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3年次対象ゼミ

2020年1月16日

今週は今年度最後のゼミです。先週に続いて残りの5名の人に、卒論のテーマに関係する文献の書評の報告をしてもらいました。

  • 外川昌彦『宗教に抗する聖者:ヒンドゥー教とイスラームをめぐる「宗教」概念の再構築』2009、世界思想社.【リンク
  • 内海敦子「茨城県大洗町のインドネシア人 : 日系三世と「研修生」のケーススタディ」『明星大学研究紀要. 人文学部・日本文化学科』27 (2019): 106-87.リンク
  • 酒井理「日本におけるシェアリングビジネスの課題」『法政大学キャリアデザイン学部紀要』12 (2015): 117-132.【リンク
  • 合田美穂「東南アジア華人移民の歴史およびマレーシアとインドネシアにおける華人移民の適応パターン」『甲南女子大学研究紀要 人間科学編』41 (2004): 45-55.【リンク
  • 松野明久「インドネシアの排外主義 : 政治的な策謀がもたらす国民統合の危機」『未来共生学』2018 (5): 107-124.【リンク

書評の対象にした文献については、以下の情報を記載してください。

  • 雑誌論文または論集所収論文の場合:著者名、論文題名、雑誌名(または論集書名)、刊行年、巻号、ページ
  • 書籍の場合:著者名、書名、刊行年

茨城県大洗町のインドネシア人コミュニティについては、東京外国語大学に提出された以下の博士論文が参考になります。これは、東京外国語大学学術成果コレクションで閲覧することができます。

  • 吹原豊『移住労働者の日本語習得研究 : あるインドネシア人コミュニティでの調査から』博士論文、東京外国語大学2017年学位授与.【リンク

東南アジアの文化については、昨年刊行された信田敏宏編『東南アジア文化事典』(2019、丸善出版)が参考になります。通常の事典とはちがって、項目がカテゴリーごとに分類されて配列されており、各項目が2ページ見開きでしっかりと解説されています。みなさんの卒論のテーマに近いものをあげると、「東南アジアの華人」、「東南アジアの宗教」、「衣服」、「バティック」、「バリ州の文化的景観」、「在日インドネシア人」などがあります。パラパラと目を通すだけでも勉強になりますし、各項目にあげられた参考文献を通して理解を深めるきっかけにもなります。ぜひ手にとってみてください。

さて、今年度のゼミは今週で最後です。

先週と今週の報告をもとに、卒論の制作計画を立て、来年度の最初のゼミの時間に提出してください。また、以下の文献について書評jレジュメを作成し、同じく来年度の最初のゼミの時間に提出してください。

  • 青山亨「インドネシアの華人:同化からと統合へ」長谷部美佳・受田宏之・青山亨編『多文化社会読本 多様なる世界、多様なる日本』2016、東京外国語大学出版会、112-128.

また、ゼミでも紹介しましたが、3月28日(土)と29日(日)に東洋大学白山キャンパスでインドネシア研究懇話会(通称KAPAL「カバル」)の第2回研究大会が開催されます。関心のある人はぜひ参加してみてください。ボランティアも募集中です。詳細はカパルの公式ウェブサイトをご覧ください。

それでは、充実した冬学期を過ごしてください。4月にお会いしましょう。また、留学に行く人は実りある留学生活を過ごしてください。

2020年1月 9日

今年最初のゼミでした。年末に出した2つの課題である、Act of Killingのリポートと卒論のテーマに関係する文献の書評レジュメを提出してもらいました。

Act of Killingのリポートは、コメントを付けたものを全員に返却しました。お互いのリポートも読んで、一つの映像についていろいろな見方ができることを確かめてください。

そのあと、卒論のテーマに関係する文献の書評の報告をしてもらいました。今週は、3名の人にしてもらいました。残りの報告は来週してもらう予定です。

  • 白川俊介『ナショナリズムの力』2012、勁草書房.【リンク
  • 永野由紀子「インドネシア・バリ島におけるグローバル・ツーリズム下での移住者の増加と伝統的生活様式の解体―デンパサール近郊プガモン村の事例―」『山形大学紀要 社会科学』37, no.2 (2006): 161-208.【リンク
  • 服部美奈「在日インドネシア人ムスリム児童の宗教的価値形成:名古屋市における自助教育活動の事例から」『異文化コミュニケーション』19 (2007): 1-28.【リンク

来週は今学期最後の授業になります。卒論のテーマの絞り込みを進めてください。

【補足 2020-01-16】

在日インドネシア人ムスリム児童については、立川日本語・日本語教育研究所から2019年に刊行された『日本語文化の研究 別冊2 外国人児童生徒への日本語支援研究』が参考になるでしょう。

2019年12月19日

今週も前回に引き続き、223教室で映画Act of Killingのディレクターズ・カット版(ブルーレイ版)の残り30分ほどを鑑賞しました。

そのあと、映画の内容について議論をおこないました。アンワル・コンゴの嘔吐の場面は、抑圧されていた罪の意識(それが悪夢の形で続いていた)が、映画撮影のなかで被害者役を演じたことで、いっきに表面化し、後悔の念に変化したことを表しているとの指摘がありました。

また、滝の場面で、アンワルが、虐殺された人々から、天国に送ってくれてありがとうと感謝されるのは、アンワルによる自己正当化を表すとも解釈できるし、実は虐殺された人々は無実であった(だから天国に行ける)ことを暗示しているとも解釈できる、という指摘がありました。

いずれにしても、映画は(ドキュメンタリーであっても)撮影者の意図が反映されており、撮影の順番と実際の上映の潤場は必ずしも一致しないこと、場面と場面との間の出来事はカットされていること、場面と場面の配列は編集で操作されていることに留意することが確認されました。

これに関しては、ブルーレイ版には監督のコメントが付いているので、関心のある人は参照してみるとよいと助言しました。

今週の課題は2つあります。1つめは、Act of Killingを見ておこなった今日の議論での自分の発言を、A4判1枚程度にまとめて提出してください。締め切りは12月26日です。

2つめは、自分の卒論のテーマに関連する文献を1点読んで、その書評レジュメを作成してください。締め切りは来年の1月6日(月)です。いずれもメールの添付ファイルで提出してください。

それでは、今年のゼミはこれで最後です。次回は、1月9日になります。よい新年を迎えてください。

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2019年12月12日

今週も前回に引き続き、223教室で映画Act of Killingのディレクターズ・カット版(ブルーレイ版)を鑑賞しました。

まずはじめに、主要登場人物・組織についてまとめた資料をもとに前回を振り返ったあと、村を焼き払う場面を撮影する場面までを鑑賞しました。

次回も引き続き、223教室で残り約30分を鑑賞したあと、映画の内容について議論する予定です。準備をしておいてください。

2019年12月 5日

今週から映画Act of Killingのディレクターズ・カット版を2回にわたって鑑賞します。いつもの共同研究室ではなく、大型モニターのある223教室を使いました。

  • The Act of Killing. デンマーク・ノルウェー・イギリス合作、ジョシュア・オッペンハイマー監督、2012年、劇場公開版115分(ディレクターズ・カット版159分). インドネシア語・英語字幕

最初に、映画の資料を使って、映画を見る視点を確認しました。今日は、1時間9分の場面まで鑑賞しました。鑑賞後に、映画を見ての気づきや疑問を書き留めたレスポンスシートを提出してもらいました。

登場人物についてはInternet Movie Databaseにリストがあります。参考にしてください。

次回は、今週と同じく223教室で続きを鑑賞します。

2019年11月28日

今週は、Act of Killingを見るための準備として、以下の論文を読んで書評レジュメを作成し報告してもらいました。

9.30事件の発生にいたるまでの経緯を整理するのに時間を割きました。オランダ植民地時代のインドネシア民族主義と共産主義の特色、オランダとの独立戦争におけるインドネシア国軍の立場、独立後のイスラームの位置づけをそれぞれ確認したあと、それらとのスカルノの関係、スハルトの関係を確認しました。

また、9.30事件のあとに起こった住民虐殺については、地域によって要因と経緯が異なることを確認しました。

次回からは、映画『Act of Killing』を見る予定です。

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2019年11月14日

今週は、先週のゼミで書評レジュメを発表してもらった、青山の未定稿「地震は神の徴か?イスラームの信仰と災害」を「解体」してみました。

一つ一つの章、パラグラフごとに取り上げられているトピックを確認し、次に、トピックとトピックがつなぐ論理の筋道を検討してみました。読み手の知識を想定して書くこと、一般的な知識から特殊な知識に絞り込むこと、一つのトピックについては結論・理由・根拠・結論というパターンでまとめること、などのポイントにも触れることができました。この作業を通じて、論文らしい文章の構成について、理解が深まったとしたら、今週のゼミは目的を達っしたことになります。

来週は外語祭のためお休みなので、次回のゼミは11月28日になります。Act of Killingを見るための準備として、以下の論文を読んで書評レジュメを作成し報告してもらいます。

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2019年11月 7日

今週は、提示しておいた課題について報告してもらいました。

最初に、EvernoteとDropboxを使った経験について報告してもらいました。以下、このときに出た質問への回答です。

  • ウェブページがうまくEvernoteに保存できない場合には、「印刷」から「PDFで保存」し、PDFのファイルをEvernoteに保存することで解決します。。
  • 「ダウンロード」フォルダにEvernote読み込み用のフォルダを作っておき、Evernoteアプリの「ツール」から「インポートフォルダ」として選んでおくと、このフォルダにダウンロードしたファイルは自動的にEvernoteに保存されます(同期に時間がかかる場合があります)。
  • ローカル上にDropboxのファイルを残しておきたくない(クラウドのDropboxのみにファイルを置きたい)場合は、非同期フォルダを作成することで解決します。詳しくは「Dropboxでローカルのファイルと同期させない「非同期フォルダ」を作る方法」を参照してください。

続いて、青山の未定稿「地震は神の徴か?イスラームの信仰と災害」の書評レジュメを報告してもらいました。信仰者にとって地震を初めとする天災が神の意思によって起こるのであれば、人間は天災に対してどのように向き合えばよいのか?という課題が提起されます。人の信仰を否定することはできないので、信仰を認めたうえでの防災(教育)のあり方を検討しました。地震についての科学的説明と信仰的説明は必ずしも二律背反するものではないことを確認しました。

次回は、この論文を「解体」してもらいます。この論文を構成している「部分」に分解し、それぞれの「部分」が前後の部分とどのような論理的な関係でつながっているのかを分析した結果を発表してください。また、次の書評レジュメの対象とする論文について別途お知らせします。

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2019年10月24日

今週は、最初に、先週名古屋でおこなった合同ゼミの振り返りをしました。

東京外国語大学は分担して材料を集めたうえで、チームとしてまとめることができた点がよかったと思います。また、先週の予行演習の指摘が本番で生かされていました。他大学のよかった点としてあげられたのは:

  • 実際にインドネシアに行ってインタビューやアンケートで得られたデータを使った発表は説得力があった。
  • スライドのデザインが一貫していて印象が良かった。
  • 大学ごとの発表のあとに、所属大学を混ぜた小グループに分かれて意見を出したうえで、全体討論に持ち込むという議事進行は意見をしっかりと出せたのでよかった。
  • 小グループでの意見交換を座らずに立ったまましたのも、効率的でよかった。

また、全体の反省として、最後の全体討論にもっと時間をかけられた良かったという意見がありました。ぜひ、来年の3年生にもこの経験を伝えてもらえればと思います。

このあと、前回発表できなかった4名に卒論テーマを発表してもらいました。

KSさんは棚田を中心としたバリのエコツーリズム、Hさんは在日インドネシア人の子どもの教育にある課題、Wさんはインドネシアの公認宗教制度の歴史的経緯、Oさんは映画Act of Killingを見て日本のナショナリズムとインドネシアのナショナリズムの違いを考えてみたい、ということでした。

なお発表の中でAct of Killingを見てみたいという意見が多く出たので、このゼミの時間で鑑賞の場を設けることにします。

今学期の終わりまでには、具体的な研究テーマと研究計画を確定し、発表できるようにしてください。

残った大学のオンラインジャーナルデータベースを使った資料収集と整理の方法について説明しました。日本語文献ではCiNii、英語文献ではJSTORによる文献検索を紹介しました。また、ネットで得られたPDF文献の保存と整理の方法としてEvernoteが便利であることを紹介しました。ベーシックプランは無料です。さらに、ブラウザにEvernoteの拡張機能を入れておくと、ブラウザの画面から直接Evernoteに保存することができます。今回は紹介する時間がありませんでしたが、Dropboxは自分が作成したファイルを保存・共有するためには便利なサービスです。ベーシックプランは無料です。

来週10月31日は青山が海外出張のため休講とします。代わりの課題として、EvernoteとDropboxを使って、文献の整理、ファイルの保存を実際に行ってみてください。その経験を踏まえて、便利だった点、困った・悩んだ点などをレポート1ページにまとめ、11月4日(月)までに青山にメールで提出してください。

次回は11月7日には、指定してある文献(青山のイスラームと防災に関わる論文)の書評レジュメの報告をしてもらいます。作成した書評レジュメは11月4日(月)までに青山にメールで提出しておいてください。

2019年10月17日

今週は今週末に迫った合同ゼミに向けて発表の予行演習を行いました。ジャカルタ首都圏の交通渋滞の実態とその対策、そして発表者による提言という構成になっています。全体で40分かけた密度の濃いプレゼンでした。調査が行き届いていると感じました。まだ荒削りのところが残っていますが、発表者自身の振り返りで問題点と解決案が出されたので、仕上がりに向けての方向は定まったと思います。当日は、実りのあるプレゼンが出来ることを期待しています。

次回10月24日には、合同ゼミの振り返りのあと、前回発表できなかった4名に卒論テーマを発表してもらいます。残った時間には、ネットによる資料収集と整理の方法について説明する予定です。各自でパソコンを持参してください。

その後の週では、書評レジュメの報告をしてもらう予定です。準備をしておいてください。

2019年10月 3日

今週は秋学期最初のゼミです。8名が出席しました。秋学期から留学に出た人がいる一方、留学から戻ってきて参加した人もいました。

最初に自己紹介も兼ねて夏学期の活動や留学の経験について簡単に報告してもらいました。

次に、10月19日に予定している南山大学での東京外国語大学・大阪大学・南山大学のインドネシア語専攻学生による合同ゼミの準備状況について報告してもらいました。再来週10月17日のゼミの時間内に合同ゼミの発表の予行演習を行います。スライドの準備、発表者の順番、発表の準備など本番通りに準備をしておいてください。

続いて、4名の参加者に卒論のテーマについて構想を報告してもらいました。

THさんはインドネシアの交通問題か翻訳、Iさんは日本語教育(日本またはインドネシアでの)、KMさんはごみ問題か選挙を含むインドネシアの政治、TKさんはインドネシアのアパレル産業を考えてみたいということでした。

次回、残りの4名に報告をしてもらう予定です。

今年度の終わりまでに、研究テーマの絞り込み、そのためのデータの集め方の確認(文献とフィールドワーク)、読んでおくべき先行研究・参考文献のリスト作成、フィールドワークが必要な場合はその計画(いつ、どこで、どのように実施するのか)、など具体的に研究計画を立てておく必要があります。次回以降、データの集め方についてゼミの中で説明をする予定です。

卒論の研究計画の作成と並行して、書評レジュメの報告もしてもらう予定です。取り上げる文献についてはあとでお知らせします。

なお、来週10月10日は大学の用務で出張が入っており、休講とします。書評レジュメの対象となる文献をお知らせしますので、その作成と報告をもって授業の代わりとします。

2019年7月 4日

今週は、下記の論文を読んで、書評レジュメを作成し、報告してもらいました。

  • 関本照夫. 1986.「村と国家行事」『東南アジアからの知的冒険:シンボル・経済・歴史』リブロポート、pp. 31-68.

最初に、参考文献リストの書き方についてのポイントを整理しました。ブログの「卒論の参考文献一覧の書き方」も参考にしてください。

この論文はアンダーソンの想像の共同体の議論などを踏まえて国民国家と社会との関係について論じたものです。ゼミの議論では、社会と国家の関係について検討したうえで、オランダ領東インド時代、スカルノ大統領時代、スハルト大統領時代を通じて、インドネシアにおける国家と社会の関係とその変化について整理しました。近代国家では国家と社会の関係が密接で、区別することが難しい場合がありますが、インドネシアでは国家が社会を取り込んでいく過程がよく分かることが理解できました。

次回は今学期最後の授業時間となりますが、都合で休講とします。出席に代わって、夏学期の計画をA4判1ページ程度で作成し、メールで提出してもらいます。留学の予定がない人は卒論・卒研の研究テーマと研究計画、留学を予定している人は留学中の計画を書いてください。また、秋学期の最初のゼミでは、夏学期での活動の報告をしてもらいます。

なお、秋学期の合同ゼミのテーマは第1候補が「ジャカルタの交通渋滞」、第2候補が「ジャカルタ首都圏の交通事情」であることを報告してもらいました。

それでは、有意義な夏学期および留学の時間を過ごしてください。

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2019年6月27日

今週は、最初に先週のアクティブ・ラーニング(ブラタオヤマ「渋谷川を下る」)の振り返りを行いました。

そのあと、ケチャについて知っていることを自由に話してもらったあと、ビデオ映像でケチャを観賞し、ケチャについての理解を深めました。

これを踏まえて、「創られた伝統」の事例研究として以下の論文を読んだ書評レジュメを報告してもらい、議論を行いました。

  • ツォウベク,ウォルフガング. 2016.「ヴァルター・シュピースとバリ島のケチャ舞踊の由来」『富山大学人文学部紀要』64: 373-381.(DOIリンク

背景として第一次世界大戦によって西欧文明の優位性への確信が壊れたことが(ゴーギャンのタヒチ訪問のように)シュピースのバリ島訪問をうながしたであろうこと、サンヒャン・ドゥダリの憑依儀礼に伴う男性合唱に舞踊を振り付け、ラーマーヤナの物語を組み込んだところにシュピースの独創性があること、『鬼の島』のような映画(当時は白黒のトーキー)は1933年当時、世界の未知の文化を庶民でも体験できる最新テクノロジーであったこと、画家であったシュピースの美的感覚(たとえば、円形をモチーフにした作品『スケーター』)がケチャ舞踊の振り付けに影響していることなどが確認できました。

次回は、インドネシアに関する論文について書評レジュメを作成し、報告してもらう予定です。

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2019年6月21日

今日は、アクティブ・ラーニングの一つとして、ゼミ恒例のブラタオヤマ第4回を実施します。今回のお題は「渋谷川を下る」です。

繁華街として有名な渋谷ですが、「谷」と名前が付くからには「川」が流れているはず。その川「渋谷川」はいったいどこから流れて、どこへ注ぎ込むのでしょうか?地元の学生も「知らない」、「見たことがない」というくらいに存在感の無い渋谷川を、足で歩いて確かめてみます。渋谷川を下ることで東京の歴史が(たぶん)見えてくるはずです。

主なポイントとアクティブ・ラーニングに関わる課題は以下のとおりです。「問いとその答え」の形式でレポートを作成して、当日に臨んでください。探索のあとは懇親会を予定しています。

  • 1. 渋谷川の源流と宮益橋
  • 2. 白根記念渋谷区郷土博物館・文学館
  • 3. 金王八幡宮と渋谷城
  • 4. 東急東横線と渋沢栄一
  • 5. 渋谷ストリームと渋谷川と金王橋
  • 6. 庚申橋と庚申橋供養碑
  • 7. 阿弥陀石棺仏
  • 8. 天現寺橋と渋谷川と笄川と古川
  • 9. 慶應義塾幼稚舎
  • 10. 北里大学白金キャンパスと北里柴三郎
  • 11. 日向坂
  • 12. 芝丸山古墳
  • 13. 浜松町ビル(東芝ビル)と「芝浦一丁目計画」
  • 14. 日の出埠頭

2019年6月20日

今週は、次回は、下記の論文を読んで、書評レジュメを作成し、報告してもらいました。

  • ホブズボウム『創られた伝統』(紀伊國屋書店、1992、原書:The Invention of Tradition、1983)「序章」pp. 9-28.

非効率であっても変わりにくい「伝統」に対して、非効率であれば変化しやすい「慣習」の違いが少し明確になったように思います。また、伝統には象徴性があり、国民といったイデオロギーと結びつきやすいことが、1928年の青年の誓いと国旗の事例から見えてきました。

次回は、「創られた伝統」の事例研究として以下の論文を読んで、書評レジュメを作成し、報告してもらいます。

  • ツォウベク,ウォルフガング. 2016.「ヴァルター・シュピースとバリ島のケチャ舞踊の由来」『富山大学人文学部紀要』64: 373-381.(DOIリンク

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2019年6月13日

今週は、6月21日(金)に予定しているアクティブ・ラーニングの課題レポートを報告してもらい、議論をおこないました。

千駄ヶ谷からの穏田川(おんでんかわ)と代々木公園西側からの宇田川を源流とする渋谷川は、青山霊園からの笄川(こうがいがわ)と合流して古川と名を変えて港区を流れ、東京湾に注ぎます。多くの部分が暗渠となっているうえに、上流と下流では別の名前であることもあり、あまり知られていません。欅坂46の「渋谷川」では「名前を聞いてもピンと来ない」と歌われているほどです。しかし、丹念に見ていくと、古墳時代には上流から下流に沿って古墳があり、人の活動の跡があること、鎌倉時代には渋谷氏の渋谷城があり、関東から相模原に至る街道の交通の要所を押さえていたこと、明治時代には福沢諭吉が古川の右岸に土地を購入し、慶應義塾幼稚舎や北里研究所が設置されたことなど、歴史を読み解くヒントがあることを確認しました。

また、再開発が進む渋谷周辺の渋谷川の暗渠も工事で大きな変化が訪れています。金王橋(こんのうばし)の近くには高層ビルの渋谷ストリームが建設されました。みなさんの報告を聞いて、古墳からストリームというのが今回の隠れテーマになることが分かりました。なお、暗渠の工事についてはこちらの動画を参考にしてください。

次回は、下記の論文を読んで、書評レジュメを作成し、報告してもらいます。

・ホブズボウム『創られた伝統』(紀伊國屋書店、1992、原書:The Invention of Tradition、1983)「序章」pp. 9-28.

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2019年5月30日

今週は、最初に、6月21日(金)に予定しているアクティブ・ラーニングの課題を提示しました。単に調べるのではなく、疑問とそれに対する答えという特徴的な「切り口」を設けてレポートを作成してください。提出は6月13日のゼミの時間です。

続いて、先週に引き続いて、ベネディクト・アンダーソン著、白石隆・白石さや訳『定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』(2007年、書籍工房早山)の第2章「文化的根拠」の書評レジュメをもとに、議論を行いました。今回は、第2章で述べられている、非ヨーロッパ世界探査の影響による宗教共同体の衰退について検討しました。

イスラーム世界や中国世界などの非ヨーロッパ世界と出会うことで、ヨーロッパの知識人のなかにカトリック教会の権威に対して疑念が生じたことが、宗教共同体の衰退の大きな要因になったことを確認しました。とくに中国世界が(イスラーム世界と違って)一神教の神の信仰を持たないにもかかわらず高度な文明を持っていたことは、ヨーロッパの知識人に大きな衝撃を与えたことが知られています。また、アンダーソンは強調していませんが、地理的な発見自体が、不動の大地の周りを天界が周回するとする天動説を唱えていたカトリック教会の権威を揺るがしたことも注目されます。

なお、カトリック教会という巨大な宗教共同体の衰退は必ずしもキリスト教への信仰を揺るがしたわけではく、ルターのドイツ語訳聖書など民衆の口語による聖書の出版により、一人一人が聖書を読むことが可能になったことで、信仰のあり方が個人の内面の問題へとシフトしたことにも留意したく思います。このような宗教共同体の衰退は、近代の国民という「想像の共同体」の出現へとつながっていきます。

来週、6月6日は学内競漕大会のため休講なので、次回は、6月13日になります。アクティブ・ラーニングの課題レポートの報告をお願いします。

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2019年5月23日

今週は、先週に引き続いて、ベネディクト・アンダーソン著、白石隆・白石さや訳『定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』(2007年、書籍工房早山)の第2章「文化的根拠」の書評レジュメをもとに、議論を行いました。アンダーソンは国民(ネーション)を想像することが可能になった要因として、3つの基本的文化概念が打ち壊されたことを挙げています。第一は、手書きの写本に書かれた言語でしか真理に到達できないという概念、第二は、王国は神の摂理に基づいた王によって支配されているという概念、第三は、人間の存在と世界は神によって創られ、それ故に救済が予定されている概念です。議論の中で、一神教的世界観(キリスト教だけでなくイスラームとも共通しています)の理解が重要であることが共有されたように思います。

次回は、第2章で述べられている、非ヨーロッパ世界探査の影響による宗教共同体の衰退について検討する予定です。

ホワイトボード記録

2019年5月16日

今週は、先週に引き続いて、ベネディクト・アンダーソン著、白石隆・白石さや訳『定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』(2007年、書籍工房早山)の第3章「国民意識の起源」の書評レジュメをもとに、議論を行いました。印刷技術をもとにした出版資本主義から出版語が形成され、国民意識の創出へつながることを確認しました。ヨーロッパの事例、インドネシアの事例、日本の事例を比較することで理解が進むことが分かりました。

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次回からは、第2章の検討を行う予定です。

2019年5月 9日

今週は、ベネディクト・アンダーソン著、白石隆・白石さや訳『定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』(2007年、書籍工房早山)の序章のp.20に書かれている「サブ・ナショナリズム」の意味について検討しました。インドネシアでの「サブ・ナショナリズム」としてアチェの事例を取り上げました。議論にあたって以下の文献を参考にしました。

その後、第3章「国民意識の起源」の書評レジュメを提出してもらい、議論を行いました。今週は、時間が足りなかったので、第3章の検討は来週引き続き行います。第3章の後は第2章の検討を行う予定です。

2019年4月25日

今週は、ベネディクト・アンダーソン著、白石隆・白石さや訳『定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』(2007年、書籍工房早山)の序章の書評レジュメを提出してもらい、Tさんの報告を受けて議論を行いました。ナショナリズム、インターナショナリズム、グローバリゼーション/グローバリズムのそれぞれの特徴と違いについて整理することができました。原書が刊行された1983年に先立つ1978年~79年に起きたベトナムのカンボジア侵攻、中国のベトナム攻撃の衝撃が理解できたと思います。

次週、5月2日は休日なので、次回は5月9日です。引き続き、序章のp.20に書かれている「旧国民」や「サブ・ナショナリズム」の意味について検討する予定です。

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2019年4月20日

今週は、先週課題に出した「キャッシュレスについて調べる」をテーマに、各自でレポートを作成し、報告してもらい、議論を行いました。

議論の中から見えてきたことは、日本のキャッシュレス化の進展を考えるうえでの多くの論点は、キャッシュレスが便利だと感じる要因(プルの要因)と、現金が不便だと感じる要因(プッシュの要因)の二つの側面に分けて整理すると、理解しやすいということでした。また、今日の議論では十分に話し合えませんでしたが、災害による停電時にはキャッシュレスは使えないが現金は使えるという点も留意すべきだと感じました。

このほか、同じキャッシュレスと言っても、欧米で以前から普及しているクレジットカードによる決済と、中国などで伸びているQRコード・アプリによる決済同列に論じてもよいのか、という点も指摘されました。ゼミの履修生の間ではQRコード・アプリを利用する人とそうでない人が二つに分かれたのが興味深かったです。

キャッシュレス化が進まない要因(規格の乱立など)やそのための対策(政府の政策など)についてはさまざま意見が出されており、その多くはゼミの議論でも言及されましたが、ゼミの後で読んだ以下の論文が「ウォレットの分断」という視点から議論しており、個人的にとても参考になったので、共有のため紹介しておきます。

次回は、『共同の想像体』の書評レジュメを報告してもらう予定です。準備をしておいてください。なお、レポートやレジュメには、提出日の日付を付けることと、2ページ以上になる場合にはページ数を付けることを忘れないでください。細かなことですが、あとで整理するときの効率がちがいます。

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2019年4月11日

最初にアクティブラーニングのお知らせを3件しました。第1に、ブラタオヤマの日程は6月21日(金)に決まりました。今回のお題は「渋谷川を下る」です。具体的な課題は6月以降に告知します。

第2に、今年の3大学合同ゼミの日程は10月19日(土)・20日(日)に決まりました。今後は、各大学の連絡役の間で連絡をとりあって、テーマやプログラムを決めてもらうことになります。

第3に、東京国立博物館で3月26日~6月2日に開催されている特別展「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」を鑑賞し、レポートを提出してください。テーマは「空海および曼荼羅とインドネシアとのつながりを明らかにする」です。A4判1枚にまとめ、6月末までに提出してください。

続いて、先週提出してもらった春学期課題レポートを全員に報告をしてもらい、それをもとに議論をおこないました。卒論を作成するには、問いを立て仮説を立てるプロセスと、仮説の根拠となるデータを集めるプロセスから成り立っていることが明らかになりました。議論をまとめたホワイトボードの記録を掲載しておきます。

3年次ゼミ-20190411.png

最後に、来週以降の課題を出しました。次週は、今週の「調べる」の議論をもとに、仮説と根拠に留意して、最近話題の「キャッシュレス」について、各自の関心に応じてテーマを設定し、レポート(A4判1枚程度)を提出し、報告してください。

再来週以降は、各自で以下の文献を読んで書評レジュメを提出し、報告してもらいます。書評レジュメの書き方は「レジュメの基本」を参考にしてください。詳しい段取りは来週のゼミで説明します。

  • ベネディクト・アンダーソン著、白石隆・白石さや訳『定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』(2007年、書籍工房早山)序章および第3章

それでは、来週ゼミで会いましょう。

2019年4月 4日

新年度最初の3年次ゼミでは春学期の授業予定について説明を行いました。

最初に、受講生1人1人に自己紹介をしてもらったあと、各自の関心テーマや留学の経験・予定などについて話をしてもらいました。

ゼミ内のLINEグループの立ち上げ、アクティブラーニング(ブラタオヤマ)の幹事役、阪大・南山大学と行っている恒例の3大学合同ゼミの連絡役を決めました。

最後に、春休みの課題レポートを提出してもらいました。

次回は、課題レポートを報告をしてもらう予定です。また、書評レジュメのためのテクストや資料を準備しておく予定です。

          

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