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2020年7月16日

【4年次対象ゼミ】

今週は春学期最後の授業です。卒論作成に向けての研究計画および卒論の構成(何をどの順番で論じるか)と章立て(構成を具体的な章・節の見出しにしたもの)を全員に報告してもらいました。

今年は例年とちがってインドネシアでの現地調査ができないという特別な状況にあります。文献資料(ネットを含む)の利用や、ネットでのインタビュー、アンケートといった新しい方法の活用も試みてください。

大学からは、秋学期から対面授業とオンライン授業に加えて、少人数クラスについては対面授業も認めるという方針が出されていますが、最近の新型コロナウイルス感染拡大の状況をみると、人数の多いこのゼミについては、秋学期もとりあえずオンライン授業を続ける予定です。初回のゼミ(10月1日)には全員参加してもらいますが、そのあとは、数名ずつのローテーションで卒論指導を行う予定です。

ただし、12月最後のゼミ(12月24日)には、卒論提出直前最終報告会を全員参加でおこないます。(1月の卒論提出期日ではなく)この日が卒論提出日のつもりで執筆計画を立てておいてください。

それでは、秋学期の再会まで、健康に気を付けて実りのある夏学期を過ごしてください。

【3年次対象ゼミ】

今週は春学期最後の授業です。あらためて、現時点での卒論のテーマと夏学期の研究計画について全員に発表してもらいました。みなさんがそれぞれテーマを一歩絞り込み、具体的な計画を立てていることが確認できました。

今年の夏学期はインドネシアを訪問することができない特別な状況です。文献資料の収集をネットも活用してしっかりと進めてください。また、テーマに関わる基本的な文献(入門書、概説書などを含む)を読み込み、テーマ自体の理解を深めてください。

大学からは、秋学期から対面授業とオンライン授業に加えて、少人数クラスについては対面授業も認めるという方針が出されていますが、最近の新型コロナウイルス感染拡大の状況をみると、このゼミについては、秋学期もとりあえずオンライン授業を続ける予定です。秋学期の初回は10月1日です。

それでは、秋学期の再会まで、健康に気を付けて実りのある夏学期を過ごしてください。

2020年7月13日

【大学院】

This week is the last week of Spring Quarter. We watched an NHK TV documentary program entitled "Newly found Japanese propaganda films made in Java during World War Two"(NHK, 1989, 44 mins, Japanese title「発掘 幻の国策映画 日本軍政下のジャワ」). The program includes the following short films (titles in Indonesian and Japanese):

  • 1. 04:30. Kedatangan Perdana Menteri Tojo di Jawa/東條首相ジャワ来訪 (Prime Minister Tojo's arrival in Java)1943-07-06.
  • 2. 10:10. Taboengan Oeang Moe/チョキンシマショウ (貯金しましょう, Let's Save Money)
  • 3. 12:08. No title (showing scenes of 国民学校 and 東亜の良い子ども)
  • 4. 14:38. Perlombaan Bahasa Nippon (Djawa)/ニッポンゴキョオギカイ(日本語競技会, Japanese Speech Contest in Java)
  • 5. 17:00. Pemberian Pandji Kapada Tentara Pembela Tanah Air Djawa/ギュウグンダイダンキ (義勇軍大団旗, Granting the Flags of PETA; Defenders of the Homeland)1943-10
  • 6. 21:38. Romusha Kekayaan Bangsa/労務者 (Labourers are the Wealth of the Nation).
  • 7. 22:26. Oentoek Membangoenkan Asia Baru/新アジア建設 (Building New Asia)
  • 8. 28:30. Berdjoeang Mati-Matian/決戦敢闘 (Fight Tooth and Nail)
  • 9. 32:21. Tonari Gumi/隣組 (Neighborhood Association)1944-01
  • 10. 36:14. Perkenan Kemerdekaan Kepada Indonesia/東印度に将来独立を許容 (Japan Promised Indonesia Independence)1944-09-07
  • 11.40:30. No title (独立準備委員会設置の許可. Japan allowed the setting up of the Preparatory Committee for Indonesian Independence)1945-08-07

Some of the film footages were shown at Yamagata International Documentary Film Festival in 1997 under the heading Indonesia under Japanese Military Rule.

The films show the phases of the Japanese occupation of Java from the establishment of Japanese education, through the mobilization of workers (romusha, which we discussed in the last week's class), the organization of a voluntary army and Neighborhood Associations, to the final collapse.

The program points out underlying tensions in the Japanese occupation of Java, which include the Indonesian nationalists' apparent collaborative attitude toward the occupying Japanese, and Indonesian people's dissatisfaction at the Japanese occupation expressed in the 1945 PETA revolt in Blitar.

This concludes this quarters' class. The term paper assignment is due 9 August.

Wish you all the best.

2020年7月 9日

【4年次対象ゼミ】

今週はOYさんに、日本とインドネシアのナショナリズムの比較という卒論のテーマに関連して、「東京都知事選挙と行動する保守」というテーマで報告をしてもらいました。

7月5日に投開票された東京都知事選挙では、現職の小池百合子(無所属)が当選しましたが、この報告では、行動する保守を自認する桜井誠(日本第一党)が、前回の東京都知事選挙では11万票の得票であったのに対して、今回は17万票を得票したことを取り上げ、その増加は、古谷経衡の分析に基づき、行動する保守が広義の右翼から分離し、独自の投票行動を取ったためであると結論づけました。

報告のあと、日本とインドネシアのナショナリズムの比較という卒論の構想のなかに、この報告をどう位置付ければよいか議論をおこないました。その中で、現状のテーマはかなり間口が広いのでさらに絞り込む必要があることを確認しました。

また、インドネシアの初代大統領スカルノはナショナリストとは言えても保守派とは言えないことからわかるように、保守派とナショナリストの関係は、インドネシアと日本との間で、また、日本の中でも時代によって、異なることを確認しました。

この議論をもとに、保守、ナショナリズム、右翼といった概念と、それらと対になる革新、リベラル、左翼といった概念、そして両者の関係をじゅうぶんに理解して整理しておくことが必要であることを確認しました。

保守に関わる概念の整理という意味では以下の文献が入門用として参考になるでしょう。

  • 宇野重規『保守主義とは何か 反フランス革命から現代日本まで』(中央公論社、2016)(Amazon

次回は春学期最後のゼミになります。夏学期・秋学期にかけての卒論作成に向けての研究計画および(もし可能なら)卒論の構成(章立て)をまとめ、報告してもらう予定です。

【3年次対象ゼミ】

今週は、以下の文献の書評レジュメを提出してもらい、オランダ植民地期のバリの観光化と伝統の創造について議論しました。

  • 永淵康之「観光=植民地主義のたくらみ―1920年代のバリから」山下晋司編『観光人類学』(新曜社、1996)pp. 35-44.

最初に、1906年と1908年のオランダによるバリ侵攻とバリ王族のププタン(集団自決)の衝撃について検討しました。

続いて、1932年にバリを訪問したチャップリンのドキュメンタリー映画 Chaplin in Bali(2017年)の予告編を見て、ここに描かれた、当時の欧米人がバリに見出したもの(仕事と遊びが有機的に結びついた生き方、文明に汚染されていない自然な生き方)を検討しました。また、「悪魔の島」をはじめとするバリを舞台にした当時の映画がこのような見方を助長したことも確認しました。

このようなバリの文化と社会はけっして「自然に」できあがったものではなく、1908年にバリの最後の王国を破壊した後、オランダが意図的に作り上げ、観光地として整備してきた結果である(観光と植民地支配は表裏一体)というのが、この論文の論点であることを確認しました。

このことは、同時代のバタビアの状況(自動車と路面電車が走り洋服の人々が闊歩する街並み)と比較してみると、より明らかになります。

次回は春学期最後のゼミになります。現代段階での卒論テーマと夏学期・春学期に向けての研究計画について報告をしてもらう予定です。

2020年7月 6日

【大学院】

This week, we discuss the Second World War in Southeast Asia, based on Chapter 9 of Osborne's Southeast Asia: An Introductory History.

Some of the topics we discussed include:

  • What was the primary motivation of the Japanese invasion of Southeast Asia?
  • How did nationalists in Southeast Asia perceive the Japanese advancement into the region?
  • How different was the Japanese occupation of the French Indochina from the Japanese occupation in other parts of the region?
  • Why were ethnic Chinese in Malaya and Singapore treated more savagely by the Japanese compared with the Malay population?
  • How did the Japanese surrender affect the colonization of Southeast Asia?

To facilitate our understanding of the topics, we watched two versions of the recount of the Japanese construction of the "Death Railway" connecting Thailand and Burma: One is the Hollywood film "The Bridge on the River Kwai" (1957), and the other is a Malaysian documentary on a Tamil "romusha" survivor (2016).

We will conclude the last class of this semester next week by watching some of the Japanese war propaganda movies created in Java during World War II and discussing the Indonesian nationalists' activities during and after the war.

2020年7月 5日

【インドネシア語専攻で勉強する人のために】

東京外国語大学の附属図書館ではオンラインジャーナル・データベースを提供している。初めて使う人は、まず以下のリソースから試してみるとよいでしょう。

なお、学外からアクセスするときにはVPNサービスを利用する必要があります。VPNサービスの使い方については「附属図書館のオンラインジャーナル・データベースに学外からアクセスする方法」を読んでください。

  • CiNii 国内の学術雑誌の検索
  • J-STAGE 国内のオンラインジャーナルの検索
  • JapanKnowledge Lib 『岩波 世界人名大辞典』『東洋文庫』などの日本語の参考図書の検索
  • 聞蔵IIビジュアル(朝日新聞) 朝日新聞の記事の検索
  • JSTOR 英語の人文・社会科学分野の学術雑誌の検索
  • Gale eBooks 英語の参考図書の検索

【練習問題】

初めてオンラインジャーナル・データベースを使う人は、以下の練習をして、使い方に慣れてみてください。

1. 「ヴァルター・シュピース(Walter Spies)」の生涯について、日本語と英語の人名辞典を使って調べてみよう。⇒JapanKnowledge LibとGale eBooksを利用

2. 「ケチャ(kecak)」について、日本語と英語の事典で調べてみよう。⇒JapanKnowledge LibとGale eBooksを利用

3. 「ケチャ」が日本で知られるようになったのはいつ頃からか調べてみよう。⇒聞蔵IIビジュアル(朝日新聞)を利用

4. 「ケチャ(kecak)」が初めて使われた映画について日本語と英語の論文で調べてみよう。⇒CiNii、J-STAGE、JSTORを利用。

オンラインジャーナルに収録された論文や記事のうち、オープンアクセス(Open Access)になっているものはPDFファイルで提供されているので、その場でファイルを閲覧したり、自分のパソコンにダウンロードしたりすることができます。

オンラインのPDFの文献を保存する場合、自分のパソコンにダウンロードするだけではなく、クラウドのストレージに保存すると効率的です。いろいろなクラウド・ストレージがありますが、文献の整理という観点からはEvernoteというクラウド・ストレージが便利です。EvernoteのWebクリッパーをあらかじめインストールしておくとブラウザーで表示されている情報をその場でEvernoteに保存することができます。自分で工夫して活用してみてください。

また、PDFの文献を読むときは、検索機能(Windowsではコントロール+F、Macではコマンド+F)を使ってキーワードを見つけると効率的です。

2020年7月 2日

【4年次対象ゼミ】

今週は、IAさんに卒論のテーマである技能実習制度と特定技能制度について報告をしてもらいました。

今回は、制度を理解するという趣旨だったので、二つの制度、とりわけ、現在も主流となっている技能実習制度について説明がありました。

実習生の生活の実情に迫るためには、生活水準や賃金についてより具体的に調べることが必要だという意見をもらいました。

また、移民の受け入れという観点から考える場合には、ドイツとの比較が有効であろうという指摘もありました。ちなみに、ドイツ在住の外国人の割合は11.5%です。それに対して、2019年6月末の時点で日本にいる中長期在留者の数は251万1,567人で、それに特別永住者数31万7,849人を合わせると在留外国人の数は282万9,416人となります(法務省出入国在留管理庁)。これは人口の2.2%に過ぎないことに留意する必要があります。

テーマについてはさらに絞り込む必要があります。たとえば、インドネシア人の技能実習生にとって、インドネシアに帰国したのち、技能実習で学んだ技能がどれだけ役に立っているのか、あるいは立っていないのかについて、検討してみるとよいかもしれません。

次週は、OYさんに報告をしてもらう予定です。

【3年次対象ゼミ】

今週は、附属図書館のオンラインジャーナル・データベースを使って調べてもらった「ケチャ」と「ヴァルター・シュピース」の記事をもとに、ケチャについての理解を深めました。

現在、私たちが知っているケチャの始まりは1933年に公開されたドイツ映画「悪魔の島」の撮影がきっかけであり、その創造には、バリに住んでいたドイツ人芸術家ヴァルター・シュピース(Walter Spies)が深く関与していることを確認しました。ケチャの主要な要素としては、憑依儀礼サン・ヒャン(Sanghyang)の男声伴奏とラーマーヤナ(Ramayana)を演じる舞踊があることも確認しました。

「悪魔の島」についての基本情報は以下の通りです。

  • Insel der Dämonen(ドイツ版タイトル、イギリスではBlack Magic、アメリカではWayan: Son of a Witch)、監督Friedrich Dalsheim、白黒、78分(ドイツ版)、1933年公開、[IMDb]

当時は、それまでの無声から音声の付く映画が普及した頃で、海外ロケによるエキゾチックな題材が欧米の大衆の間で好評を博した時代でした。「悪魔の島」という題名には非キリスト教の信仰に対する西洋的な視点が含まれています。以下の論文が参考になります(JSTORで閲覧可能)。

  • Cohen, M. (2015). Representing Java and Bali in Popular Film, 1919-54: Sites of Performance, Extra-daily Bodies, Enduring Stories. In Legêne S., Purwanto B., & Nordholt H. (Eds.), Sites, Bodies and Stories: Imagining Indonesian History (pp. 132-156). SINGAPORE: NUS Press.

現在上演されているケチャでは、金色の小鹿が現れてラーマを森におびき出したあと、ラーヴァナがシーターを誘拐する場面を中心とするものが多いのですが(Youtubeの例)、かつては、猿のスグリーヴァとスバリの兄弟争いを描くものもあったことが分かります(Youtubeの例)。

次回は、以下の文献の書評レジュメをもとに議論を深めたいと思います。

  • 永淵康之「観光=植民地主義のたくらみ―1920年代のバリから」山下晋司編『観光人類学』(新曜社、1996)pp. 35-44

          

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