今週は、最初に、先週のSさんの報告について、追加の議論をおこないました。輸入代替については、簡単には以下のような流れを理解しておくとよいでしょう。
- 植民地時代:宗主国の経済を支える偏った経済構造を強いられた。典型的にはモノカルチャー型経済がある。
- 独立後:自国で生産できない工業製品などは輸入せざるをえないが、モノカルチャー型の輸出は多くの場合、安価で不安定なため、輸入超過となる。よって、輸入代替への転換をめざすが、そのための技術や資本が不足しているため、外資の導入が図られる。
続いて、Mさんにインドネシア人のアイデンティティを理解するために、以下の文献について報告してもらいました。
- 大川誠一. 2002.「民族の再定義―創られた"インドネシア"の岐路」青木保ほか編『アイデンティティ:解体と再構成』岩波書店、pp. 71-84.
- 永積昭. 1980. 『インドネシア民族主義の形成』東京大学出版会.
多民族国家がなぜ単一の国家として独立することができ、現在もその状態を保つことができているのか、という大きな問題を前提に議論をおこないました。簡単には結論はでませんが、引き続き考えてみてください。
なお、「国民」と「民族」という用語については、以下の区別に気をつけてください。
「国民」については、
- 日本語「国民」=英語 nation=インドネシア語 bangsa
という等式がなりたちますが、「民族」については、「インドネシアには数百の民族がいる」という場合の「民族」、つまり、
- 日本語「民族」=英語 ethnic group=インドネシア語 suku
という場合と、「オランダ植民地時代末期になるとインドネシア人のあいだに民族意識がたかまった」「民族主義運動の意指導者スハルトはインドネシアの最初の大統領になった。」という場合の「民族」、つまり、
- 日本語「民族」=英語 nation=インドネシア語 bangsa
という2つの場合あることに注意して文献を読むとよいでしょう。
来週は外語祭のため休講です。次回は、HLさんに報告をしてもらう予定です。