ち込んで検索すると、卒論の中の該当の用語・表記をすべてチェックすることができます。

さらに、「置換」機能を使うと、自動的に別の用語・表記に置き換えてくれます。

5. 添削には「コメント」機能

指導教員に添削してもらう場合には「コメント」機能を活用しましょう。

卒論が最終的に完成し、印刷する前に「コメント」をすべて削除することを忘れないようにしてください。メニューから「校閲」>「削除」の右側の三角形をクリックし「ドキュメント内のすべてのコメントを削除」を選んでください。

6. ファイル名にも留意

指導教員に卒論の原稿を添削してもらう場合、原稿を添付ファイルでやり取りすることになります。その場合、ファイル名にも留意してください。

ファイル名には自分の名前、ファイルの内容、ファイルの作成年月日を入れておくようにすると整理が楽です。たとえば、〇〇〇〇を姓名とすると次のようなファイル名が想定されます:

  • 〇〇〇〇-卒論-20181221

年月日は年も含めて8桁で表すようにしましょう。こうしておくと、パソコンのフォルダ内でファイルが時系列に沿って並んでくれますから、常にどのファイルが最新かが一目でわかります。

このようにファイル名のフォーマットは一定にしておくことがポイントです。したがって、フォーマットを決めたら、とくに理由がない限り、同じフォーマットを使い続けるようにしてください。

2018年12月24日

卒業論文は中身が最重要であることは言うまでもありません。しかし、学生のみなさんの卒論を読んでいると、表記の上で気になることも少なくありません。ここでは、よく見かける問題点とその改善案をまとめておきました。卒論作成の参考にしてください。なお、あくまでも指針としての分かりやすさを優先しているので、ある程度割り切った説明をしていることをご了承ください。(更新: 2019-01-13)

1. 表記符号を使うときの注意点

句読点・括弧などの文字以外の記号を表記符号と呼ぶことにします。よくある問題点をあげておきます。

なお、表記符号については「表記符号の使い方」が参考になります。

1.1 ダッシュと音引きは区別

ダッシュは主に副題を付けるときに用いられますが、長音符号と紛れやすいの注意してください。実際、このブログのフォントでは、ダッシュは「―」で、長音符号は「ー」なのですが、見たところ区別がつきません。しかし、ワープロソフトで明朝体を使うと違いがはっきりするので、誤用すると目につきます。パソコンで入力するときには「だっしゅ」と打ち込んで変換すると「―」に変換される場合があるので、利用すると便利でしょう。

  • ダッシュの例:『サピエンス全史―文明の構造と人類の幸福―』
  • 長音符号の例:イスラーム

ダッシュのもう一つの使い方として、参考文献リストで同一の著者の文献が続くとき、2回め以降を省略するときにも使います。著者名に代えてダッシュを3つ入れます。

  • 例:橋本進吉. 1946.『国語學概論』東京:岩波書店.(初出時)
  • 例:―――. 1950. 『国語音韻の研究』東京:岩波書店.(2回め以降)

英文でのダッシュについては、下の項目を見てください。

1.2 文献を記すときの一重鉤括弧と二重鉤括弧の区別

文献を記すとき、論文の題名は一重鉤括弧で、書籍の題名や雑誌の誌名は二重鉤括弧でくくります。

  • 一重鉤括弧の例:「インドネシアにおけるイスラームの新しい展開」
  • 二重鉤括弧の例:『文明の衝突』(書名)
  • 二重鉤括弧の例:『東南アジア研究』(誌名)

2. 英文を書くときの注意点

日本語の論文であっても、英語の文献を引用するときには、英文の書き方の原則にしたがう必要があります。なお、ここでは英文としていますが、同じくラテン文字を使うインドネシア語の文章にも原則として適用できます。

2.1 英文を書くときの基本のフォントはTime New Roman

卒論作成ではほとんどの人がMicrosoftのWordをワープロソフトとして使っています。その場合、日本語の本文に使う標準的なフォントは明朝体だと思います。明朝体に対応する英語の標準的なフォントはTimes New Romanです(他にもいろいろと良いフォントがありますが、迷うのであればTimes New Romanにしておくとよいでしょう)。

明朝体でも英文を表示することは可能ですが、明朝体の英数字はあくまでも漢字・平がな・片かなに対するおまけのような存在なので、英数字や英文をしっかりと表現する場合には、見栄えがよくありません。英文をしっかりと表現する場合には、Times New Romanを使うことを薦めます。

参考までに明朝体活字は明治時代の日本では新聞の本文を印刷するために普及しました。一方のTimes New Romanはイギリスの新聞紙タイムズの印刷のために開発された活字体です。いずれも良い意味で変哲もないデザインであることで文字自体が主張することがなく、読み手が書かれた内容に集中できるよう可読性を高めているところに共通性があります。

2.2 明朝体で英数字を表記するときは半角

明朝体などの日本語表記用のフォントには全角と半角があります。もしも明朝体で英数字を表記するときには、原則として半角を使ってください。

  • 例:「2020」ではなく「2020」(年代)
  • 例:「Smith」ではなく「Smith」(人名)

半角を使うときには、全角と混用しないようにしてください。とくに半角のコロン「:」は全角のコロン「:」と紛れやすいので気を付けてください。以下の例ではスペースの部分にアンダーバー「_」を付けています。

  • 例:「(Smith_2007:389)」ではなく「(Smith_ 2007:_389)」

2.3 英文を表記するフォントは統一する

いずれにしても、英文の表記に明朝体とTimes New Romanが混在しているのは見栄えがよくありません。統一するようにしましょう。以下の説明では、Times New Romanで英文を表記することを前提にして説明します。なお、残念ながらこのブログのフォントではTimes New Romanは正確に表示されないのでご注意ください。

2.4 英語文献の出典表示をする場合のフォント

本文中で英語文献を出典表示する場合には、丸括弧は本文のフォントにあわせて明朝体の全角とし、出典表示自体はTimes New Romanを使うことをお薦めします。括弧の部分までは日本語の本文で、括弧の中のみが英文という方針でよいと思います。

  • 例:...と論じている(Smith 2007: 389)。

参考までに明朝体の本文にTimes New Romanの丸括弧を入れると、明朝体の文字よりも丸括弧の位置が下にずれていることがあります。これは、英語の小文字の中にはjやqやyのように他の文字よりも下に下がる文字があるので、それにあわせて丸括弧の位置を下げているためです(このブログのフォントでは明確ではありませんが)。この意味でも、丸括弧までは日本語の本文という方針の方がよいと考えています。

2.5 英文では単語や句読点の後にはスペースを入れる

英文では単語や句読点の後にはスペースを入れます。当然のことのようですが、とくに句読点などの表記符号の後では忘れていることがよくあるので、気を付けてください。以下の例ではスペースの部分にアンダーバー「_」を付けています。

  • 例:(Smith_2018:_21-25)(ハイフンの後)
  • 例:Smith,_N._J._(コンマ、ピリオドの後)
  • 例:The Journal of Asian Studies_66_(2),_pp._389-420.(単語、コンマ、ピリオドの後)

2.6 英文のダッシュ

英文のダッシュには、エム・ダッシュ(em dash)と呼ばれる通常の長いダッシュ「--」と、エヌ・ダッシュ(en dash)と呼ばれる短いダッシュ「-」があります。日本語のダッシュはエム・ダッシュにおおむね対応しています。一方、エヌ・ダッシュは数値などの範囲を表すときに用います。

  • 例:pp._389-420(ページの範囲)
  • 例:1998-2018(年代の範囲)

エヌ・ダッシュはハイフン「-」と似ていて紛らわしいのですが、エム・ダッシュよりも短く、ハイフンよりも長くなっています。残念ながら、このブログでは両者を区別して表示することはできません。

エヌ・ダッシュを使う上でやっかいなことは、エヌ・ダッシュをキーボードから簡単に入力する方法がないことです。正確に入力するためには、エヌ・ダッシュのユニコードである8211(十進法)を使って記号を表示させたものをコピペするのが楽だと思います。ユニコードを表示させるサイトとしてはUnicode Lookupが使いやすいと思います。

ただし、卒論のレベルであれば、エヌ・ダッシュの入力で苦労するよりは、中身の充実に時間を使った方がよいというのが現時点でのアドバイスです。

参考までにエム・ダッシュは小文字のmの幅、エヌ・ダッシュは小文字のnの幅を基準とすることからこのような名前が付いています。明朝体の全角の文字が、どの文字も等しい高さと幅になるようにデザインされているのに対して、Times New Romanに代表される英文のフォントは、文字によって高さも幅も異なるところに特徴があります。

3. 出典表示の位置

出典表示は原則として本文中の著者名の直後、あるいは、直近の句読点の前に挿入します。

  • 例:山田(1997:_20-23)によると、20世紀初頭のインドネシアにおけるイスラーム近代主義には二つの潮流があったという。
  • 例:20世紀初頭のインドネシアにおけるイスラーム近代主義には二つの潮流があったとされている(山田_1997:_20-23)。

引用がある場合には、引用を閉じる鉤括弧の後に挿入します。出典表示は引用される文の一部ではないからです。

  • 例:「インドネシアにおけるイスラーム近代主義には二つの傾向を区別することができる」(山田_1997:_20-23)。

ブロック引用の場合には、引用された文章が終わる句点の後に挿入します。上と同様に、出典表示は引用される文の一部ではないからです。

  • 例:...インドネシアにおけるイスラーム近代主義には二つの傾向を区別することができる。(山田_1997:_20-23)

参考までにここで指摘されている問題点が自分の卒論の原稿にあるのを見つけたときには、他にも同様の問題が残っていないかを網羅的にチェックする必要があります。そのような場合には、Wordの検索機能を使うと漏れを防ぐことができますから、活用するとよいでしょう。

2018年1月 8日

このエントリーでは、卒論の構成を形式の面から説明しておきます。学生のみなさんの多くは卒論の内容に頭を悩ませていることと思いますが、卒論を物理的に完成させるためには、卒論の構成についても理解しておく必要があります。

卒論の構成

卒論は形式的に見ると次の3つの部分から構成されています。

  • 1. 前部分
  • 2. 本体部分
  • 3. 後部分

具体的にその中身を見ていくと、それぞれの部分は次のような要素から構成されています。

    前部分
    • とびら
    • 目次
    本体部分
    • 序論
    • 第1章
    • 第2章
    • (中略) 
    • 結論
    後部分
    • 付録資料*
    • 後注*
    • 参考文献一覧

これからも分かるように、普通、卒論を書くという場合は「本体部分」を書くことを思い浮かべているわけですが、実際に卒論を完成させて提出するためには、前部分と後部分の作成も考えておかなければなりません。

上記の要素のうち、卒論として必ずなければならないのは、前部分、本体部分、そして後部分の参考文献一覧です。一方、*印を付けた付録資料、後注は必要に応じて作成します。これについては、後部分の説明を参照してください。以下、各部分ごとに説明をおこないます。

1. 前部分

とびらは卒論の最初のページです。いわば顔にあたるわけで、ここには卒論のIDにあたる情報を記載します。具体的には、卒論のタイトル、執筆者の名前、学生番号、所属学部・コース、卒業年度を記載します。

とびらは一般に表紙と呼ばれることが多いのですが、ここではあえて「とびら」と呼んでおきます。というのは、卒論を保護するために一番外側に取り付ける(通常は少し堅めの丈夫な)外装を表紙と呼ぶこともあるので、それと区別するためです。外装は(衣服のコートのように)取り替える可能性がありますが、とびらは建物のドアのように、卒論そのものの一部であることに注意してください。

目次には、卒論の構成を示します。目次の対象になるのは、本体部分と後部分の各要素です。目次自体を含めて前部分は対象にならないことに注意してください。目次には各要素の最初のページを記載します。したがって、卒論の全体がすべて完成してから目次を仕上げることになります。

2. 本体部分

本体部分は卒論の中心部分で、複数の章からなります。各章(chapter)はさらに節(section)に分けることが一般的です。

には、最初の章から順番に番号を振り、その章に相応しい章名を付けます。ただし、最初と最後の章に番号を振るかどうかは、章の内容や分量によって判断してください。たとえば、次のような章名の付け方がいずれも可能です。

  • 「第1章 はじめに」「第2章 問題の背景」(中略)「第5章 今後の課題」「第6章 おわりに」
  • 「はじめに」「第1章 問題の背景」(中略)「第4章 今後の課題」「おわりに」
  • 「序論」「第1章 問題の背景」(中略)「第4章 今後の課題」「結論」

章・節を構成する要素としては、テキスト(文章)、図、表などがあります。また、注釈を脚注方式(footnote)で入れる場合には、脚注も要素となります。

3. 後部分

後部分には、付録資料、後注、参考文献一覧が置かれます。このうち、*印を付けた付録資料、後注は必要に応じて作成します。

付録資料は、例えば、本体に入れると議論の展開が分かりづらくなるが、かといって捨てしまうには惜しいデータがあったり、大量の画像資料があったりする場合に、参考資料として後部分にまとめておくものです。なお、名称は「付録資料」である必要はありません。内容にあわせて工夫してください。

後注は、注釈を後注方式(endnote)で入れる場合に必要となります。注釈を脚注方式(footnote)で入れる場合には不要です。後注をおく位置は、参考文献一覧の直前にするのが普通です(付録資料がある場合、付録資料にも注を付ける可能性があるからです)。

参考文献一覧は、原則として論文の一番最後に置かれます(付録資料や後注がある場合、付録資料や後注にも文献への参照をおこなう可能性があるからです)。リストの中の文献は五十音順やアルファベット順などの基準に従って配列します。日本語文献、外国語文献、ウェブ資料などの文献の特性によってリストを分けることも可能です。

補足

1. 前部分と本体部分のページ番号の付け方には特別な決まりがあります。これについては「MS Wordで本文の最初のページを第1ページにしたい」で説明しているので参考にしてください。

2. MS Wordで卒論を作成する場合には、上に示した要素(章の中の節を含む)ごとにMS Wordの設定でスタイル「見出し」を適用すると作業が効率的になります。

2017年2月 1日

学生のみなさんが大学の講義を受けて必ず言われることの一つは、レポートを書いてきなさいという指示です。ここではレポートの書き方のなかでも、最終的にレポートを提出するにあたって気をつけておくべきことをまとめておきます。ただし、教員から個別に指示がある場合にはそちらを優先してください。

なお、このブログではMicrosoft Wordなどのワープロソフトを使って文章を作成することを前提にしています。

まず、レポートの構成要素として、以下の要素が抜けていないことを確認してください。

  • 授業科目(このほかに教員の名前なども必要に応じて)
  • 自分の名前(当然)
  • 自分の学生番号(教員は学生番号順でレポートを整理するので、必須)
  • 提出日(何度もレポートを出すことがある場合には必須)
  • タイトル(基本的に教員から指示された課題などがタイトルになります)
  • レポートの本文(字数・枚数の指示にあわせること。詳細は下に書きました。)
  • 参考文献・参考ウェブページのリスト

これらの要素は用紙の最初のページから始まります(レポートに表紙を付ける必要はありません)。また、「自分の名前」と「自分の学生番号」は用紙の右端に寄せてもらえると教員としては助かります。レポートをめくるときにすぐに名前と学生番号が確認できるからです。

レポートのフォーマットは、教員からとくに指示がなければ、以下のようにしておくとよいでしょう。

  • A4判用紙
  • 1ページあたり上下左右余白25~30mm程度、40~45行程度に設定(これで1ページあたり1200字~1400字程度になります)
  • 本文には明朝系、10.5ポイントのフォントを使用
  • 2ページを超える場合は両面印刷
  • レポートが複数ページになる場合はページ番号を挿入(Wordのページ番号挿入を使います)

次に、レポートの本文について、注意すべき点をあげておきます。

  • 本文はパラグラフ単位で構成します。
  • 最初のパラグラフでレポートの目的を明らかにします(普通は教員から指示された課題をもとにすればよいでしょう)。
  • 以下、たとえばインドネシアの煙害がテーマであれば、煙害の現状→煙害発生の原因→煙害克服に向けての対策→結論、といった具合に論理的な順序にしたがってパラグラフをつないでいきます。一つのパラグラフで一つのトピックというのが原則です。
  • 複雑なトピックであれば、複数のパラグラフに分けることも検討してください。
  • パラグラフの最初の行では字下げをおこないます(Wordの左インデントを使うと便利です)。
  • パラグラフの数が多いときは、まとまりのあるパラグラフごとに見出しをつけておくと文章の論理が明快になり、読む方も助かります。先ほどの例だと、「はじめに」「煙害の現状」「煙害への対策」「おわりに:煙害問題の将来」といった感じになります。
  • パラグラフとパラグラフの間に行間を入れる必要はありません。
  • 必要に応じて図(グラフ、写真、地図など)や表を挿入してかまいませんが、本文で参照するようにしてください(「表1が示すように...」「(図2を参照)」など)。あくまでも本文が主体で図表はその補足です。

参考文献のリストおよび参考ウェブページのリストの書き方は別のページに書いたので参考にしてください。

最後に、レポートを提出するときに注意すべき点をあげておきます。

  • 紙で提出する場合でレポートが複数枚になるときは、左上の角をホッチキスでとめてください(横書きの文章は左側をとじます。縦書きの文章であれば右側になります)。
  • ファイルで提出する場合は、教員が他の学生からのファイルと区別できるよう、ファイル名に自分の名前をいれてください。何度もファイルを送ることがある場合には日付も入れておくとなおよいです。たとえば「report_indonesia_20170110_higashitamako.docx」とします。

いよいよレポートの提出です。当然のことですが、期日に間に合うよう提出してください。

2017年1月17日

卒論を書くとき、注を付けることがあります。

注には、論文の本文を補足する情報を書きます。注を付けるかどうか判断に迷うこともあると思います。その情報を本文に入れると文章の流れが滞ってしまうけれども、その情報があった方が本文の理解が深まると判断したときには、注を付けるとよいでしょう。逆にその情報が論旨を理解するうえで必須なのであれば本文に入れるべきです。

引用の出典表示は、通常は「著者名・刊行年方式」で表示しますが、ウェブサイトの情報のように、その方式では困難な場合には、注に入れることを検討してもよいでしょう。

注を付けるときには、注の番号を本文の該当箇所の直後の句読点の前に挿入します。なお、英語の論文では句読点の後に入れるので注意してください。

例を示しておきます。

【例1】その公演は2015年にジャカルタのタマン・イスマイル・マルズキで開催された1

1?タマン・イスマイル・マルズキ(Taman Ismail Marzuki、通称TIM)はジャカルタを代表する総合芸術文化センターである。

【例2】国際交流基金は1995年に「アジアのモダニズム―その多様な展開:インドネシア、フィリピン、タイ」と題した展覧会を開催した2

2?国際交流基金ウェブサイトの 「過去40年の活動から時代の顔やざわめきがよみがえる」(https://www.jpf.go.jp/j/about/outline/about_05.html)を参照。

Wordでの注の付け方については、以下のページを参考にしてください。

2017年1月 2日

このブログでは、これまでにも「ウェブページの引用の方法」について説明をしてきました

さらに、その前提となる紙媒体の文献の引用の方法についても説明をしてきました。

このページは、2回にわたっておこなってきた「ウェブページの引用の方法」の完結編にあたります。書き始めから10年かかったのは、とにもかくにも筆者の怠慢のせいですが、ウェブページの引用の方法を私自身が見定めるのにこれだけの時間が必要だったということでもあります。ここでは、日本語のウェブページを例としてウェブサイトにある文献の引用の方法をまとめておくことにします。

まず初めに、引用の基本を振り返っておきます。卒論などの論文では、引用(参照も含みます)という行為は以下の三つが必ずセットになっていなければなりません。これを仮に「引用の三位一体」と呼んでおきます。

  • 本文の中で引用をおこなう(引用)
  • 引用した文献の出典を本文の中で明らかにする(出典表示)
  • 引用された文献の書誌情報を一覧にして示す(参考文献リスト)

これらが揃っていれば、ある文献からの引用が本文中にあった場合、読者は出典表示を見ることで、参考文献リストに挙げられたその文献の書誌情報をすばやく紛れなく知ることができます。原則として、引用された文献と参考文献リストに記載された文献は一対一で対応していなければなりません。言い方を変えれば、引用された文献はすべて参考文献リストに記載されていなければならないし、その逆もまた然り、ということです。

本文中の出典表示は、引用された文献と参考文献リストを結びつけるリンクとして、重要な役割をになっています。このブログでは「著者名・刊行年方式」を推奨しています。

ウェブページからの引用であっても、著者名(あるいは刊行組織名)と刊行年が明示されていれば(あるいは十分に推測可能であれば)、紙媒体の文献と同じやり方で引用することが可能です。以下、代表的な例を示しますので、これらを参考に工夫してください。

例1 ウェブ・ジャーナルに掲載されている記事

『シノドス』というウェブ・ジャーナルの記事。著者名と刊行年が明示されており、紙媒体の文献と同様の扱いが可能な場合。

【例1:本文中の引用と出典表示】

現在のところ、スハルト独裁体制崩壊後に民主化が進展したインドネシアと「アラブの春」以降の中東が歩んだ道のりの違いは顕著であるが、「インドネシアが今あるところに至るまでに独立後70年近くを要している」事実には留意しておく必要がある(青山 2016)。

【例1:参考文献リスト中の記載】

青山 亨. 2016. 「インドネシアのイスラーム社会―ムスリム・アイデンティティと消費社会」. 『シノドス』. http://synodos.jp/international/17467/2,?(2017年1月2日閲覧)

例2 組織のウェブサイトに掲載されているPDFの記事(著者名あり・刊行年なし)

国際交流基金のウェブサイトに掲載されているPDFの記事。著者名のみで刊行年は明示されておらず、刊行組織が明らかな場合。n.d.はno date(「刊行年不明」)の略。PDFのURLを記載。

【例2:本文中の引用と出典表示】

1997年に日本で初演されたアジア6か国共同制作の舞台劇「リア」にはインドネシアのガムラン音楽も使われている(畠由紀 n.d.)。

【例2:参考文献リスト中の記載】

畠由紀. n.d. 「ノウハウシリーズ:演劇の国際共同制作6ヵ国の「リア」」. 国際交流基金ウェブサイト. https://www.jpf.go.jp/j/about/survey/knowhow/pdf/know31.pdf,(2017年1月2日閲覧)

例3 組織のウェブサイトに掲載されているPDFの報告書(著者名なし・刊行年あり)

外務省のウェブサイトに掲載されているPDFの報告書。著者名は明示されていないが、刊行年は報告書の中に表示されている場合。著者名の代わりに報告書作成主体の組織名を使用。PDFのURLを記載。

【例3:本文中の引用と出典表示】

日本政府はインドネシアについて「民主主義や人権、市場経済といった基本的な価値観を我が国と共有し、かつ幅広い国民レベルでの長い友好関係を有する戦略的パートナーである」と位置付けている(外務省 2012)。

【例3:参考文献リスト中の記載】

外務省. 2012. 「対インドネシア共和国 国別援助方針」. 外務省ウェブサイト.?http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000072224.pdf,?(2017年1月2日閲覧)

例4 組織のウェブサイトに掲載されたウェブページ(著者名なし・刊行年なし)

国際交流基金のウェブサイトに掲載されているウェブページ。著者名・刊行年ともに明示されていない場合。著者名の代わりに組織名を使用。

【例4:本文中の引用と出典表示】

国際交流基金では1995年に「アジアのモダニズム―その多様な展開:インドネシア、フィリピン、タイ」と題した展覧会を開催した(国際交流基金 n.d.)。

【例4:参考文献リスト中の記載】

国際交流基金. n.d. 「過去40年の活動から時代の顔やざわめきがよみがえる」. 国際交流基金ウェブサイト. https://www.jpf.go.jp/j/about/outline/about_05.html, (2017年1月2日閲覧)

例5 著者名・刊行年方式の代わりに注を使う場合

上記のように、ウェブページの文献でも著者名・刊行年方式で出典表示が可能な場合にはできるだけ工夫してそのようにします。もしそれでうまくいかない場合には、注番号を付けて注の中で文献の出典を記載することも可能です。この場合でも、参考文献リストに文献を記載しておく必要があります。

【例5:本文中の引用と注番号】

国際交流基金では1995年に「アジアのモダニズム―その多様な展開:インドネシア、フィリピン、タイ」と題した展覧会を開催した1

【例5:注の記載】

1?国際交流基金ウェブサイトの 「過去40年の活動から時代の顔やざわめきがよみがえる」(https://www.jpf.go.jp/j/about/outline/about_05.html)を参照。

【例5:参考文献リスト中の記載】

国際交流基金. 「過去40年の活動から時代の顔やざわめきがよみがえる」. 国際交流基金ウェブサイト. https://www.jpf.go.jp/j/about/outline/about_05.html, (2017年1月2日閲覧)

なお、論文の中でウェブページの文献を引用している場合には、参考文献リスト自体を、紙媒体の文献をまとめた「参考文献一覧」とウェブページの文献をまとめた「参考URL一覧」の二つに分けることを検討してください。参考URL一覧の配列は見出し語(著者名・組織名・ウェブサイト名など)の五十音順にし、刊行年の記載は不要です(例5はこの方式の例です)。

最後に、ウェブページの文献を含むオンライン上の情報を参考文献として取り扱うにあたっては、科学技術系寄りの内容ですが、科学技術振興機構のSIST(科学技術情報流通技術基準)のサイトが提供している「SIST 02 参照文献の書き方」(PDF)がもっとも包括的であるようです。これの要点をまとめた簡潔な手引きとして「参考文献の役割と書き方」(PDF)があります。このブログ記事を書くための資料を探しているなかで見つけたので、参考にさせてもらいました。

2016年8月30日

インドネシア語においても翻訳のためのオンライン上のリソースが充実してきています。ここにはインドネシア語を対象とした代表的な辞書・翻訳ツール・コーパスなどを集めておきました。

なお自動翻訳はまだまだ完璧ではありません。あくまでも道具として使いこなしていく努力が求められます。

・Kamus Besar Bahasa Indonesia
http://kbbi.web.id/
Badan Pengembangan dan Pembinaan Bahasa編インドネシア語大辞典のオンライン版。

・ArtiKata.com
http://www.artikata.com/
インドネシア語の単語の意味をインドネシア語で説明するモノリンガル辞書。

・SinonimKata.com
http://www.sinonimkata.com/
インドネシア語の単語の同義語・類義語・関連語を検索するシソーラス。

・XamuX.com
http://www.xamux.com/
インドネシア語・英語辞書、英語・インドネシア語辞書。

・Indotranslate.com
http://www.indotranslate.com/
インドネシア語のテキストから諸言語へ、逆に諸言語のテキストからインドネシア語への翻訳。

・A Comprehensive Indonesian-English Dictionary, Second Edition
http://sealang.net/indonesia/dictionary.htm
A Comprehensive Indonesian-English Dictionary, Second Editionのオンライン版。SEAlang Libraryの提供。

・Weblioインドネシア語辞典
http://njjn.weblio.jp/
インドネシア語・日本語辞典、日本語・インドネシア語辞典。

・Glosebe
https://ja.glosbe.com/id/ja
インドネシア語・日本語辞書、日本語・インドネシア語辞書。

・Google翻訳
https://translate.google.co.jp/#id/ja/
インドネシア語のテキストから日本語へ、日本語のテキストからインドネシア語へ翻訳。

・MyMemory
http://mymemory.translated.net/ja/Indonesian_Japanese_%E7%BF%BB%E8%A8%B3
翻訳メモリのサイト。インドネシア語のテキストから日本語へ、日本語のテキストからインドネシア語へ翻訳。

・SEAlang Library Indonesian Text Corpus
http://sealang.net/indonesia/corpus.htm
SEAlang Libraryが提供するインドネシア語のコーパス。

・Malay Con\cordance Project (MCP)
http://mcp.anu.edu.au/
マレー語古典テキストのコンコーダンス。Australian National University。

2015年9月 5日

ジャワ語は、インドネシアで使われている地方語の一つで、インドネシアでもっとも人口の多いジャワ人の母語です(約1億4千万人)。インドネシア語や他の多くのインドネシアの言語と同様にオーストロネシア語族に属します。9世紀頃から記録が残っています。ジャワ文字、アラビア文字(ペゴンと呼ばれる)、ラテン文字で表記されます。

ここではジャワ語文献を研究するにあたって役に立つウェブサイトをまとめてみました。このサイトはアジア・アフリカ言語文化研究所2015年度言語研修「古ジャワ語」の資料として開設しています。(更新:2017-09-24)

なお、インドネシア語についてはインドネシア語を翻訳するためのオンライン資源のページも参照してください。

・Javanese Documents Online (JVDO)
https://jvdo.aa-ken.jp/
古ジャワ語および現代ジャワ語の古典テキストのコンコーダンス。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所のオンライン研究資源の一環として運営されています。

・Malay Concordance Project (MCP)
http://mcp.anu.edu.au/
マレー語古典テキストのコンコーダンス。ジャワ語文献とも関連が深いのでここに掲載しています。Australian National University。

・SEAlang Library Javanese Text Corpus
http://sealang.net/java/corpus.htm
ネット上のジャワ語テキスト資源から収集されたジャワ語テキストのコーパス。SEAlang Library。

・Old Javanese-English Dictionary (OJED)
http://sealang.net/ojed/
Zoetmulder編古ジャワ語英語辞典のオンライン版。SEAlang Library。

・Javanese-English Dictionary
http://sealang.net/java/dictionary.htm
Robson編ジャワ語英語辞典のオンライン版。SEAlang Library。

・Sastra Jawa
http://www.sastra.org/
ジャワ語古典テキストのコンコーダンス。Yayasan Sastra Lestari。

・ジャワ島5万分の1地形図
http://www.aa.tufs.ac.jp/~kmiya/Maps%20of%20Java.htm (仮サイト)
旧日本陸軍参謀本部陸地測量部による5万分の1地形図。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所。

・Java Sources Project
http://www1.uni-hamburg.de/java-history/Javaindex.html
ジャワ前近代史にかかわる史資料を提供するサイト。Prof. Dr. Jurgen Sarnowsky, Universitat Hamburg。

・MANASSA (Masyarakat Pernaskahan Nusantara)
http://situs.opi.lipi.go.id/manassa/
インドネシアの写本学会。ジャワ語を含むインドネシアの諸語の文献写本の研究。

・GRETIL (Gottingen Register of Electronic Texts in Indian Languages and related Indological materials from Central and Southeast Asia)
http://gretil.sub.uni-goettingen.de/gretil.htm
ドイツのゲッティンゲン大学。ヒンドゥージャワ時代のジャワ語文献。

・Thesaurus of Indonesian Islamic Manuscripts
http://tiim.ppim.or.id/
インドネシアにあるイスラーム関連の写本約3000点のリスト。Center for the Study of Islam and Society, Syarif Hidayatullah State Islamic University。

・Lontar Foundation
https://library.lontar.org/
ロンタル・ファウンデーションが提供するデジタル資源。Lontar Foundation。

・Amadi Project (Ancient MAnuscript Digitation and Indexation)
http://amadi.unpad.ac.id/
インドネシアのパジャジャラン大学が提供するスンダ語写本に関するサイト。スンダ語は東部ジャワで使用されている言語で、ジャワ語とも関係が深い言語です。Universitas Padjadjaran。

・The Southeast Asia Digital Library (SEADL)
http://sea.lib.niu.edu/
アメリカのノーザン・イリノイ大学が提供する東南アジアに関するデジタル資源。Northern Illinois University。

2013年12月16日

2017年1月2日に「最新・ウェブページの引用の方法」を掲載しました。新しい情報を盛り込んだ説明をしているので、こちらの方もかならず参照してください。

2007年12月28日に「ウェブページの引用の方法」を書いて、ウェブ上の情報(オンラインの情報)を引用する方法について説明をおこないました。この時からすでに6年が経過し、状況も変わってきましたし、今まで以上にウェブ上の情報を引用する機会が増えています。

そこで、今回、あらたに「新・ウェブページの引用の方法」を書いて、現状に即した説明を試みたいと思います。とはいえ、ウェブの状況は日々変化しており、標準的な引用方法が確立しているわけではないので、ここに書いたことは、私自身への覚書という側面もあることをご了承ください。

まず、最初に確認したいことは、前の「ウェブページの引用の方法」で書いた原則は現在も変わっていないということです。それは、ウェブページの引用も基本的な考え方は書籍や論文といった紙版の文献の引用と変わらないということです。

しかし、ウェブページを扱う場合には、1)紙版のページに対応する概念がないので、引用の単位はファイルとなること(ただし、PDFのように紙版に対応した情報にはページという概念が存在します)、2)引用したあとでファイルの削除・変更が起こりうること、の2点に留意しておく必要があります。

1)に対応するために、引用にはURLを記録することが必要となります。URLはUniform Resource Locatorの略で、インターネット上のウェブページの位置を特定するためのアドレスのことです。

2)に対応するために、アクセスした日にちを記録することが必要となります。なお、ファイルの削除や変更に対する防衛手段として、ウェブページをプリントアウトしたりPDFにしたりして保存しておくことを勧めます。

以上をまとめると、ウェブページの引用には以下の要素を記録しておくことが必要となります。

  1. 文献を作成した主体の名称
  2. 文献が発表された年
  3. 文献の題名
  4. 文献の所在を示すURL
  5. 文献にアクセスした日にち

ウェブで提供されている情報は、大きく2つのタイプに分けることができます。それは、紙版の文献を電子化して提供するという形式をとっているタイプと、そもそも紙版がなくウェブ上でしが情報が存在しないタイプです。

前者のタイプの代表例として、雑誌を電子化したいわゆる電子ジャーナルと呼ばれるものや、官公庁が発表した報告の電子版などがあります。このタイプでは、文献を作成した主体の名称(著者や組織の名称)がはっきりしており、文献の発表年も記載されていることが一般的ですから、基本的に図書・論文の引用に準じた方法が使えます。前回の「ウェブページの引用の方法」では、主としてこのタイプのウェブページの引用方法について説明しましたが、日本語のページについての説明が欠けていたので、今回はこの点について説明することにします。

また、後者のタイプについては、紙版とは異なった工夫が必要となってきます(たとえば、上記の1, 2, 3が明示されていない場合があります)。前回の「ウェブページの引用の方法」ではこのタイプの引用方法の説明が欠けていたので、今回はこの点についても説明することにします。

この続きは、2017年1月2日に掲載した「最新・ウェブページの引用の方法」をご覧ください。

2013年11月25日

この記事は2007年10月24日に公開した「Youtubeの動画を入手し再生する方法」の改訂版です。

卒論の資料を集めるためにウェブを使うことは当たり前になりましたが、ウェブで収集できるデータの一つが、動画共有サービスYouTubeで提供されている動画です。

しかし、YouTubeの動画を見るためには、パソコンをネットに接続する必要があります。卒論の資料として使うには、自分のパソコンに動画ファイルをダウンロードして、いつでも再生できるようにしておきたいことも多いと思います。また、パワーポイントのスライドの中に動画を埋め込んで使いたいことも多いと思います。ここでは、そのための方法を簡単に紹介します。

まず、YouTubeの動画をダウンロードするためのソフトを入手します。現時点でのお薦めはFreemake Video Downloaderという無料のソフトです。freemake.comのページからダウンロードすることができます。日本語に対応していること、ダウンロードと同時に形式の変換もしてくれること、操作がシンプルであることなど使いやすいソフトです。ただし、インストールするときに、Amazon Browser BarやBaidu IMEをインストールしますかと尋ねてくるので、必要とする人以外は、チェックを外してからインストールしてください。

ソフトの準備ができたら起動させておきます。続いてYouTubeのサイトに行って、検索機能を使ってダウンロードしたい動画を探します。目当ての動画が見つかったら、「共有」をクリックしてその動画のURLを表示させます。URLをコピーして、Freemake Video Downloaderの「URLを貼り付ける」をクリックします。ダイアローグボックスが現れるので、「1. 品質を選択してください」と「2. アクションを選択してください」から一つずつボタンを選択し、「出力フォルダ」を確認して「ダウンロードおよび変換」のボタンをクリックします。

通常は、「1.品質」はデフォルトのままにし、「2.アクション」は「変換する>WMV」を選択しておくとよいでしょう。WMVはWindows Media Videoの略で、この形式のファイルだと簡単にパワーポイントのスライドに埋め込むことができます。ダウンロードと変換が終わったファイルをクリックすると動画が再生されるはずです。

パワーポイントのスライドに埋め込むためには、「Mediaクリップの挿入」をクリックし、挿入したいファイルを選択して、「OK」をクリックすると、スライドに埋め込まれます。

YouTubeにあるデータを使うときには、ウェブ上の他のデータと同様に、吟味して利用する必要があります。そのことに注意したうえで使うなら、動画というデータを使うための優れた手段となるでしょう。

2013年9月10日

このリストは、本学の《学生のための基本文献ガイド「TUFS-ビブリオ」》の一部として青山が作成したものです。「TUFS-ビブリオ」は、本学に進学したばかりの学生が、地域研究を自分で始めようとするときの初歩の案内となることを目指しています。「TUFS-ビブリオ」にはこのリストのPDF版が掲載されているのでプリントアウトするのに便利です。

リストの内容の一部は、以前に作った「インドネシアについて学ぶ本」とも重複していますので、そちらも参照してください。

2013年に作成したリストに2015年と2019年に追加しました。(最終更新日2018-07-05)

〈事典・工具書〉
1. 石井米雄・高谷好一・立本成文・土屋健治・池端雪浦(監修)『新版 東南アジアを知る事典』平凡社、2008年
飛躍的な変貌を遂げている東南アジアの状況を総覧するのに便利で信頼のおける事典。テーマ別の項目ガイドが付いているので参考にして欲しい。巻末の各国別の概論や年表、文献案内も便利だ。

2. 土屋健治・加藤剛・深見純生(編)『インドネシアの事典』同朋舎、1991年
インドネシアに特化した事典としては最良の事典。内容的にはやや古くなった部分(とくに政治・経済関連)もあるが、そこにさえ注意しておけば、有益な情報も多い。1994年に出た第2刷の利用を勧める。

〈入門・概説書〉
3. 今井昭夫(代表)・東京外国語大学東南アジア課程(編)『東南アジアを知るための50章』(エリア・スタディーズ129)明石書店、2014年
東京外国語大学の東南アジア課程教員が協力して作り上げた東南アジア入門書。東南アジアについて学ぶ1年生を対象にした「地域基礎」授業の実践に基づき、地理、歴史、宗教、社会、政治、経済、文学、言語などの切り口から東南アジアの全体像を理解することを目指している。

4. 村井吉敬・佐伯奈津子・間瀬朋子『現代インドネシアを知るための60章』(エリア・スタディーズ113)明石書店、2013年
自然、暮らし、文化・芸術、教育・宗教、政治、地域紛争とテロ、経済、開発、インドネシアと日本という9つの領域のもとに、最新かつ豊富な情報をコンパクトに盛り込んでいる。巻末のブックガイドもさらに深い理解のために有益だ。姉妹編として『インドネシアを知るための50章』もあるが、入門としては『60章』の方がバランスが取れている。

5. 宮崎恒二・山下晋司・伊藤眞(編)『アジア読本 インドネシア』河出書房新社、1993年
インドネシア世界へ、日々の暮らし、文化に触れる、国家と開発、インドネシアと日本という5つの領域のもとにテーマ別の解説をまとめている。「暮らしがわかるアジア読本」という副題のとおり、日常生活や伝統文化の記述が興味深い。

〈通史〉
6. 池端雪浦(編)『東南アジア史II 島嶼部』(世界各国史6)山川出版社、1999年
インドネシアが国家として独立したのは1945年のことである。とすれば、古代からのインドネシアの歴史は東南アジア全体の歴史の中で読み解かなければならない、ということが理解されよう。現時点で最良の東南アジア通史である。姉妹編である『東南アジア史I 大陸部』も読んで欲しい。

7. 宮本謙介『概説インドネシア経済史』(有斐閣選書)有斐閣、2003年
経済史と銘打っているが、ジャワを中心に社会状況にも目配りしたインドネシア通史として読める。とくに、独立前のオランダ植民地支配や、独立後のスハルト体制下の開発独裁を知るための入門として有益。

8. 増原綾子・他(編著)『入門 東南アジア現代政治史』福村出版、2010年
構成が東南アジア史の枠組みなので、インドネシアについての記述は分散しているが、記述を繋いで通して読むことで、独立以降から民主改革期を経てユドヨノ政権にいたるインドネシアの政治・経済の流れがよく理解できるように整理されている。

〈専論・研究書〉
9. 永積昭『インドネシア民族意識の形成』東京大学出版会、1980年
20世紀初頭のインドネシアにおける「我らインドネシア人」という意識の形成を描いた研究。エピソードも豊富で読みやすく、インドネシアにおけるナショナリズムを理解するための好著。

10. 後藤乾一・山崎 功『スカルノ―インドネシア「建国の父」と日本』(歴史文化ライブラリー117)吉川弘文館、2001年
スカルノの生涯はインドネシア建国の歴史であるとともに、日本とインドネシアの交渉の歴史の一コマでもある。本書は、日本側の史料も多く使って、スカルノが駆け抜けた時代を生き生きと描いている。

11. 小林寧子『インドネシア―展開するイスラーム』名古屋大学出版会、2008年
インドネシアのムスリムは国民の約9割、信徒数では世界最大であり、イスラームの理解なくしてインドネシアを理解することはできない。この本はインドネシアにおけるイスラームの展開を、初期から現在にいたるまで、実証的なデータに即して論じている。

12. 佐藤百合『経済大国インドネシア―21世紀の成長条件』(中公新書)中央公論社、2011年
1998年のスハルト権威主義体制の崩壊のあと、民主改革期の混乱を乗り越え、インドネシアは着実に経済成長を遂げており、日本企業の進出も著しい。本書は、人口ボーナス、民主主義的制度、経済テクノクラート、産業人といったいくつかの成長の条件を、豊富なデータを用いて明らかにしている。

13. 倉沢愛子・他(編著)『消費するインドネシア』慶應義塾大学出版会、2013年
経済成長にともなって都市中間層が台頭し、インドネシアは急速に消費社会へと変貌しつつある。本書は、そのようなインドネシア社会の今を、消費、商品化、大衆化というキーワードを使って複数の研究者が切り取っている。「コンビニ」、「フィスブック」といったコラムもあって興味深い。

14. マルバングン・ハルジョウィロゴ(著)、染谷臣道・宮崎恒二(訳)『ジャワ人の思考様式』めこん、1992年
多民族国家であるインドネシアの人口の中で、約4割の最大数を占めるのが、独自の言語、伝統、文化を持つジャワ民族である。本書はジャワ人の知識人が、ある時は批判的に、ある時は弁護的に、自分の文化であるジャワ文化の特徴と価値観を説明する「ジャワ人論」である。丁寧な注と解説をあわせて読むことで、インドネシアの多様な文化の一端を知る手掛かりとなるだろう。

15. プラムディヤ・アナンタ・トゥール(著)、押川典昭(訳)『人間の大地』(上・下2巻)めこん、1999年
プラムディヤはインドネシアを代表する作家(1925年~2006年)。彼の代表作であるこの長編小説は、オランダ植民地支配末期の社会における民族主義運動の胎動を、青年ミンケの人生を軸に描く。著者がスハルト政権期に政治犯として流刑されていたブル島で完成したブル島4部作の第1部にあたる。いずれも日本語に訳されているので、ぜひ読破して欲しい。

続きを読む ≫

2012年9月30日

プランバナン寺院の浮彫に描かれたラーマーヤナを理解するための文献・資料・ウェブ上のリソースの紹介をします。データは順次追加していく予定です(2017-01-06改訂)。
【お断り】ここで紹介している文献・資料等はラーマーヤナの浮彫の理解に資すると私が判断したものを挙げています。個々の文献・資料等の内容のすべての正確さを保証するものではありません。みなさんの判断でご利用ください。修正すべき点や追加すべき文献・資料等があればぜひお知らせください(ただし、掲載の是非はこちらに任せていただきます)。

■ラーマーヤナの浮彫に関するもっとも基本的な研究書です。オランダ語の原書の英訳で、新しい序論が付けられています。

Stutterheim, Willem. R?ma-Legends and R?ma-Reliefs in Indonesia. New Delhi: Indira Gandhi National Centre for the Arts, 1989.

■世界文化遺産に登録されたボロブドゥール寺院とプランバナン寺院を概説しています。

青山亨「ボロブドゥールとプランバナン」『季刊 文化遺産』5, 1998, p.14-21.

■インドネシアにおけるラーマーヤナの受容と展開を概観した論文です。

青山亨「インドネシアにおけるラーマ物語の受容と伝承」金子量重・坂田貞二・鈴木正崇(編)『ラーマーヤナの宇宙:伝承と民族造型』春秋社1998, p.140-164.

■書名には出てきませんが、後半にプランバナン寺院の紹介があり、小さいですがきれいに撮影された浮彫の写真も掲載されています。

伊東照司、田枝幹宏『ボロブドール遺跡めぐり』(とんぼの本)新潮社1992.

■インドネシアの古代宗教建築を建築学の立場から詳説した研究書です。プランバナンについても豊富な図版をつけて説明しています。

千原大五郎『インドネシア社寺建築史』日本放送協会1975.

ただし、チャンディAとチャンディBの名づけ方が現在の慣行とは逆になっていることに注意してください。この本のチャンディAは一般にチャンディB、チャンディBはチャンディAと呼ばれています。

■バッティが書いたサンスクリットのラーマーヤナ『バッティ・カーヴィヤ』は9世紀中頃に古ジャワ語に翻案されました。これが『ラーマーヤナ・カカウィン』です。翻訳ではなく翻案というのは、前半はかなり忠実な訳ですが、後半は自由な訳になっているからです。この作品は東南アジアで現存する最古の文学作品と呼んでもよいでしょう。古ジャワ語のテキストとあわせて英訳が出版されています。2015年に新しいテキストと英訳が出版され、今まで以上に原文に親しむことができるようになりました。

Soewito Santoso. Ramayana Kakawin. 3 vols. New Delhi: International Academy of Indian Culture. 1980.
Willem van der Molen.?R?m?ya?a: The Story of R?ma and S?t? in Old Javanese. Romanized Edition. Tokyo:?ILCAA, Tokyo University of Foreign Studies. 2015.
Stuart Robson.?The Old Javanese R?m?ya?a: A new English Translation with an Introduction and Notes.?Tokyo:?ILCAA, Tokyo University of Foreign Studies. 2015.

■ラーマーヤナの浮彫を理解するためには、現在のバリの文化を参考にすることができます。バリのヒンドゥー文化を知るための日本語の基本的な文献です。

吉田貞吾(監修)・河野亮仙・中村潔(編)『神々の島バリ:バリ=ヒンドゥーの儀礼と芸能』春秋社1994.


■ジャワ社会の「インド化」は同時にインド文化の「現地化」とも言えます。ラーマーヤナの浮彫とは直接には関係がありませんが、この現地化(localization)の考え方を提案した文献です。

Wolters, O.W. History, Culture and Region in Southeast Asian Perspectives. Rev. ed. Ithaca: Cornell University Southeast Asia Program Publications, 1999.

■世界文化遺産であるボロブドゥール寺院、プランバナン寺院およびラトゥ・ボコ遺跡は現在、観光公園となっています。公園の公式サイトです。

Borobudur, Prambanan & Ratu Boko.
http://www.borobudurpark.com/temple/prambananTemple

■インドネシアが大好きな方が個人で運営されているサイトです。ラーマーヤナの浮彫の写真を解説付きで見ることができます。

私の好きなインドネシア:ボロブドゥール、プランバナンとジャワの遺跡.
http://www.geocities.jp/indo_ka/candi/candi320.htm

■植民地期から現代までのオランダ人研究者によるプランバナン寺院についての研究を振り返る研究書です。編者による序論に続いて重要な研究論文の英訳(抄訳もあり)が集められています。
Jordaan, Roy E. ed., In Praise of Prambanan: Dutch Essays on the Loro Jonggrang Temple Complex. Leiden: KITLV Press, 1996.

■東南アジアのインド化について大きな見取り図を示すことを狙いとしています。

青山亨「インド化再考―東南アジアとインド文明との対話―」『総合文化研究』10, 2007, p.122-143.

■ラーマーヤナの浮彫など中部ジャワの寺院の浮彫に見られる奏楽舞踊の図を音楽人類学の視点から文責します。

由比邦子「中部ジャワの奏楽舞踊図浮彫に見る舞踊と音楽」『民族藝術』12, 1996, p.130-138.

■ラーマーヤナの伝統が現在のインドネシアにも脈々と受け継がれていることを明らかにする論文です。

小池まり子「インドネシアにおける国民文化の創成:中部ジャワとバリにおける舞踊劇スンドラタリ・ラマヤナを事例として」『言語・地域文化研究』15、2009、p.163-184.

■ラーマーヤナの浮彫に見られる人物の仕草や姿勢をインドの古典的な舞踊理論から読み解く試みです。

Levin, Cecelia. "The R?m?ya?a, R?makath? and Loro Jonggrang," in Narrative Sculpture and Literary Traditions in South and Southeast Asia, ed. Marijke J. Klokke (Leiden: Brill, 2000), 59-72.

2011年10月17日

東京外国語大学では多くの国々の大学と交流協定を結んでいます。オランダではライデン大学と協定をむすんでおり、継続的に学生の交流の実績があります。

ライデン大学は世界的にトップクラスの評価を受けている大学です。オランダの公用語はオランダ語ですが、大学では英語も広く使われています。

ウィキペディア「ライデン大学」
ライデン大学公式サイトの留学受入プログラム案内(英語)

ライデン大学では留学生の受け入れにあたって、次のいずれかの英語能力を要求しています。
IELTS Academic test: at least 6.5
TOEFL test: 570 (paper-based test), 230 (computer-based test) or 88 (internet-based test)

留学については留学生課が担当しています。毎年10月に「海外留学制度の手引き」を発行するとともに、派遣留学説明会を開催しているので、参加するといいでしょう。

詳しくは留学生課が出している留学情報のページを見てください。

2011年10月16日

学んだことがどれだけ身に付いたかをはかる方法の1つとして、民間でおこなわれている各種検定があります。インドネシアに関連する検定としては次のようなものがあります。内容をよく調べてみた上で、自分の関心とレベルにあったものがあれば挑戦してみるのもよいでしょう。

1. インドネシア語技能検定試験
日本インドネシア語検定協会がインドネシア共和国国家教育省国語研究所(Pusat Bahasa)と提携しておこなっているインドネシア語学技能の検定です。一番やさしいE級から最上級の特A級まであります。

2. インドネシア検定
ASEAN検定事務局がおこなっているASEAN検定シリーズの1つです。インドネシア検定ではインドネシアについての一般的知識が問われます。『インドネシア検定公式テキスト』も出版されています。

2011年9月22日

予備校の早稲田塾のウェブサイトで青山のゼミが紹介されました。東京外国語大学でインドネシアについて学ぼうとしている学生のみなさんは、この記事を読んでいただくと、東京外国語大学でインドネシアについて学ぶことはどういう雰囲気なのかわかっていただけると思います。参考にしてください。(2013-08-19。リンク先URLが変わったので修正しました。)

2010年12月 9日

卒論を書くときに一番お世話になるソフトはマイクロソフト社のWord(ワード)だと思います。このWordの使い方を説明した文章はたくさんありますが(このブログでもいくつか触れています)、実は、Wordを使い始める前に、まずやっておくと、あとあとの作業が効率的、効果的になる設定の変更があります。標準的な初期設定で満足することなく、Wordの飼いならしに挑戦してみてください。なお、変更の方法はWord 2007を対象としています。

【補足】Wordをもっと使いこなしたい人には、こちらの「Wordはなぜ思い通りにならないのか?」が参考になります。ぜひ読んでみてください。(更新 2018-06-28)

【変更のポイント】編集記号を常に表示させる。
【変更の目的】編集記号が表示されていると、タブ、スペース、改行など通常は見えないフォーマットが見えるようになり、作業が効率的になります。
【変更の方法】
1) 左上の「Officeボタン」をクリックしてメニューを表示する。
2) 右下の「Wordのオプション」を選択してメニューを表示する。
3) 左側から「表示」を選択し、「常に画面に表示する編集記号」の中から「すべての編集記号を表示する」にチェックを入れる。
4) 右下の「OK」をクリックする。

【変更のポイント】オートコレクトを無効にする。
【変更の目的】オートコレクトを無効にすると、Wordが勝手に文を書き換えたり、フォーマットを変えたりしなくなります。
【変更の方法】
1) 左上の「Officeボタン」をクリックしてメニューを表示する。
2) 右下の「Wordのオプション」を選択してメニューを表示する。
3) 左側から「文章校正」を選択し、「オートコレクトのオプション」をクリックしてメニューを表示する。
4) すべての設定のチェックをはずす。
5) 右下の「OK」をクリックする。
【補足】いったんすべてのオプションを無効にして使ってみて、必要性を感じたオプションだけを有効にするとよいでしょう。とくに英文を書く場合には、「入力オートフォーマット」の中の「左右の区別がない引用符を、区別がある引用符に変更する」に必ずチェックを入れておきましょう。

【変更のポイント】禁則文字のレベルを高くする。
【変更の目的】禁則文字のレベルを高くすると、小さな「っ」や「ゃ」が行頭に来ることがなくなり、見栄えがよくなります。
【変更の方法】
1) 左上の「Officeボタン」をクリックしてメニューを表示する。
2) 右下の「Wordのオプション」を選択してメニューを表示する。
3) 左側から「文字体裁」を選択し、「禁則文字のレベル」の中から「高レベル」にチェックを入れる。
4) 「文字体裁オプションの設定先」から「すべての新規文書」を選択する。
5) 右下の「OK」をクリックする。
【補足】「すべての新規文書」を選択することで、新しく文書を作成するたびに今回の設定が反映されます。

【変更のポイント】余白を変更する。
【変更の目的】標準では余白は35mmに設定されています。余白が大きすぎると感じる人は、毎回変えるよりも初期設定を変更しておくと作業がはかどります。
【変更の方法】
1) メニューの「ページレイアウト」から「ページ設定」(の右下の小さなアイコン)をクリックしてメニューを表示。
2) 「余白」を選択してメニューを表示する。
3) 上・下・左・右の余白を設定する。標準よりも余白を小さくしたいときは、25mmが適当。
4) 左下の「既定値に設定」をクリックし、「はい」をクリックする。
5) 右下の「OK」をクリックする。
【補足】「既定値に設定」を選択することで、新しく文書を作成するたびに今回の設定が反映されます。

2010年4月12日

ここでは文献を読んで作成するレジュメ(書評レジュメ)の基本を説明します。(最終更新2018-11-29)

書評レジュメの作成は、読んだ文献を卒論作成に使えるよう咀嚼するための作業として大切です。またレジュメの報告は発表と討論の技法を学ぶよい機会になります。

この書評レジュメの基本を書くにあたっては、河野哲也『レポート・論文の書き方』(第3版、慶應義塾大学出版会、2002年)のテキスト批評についての説明が役に立ちました。詳しく学びたい人は参考にしてください。

レジュメの構成要素
1. 授業名(担当教員名)
2. レジュメの対象にした文献の書誌情報(著者名『書名』(出版社名、発行年)ページ数、または、著者名「論文名」(『掲載雑誌名』巻号数、発行年月、ページ数、DOI)
3. 報告年月日
4. 報告者名(学籍番号)
5. レジュメ作成の意図
 (この文献から報告者は何を読み取ろうとしているか。【注】通常のレジュメでは不要だが、レジュメ作成の意図を意識化するため。)
6. 内容の紹介
 (構成と要旨。著者の問題設定と結論を押さえる。章立てに沿って要約する。キーワードを押さえる。)
7. 事実関係についての補足情報
 (用語の説明、事例の背景など。【注】必要な場合のみ。)
8. 内容についての報告者による論点
 (批判・疑問・評価。論文の構成、データの取り扱い、論理の展開、研究史上の位置づけなど。)
9. 参考文献
 (論点執筆に用いた文献をあげる。著者名『書名』(出版社名、発行年)ページ数、または、著者名「論文名」(『掲載雑誌名』巻号数、発行年月、ページ数)、著者名の五十音順とする。)。

レジュメ作成の注意
1. レジュメ本体はA4判1枚(裏表2ページ以内)におさめる。それ以上のデータがある場合には、参考資料として別扱いにする。
2. 必要に応じて見出し・数字をいれて分かりやすい構成にする。
3. 簡潔な文章を用いる。必要なら箇条書きを用いてもよい。
4. 著者の意見か報告者の意見かをはっきりと分ける。
5. 他の文献を参考にしたり、引用した場合は、かならず出典を明らかにする。
6. パソコン(ワード)で作成し、ファイルを保存しておく。

レジュメ使用の本番
1. 期日までに指導教員にファイルを送ってもらえれば、コピーを用意しておきます。そうでなければ、授業前に参加人数分のコピーを作成し、ゼミの冒頭に配付しておく。
2. ゼミで決められた紙のサイズを使用する(ここではA4判)。
3. 配付されたレジュメはバインダーに整理・保管し、ゼミに持参する。

2009年12月23日

2年生のみなさんは、2学期になると、3年次に所属するゼミを決めなければなりません。

3年次のゼミの大事な目標の一つは、4年次に卒業論文(または卒業研究、以下、卒論)を作成するための基本的な概念と技法を身につけることです(なお、もう一つの大事な目標は、対象となる地域―インドネシア―を理解することです)。

ここでは、とくに基本的と思われる概念と技法の概要を書き出しておきます。これらの概念と技法は以下のようにいくつかのグループにまとめることができます。(最終更新2021-02-06)

0. 論文とは何かの理解
卒論を作成するためには、論文とは何かを理解することが前提となります。一般に論文として必要な要素とされているのは次の4点です。

1. 「問い」:何らかの「問い」を提起している。
2. 「答え」:「問い」に対して、論理的に「答え」(結論)を出している。
3. 「理由」:「答え」を出すにあたって、「理由」を示している。
4. 「根拠」:「理由」を裏付けるための「根拠」(文献やデータなどの資料)を提示している。

卒論を書くにあたっては、まず、「問い」から「理由」を経て仮の「答え」に至る全体の見通しを立てる必要があります。これを「仮説」を立てると言います。仮説を立てるためには、上の4要素を意識しながら多くの関連文献を読むことが大切です。仮説をまず立ててみることで、仮説を支えるためにはどのような根拠をどのように集めるか、という次の具体的なステップが見えてきます。
【参考になる本】
・山田剛史・林創『大学生のためのリサーチリテラシー入門:研究のための8つの力』第3版(ミネルヴァ書房、2011年、とくにpp.110-111)(amazon

1. 発想にかかわる技法
卒論作成の全般にかかわる技法ですが、とくに、卒論のテーマを考え、具体的な構成を考えるときに、必要となります。この部分では、ロジカル・シンキング、クリティカル・シンキング、ブレーン・ストーミング、kJ法といった、発想法にかかわる技法が役にたちます。また、卒論のテーマは、「○○における□□ついて」といった体言止めにするよりも、「なぜ○○は□□か?」といった疑問形にする方が発展性があることも覚えておきましょう。

2. 論文の作成にかかわる技法
卒論という最終成果を作成するために、かならず身につけておくべき技法です。論文の構成も理解しておくべきことですが、加えて、1) 参考文献リストを書く方法、2) 「正しい引用」を行う方法、3)注の付け方の3点は絶対におさえておく必要があります。
【参考になるページ】
参考文献一覧の書き方
引用するときの出典表示の方法 引用の方法 最新・ウェブページの引用の方法
最新・卒論の注の付け方

【参考になる本】
・河野哲也『レポート・論文の書き方入門』第3版(慶應義塾大学出版会、2002年)(amazon
・石井一成『ゼロからわかる大学生のためのレポート・論文の書き方』(ナツメ社、2011年)(amazon
・白井利明・高橋一郎『よくわかる卒論の書き方』第2版(ミネルヴァ書房、2013年)(amazon

3. 論理的な日本語を書く技法
論文の作成にかかわる技法ですが、これだけの独立した技法と考えた方がいいでしょう。大きく分けると、1) 悪文でない日本語を書くという、文レベルの技法と、2) パラグラフ単位で文章を組み立てるという、文章レベルの技法に分けることができます。
【参考になるページ】
読みやすい文章を書くために 悪文と良文から学ぶロジカル・ライティング
パラグラフの重要性と書き方
【参考になる本】
・岩淵悦太郎『悪文』第3版(日本評論社、1979年)(amazon
・倉島保美『論理が伝わる「書く技術」(講談社、2012年)(amazon
・吉岡友治『シカゴ・スタイルに学ぶ論理的に考え、書く技術』(草思社、2015年)(amazon

4. データの収集にかかわる技法
卒論の材料の集め方にかかわる技法です。大きく分けると、1) 文献資料を集める方法と、2) フィールドワークによって資料を集める方法に分けることができます。文献資料は1次資料と2次資料にわけることができます。文献資料を集める最初の一歩は大学の附属図書館を活用することです。附属図書館のオンラインジャーナル・データベースも積極的に利用してください(学外からアクセスする方法)。フィールドワークには参与観察、聞き取り、アンケートなどの方法があります。実際には、研究のテーマによって必要となるデータの種類は変わってきますが、ほとんどの場合、複数の種類のデータを収集する必要があります。当然のことながら、先行研究に関わる文献の収集はどのような研究テーマでも必要となります。また、現地(インドネシア)に行かなければデータが入手できない研究テーマの場合は、現地に行く時期や予算、データの収集方法なども計画しておく必要があります。
【参考になるページ】
日本語の図書や雑誌論文を検索する
社会調査工房オンライン

【参考になる本】
・小笠原喜康『新版 大学生のためのレポート・論文術』(講談社、2009年)(amazon)
・佐藤郁哉『フィールドワーク―書を持って街へ出よう』増訂版(新曜社、2006年)(amazon
・波平恵美子『質的研究 Step by Step:すぐれた論文作成をめざして 第2版』(医学書院、2016年)(amazon
・森山和夫『社会調査法入門』 有斐閣ブックス(有斐閣、2003年(amazon

5. パソコンの使用にかかわる技法
卒論の作成にパソコンの使用は必須です。とくに、ワード(ワープロソフト)の使い方に慣れておくことは大切です。ワードにはたくさんの機能がありますが、タブ、インデント、スタイルシート、セクション、注などの機能を使いこなせるようになると作業がはかどります。また、データの保存・バックアップ・共有のためにクラウド・ストレージの活用を検討するとよいでしょう。ほかに、研究テーマによっては、エクセル(表計算ソフト)や画像処理ソフトを使う必要が生じることがあります。学生時代に身に付けておくと、卒業後も役にたつ技法です。
【参考になる本】
・田中幸夫『卒論執筆のためのWord活用術』(講談社、2012年)(amazon

6. データの分析にかかわる技法
これはデータの種類と性格によって異なります。さらに、データの種類と性格は、研究のテーマによって異なります。大学に歴史学、社会学、文化人類学といった学問分野が存在するのは、それぞれの研究テーマに特有のデータの種類と性格があり、データの特性に応じた分析方法が工夫されてきたという歴史的経緯に理由があります。したがって、この点についてはゼミだけではカバー仕切れないので、専門分野の授業でしっかりと学んでおくことが必要です。アンケートやインタビューのデータを処理する場合にも基本をしっかりと理解しておく必要があります。地域研究では、さらに地域の言語の習得と文化の理解という条件が加わります。

7. 研究倫理の理解
最後になりましたが、実は研究にあたって必ず踏まえておかなければならない大切な前提条件として研究倫理があります。とくに理解しておいて欲しいポイントは以下の2点です。
1) 個人情報を適切に取り扱うこと
「研究活動のために収集した資料、情報、データ等により得られた個人情報については、プライバシー保護の重要性を十分認識のうえ、適正に取り扱う」ことが求められています(本学の『研究活動に関する研究者行動規範』第8条より抜粋)。
2) ねつ造・改ざん・盗用を行わないこと
これらは、存在しないデータを勝手に作り上げること、データを自分の都合の良いように作り替えること、他人の意見やデータを出典を明示することなく利用して自分の意見やデータであるかのように記すことで、いずれも研究倫理に反する不正行為です。人文社会系の学生の皆さんの場合は、とくに「意図しない盗用」を避けるよう気をつけてください。「意図しない盗用」を避けるためにも上記の「正しい引用」を徹底することが大切です。あわせて本学の『剽窃・盗用防止ガイドライン』を必ず読んでおいてください。

2009年12月 3日

みなさん誰もが卒業論文を書くのに苦労していることと思います。論文の文章を書くコツはいろいろありますが、よい論文を書くことの前に、前提条件となっていることがあります。それは、「悪文を書かない」ということです。

悪文というのは、読んで意味がわからない文(センテンス)のことです。書いている本人は分かっているつもりでも、読んだ人には意味がわからない、わかりにくい、あるいは、誤解されてしまう文が悪文です。

悪文をさけるためには、同じ文を何度も読み返して、書き直すことが一番よいのですが、もう一つ効果的な方法は、他人の目を借りることです。ときどき先生、友人、家族などに文章を読んでもらうとよいと思います。

とはいっても、悪文にもいくつかのパターンがあるので、それを知っておくと、悪文をさけたり、悪文を直したりするときに役立つでしょう。ここでは、悪文をさけるための参考になるウェブサイトをあげておきます。
悪文
悪文ができる原因を6点に絞り込み、それぞれ用例をあげて説明しています。
文章教室
悪文をさけるための実践的な文章教室です。とくに第3回のパラレリズムの説明は有益です。

最後に、悪文を書かないようにするための最高の参考書として次の本をあげておきます。
岩淵 悦太郎『悪文 第3版』(日本評論社、1989)
20年前の本なのでさすがに用例は古くなっていますが、何度も改訂されて読まれている息の長い本です。この分野の古典と言ってもよいでしょう。

2009年10月10日

研究のテーマによっては美術関連の文献を探す必要がでてきます。たとえば、バティックについて調べるときには、展覧会・美術展のカタログを見ることが必要です。そういうときに役に立つのが、六本木にある国立新美術館アートライブラリーです。だれでも無料で所蔵資料を閲覧することができます。

資料の検索:
国立新美術館OPAC 国立新美術館の蔵書を検索
美術図書館横断検索(ALC) 国立新美術館を含めた8館10図書室の蔵書を横断検索
アートコモンズ(展覧会情報検索システム) 現在開催中の展覧会はもとより、すでに終了した展覧会、これから開催予定の展覧会の情報を検索

なお、検索一般に言えることですが、検索に使うキーワードには工夫が必要です。バティックについて検索するときには、「バティック」だけで検索するのではなく、「Batik」「更紗」「サラサ」「臈纈染め」「ろうけつ染め」などの同意語からも検索すると見つかる文献の数が増えます。ちなみに国立新美術館OPACで「更紗」を検索したところ13件のヒットがありました。活用してください。

2009年10月 8日

留学のメリットは、現地でインドネシアの言語や文化を学べること、そしてなによりも、インドネシア語を使ってたくさんの人と知り合えることです。毎年、多くのが学生がインドネシアに留学し、人生の大きなステップを歩んでいます。大学の授業でしっかりと基礎を身につけ、現地で思い切り力を伸ばしてください。(更新 2017-05-11)

留学の主な形態には、大学間交流協定にもとづき協定校に派遣される「派遣留学」と、協定に基づかないで個人的に協定校(または協定校と同等レベルと本学が認めた大学等)に留学する「休学留学」の二つがあります。

インドネシアの大学では、インドネシア大学ガジャマダ大学が協定校です。インドネシア大学ではBIPA、ガジャマダ大学ではINCULSと呼ばれる外国人留学生向けのインドネシア語コースが開設されています。なお、インドネシアの学期は2月と9月に始まること、ラマダン(断食月)の時期は事実上休講状態になることに注意してください。

留学については留学生課が担当しています。毎年10月に「海外留学制度の手引き」を発行するとともに、派遣留学説明会を開催しているので、参加するといいでしょう。

詳しくは大学ウェブサイトの留学情報のページを見てください。

こちらにはショートビジットによる短期留学や日本語パートナーズによる派遣事業についての情報ものっています。

インドネシアへの留学のページにも関連するウェブサイトへのリンクをまとめています。

2009年7月13日

卒論を書くときには、自分のテーマに関連した資料や先行研究を調べることが必要になります。ここでは、日本語で書かれた図書や雑誌論文を国立情報学研究所が提供するデータベースで検索する方法を紹介します。もっと詳しい探し方は東京外国語大学附属図書館のウェブページを参考にしてください。

図書を探すときにはWebcat Plusを使います。このデータベースでは「連想検索」と「一致検索」の2種類の検索方法を選ぶことができます。連想検索は「人間が、ひとつの言葉から無意識のうちにいくつもの関連する単語を思い浮かべるように、検索キーワードから関連性の高い単語を抽出し、それを含む図書をもれなく探し出す検索方法」で、一致検索は「探している図書が明確な場合、書名や著者などのキーワードを入力することで検索する方法」です。

Webcat Plusで読んでみたい図書が見つかったら、借り出します。Webcat Plusでは検索された図書がどこの図書館に所蔵されているかを知ることができます。東京外国語大学の図書館にある場合には、東京外国語大学附属図書館のOPACで検索して、借り出すことができます。東京外国語大学の図書館にない場合は、東京外国語大学附属図書館のILL(文献コピー・相互貸借)サービスを利用して、借り出すことができます(実費負担)。

雑誌論文を探すときにはCiNii(サイニイ)を使います。読んでみたい雑誌論文が見つかったら、上記と同様の方法で借り出したりコピーしたりすることができます(実費負担)。また、最近では、CiNiiからリンクをはって、そのままネット上で閲覧することができる雑誌論文も増えています。

最後に、効率よく見落としのない検索をおこなうためのコツをあげておきます。
・キーワードの同意語にも検索の範囲を広げてみてください。たとえば、イスラームについて調べる場合には、「イスラーム」のほかに「イスラム」「回教」「モハメット教」などの単語でも検索をしてみる。
・キーワードの上位概念、下位概念にも検索の範囲を広げてみてください。たとえば、インドネシアの文化について調べる場合には、「東南アジア」や「アジア」(上位概念)の文化に広げて検索したり、「ジャワ」や「バリ」(下位概念)の文化に絞って検索したりしてみてください。
・自分のテーマに関連する図書や雑誌論文が見つかったら、その図書や雑誌論文の著者がほかにどのような図書や雑誌論文を書いているか、探してみましょう。参考になる図書や雑誌論文を書いている可能性があります。
・自分のテーマに関連する雑誌論文が見つかったら、掲載している雑誌の他の号にどのような雑誌論文が掲載されているか、探してみましょう。参考になる雑誌論文が掲載されている可能性があります。
・自分のテーマに関連する図書や雑誌論文を入手したら、巻末の参考文献目録を調べてみましょう。参考になる図書や雑誌論文が載っている可能性があります。このやり方を繰り返すと、どんどん関連する文献が芋づる式に見つかっていくので、効率がいいです。

2009年7月 7日

ウェブは、資料収集の手段としては便利ですが、困るのはウェブページの保存の方法です。もちろんメニューの「ファイル」から「名前を付けて保存」を選べば保存できますが、意味のあるファイル名を考えて保存するのは手間ですし、いざ読み直したいときに、保存したたくさんのファイルの中から目的のファイルを探し出すのがまた一苦労です。こういった問題に悩んでいる人にお勧めなのがScrapBookです。

なお、ScrapBookはFirefoxにしか使えないので、以下、ブラウザとしてFirefoxを使うという前提で話をすすめます。

ScrapBookはFirefox用のアドオン(あとから追加する機能)です。標準のFirefoxには付いていませんから、まずAdd-ons for FirefoxのサイトのScrapBookのページに行き、ダウンロードをおこない、指示にしたがってインストールします。インストール後、メニューバーにScrapBookというメニューが現れていれば、ScrapBookを利用することができます。

ウェブページを保存するためには、ブラウザで保存したいページを開いている状態で、ScrapBookから「ページの取り込み」を選びます。これでScrapBookにページが保存されました。

保存されたページを読むためには、ScrapBookをクリックしてドロップメニューで表示させることもできますが、もっと便利なのは、ScrapBookから「サイドバーに表示」を選ぶ方法です。ブラウザの左側にサイドバーが表示され、保存されたすべてのウェブページが一覧で表示されます。

サイドバーにはウェブページのタイトルが表示されているので、何のページであるか一目瞭然です。サイドバー上のページタイトルをクリックすると、ブラウザの画面に、パソコンに保存されたページが表示されます(ちょっと目にはウェブ上のオリジナルのページと区別がつきませんが、URLがhttp://ではなくfile://から始まっているので区別がつきます)。

サイドバー内のページは順番を変えたり、タイトルを変更したりすることができますし、サイドバー内にフォルダを作ったり、区切りを入れたりできるので、大量のページでもわかりやすく整理することができます。

また、サイドバー内のページを右クリックして「プロパティー」を選ぶと、ページを保存した時間などの情報を表示させることができます。論文の参考文献目録では、ウェブページのアクセスページを表記することが必要なので、この機能はとても重宝します。

さらに、サイドバーの上にある検索機能を使って、保存されたすべてのウェブページに対して検索をかけることができるので、大量の保存されたウェブページから必要なページを探し出すことが容易にできます。

このように、ウェブページを保存・整理し、活用するための機能が充実しているのがScrapBookの特徴で、ウェブで情報収集するための必須のツールだと思います。

以上は、ScrapBookの基本的機能にすぎません。さらに詳しく知りたい人はScrapBookのウェブサイトにある機能の紹介を読んでください。

2009年7月 6日

まだ知らない土地や時代のことを知るためには映画はとても参考になります。もちろんまったく予備知識がないと理解できなかったり誤解したりすることもありますし、映画特有の脚色があるので現実そのものとして受け取ると誤ってしまうこともあります。それでも、映像と音声で未知の世界が描かれる映画は、インドネシアについて学ぶうえでの最良の教材といってよいでしょう。

ただ、残念ながらインドネシア映画は日本ではなかなか入手できませんし、教材として使うとなると、日本語か英語の字幕があること(インドネシア語専攻の学生だけでない授業ではとくに)、できれば授業時間内におさまること(できない場合は2回にわけるとか1.3倍速とかで対応する)、テーマが明確なこと(何のために見るのかを意識する)、制作年度や監督・出演者などの背景情報があることなどが条件となります。

ここでは、インドネシア映画とインドネシアを扱った外国語映画の中から、授業でも紹介している作品を中心に、インドネシアを学ぶうえでとくにお奨めの作品を紹介してみます。(DVD入手方法の情報はあくまでも参考です。DVDの購入と再生にあたっては自己責任でおこなってください。YouTubeの情報についても変更の可能性があります。)(最終更新2022年04月02日)

インドネシア映画をもっと探してみようという人はFilmarks(日本語)あるいはInternet Movie Database(英語)で探してみてください。ただし、データベースの内容の正確さについては注意が必要です。

なお、インドネシア映画の全体像については風間純子さんのインドネシアの映画の解説がよくまとまっていて参考になります。また、最近のヒット作としては『アリサン!』、『分かちあう愛』、『アヤアヤ・チンタ』などがありますが、これらについてはブログ『ジャカルタ深読み日記』のエントリー「インドネシア映画に見る愛と結婚」に興味深いコメントが出ています。

1. 青空はぼくの家
【原題】Langitku Rumahku (ぼくの空、ぼくの家)
【制作】インドネシア、スラムット・ラハルジョ・ジャロット監督、1989年、102分
【言語】インドネシア語、日本語字幕
【入手】NHKテレビ「アジア映画劇場」で放映されたものを録画
【内容】金持ちの子どもと貧困層の子どもの友情を描くロードムービー。
【視点】80年代後半のスハルト政権下における経済開発が生み出した社会の格差を批判している。
【補足】本編の前に映画評論家佐藤忠男氏の解説がある。

2. エリアナ、エリアナ
【原題】Eliana, Eliana
【制作】インドネシア、リリ・リザ監督、2002年、86分
【言語】インドネシア語、英語字幕
【入手】英語版DVD市販
【視聴】YouTube全編
【内容】西スマトラ州の田舎から大都会ジャカルタに出てきて働く若い女性エリアナのもとに母親が訪れ、故郷に戻るように訴える。ジャカルタでの一夜の出来事を追いながら、伝統と現代社会の葛藤の中で揺れ動くインドネシアの若い女性像を描く。
【視点】母と娘の関係を手持ちのデジタルビデオカメラによる臨場感あふれるドキュメンタリータッチの演出で描き、インドネシア映画界に革新をもたらした。
【補足】2002年シンガポール国際映画祭新人監督賞。2009年国際交流基金提供「アジア映画の巨匠たち」上映作品。

3. オペラ・ジャワ
【原題】Opera Jawa
【制作】インドネシア、ガリン・ヌグロホ監督、2006年、116分
【言語】ジャワ語、英語字幕
【入手】英語版DVD市販
【視聴】YouTube全編
【内容】叙事詩ラーマーヤナの物語を現代のジャワ農村を舞台に移し替え、全編をガムラン音楽を伴奏にした現代ジャワ舞踊で描く実験的なミュージカル映画。
【視点】ジャワの伝統であるラーマーヤナの物語を新鮮な解釈で映画化している。
【補足】2006年ウィーンNew Crowned Hope Festival招待作品。2007年シンガポール国際映画祭最優秀作品。映画のなかで使われている言語はジャワ語。
【参考】青山亨「映画『オペラ・ジャワ』に見るラーマーヤナの変容」『総合文化研究』13: 37-60, 2010.(PDFファイルにリンク)

4. 危険な年
【原題】The Year of Living Dangerously (危険に生きる年)
【制作】オーストラリア、ピーター・ウェアー監督、1982年、117分
【言語】英語、日本語字幕
【入手】日本版DVD市販
【視聴】YouTube予告編
【内容】オーストラリア人特派員(メル・ギブソン)を主人公にして1965年の9・30事件前夜の騒然としたインドネシアを描くドラマ。
【視点】原作はクリストファー・コッホによる同題の小説。オーストラリア人から見た視点であるが、スカルノ政権末期のインドネシアの雰囲気を良心的に再現している。
【補足】56回アカデミー助演女優賞受賞作品。ロケはフィリピン、オーストラリアでおこなっている。

5. 虹の兵士たち
【原題】Laskar Pelangi(虹の兵士たち)
【制作】インドネシア、リリ・リザ監督、2008年、125分
【言語】インドネシア語、英語字幕
【入手】インドネシア版DVD市販
【視聴】YouTube予告編
【内容】1974年、インドネシア西部のブリトゥン島が舞台。主要産業の錫採掘で賑わうが、豊かになった人々は一握りで、多くは資源の恩恵を受けられない貧困層の漁師や採掘労働者であった。廃校寸前の小学校にようやく入学した個性豊かな10人の子どもたちを、新人女性教師のムスリマは「虹の兵士たち」と名付けて、熱心に教育する。
【視点】2004年に発表されたアンドレア・ヒラタの同題の自伝的小説に基づいた作品で、インドネシアでは観客動員数450万人に達し、インドネシア映画史上最大のヒット作となった。同じスタッフによる続編Sang Pemimpiも制作された。エンドロールのメッセージでわかるように、教育による人間の成長の可能性を強く訴えている。
【補足】2009年第3回アジア映画大賞「最優秀作品賞」・「最優秀編集賞」ノミネート。2009年第59回ベルリン国際映画祭パノラマ部門出品 。

6. ビューティフル・デイズ
【原題】Ada Apa dengan Cinta? (チンタに何がおきたのか)
【制作】インドネシア、ルディ・スジャルウォ監督、2002年、112分
【言語】インドネシア語、日本語字幕
【入手】日本版DVD市販
【内容】ジャカルタで友情と恋愛のあいだで揺れ動く女子高生を描く青春映画
【視点】1998年以降の民主改革期におけるジャカルタ都市中間層の状況が生き生きと描かれている。
【補足】2002年公開時にインドネシア映画史上最大のヒット作になった。

7. マックス・ハーフェラール
【原題】Max Havelaar
【制作】オランダ、フォンス・ラーデマーケルス監督、1976年、161分
【言語】オランダ語・インドネシア語、英語字幕
【入手】オランダ版DVD市販(A-Film Home Entertainment)。DVDは Amazon.com (アメリカ)から購入可能です。
【視聴】YouTube全編
【内容】19世紀半ばのオランダ領東インド(現在のインドネシア)のジャワ島を舞台に、理想主義をいだく若い植民地行政官マックス・ハーフェラールの苦悩と挫折を描く。
【視点】原作は、エドゥアルド・ダウエス・デッケルがオランダ領東インドでの植民地官吏としての経験をもとに、ムルタトゥーリの筆名で1860年に発表した『マックス・ハーフェラール―もしくはオランダ商事会社のコーヒー競売』(Max Havelaar, of de koffieveilingen der Nederlandsche handelsmaatschappij)(日本語訳あり)。19世紀中頃の強制栽培制度が行われていた時期のインドネシアが活写されている。作品中に挿入された「サイジャとアディンダの物語」は独立した物語としても知られる。なお、原作者のエドゥアルド・ダウエス・デッケルはオランダの植民地統治の問題点を指摘してはいるものの、植民地支配そのものを否定しているわけではないことに注意しておきたい。
【補足】インドネシアでロケしており、自然風景の映像と音響がすばらしい。

8. レゴン
【原題】Legong: Dance of the Virgins
【制作】アメリカ、Henry de La Falaise監督、1930年、65分
【言語】サイレント ガムラン音楽付 英語による説明字幕
【入手】DVD市販(Milestone Films)。DVDはAmazon.com(アメリカ)から購入可能です。
【視聴】YouTube全編
【内容】バリの村の少女で踊り子のプトゥはガムラン演奏者の若者ニョンに恋するが、ニョンはプトゥの妹サプラックに魅かれる。現地ロケで描くロマンス。
【視点】バリの「エキゾチック」な文化にハリウッドの映画産業が関心を持ち始めた時代の産物である。「オリエンタリズム」的な関心がどのように映像化されているかが興味深い。
【情報】Internet Movie Database
【補足】バリでロケしており、1930年代のバリの映像資料としての意義がある。2原色テクニカラーによるカラー映画。Milestones版のDVDには特典映像が複数収録されている。

9. アクト・オブ・キリング
【原題】The Act of Killing
【制作】デンマーク・ノルウェー・イギリス合作、ジョシュア・オッペンハイマー監督、2012年、劇場公開版115分(ディレクターズ・カット版159分)
【言語】インドネシア語 英語字幕
【入手】DVD輸入盤(Amazon.co.jp、PAL、リージョン2)。Blu-ray輸入盤(Amazon.com、NTSC、リージョンA/1)
【視聴】YouTube予告編、YouTube全編
【内容】1965年の9月30日事件のあと、スハルト政権のもとでインドネシア共産党に関わったとされる人々の虐殺が行われた。スマトラのメダンで虐殺を実行したパンチャシラ青年団のメンバーへのインタビューと虐殺の再現劇で構成される異色のドキュメンタリー映画。
【視点】虐殺を行った「普通」の人々の心理に分け入り、なぜこのような虐殺をなしえたのかを明らかにしようとした点で重要。
【情報】Internet Movie Database
【補足】2013年第86回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞候補。続編として『ルック・オブ・サイレンス』が製作・公開されている。

10. ルック・オブ・サイレンス
【原題】The Look of Silence
【制作】デンマーク・フィンランド・インドネシア・ノルウェー・イギリス合作、ジョシュア・オッペンハイマー監督、2014年、103分
【言語】インドネシア語 日本語字幕
【入手】DVD(Amazon.co.jp、リージョン2)。Blu-ray(Amazon.com、リージョンA)
【視聴】YouTube全編
【内容】前作『アクト・オブ・キリング』に引き続いて、ジョシュア・オッペンハイマー監督が1965年の9月30日事件のあとに起こった虐殺の真相に迫るドキュメンタリー映画。今回は、虐殺された被害者の親族が視力検査の名目で加害者に対面し、加害者の本音を聞き出そうとする。
【視点】前作とは反対に被害者の視点から虐殺の本質を描き出そうとしている。前作と合わせて見て欲しい。
【情報】Internet Movie Database
【補足】2015年第88回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞候補。

11. チュッ・ニャ・ディン
【原題】Tjoet Nja' Dhien
【制作】インドネシア、エロス・ジャロット監督、1988年、170分
【言語】インドネシア語・オランダ語
【視聴】YouTube全編
【内容】19世紀末から20世紀初頭にかけて、アチェ戦争でアチェ側の指導者として命を賭してオランダ軍と戦った女性チュッ・ニャ・ディンの壮烈な姿を描く。反植民地闘争の一局面をインドネシア側の視点でリアルに描いている。
【視点】チュッ・ニャ・ディンは1964年にインドネシアの国家英雄に顕彰されている。
【情報】Internet Movie Database
【補足】原題は旧綴り。現在は新綴りでCut Nyak Dhienとも表記される。1989年カンヌ批評家週間で上映され主役クリスティン・ハキムの演技は高く評価された。

12. 人間の大地(ブミ・マヌシア)
【原題】Bumi Manusia(英語題名The Earth of Mankind
【制作】インドネシア、ハヌン・ブラマンティオ監督、2019年、181分
【言語】インドネシア語
【視聴】YouTube全編
【内容】原作はプラムディヤ・アナンタ・トゥルによる小説『人間の大地』(日本語訳はめこんから刊行)。19世紀末から20世紀初めのオランダの植民地下にあったジャワ島を舞台に、民族意識に目覚めるジャワ人の青年ミンケの遍歴と成長を描く。オランダ人植民地経営者とジャワ人の現地妻ニャイ・オントロソの間に生まれた娘アンネリースとの悲恋が一つの筋になっている。
【視点】倫理政策期のジャワ人上流階層とオランダ人支配層との関係がよく分かる。時代の雰囲気がよく再現されているところも見所。
【情報】Internet Movie Database

2009年7月 3日

現在のインドネシア語の綴り方は1972年に定められた正書法(Ejaan Yang Disempurnakan, EYD)に基づいています。古いインドネシア語のテキストを読む場合には、むろん古い正書法を理解しておく必要がありますが、実は現代のテキストを読む場合にも、古い正書法の基本を知っておかないと困る場合があります。それは、人名などの固有名詞のなかには、今でも古い正書法による旧綴りで表記されているものがあるからです。名前の綴りはそれだけその人のアイデンティティに結びついていると感じられるからでしょう。日本でもたとえば「澤」が「沢」になっても名前を書くときは「澤」と表記する人がいるのと似ています。

古い正書法はオランダ語の正書法を基本にしたものなので、私たちにはあまりなじみがない綴りがあり、つい勘違いしがちです。

以下に、旧綴りと現行の綴りの対照表をあげておきます。A→Bの左側が旧綴りで右側が現行の綴りです。つまり、テキストのなかの人名が旧綴りである場合、Aと書いてあればBに書き換えて読まなければならない、ということです。

j→y
dj→j
tj→c
nj→ny
sj→sy
ch→kh
oe→u
ie→i
ij→ei
次に人名の例をあげておきます。左側が旧綴りが使われている表記の例で、右側が現行の綴りに書き換えた表記です。
Atmadjaja→Atmajaya アトマジャヤ
Tjokroaminoto→Cokroaminoto チョクロアミノト
Alisjahbana→Alisyahbana アリシャバナ
Soekarno→Sukarno スカルノ
Bacharuddin Jusuf Habibie→Bakharuddin Yusuf Habibi バハルディン・ユスフ・ハビビ
Tien→Tin ティン(スハルト大統領夫人の愛称)
この表から、オバマ大統領のインドネシア人の継父Soetoroさんの名前がソエトロではなくストロであることがわかります。

続きを読む ≫

その2 書籍に含まれた論文の場合にもどる

文献目録には、以下の要素を以下の順番で記載します。
【書籍の場合】
著者名、書籍名、巻(もしあれば)、書籍の版(もしあれば)、出版地、出版社、出版年
【書籍に含まれた論文の場合】
著者名、論文名、掲載された書籍名、書籍の編者名、出版地、出版社、出版年
【雑誌に載せられた論文の場合】
著者名、論文名、雑誌名、巻、号、ページ、出版年

3. 雑誌に載せられた論文の場合
雑誌に掲載された論文の書誌情報は、著者名、論文名、雑誌名と雑誌についての情報という3つの大きな要素のかたまりから構成されています。雑誌(journal)は定期刊行物(periodical)なので、通例は巻(volulme)・号(number)という数字の情報があります。以下、各要素について書き方を説明します。

1. 著者名の書き方
書籍の場合と同じです。

【例】
Robson, Stuart.
Ras, J. J.
Reynolds, Craig J.
Ridho, Abu and E. Edwards McKinnon.

2. 論文名の書き方
書籍に含まれた論文の場合と同じです。

【例】
"The Panji Romance and W. H. Rasser's Analysis of its Theme."

3. 掲載された雑誌名の書き方
・雑誌名を書きます。最後には句読点を付けないで、続けてその他の情報を書きます。
・雑誌名には慣習による独特な表記があるので注意してください。
・雑誌名はイタリックにします。

【例】
Indonesia
Journal of the Malayan Branch of the Royal Asiatic Society
The Journal of Asian Studies

4. 巻、号、ページの書き方
・巻(volume)を書き、続いて、丸括弧開く(()を書き、号(number)を書いて、丸括弧閉じる())を書き、コンマで閉じます。続いて論文の最初のページと最後のページをpp. 101-124のような形で書いてコンマで閉じます。
・ページ数が不明な場合は省略してもかまいません。しかし、あとで論文を探すことを考えると、わかる限り記載しておくことを勧めます。
・雑誌によっては号しか表示しないもの、号の代わりに月を表示するものなどがあるので、工夫が必要です。
・巻、号の数字はアラビア数字で書きます。

【例】
12 (3),
13,
12 (3), pp. 87-104,
13, pp. 3-35,

5. 出版年の書き方
・書籍の場合と同じです。

【例】
1986.

以上をまとめると、次のような形になります。
【例】
Aung-Thwin, Michael. "The Myth of the 'Three Shan Brothers' and the Ava Period in Burmese History." The Journal of Asian Studies 55 (1), 1977.
Lieberman, Victor B. "Ethnic Politics in Eighteenth Century Burma." Modern Asian Studies 12 (3), 1978.
Kahin, George McT. "In Memoriam: Harry J. Benda." Indonesia 13, 1972.

その1 書籍の場合にもどる

文献目録には、以下の要素を以下の順番で記載します。
【書籍の場合】
著者名、書籍名、巻(もしあれば)、書籍の版(もしあれば)、出版地、出版社、出版年
【書籍に含まれた論文の場合】
著者名、論文名、掲載された書籍名、書籍の編者名、出版地、出版社、出版年
【雑誌に載せられた論文の場合】
著者名、論文名、雑誌名、巻、号、ページ、出版年

2. 書籍に含まれた論文の場合
書籍に含まれた論文の書誌情報は、著者名、論文名、掲載された書籍とその編者名、書籍についてのその他の情報という4つの大きな要素のかたまりから構成されています。以下、各要素について書き方を説明します。

1. 著者名の書き方
書籍の場合と同じです。

【例】
Robson, Stuart.
Ras, J. J.
Reynolds, Craig J.
Ridho, Abu and E. Edwards McKinnon.

2. 論文名の書き方
・論文名の前に二重引用符開く(“)を入れ、続いて論文名を書きこんだら、ピリオドで閉じ、最後に二重引用符閉じる(”)を書きます。パソコンで二重引用符を入力するのはいささかやっかいなので、入力方法の説明は省きます。入力が面倒なときはまっすぐな二重引用符(")を開くと閉じるの代用にしてもかまわないでしょう。ここでもまっすぐな二重引用符で表記します。念のために引用符のUnicodeを記しておきます:二重引用符開くU+201c、二重引用符閉じるU+201d、まっすぐな二重引用符U+0022。
・引用符閉じるの前にピリオドを入れるのはアメリカ英語の方式です。イギリス英語では引用符閉じるの後にピリオドを入れます。ここではアメリカ英語の方式にしたがっておきます。
・副題がある場合は、論文名のあとにコロンを入れ、そのあとに続けて書きます。
・論文名の各単語の頭文字は、名詞・形容詞・動詞などの主要な品詞であれば大文字にし、それ以外の前置詞・接続詞・冠詞・所有格の代名詞などの品詞であれば小文字にします。
・書籍名とはちがって論文名はイタリックにしません。

【例】
"Kinship, Geneological Claims, and Societal Integration in Ancient Khmer Society: An Interpretation."

3. 掲載された書籍名の書き方
・最初に前置詞Inを書き、そのあとに書籍名を書き、最後にコンマで閉じます。
・副題がある場合は、書籍名のあとにコロンを入れ、そのあとに続けて書きます。
・書籍名の各単語の頭文字は、名詞・形容詞・動詞などの主要な品詞であれば大文字にし、それ以外の前置詞・接続詞・冠詞・所有格の代名詞などの品詞であれば小文字にします。
・書籍名はイタリックにします。

【例】
In Looking in Odd Mirrors: The Java Sea,

4. 編者名の書き方
・最初にed.と書き、続いて編者名を通常の語順で書き、最後にピリオドで閉じます。ed.はedited byの略です。編者名は文献の見出しになっていないので、語順を転倒させてFamily Nameを最初に出す必要はありません。
・編者が複数いる場合には、第1編者と第2著者以降の名前の間には、A and B、A, B, and Cのように、英語の規則にしたがって、andとコンマを入れます。
・ただし、第2編者以降を省略することもできます。その場合には、第1編者名のあとにet al.と書きます。et al.はラテン語のet aliaの略で、and othersの意味です。
・ed.はedited byの略なので、編者が複数でもeds.にはしません。

【例】
ed. Charles Hirschman, Charles F. Keyes, and Karl Huttere.
ed. V. J. H. Houben et al.

5. 出版地と出版社の書き方
・書籍の場合と同じです。

【例】
Ithaca: Cornell University Press,
Singapore: Institute of Southeast Asian Studies,

5. 出版年の書き方
・書籍の場合と同じです。

【例】
1986.

以上をまとめると、次のような形になります。
【例】
Supomo, S. "The Image of Majaphait in Later Javanese Indonesian Writing." In Perceptions of the Past in Southeast Asia, ed. Anthony Reid and David Marr. Singapore: Heinemann Educational Books, 1979.

その3 雑誌に掲載された論文の場合
に続く


ここで文献目録というのは、論文の末尾に付けて論文の本文を補完する参考文献目録ではなく、あるテーマについての文献を集めた目録という意味で使っています。

文献目録を作成するときには、外国語の文献を記載することも必要になります。ここではラテン文字を使う英語の文献を例にとって基本的な書き方のルールを記しておきます。インドネシア語を含むほかの外国語の文献を記載するときの参考にもしてください。

書き方のルールにはいくつかのバリエーションがあります。ここでは東南アジア地域研究でよく使われているルールを参考にして、あえて細かなところにはこだらわず、最大公約数的な基本ルールを示しました。

全体的な注意として、ラテン文字で表記する場合には、欧文フォント(半角のフォント)を使用します。また、各要素およびコンマ、ピリオド、コロンなどの句読点のあとにはスペース(半角スペース)を入れます。なお、ピリオドはそこで一続きの要素に区切りがついたことを表すので、そのあとに続く要素の頭文字は原則として大文字にします。

文献目録には、以下の要素を以下の順番で記載します。
【書籍の場合】
著者名、書籍名、巻(もしあれば)、書籍の版(もしあれば)、出版地、出版社、出版年
【書籍に含まれた論文の場合】
著者名、論文名、掲載された書籍名、書籍の編者名、出版地、出版社、出版年
【雑誌に載せられた論文の場合】
著者名、論文名、雑誌名、巻、号、ページ、出版年

1. 書籍の場合
書籍の書誌情報は、著者名、書籍名、書籍についてのその他の情報という3つの大きな要素のかたまりから構成されています。以下、各要素について書き方を説明します。

1. 著者名の書き方
・Family Nameを最初に書いてコンマを入れ、そのあとにFamily Name以外の名前の要素を並べて書き、最後にピリオドで閉じます。
・名前の要素が頭文字である場合もあります。名前の要素を頭文字にするかどうかは著者の意志にゆだねられている部分ですから、原著の表記にしたがえばよいでしょう。頭文字である場合はピリオドで閉じます。上で、著者名の最後にピリオドを入れるように指示しましたが、頭文字のあとのピリオドのあとにさらにピリオドを重ねて入れる必要はありません。

【例】
Robson, Stuart.
Ras, J. J.
Reynolds, Craig J.

・Family Nameのあとのコンマは通常の名前の語順とは倒置していることを示す働きがあります。言語によって名前の表現が異なりますから気を付ける必要があります(ここでは触れません)。
・Family Nameを最初に出すのは、目録の中で文献の見出しとして使っているからです。したがって、複数の著者がいる場合には、第1著者の名前のFamily Nameは最初に書きますが、第2著者以降の名前は見出しにはなりませんから、通常の語順で書きます。第1著者の名前と第2著者以降の名前の間には、A and B、A, B, and Cのように、英語の規則にしたがって、andとコンマを入れます。

【例】
Ridho, Abu and E. Edwards McKinnon.

・著者名ではなく編者名であることを示すには、著者名のあとにコンマを入れ、そのあとにed.(一人の場合)またはeds.(複数の場合)を入れます。ed.とeds.はそれぞれeditor、editorsの略です。
Sahai, Sachchidanand, ed.
Reid, Anthony and David Marr, eds.

2. 書籍名の書き方
・書籍名を書き、最後にピリオドで閉じます。
・副題がある場合は、書籍名のあとにコロンを入れ、そのあとに続けて書きます。
・書籍名の各単語の頭文字は、名詞・形容詞・動詞などの主要な品詞であれば大文字にし、それ以外の前置詞・接続詞・冠詞・所有格の代名詞などの品詞であれば小文字にします。
・書籍名はイタリックにします。

【例】
Perceptions of the Past in Southeast Asia.
Looking in Odd Mirrors: The Java Sea.

3. 巻、版の書き方
・巻がある場合は、Vol. 1などと書いて、ピリオドで閉じます。Vol.はVolumeの略です。
・版がある場合は、Rev. ed.、2nd ed.などと書きます。Rev. ed.はRevised edition、2nd ed.はSecond editionの略です。Rev.の頭文字が大文字になるのは、直前の書籍名がピリオドで閉じられていることを前提としています。

【例】
The Suma Oriental of Tome Pires. Vol. 1
Prehispanic Source Materials for the Study of Philippine History. Rev. ed.

4. 出版地と出版社の書き方
・出版地は都市名を記載します。そのあとにコロンを書き、続いて出版社名を書き、コンマで閉じます。

【例】
Ithaca: Cornell University Press,
Singapore: Institute of Southeast Asian Studies,

5. 出版年の書き方
・出版年を西暦で書き、ピリオドで閉じます。4桁の西暦であれば省略せずに4桁で書きます。

【例】
1986.

以上をまとめると、次のような形になります。
【例】
Keeler, Ward. Javanese Shadow Puppets. Oxford: Oxford University Press, 1992.
Houben, V. J. H., H. M. J. Maier, and W. van der Molen, eds. Looking in Odd Mirrors: The Java Sea. Leiden: Vaggroep Talen en Culturen van Zuidoost-Azie en Oceanie,Rijksuniversiteit te Leiden, 1992.

その2 書籍に含まれた論文の場合に続く

2008年7月 7日

インドネシア語を学んで行く中で避けてとおれない言語を三つあげるとすれば、英語は別格として、オランダ語、アラビア語、サンスクリット語の3言語ははずせないでしょう。

サンスクリット語の語彙はジャワ語を通じて大量に入っていますし(agama, mulaなど)、ジャワ人の人名のほとんどがサンスクリット語起源の名前になっています(Suharto, Megawatiなど)。アラビア語の語彙はイスラーム関連のものが多いのは当然として(halal, salatなど)、日常的な語彙になったものも少なくありません(akhir, rakyatなど)。オランダ語の語彙は今では完全にインドネシア語化しているものがほとんどです(dinas, kantor, 接尾辞の-siなど)。このうちアラビア語も、アラビア語風に発音するのかインドネシア語風に発音するのか発音の仕方が揺れているものもありますが(rak-yatか、ra-kyatかなど)、インドネシア語学習者の頭を一番悩ませるのは、やはりオランダ語の読み方ではないかと思います。

インドネシアの歴史を学んでいるとオランダ語の用語や人名・地名などの固有名詞がたくさんでてきます。むろんインドネシアの歴史を研究するといった場合にはオランダ語をきちんと勉強する必要がありますが、そうでない人にとっては、とりあえずオランダ語をそれなりに発音する読み方の手引きが役に立つと思います。

その意味では、オランダ語をカタカナでどう表記するかを解説した以下の文献とウェブページは参考になると思います。勉強に役立ててください。

ジャック・スホルテン「ゴーダか?ハウダか?ガウダか?―オランダ語地名・人名の片仮名表記に関する一考察―」『日蘭学会会誌』第7巻第1号, pp.45-62, 1982年.(オランダ語を片仮名表記するにあたって考慮しなけらばならない問題を丁寧に解説しています。『日蘭学会会誌』は東京外国語大学の附属図書館にあります。)

友清理士「オランダ語の発音と人名・地名のカタカナ表記」 <http://www.h4.dion.ne.jp/~room4me/dutch/pron.htm>.(「オランダ史資料館」ウェブサイトの一部です。音声学の知見も交えてわかりやすく解説されています。)

『講談社オランダ語辞典』講談社, 1994年.(カタカナ表記はありませんが、見出し語には発音記号が表示されているので、上記の文献ではわからない一般語彙の読み方を調べることができます。巻末には簡単な文字と発音の解説がついています。)

オランダ語の学習書は日本語でも何冊か出ているので、自分で探してみてください。

続きを読む ≫

2008年1月 8日

この記事は2015-02-02に続いて2017-10-24に再び全面的に改訂しました。

論文は一般的に以下のように3つの部分から構成されています。

前部分(とびら、目次)
本体部分(本文)
後部分(付録、後注、参考文献目録)
  • 付録は必ずしも必要ではありません。
  • 脚注(footnote)を使う場合には、後注(endnote)は必要ではありません。

ここでは、前部分と本体部分に着目して、本体部分の最初のページを第1ページとしてページ番号を付ける方法を説明します。このようなページの付け方は書籍では一般的なやり方です。なお、この説明ではページ番号を付ける位置はフッターの中央としています。

目標とするイメージは下の図のようになります。

前部分(題目等と目次)にはローマ数字で、本体部分(本文)にはアラビア数字でページ番号を付けます。

  • 前部分には小文字のローマ数字、本体部分にはアラビア数字でページ番号をいれます。
  • 前部分の最初のページは「扉」と言い、題目・著者の氏名・提出年などの情報を記載します。扉にはページ番号を記載しませんが、ページ番号としては第1ページとしてはカウントします。
  • 本体部分の最初のページは、第1ページとしてカウントします。
  • 図には表示しませんでしたが、後部分にはアラビア数字でページ番号をいれます。後部分のページ番号は本体部分のページ番号を引き継ぎます。

それでは、最初に、前部分と本体部分の間にセクション区切りを挿入します。

まず、本体部分の最初に挿入ポインタを移動します。そして、メニューからページレイアウト>区切り>セクション区切り>次のページから開始を選びます。

これで、論文全体の構成は以下のようになったはずです。

前部分(とびら、目次)
===========セクション区切り===============
本体部分(本文)
後部分

次に、挿入ポインタが本体部分にあることを確認したら、メニューから挿入>ページ番号>ページの下部>番号のみ2(中央に配置)を選びます

次に、挿入ポインタがフッターにあることを確認したら、メニューからナビゲーション>前と同じヘッダー/フッターをクリックし、選択を解除します。

続いて、メニューからヘッダーとフッター>ページ番号>ページ番号の書式設定>連続番号>開始番号「1」を選び、OKをクリックします。

これで、本体部分の最初のページがアラビア数字で表示された第1ページになります。後に続くページが第2ページ、第3ページになっていることを確認してください。

今度は、前部分のページ番号を小文字のローマ数字に変えます。

前部分のフッターに挿入ポイントを移動して、メニューからヘッダーとフッター>ページ番号>ページ番号の書式設定>番号書式>「i, ii, iii...」を選び、OKをクリックします。

これで、前部分のページ番号が小文字のローマ数字になりました。

最後に、扉のページ番号を非表示にします。

挿入ポイントが前部分のフッターにあることを確認したら、メニューからヘッダーとフッター>フッター>フッターの編集>オプション>「先頭ページのみ別指定」にチェックをいれます。

これで、前部分の先頭ページ、つまり扉のページ番号が非表示になりました。

このように、MS Wordのセクションをうまく使いこなすことで、ページ番号を操作することができるようになります。ぜひ試してみてください。

このページの説明とあわせて「MS Wordで後注の位置を参考文献リストの前に配置したい」も参考にしてください。

2008年1月 6日

卒論の注の付け方:脚注と後注と題したエントリーで、後注を使うことを勧めました。また、後注の位置は次のようにすることを勧めました。

前部分(とびら、目次)
本体部分(本文)
後注部分
参考文献目録

ところが、MS Wordを使って後注をつけると、文章の一番最後、つまり参考文献目録の後に注が配置されてしまいます。ここでは、MS Wordのセクション区切りを活用して、注を本文の後、参考文献目録の前に配置する方法を説明します。

まず、すでに論文の作成が進行していて、論文の全体が以下のようになっていると想定します。

前部分(とびら、目次)
本体部分(本文)
参考文献目録
後注部分 <==MS Wordの注挿入機能で作成された部分

そこで、メニューから挿入>脚注>オプション>文末脚注のタブを開き、挿入する位置に「セクションの最後」を選んで、OKをクリック>もう一度OKをクリックします。

次に、本文の最後にカーソル(挿入ポインタ)を移動します。そして、メニューから挿入>改ページ>セクション区切りを開き、「次のページから開始」を選んでOKをクリックします。

これで、論文全体の構成は以下のようになったはずです。

前部分(とびら、目次)
本体部分(本文)
===========セクション区切り===============
後注部分
参考文献目録

参考文献目録は新しいページから始まっているはずです。

このあと、必要に応じて挿入>改ページ>「改ページ」を選んでOKをクリックすることによって、改ページを挿入して全体の構成を整えてください。

このページの説明とあわせて「MS Wordで本文の最初のページを第1ページにしたい」も参考にしてください。

2007年12月28日

2013年12月16日に「新・ウェブページの引用の方法」を掲載しました。新しい情報を盛り込んだ説明をしているので、こちらの方も参照してください。

卒論でオンライン上の情報を引用する機会も増えてきました。ここではオンライン上の情報の引用方法について説明します。なお、詳しくは池田光穂氏のオンライン文献の引用方法を参照してください。

ところで、オンライン上の情報には、ウェブで提供されている情報のほかに、独自のデータベースによって提供されている情報がありますが、ここではウェブで提供されている情報に限定します。また、ウェブ上の情報には、通常のウェブページ(拡張子がhtmlまたはhtmのファイル)の他にPDFやDOCなどの形式で提供されている情報がありますが、ここではウェブページに代表させて説明することにします。

ウェブページの引用も、考え方は図書・論文の引用と変わらないわけですが、ウェブ特有の注意点として、1) 紙版のページに対応する概念がないので、引用の単位はファイルとなること、2) 引用したあとでファイルの削除・変更が起こりうること、の2点に気を付けてください。1)に対応するために、引用にはURLを記録することが必要となります。また、2)に対応するために、アクセスした日にちを記録するとともに、ウェブページをプリントアウトして保存しておくことが必要になります(PDFで保存しておくのもよい方法です)。

以上をまとめると、ウェブページの引用には以下の要素を記録しておくことが必要となります。
1. 文献を作成した主体の名称
2. 文献が発表された年
3. 文献の題名
4. 文献の所在を示すURL
5. 文献にアクセスした日にち

次に気を付けて欲しいことは、ウェブで提供されている情報には、紙版が先にあってそれを電子化して提供するという形式をとっているタイプと、紙版がなくウェブ上の情報しか存在しないタイプがあることです。前者のタイプとしては、雑誌を電子化したいわゆる電子ジャーナルと呼ばれるものや、官公庁が発表した報告の電子版があります。これらについては、文献を作成した主体の名称(著者や組織の名称)がはっきりしており、文献の発表年も記載されていることが一般的ですから、基本的に図書・論文の引用に準じた方法が使えます。後者については、少し工夫が必要となってきます(たとえば、上記の1, 2, 3が明示されていない場合があります)。

【電子ジャーナルの場合】
論文の本文の中では以下の形で引用をおこないます。紙版の論文と基本は同じです。

(著者名 発表年)
参考文献目録は以下の形式で記載します。
著者名.発表年.「論文題名」『雑誌名』巻(号).<URL>(アクセス年月日).
英語の場合は
著者名.発表年."論文題名,"雑誌名(イタリックで表記する)巻(号).<URL>(アクセス年月日).

電子ジャーナルの例 (下の画像はクリックで全体表示)
webpage-01.jpg

この論文の引用は次のようになります。
卒論の本文中での引用方法

(Shell-Duncan and Herniund 2006)
参考文献目録の中の記載方法
Shell-Duncan, B. and Y. Herniund. 2006. "Are There 'Stages of Change' in the Practice of Female Genital Cutting?: Qualitative Research Findings from Senegal and The Gambia."African Journal of Reproductive Health 10(2).<http://www.bioline.org.br/request?rh06027>(2007年10月1日).
(注:論文題名をダブルの引用符でくくるので、論文題名の中の引用符はシングルの引用符に変えます。)

【官公庁の報告の場合】
論文の本文の中では以下の形で引用をおこないます。紙版の図書と基本は同じです。

(作成組織名 発表年)
参考文献目録は以下の形式で記載します。
作成組織名.発表年.『報告書題名』.<URL>(アクセス年月日).
英語の場合は
作成組織名.発表年.報告書題名(イタリックで表記する).<URL>(アクセス年月日).

官公庁の報告の例 (下の画像はクリックで全体表示)
webpage-02.jpg

この報告の引用は次のようになります。
論文の本文中での引用方法

(U.S. Department of State 2001)
参考文献目録の中の記載方法
U.S. Department of State. 2001. Egypt: Report on Female Genital Mutilation (FGM) or Female Genital Cutting (FGC). <http://www.state.gov/g/wi/rls/rep/crfgm/10096.htm>(2007年10月1日).
(注:官公庁の組織の場合は、省とか局とか委員会とか何層にもなっていることがあり複雑ですが、この例ではわかりやすさを優先して最上層の国務省にしました。)

2007年12月27日

MS Wordで注をつけるときに、気になることの一つは、勝手に境界線をつけてしまうことです。これを削除する方法はあるのですが、ちょっとわかりにくくなっています。以下のように操作してください。(更新 2018-01-07)

メニューから表示>下書きを選択します。

次に、テキストの本文にある脚注または文末脚注をどれか一つ選んでダブルクリックします。

すると画面の下に注の画面が現れます。そこにあるメニューから「境界線」の画面を選びます。画面に現れた境界線を選択し、キーボードのDeleteキーで削除します。「境界線」は2つあるので、同様の操作をもう1回繰り返します。下の図1を参考にしてください。


endnote-05.jpg
図1 「文末脚注の境界線」の画面を選び、画面上の境界線を選択して削除します。

以上で、注の境界線を削除することができます。

卒論を作成するとき、注をつけたい場合があります。注のつけ方には、脚注(footnote 各ページの下側につける注)と後注(endnote 尾注とも言い、本文全体の後ろにつける注)の2種類がありますが、このブログでは後注を使うことを勧めています。

MS Wordで注をつけるためには、メニューから挿入>脚注>文末脚注を選択>OKをクリックという操作をおこないます。

後注をWordでは「文末脚注」と表記しています。Endnoteの訳だと思いますが、紛らわしい訳です。

さて、ここでよく問題となるのは、デフォルト(初期設定)では注番号がローマ数字になってしまうことです。特別な理由がないかぎり注番号はアラビア数字を使うことをお勧めします。ローマ数字で表示された注番号をアラビア数字に変更するためには、以下の操作をおこないます。

メニューから挿入>脚注>オプション>文末脚注のタブを選択>番号書式からアラビア数字を選択>OKをクリック>もう一度OKをクリック

文末脚注の画面にある「挿入する位置」は「セクションの最後」を選んでおきます。これについては別のページで詳しく説明します。

それから、もう一点注意があります。この画面には「変更」のボタンがあるのでついそちらをクリックしたくなりますが、そちらは文末脚注から脚注へ変更するボタンなのでクリックしないでください。

下に操作画面をのせておきましたから、参考にしてください。

続きを読む ≫

2007年12月22日

卒論を作成するにあたっては引用はさけて通ることはできません。そこで、正しい引用の方法を知る必要があります。ここでは、3つの方法に分けて説明します。引用についてもっと知りたい人は、慶応大学KITIEの「引用について理解する」を読んでみてください(←これも引用の一つです)。(2018-05-24に【補足】に加筆をしました。)

1. 元の文章をそのまま引用する(短い場合)
引用する文章が短い場合には、元の文章をかぎカッコでくくって、自分の文章の流れを損なわないように挿入します。たとえば、

日本神話の一つのカテゴリーとして中世神話に注目した山本ひろ子によれば、中世神話を生み出した時代は本地垂迹説を旗印とする神道思想の変革期であり、その思想的潮流には「記紀神話の秩序を大きく逸脱した、新しい神話的な思考が醸成され」ていたとされる(山本 1998: 7)。つまり、本地垂迹説によって神々の位置づけが根本的に変化したために、神話世界の起点である創造神話の再構築が必要となった。その結果が中世神話の神話世界というわけである。

原文では「醸成される。」となっていますが、文章の流れを損なわないために、「醸成され」までを引用している点に注意してください。

2. 元の文章をそのまま引用する(長い場合)
引用する文章が長い場合には、元の文章を一つの固まり(ブロック)として扱い、本文からは前後1行あけ、本文よりも左右ともに狭めた形で挿入します(ワープロ・ソフトのインデントを使うと簡単に表現できます)。1.の場合と違って、かぎカッコは不要です。ただし、1.と同様に、自分の文章の流れは損なわないようにします。

日本神話の一つのカテゴリーとして中世神話に注目した山本ひろ子は、中世神話を生み出した時代は本地垂迹説に基づく神道思想の変革の時代であると述べたうえで、なぜ中世神話が開闢神話を新たに書き直したかについて、次のように述べている。
神々の変貌を旗印とする神信仰の刷新は、宇宙や神々の始原・その意味相を捉え返し、再創造するという、ロゴスの運動なしには成り立たない。そこに記紀神話の秩序を大きく逸脱した、新しい神話的な思考が醸成される。それゆえに神道書の多くは、世界の創造=天地開闢から語り起こされていったのである。(山本 1998: 7)

つまり、本地垂迹説によって神々の位置づけが根本的に変化したために、神話世界の起点である創造神話の再構築が必要となった。その結果が中世神話の神話世界というわけである。

引用する文章の途中や最後を省略したいときは「[中略]」や「[後略]」を使うことができます。

3. 自分のことばに書き直して引用する
引用する文章を自分のことばとして咀嚼して書く場合です。むろん、核となる主張・見解が引用元の著者の主張・見解であることが明らかになるように書くことが必要です。

中世神道の研究をおこなっている山本ひろ子(1998: 6-7)は、本地垂迹説の出現によって神々が仏や菩薩の化現とみなされるようになったため、このような宗教観を表現しかつ正当化するために、記紀の創造神話が新たに書き直されようになったと指摘している。

引用元の著者の主張(創造神話が新たに書き直された)と、それを引用するあなた自身の論述(山本は...と指摘している)が混乱しないよう、文の構造には十分な注意をはらってください。

【補足】この3番めの方法については「要約」または「参照」と呼ぶこともあります。また、自分のことばに書き直す点に着目して「パラフレーズ(言い換え)」と呼ぶこともあります。パラフレーズのコツについては「剽窃を避ける」が参考になります。いずれにしても、「引用」と同じように考えて取り扱うことがポイントです。

本文中に引用の出典を明記する
いずれの引用方法を使った場合でも、本文中に引用の出典を明記する必要があります。具体的には「引用するときの出典表示の方法」で説明しているので参照してください。

参考文献目録に引用した文献を記載する
当然のことですが、卒論の末尾の文献目録に引用した文献を記載することを忘れてはいけません。詳しくは「卒論の参考文献一覧の書き方」で説明しています。上の例では、引用した文献は1冊の図書ですから、次のようになります。

参考文献   山本ひろ子. 1998. 『中世神話』(岩波新書)岩波書店.

引用の方法の基本は以上です。正しい引用が自由にできるようなると、文章の表現も豊かになります。ぜひ習得してください。

2007年12月20日

インドネシア語を学ぶための本や辞書を紹介しています。参考にしてください。(更新 2017年9月27日)

注記:2007年にamazon.co.jpのリストマニア機能を使ってインドネシア語を学ぶためにというリストを作成しました。その後、2014年の時点でリストマニアのサービスが終了したため、内容をブログに移動しました。

ニューエクスプレス インドネシア語
"インドネシア語を学ぶ最初の入門書として一推し。"

インドネシア語のしくみ
インドネシア語のしくみ
"インドネシア語の仕組みを頭に入れるには最適。"

聴いて,話すための-インドネシア語基本単語2000
聴いて,話すための-インドネシア語基本単語2000
"初歩のレベルではまず2000語は覚えたい。インドネシア語の基本単語を覚えるには最適。"

こうすれば話せるCDインドネシア語
こうすれば話せるCDインドネシア語
"学べる表現と文法項目がわかりやすく整理されており、インドネシア語の初歩的入門書としてよくまとまっている。"
A Comprehensive Indonesian-English Dictionary
A Comprehensive Indonesian-English Dictionary
"英語でひくインドネシア語の辞書としては最新・最高。"
An Indonesian-English Dictionary
An Indonesian-English Dictionary
"CIEDが出るまでは英語によるインドネシア語辞書の定番。新語は無いが、例文が豊富なので基本語彙の理解には今でも使える。"
English Indonesian Dictionary
English Indonesian Dictionary
"英語・インドネシア語の辞書で使えるものは今でもこれしか無い。"
Tuttle Pocket Indonesian Dictionary: Indonesian-English English-Indonesian
Tuttle Pocket Indonesian Dictionary: Indonesian-English English-Indonesian
"旧版Kramer編のイ英・英イ辞書の改訂版。レイアウトが一新され使いやすくなった。コンパクトなインドネシア語辞書ならこの一冊。"
会話で覚えるインドネシア語555
会話で覚えるインドネシア語555
"「会話で覚える」とあるがやや高度。中級へステップアップするための例文集として最適。"
インドネシア語の入門 (<テキスト>)
インドネシア語の入門 (<テキスト>)
"版元品切れは残念。入門という題名だが、日本語による中級以上のインドネシア語解説書としては、これが最適。"
現代インドネシア語辞典
現代インドネシア語辞典
"日本語で使えるコンパクトなインドネシア語辞書。"
ビジネスインドネシア語
ビジネスインドネシア語
"観光・買い物を超えた使えるインドネシア語の入門として最適。"
森山式インドネシア語単語頻度順3535
森山式インドネシア語単語頻度順3535
"レベル別・頻度順という英語参考書では一般的な方式のインドネシア語版。例文があるのは◎。"
超入門 インドネシア語
超入門 インドネシア語
"1か月で基礎のマスターを目指す初心者用の入門書。"

amazon.co.jpのリストマニア機能を使ってインドネシアを知る本というリストを作成してみました。役に立つ本のリストに短いコメントを付けてあります。参考にしてください。

新しく、初年次の学生のために「インドネシア地域研究のための基本文献」のリストを作成しました。そちらも参考にしてください。(2013-09-10)

2007年12月10日

卒論を書くための資料として、本や雑誌(内の論文)のコピーを入手する必要がでてきます。安価な新刊書であれば自分で買ってしまうというのも一つの方法ですが、これだけでは、すべての資料を集めることはできません。そこで、図書館を利用することになります。東京外国語大学の附属図書館にない場合でも、附属図書館の文献複写サービスや相互貸借サービスを使えば、他の図書館にある本や雑誌を利用することができます。

入手の手順は以下のとおりです。


  1. 本や雑誌の正確な書誌情報(著者名、書名・雑誌名、論文名、出版社名、刊行年、巻・号、ページなど)をGeNiiで確認します。

  2. さらに、GeNiiで所蔵図書館を確認することができます。

  3. 書誌情報をメモして、附属図書館のカウンターに行き、申し込みをします。おおよそ2週間以内に、該当のコピー(文献複写サービス)または本自体(相互貸借サービス)が届きます。実費を支払ってください。

一例として、1990年に出版されたインドネシアの週刊誌Editorが日本の図書館にあるかどうかを調べてみます。

  1. GeNiiのポータル・サイトからWebcat Plusのページに行きます。

  2. 一致検索のページに行きます。

  3. タイトルの欄に「Editor」、出版年の欄に「1990」と入力し、図書のチェックを外し、雑誌のチェックを入れます。表示件数は「100」にしておきます。

  4. 検索をおこないます。

  5. ヒットした雑誌名の中から目的の雑誌を見つけ、雑誌名をクリックします。

  6. 書誌情報のページが表示されるので、メモをしておきます。

  7. 所蔵図書館のリンクをクリックします。

  8. 所蔵図書館一覧のページが表示されます。図書館の名前と巻号(通し年月次)を確認します。たとえば、
    3(42-52),4-6,7(1-39)<1990-1994>
    と表示されている場合、所蔵されている号の刊行期間は1990年から1994年までであること、3巻は42号から52号まで所蔵されていること、4巻から6巻まではすべての号が所蔵されていることを示しています。

2007年11月29日

Microsoft Wordを使ってレポートを書いたり、卒論を作成したりするときのティップをまとめておきました。下のリンクから資料をダウンロードしてください。

基本的には以下の2つのポイントが大事です。

1. レポートを作成するに先だって、まずレポートの構成を理解することが必要です。そのうえで、レポートの構成要素に応じた「段落書式」の設定(スタイルシートの作成)方法を習得してください。

2. 卒論を作成するときにも、まず卒論の構成を理解することが必要です。そのうえで、段落書式に加えて、セクションの設定方法を習得してください。

ファイルをダウンロード (PDF 131KB)

卒論作成の便宜をはかるために、卒論を書くためのWordファイルのひな形を用意しておきました。活用してください。

ファイルをダウンロード (DOC 25KB)

2007年11月15日

卒論で注を付けたい場合があると思います。注の付け方についての注意を述べておきます。

注には、本文で述べたことを補足する事柄を書きます。あくまでも補足ですから、本文だけで論旨がしっかりとわかるように書くことが鉄則です。ですから、絶対に書かなければならないことは、注にではなく本文に書き込むべきです。本文に書く必要はないが、本文の理解を助ける情報で、捨てるには惜しいものは注に書いてよいと思います。

注の書き方には、脚注(footnote)と後注(endnote)の2種類があります。脚注は本文中の注を付けたい部分と同じページの下部に注を配置する方式で、後注は本文全体の後ろ(参考文献目録の前)にすべての注をまとめて配置する方式です。脚注は注がすぐに探せるという点がメリットですが、本文を読む流れを止めるおそれもあります。後注は注を探す手間がかかりますが、本文に集中できる点がメリットです。

Wordを使うと、どちらの方式の注でも簡単に作れます。しかし、卒論を書く皆さんには、構造が明快な後注方式をお勧めします。とくに理由がないかぎり、後注にしてください。

後注を付けた場合には、卒論全体の構成は次のようになります。

前部分(とびら、目次)
本体部分(本文)
後注部分
参考文献目録
ところで、MS Wordの注挿入機能を利用している人も多いと思いますが、MS Wordで普通に後注を挿入すると、文章の一番最後、つまり、参考文献目録の後ろに配置されるという問題が生じます。この問題を回避し、後注を本文の後ろ、参考文献目録の前に配置するためには、MS Wordのセクション区切りを使います。具体的な方法については、別のエントリーで説明しますので、参考にしてください。

2007年11月 8日

本学では、卒業論文は大学生協でしてくれる簡易製本をおこなって提出することになっています。卒業研究の方はとくに指定はありません。しかし、中には本のような形で製本して仕上げたい人もいると思います。最近は、オンデマンド印刷で1部から印刷・製本してくれる業者もありますが、もっと簡単にする方法もあります。それは、丸善が出している製本キット製本工房を使う方法です。

この方法は、自分でプリンタを使って中身を両面印刷しておく必要があります。カラー写真を使った作品では、両面カラー印刷ができることが前提です。条件のあう人は利用を検討してみるといいでしょう。

詳しくは丸善の文具事務用品のページで紹介されています。

2007年10月30日

卒論を書く人の多くがMicroSoft社のWordを使うことと思います。卒業後も使う機会が多いソフトですから、ぜひ使いこなしてください。

Wordを使って卒論を書くときに、ぜひ知っておいて欲しい機能の一つがチェック・コメント機能です。卒論の原稿をメールの添付ファイルでやり取りし、原稿の修正の指示をしてもらうときに、大変に役に立つ機能です。

チェック・コメント機能を使うためには、Wordを立ち上げたら、まずメニューから表示>ツールバー>チェック・コメントを選択します。すると、下のようなアイコン(図の赤枠と青枠)が表示されます。

check-comment.png

赤枠の部分はチェック機能のアイコンです。左から「変更の履歴」「前の変更個所」「次の変更個所」「変更の承諾」「変更を元に戻す」を表します。

青枠の部分はコメント機能のアイコンです。左から「コメントの挿入」「コメントの編集」「前のコメント」「次のコメント」「コメントの削除」を表します。

本文には、チェックの結果とコメントが赤字で表示されています(緑枠の部分)。アンダーライン(下線)がついている文字は校閲者によって挿入された文字、ストライクアウト(線で削除)された文字は校閲者によって削除された文字、[TA]と表示された部分は校閲者のコメントを示しています(TAの部分は校閲者のイニシャルです)。

校閲者のチェックを受け入れる場合は、チェックの部分を選択して、「変更の承諾」をクリックします。承諾しないで元の文に戻すときは「変更を元に戻す」をクリックします。次のチェックの部分に移動するときは「次の変更個所」をクリックします。

複数のチェック部分を承諾するときは、文章全体を選択しておいてから、「変更の承諾」をクリックします。

コメントを読むときは[TA]をクリックします。コメントを削除するときは、コメントの部分を選択して、「コメントの削除」をクリックしてください。

最後に、文章にはマーカーで色を付けることができます。赤枠の右にあるマーカーのアイコンをクリックして色を選び、文章を選択すると色が付きます。色を消すときは、該当する文章を選択してから「なし」を選んでください。

しばらく使ってみるとすぐに慣れるはずです。ぜひ使いこなせるようになってください。

2007年10月26日

ウェブ上の情報収集の手段としてWikipediaを使う機会が増えています。Wikipediaの特徴は、誰でもいつでも匿名で記事の作成・編集ができる、という点にあります。これが、無料のオンライン百科事典として最大規模に成長した理由でしょう。しかし、まさにこの特徴ゆえに、Wikipediaの情報の利用にあたっては、注意を払う必要があります。それは、専門家の校閲がないために誤りが見過ごされる可能性があること、そして、故意の情報操作を受ける可能性があるということです。

2007年2月に報道された大学の試験で誤答続出の事件は、Wikipediaの記事に誤りがあった例ですが、Wikipediaにだけ頼った情報収集の危うさをはっきりと示していると思います。

Wikipediaの創始者であるジミー・ウェルズは、この問題に触れて、調査をおこなう学生は、Wikipediaを最終的な情報源とすべきではなく、調査の出発点と考えるべきだ、と明言してます。詳しくは、同氏が2007年3月に来日したときの質疑応答の記録を読んでみてください。

また、Wikipediaの記事に対して意図的な情報操作がおこなわれる場合があることも、今ではよく知られています。たとえば、アメリカでは2005年12月に社会的に話題となった事例があります。

結局のところ、Wikipediaの記事をそのまま情報源として使用するのではなく、あくまでも出発点として、さらに信頼できる情報源に遡っていくことが必要だと思います。Wikipediaの基本的な編集方針の一つとして「独自調査は載せない」というものがあります。その代わり、信頼できる情報源を載せることが指示されています。つまり、Wikipediaの記事は、すでにある資料に基づいて書かれていること、そして、その記事の出典を見ることによって、元の資料を辿ることができる、ということです。

ただし、ある情報がWikipediaにどのように掲載されているかと言うことを、ネット上でのその情報の取り扱われ方を示す事例として取り上げることは、ありうることだと思います。

いずれにせよ、Wikipediaの記事を参照または記事から引用した場合には、その旨を明記する必要があります。引用の仕方は、Wikipediaにある「ウィキペディアを引用する」が参考になります。

2007年10月24日

この記事の改訂版を2013年11月24日に公開しました。この記事の内容は古くなっているので、改訂版のページを参考にしてください。

卒論の資料を集めるためにウェブを使うことは当たり前になりましたが、ウェブで収集できるデータの一つとして最近新たに増加中なのが、YouTubeにあがっている動画です。YouTube日本語版も始まりました。

しかし、YouTubeの動画を見るためには、パソコンをネットに接続する必要があります。卒論の資料として使うには、自分のパソコンに動画ファイルをダウンロードして、いつでも再生できるようにしておきたいことも多いと思います。ここでは、そのための方法を簡単に紹介します。なお、紹介するソフトはWindows用に限定しました。さらに詳しい情報を知りたい人はYouTube Fanの解説ページをのぞいてみてください。

まず、YouTubeの動画をダウンロードするためのソフトを入手します。Vectorのサイトからフリーソフトをダウンロードすることができます。たとえば、以下のソフトがあります。

■ダウンローダー雨 夕立 レビューを読む

次に、YouTubeの動画を再生するためのソフトを入手します。YouTubeの動画にはFlash Videoというフォーマットが使われていますから、このフォーマットの動画ファイルが再生できるソフトが必要です。Flash Videoのファイルは拡張子が「.flv」になっています。こちらも、Vectorのサイトからフリーソフトをダウンロードすることができます。たとえば、以下のソフトがあります。

■FLVP 案内を読む

ソフトの準備ができたら、YouTubeのサイトに行って、ダウンロードしたい動画を探します。目当ての動画が見つかったら、そのURLを上記のソフトにドラッグ&ドロップして、動画ファイルをダウンロードします。ダウンロードが完了したら、そのファイルをクリックすれば、再生が始まるはずです。ファイル名はわかりやすい名前に変更しておくと、あとで整理しやすいです。

YouTubeにあるデータを使うときには、ウェブ上の他のデータと同様に、吟味して利用する必要があります。そのことに注意したうえで使うなら、今までに使えなかった動画というデータを使うための優れた手段となるでしょう。

蛇足になりますが、YouTubeのtubeはアメリカ英語でテレビのことです(ブラウン管を意味するcathode ray tubeのtubeに由来)。つまり、「あんたがテレビ」といったノリの名称で、もともとは、自作のビデオ作品をネットで発信するためのサイトとして考案されたものです。

卒論の資料を集める調査方法の一つとしてアンケートを使いたい場合も多いと思います。一見、簡単そうですが、実際は奥の深い調査方法です。質問の仕方一つで答えが変わってきますから、全体の設計が大切です。ウェブでも基本的なポイントを説明しているページがあるので目を通しておいてください。たとえば、以下のようなサイトが参考になると思います。

アンケートの作り方
これは大学での研究調査のためのアンケートの作り方を述べているので、卒論にアンケートを使うことを考えている学生には有益です。はじめに、アンケートとは仮説を検証するためのデータを収集する手段である、と説明されている点は重要です。

アンケート作成のコツ
こちらは社内アンケート作成のコツについて述べているサイトですが、具体例にそってわかりやすく書かれているので、質問文を作成するうえで参考になるところが多いでしょう。

2007年4月 9日

教室での語学勉強には予習・復習が基本ですが、それ補うためには、初級学習者の場合、1)語彙の充実、2)聴き取り能力の向上、の2点を中心に勉強してみるとよいと思います。以下に、参考になりそうな例をあげておきます。

  • 高殿良博・舟田京子『聴いて,話すための―インドネシア語基本単語2000』語研,1992(ISBN: 4876156573).
    使用頻度の高い基本単語がうまくまとめられています。初級学習者はまずこの本に収められた単語の習得を目標にするとよいでしょう。[Amazon.com]
  • 小笠原健二『会話で覚えるインドネシア語555』東洋書店,2003(ISBN: 4885954673).
    『基本単語2000』をおえた人はこの本に挑戦してみるとよいでしょう。基本的な語幹とその派生語の使い方が豊富な用例で説明されているので応用力がつきます。[Amazon.com]
  • BBC Indonesia.com.
    聴き取り能力をあげるには、いろいろな音源をたくさん聴くことが大事だと思います。その意味で使えるのは、インターネットで毎日聴けるBBCのインドネシア語ラジオ放送です。BBC Indonesia.comのページの右上にある「Listen to BBC Indonesia.com」をクリックしてみてください。一日に4回のニュース番組がありますが、お勧めは毎日ちがったテーマの特集(文化、芸術、教育、ビジネス、環境、法律、科学技術、健康、音楽など)がある「2200 GMT」の番組です。パソコン上で録音するフリーソフトもありますから、録音したファイルをMOに転送したり、CD-Rに焼いたりして、いつでもどこでも聴くといった使い方もできます。挑戦してみてください。[BBC Indonesia.com]
  • NHK Radio Japan Online
    インターネットで毎日聴けるインドネシア語のラジオ放送としてはNHK Radio Japan Onlineも使えます。国内のNHKの主要ニュースをインドネシア語で聞くことができますから、日本のできごとをインドネシア語でどう言えばよいのかを勉強するには最適の手段です。[NHK Radio Japan]

2007年3月18日

■インドネシア語の学習を目的としたサイト
Sanggar Bahasa Indonesia (http://homepage3.nifty.com/sanggar/newpage1.htm)
生きたインドネシア語表現集http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Gaien/9968/
■インドネシアへの留学に役立つサイト
インドネシア留学のためのホームページ http://homepage3.nifty.com/putri-A/
■インドネシア語でニュースを読んだり聞いたりできるサイト
BBC Indonesia.com http://www.bbc.co.uk/indonesian/
≫言わずとしれたBBCのサイト。右上のListen to bbcindonesia.comをクリックすると、インドネシア語によるニュースや特集番組を聞くことができます。下のBERITA INDONESIAの見出しをクリックすると、インドネシア語のニュースを読むことができます。
NHK Radio Japan Online http://www.nhk.or.jp/rj/on_demand/rj_channel_j/s_indonesian.html
≫こちらはNHKの海外放送のサイト。インドネシア語による日本のニュースを聞くことができます。
■検索のためのサイト
Google http://www.google.co.jp/
≫よく知られた検索サイトの定番。しかし、検索に使えるのはGoogleだけではありません。
GeNii http://ge.nii.ac.jp/genii/jsp/index.jsp
≫日本語の論文・書籍を検索するときに強力な助けになります。
Scirus http://www.scirus.com/
≫学術情報に特化した検索サイト。

2007年1月 2日

卒論で図や表をいれることも多いと思います。ここで図というのは、グラフ・地図・描画・写真などの総称です。一方、表というのは主として文字と数字から成るデータが罫線などによって区分されて規則的に配置されているもののことを言います。

図表を入れたときに忘れがちなことは、本文の中で図や表に対する参照をおこなうことです。せっかく入れた図表ですから、読者にしっかりと見てもらい、本文を理解してもらうために、図表への参照はかならず本文の中でおこなう癖をつけておきましょう。

図表への参照の仕方としては、次のような方法があります。

【例1】モンスーンの影響を受けるジャカルタでは1月頃に一年のなかでもっとも降水量の多い時期をむかえる(図1)。

【例2】表1から分かるように、モンスーンの影響を受けるジャカルタでは1月頃に一年のなかでもっとも降水量の多い時期をむかえる。

図表は、本文の中で図表に参照している部分の近く、通常はすぐ下に配置します。図表がとくに多い場合には、本文末の付録の部分にまとめることも可能です。

図のキャプションは図の下側に、表のキャプションは表の上側に付けるのが原則です。下の例を見てください(クリックすると拡大します)。
【例1】
diagram-sample.png
【例2】
table-sample.png

【初めにお読みください】このエントリーはもともと「卒論の本文の中で参照する方法」というタイトルでしたが、大幅に書き換え、「引用するときの出典表示の方法」というタイトルに改めました。(更新 2018-01-07)

引用の方法参考文献一覧の書き方は別のところで説明をしています。本文中の引用と論文末尾の参考文献一覧は対(つい)になっています。と言うよりは、論文の執筆のあたっては、本文中で他の文献を引用することがまず前提としてあり、それを補助する手段として参考文献一覧が存在すると言った方がよいでしょう。

参考文献を引用した場合、どの文献を典拠にしたのか、どの文献のどの部分を典拠にしたかを本文中で示す必要があります。このブログではその方法を「出典表示」と呼ぶことにします。

出典表示にはいくつかの方法がありますが、このエントリーでは、代表的な方法である著者名と刊行年を使った方法(英語ではAuthor-Date Styleと呼ぶ場合があります)を示しておきます。

この方法を用いる場合には、必ず論文末尾に参考文献一覧を載せておかなければなりません。つまり、引用という作業には、本文中での引用出典表示、論文末尾の参考文献一覧の3つがセットになるということです。これを引用の三位一体と名付けておくことにします。

たとえば、本文中で以下の(架空の)本の文章を典拠としたとしましょう。当然、この文献は参考文献一覧の中にはいっていなくてはなりません。

山田太郎. 1997. 『インドネシアにおけるイスラーム』白波書店.

本文の中でこの文献を引用した場合、以下のような方法で出典表示をおこなうことができます。【例1】【例3】【例4】では著者者の名前が本文の中に使われていますが、【例2】では本文中では使われておらず、あくまでも定説について述べている文献の一つという位置づけになっています。適当な方法を使い分けて使用してください。

【例1】山田(1997: 20-23)によると、20世紀初頭のインドネシアにおけるイスラーム近代主義には二つの潮流があったという。

【例2】20世紀初頭のインドネシアにおけるイスラーム近代主義には二つの潮流があったとされている(山田 1997: 20-23)。

【例3】20世紀初頭のインドネシアにおけるイスラーム近代主義について分析したものとしては山田(1997)などがある。

【例4】本節では、山田(1997)の研究を参考に、20世紀初頭のインドネシアにおけるイスラーム近代主義について概観してみたい。

出典表示は丸括弧でくくります。出典表示をおこなう位置は、【例1】【例3】【例4】のように本文中の著者名の直後か、【例2】のように本文の句読点の直前にするのが原則です。

参考にした文献全体を典拠とする場合は、【例3】【例4】のように(著者名+スペース+刊行年)とします。

(山田 1997)

文献の特定部分を典拠とする場合は、【例1】【例2】のように(著者名+刊行年+コロン+スペース+ページ数)とします。ページが複数の場合はハイフンでつなぎます。また、同じ本の複数の部分を典拠とする場合は、コンマで区切ります。

(山田 1997: 20-23)

(山田 1997: 20-23, 56-78)

著者名は原則として名字のみを表示します。ただし、同じ名字の著者が複数いる場合は個人名(下の名)まで付けて区別してください。

(山田太郎 1997: 20-23)

英数字およびコロン、ハイフン、コンマ、スペースは半角を用いてください。著者名と刊行年の間、コロンとコンマの後ろにはスペースを入れてください。

最後になりますが、AからBまでといった区間や範囲を表すときには、本来はハイフンではなくenダッシュ(-, Unicode U+2013)を用います。enダッシュというのは、長いダッシュ(いわゆるダッシュ)であるemダッシュ(--, Unicode U+2014)と区別される短いダッシュのことで、英語の論文では区別して使われています。ただ、ハイフンと見かけはほとんど変わらないので、日本語の論文ではハイフン(-, Unicode U+002D)で代用してもかまわないとかもしれません。

2006年11月16日

参考文献一覧は、卒論・卒研(以下、卒論)でもっとも大切な要素の一つです。参考文献一覧は、著者がどれだけの資料を利用して卒論を書いたかの証明でもあり、その卒論の内容の正確さを吟味するときの手がかりでもあり、その卒論を読んでさらに研究を進めたい人への道しるべとなるからです。

参考文献一覧には、卒論の本文中の引用と照応して、引用の典拠を示すための参考文献一覧と、あるテーマについて参考とすべき文献を集めた参考文献一覧の2種類があります。両者は微妙に異なりますが、ここでは卒論で使われる前者の書き方について説明します。

1. 文献の種類別の記載方法
参考文献の書き方は、細かく見ればそれだけで1冊の本になるほど、複雑ですが、基本にもどれば、次の3種類をおさえておけば、ほとんど間に合います。

1. 本まるごと
2. 論文集形式の本に収められた1つの論文
3. 雑誌に収められた1つの論文

1には、一人の著者が書いた本(単著)、複数の著者が書いた本(共著)、編者が編集した本などがあります。

2には、「論文集」と銘打っていなくても、『講座 東南アジア史』の中の一つの章だとか、『もっと知りたいインドネシア』の中の一つの章だとかが該当します。

3で雑誌というのは、定期刊行物(periodical)のことです。1と2が、ある決まった時点で刊行されるのに対して、定期刊行物は年に1回(年刊)、年に4回(季刊)、月に1回(月刊)といった風に、定期的に刊行されるという特徴があります。したがって、雑誌にはたいてい「巻」とか「号」といった番号がつきます。通例、1年間に複数回刊行される雑誌の場合、1年分をまとめて「巻」と呼び、そのなかの1部を「号」と呼びます。たとえば、35巻4号というのは、その雑誌が発刊してから35年目にはいってから4番目の号という意味である可能性が高いです。大学の紀要は(たいてい年刊の)雑誌に該当します。

1、2、3に共通していることは、いずれも、著者(または編者)の名前がはっきりしているという点にあります。この点で、新聞の記事などとは異なります。

卒論の参考文献では、各項目の最初は必ず、著者(編者)の氏名、出版年が最初に来ます。なぜなら、この二つの要素が見出しになって、配列されるからです。この後の要素は、1か2か3で異なります。

【1の場合】
中村廣治朗. 1997. 『イスラームと近代』(叢書 現代の宗教13)岩波書店.

佐藤百合・編. 2001. 『インドネシア資料データ―スハルト政権崩壊からメガワティ政権誕生まで―』アジア経済研究所.

【2の場合】
青山 亨. 2001. 「東ジャワの統一王権―アイルランガ政権からクディリ王国へ―」『東南アジア古代国家の成立と展開』(岩波講座 東南アジア史2)岩波書店. pp.141-167.

【3の場合】
青山 亨. 2004. 「インドネシアにおけるリベラル派イスラームの新思潮―ウリル・アブシャル・アブダラのコンバス紙論説をめぐって―」『東京外大 東南アジア学』9: 24-42.

最後の例は、9巻の24ページから42ページまでという意味です。9巻の2号なら「9(2):24-42」と表記します。

なお、同じ著書が同じ年に2つ以上の文献を出しているときは、年の部分を「2003a」「2003b」のようにアルファベットを付けて区別します。

2. 文献の配列方法
当然のことですが、文献一覧に載せる文献は一つではありません。本文で参照された文献を素早く見つけ出すためには文献の配列に工夫する必要があります。日本語の文献が中心の場合はあいうえお順で、英語やインドネシア語などの文献が中心の場合はアルファベット順で配列します。両者がまじっている場合には、二つに分けてください。

日本語の文献は、次の例のように、著者の苗字、著者が組織の場合は組織名の読み仮名のあいうえお順に配列します。同一著者の文献が複数ある場合は、出版年の古い順から新しい順に配列します。

アルフォンス・デュプロン 1992 『サンティヤゴ巡礼の世界』原書房でゅぷろんで配列(あるふぉんすではない)
日本観光協会 2006 『数字で見る観光―2006年度版』 創成社にほんかんこうきょうかいで配列
山下晋司編 1996 『観光人類学』新曜社やましたしんじで配列
以上、簡単ですが、基本的な用例ですから、参考にしてください。

最後になりましたが、参考文献一覧の書き方は、細部になると、自分で書き方を決める必要が出てくる場合があります。そのとき、大事なことは、一度決めた書き方は最初から最後まで変えないという、一貫性です。不明な点があれば、コメントをしてください。

卒論の本文の中で文献を参照する方法は別のページで説明しています。

2006年10月20日

パワーポイントによるプレゼンテーションができることは、今や大学生の基本的たしなみの一つと言ってよいでしょう。簡単なスライドの作り方とプレゼンテーションの仕方をまとめてみました。ワード文書を用意したので、下のリンクをクリックしてダウンロードしてください。


  • ワード文書のタイトル:PowerPointによるプレゼンテーションの基礎―基本からスライド作りのABCまで

  • ファイル名:powerpoint-basics.doc

  • ダウンロード:クリックしてダウンロードを始める


続きを読む ≫

          

カテゴリー

新規エントリーの投稿
[権限をもつユーザのみ]