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2022年4月28日

【4年次対象ゼミ】

今週は、先週のミニ課題の振り返りをおこなったあと、以下の論文をもとに議論を進めることにしました。

  • 小林寧子「国家・英雄・ジェンダー:カルティニ像の変遷」小泉順子編『歴史の生成:叙述と沈黙のヒストリオグラフィ』(京都大学学術出版会、2018年、pp. 23-73)【附属図書館

この論文では、これまでの「女子教育の先駆者」、「女性解放唱道者」、「民族覚醒の母」といったカルティニ像の変遷をたどり、それぞれのカルティニ像が造り出された歴史的文脈を明らかにしようとしています。

次回は連休明けになります。書評レジュメを作成し提出したうえで、ゼミでの議論に臨んでください。書評レジュメの作成にはいつものように「レジュメの基本」に準拠してください。

【3年次対象ゼミ】

今週からベネディクト・アンダーソンの『想像の共同体』を読み始めます。その前提として、一冊の本を読み始めるまえに、いきなり本文から読み始めるのではなく、以下の情報をまず取得しておくべきことを確認しました。

  • 書名と著者名 書名から内容が推測できます。著者が分かれば、同じ著者による他の作品についても考えてみることができます。
  • 目次 本の構成を読み取ることができます。
  • 奥付 本の書名、著者名に加えて、出版社、出版年を確認することができます。これらは、基本的な書誌情報なので、きちんと記録しておきましょう。論文を書き始めるときに助かります。また、出版年が版・刷ごとに記載されている場合には、原則として初版第1刷の出版年を記録しましょう。
  • 序文・後書き(翻訳の場合は訳者後書き) これらは本の意図や内容の概要が書かれていることが多いので、本文を読むときの助けになります。
  • 索引 重要なキーワードを五十音順に並べ、記載されているページを示したものです。特定の情報を探しているときには、読むべきページを速やかに探しあてることができます。

つぎに、第1章「序」を少し読み始めました。1983年に出版された原書の序では、ベトナム・カンボジア戦争(1975~77年)とそれに続く中越戦争(1979年)が最近の「世界史的に重要な」出来事として触れられています。この出来事は、資本主義と共産主義という二つのイデオロギーを背景に、アメリカを中心とする国家群とソ連を中心とする国家群が対峙していた冷戦を背景にしているので、まずこの点について整理をしました。

次回は、連休明けになります。第1章「序」の書評レジュメを作成し、提出してください。それを前提に議論をおこないます。

【リレー講義】

今週は木曜3限に、山内由理子先生のオセアニア地域基礎の授業にゲスト講師としてお招きいただき、「インドネシアとオーストラリア」というテーマで218教室において講義を行いました。

最初に、インドネシアの概要と近況を説明しました。そのあと、歴史をさかのぼり、ヨーロッパ人が到来する以前、アジアにおける交易の広がりのなかで、マカッサルの海洋民がオーストラリアの北海岸を頻繁に訪れていたこと、17世紀になるとオランダがインドネシアのジャワ島を交易の拠点とし、オーストラリアを周回する航海を行ったにもかかわらず、オーストラリアには関心を示さなかったこと、18世紀になるとイギリスが太平洋に進出し、オーストラリアの領有を宣言したこと、19世紀になると、オーストラリアはオランダ領東インドを介して本国イギリスと電信網でつながったこと、第二次世界大戦になるとオランダ領東インドを占領した日本軍が、そこを拠点にオーストラリアへの攻撃をおこなったこと、インドネシア独立後、オーストラリアから見たインドネシアは近くて遠い国というイメージが続いていることなどをお話しました。

2022年4月27日

【リレー講義】

今週は水曜3限に、アジア・アフリカ地域文化基礎のリレー講義の一環として「ラーマーヤナに見る東南アジアのインド化」という題目でZoomによるオンライン授業を行いました。リレー講義全体の代表は岡田知子先生ですので、リレー講義の運営・評価に関わる質問は岡田先生にお願いします。

このリレー講義では資料の提示、レポートの提出等にはTUFS-Moodleを利用しているので、必ず確認をしておいてください。

提出されたレスポンス・シートを読ませてもらいました。その中に質問があったのでお答えします。[2022-07-30更新]

【質問1】バリの民族舞踊や中国の民族村では観光文化として改変されたものがありますが、コーンやワヤン・オランでも観光文化として改変されているものはありますか?

【回答1】バリの観光文化としてよく知られているものとしてケチャがあります。ケチャを含めて、バリの芸能は本来、宗教儀礼の一部でしたが、1930年代以降、「人に見せるための芸能」としてのケチャが発展しました。ケチャのこのような変容にはヨーロッパ人も関わっています。観光芸能としてのケチャにはラーマーヤナの物語が題材に選ばれているので、今回の授業のなかで扱ってもよかったのですが、授業ではあえてイスラーム教徒が多数派を占めるジャワの芸能を選びました。

さて、質問の答えとして、ワヤン・オランの例を取り上げたいと思います。ワヤン・オランはジャワ人に見せることを前提として生まれた舞踊劇です、したがって、舞踊の様式も使用する言語(ジャワ語)もジャワ人の鑑賞にふさわしいものとなっています。しかし、1945年にインドネシアが独立したのち、1960年代になって海外からの観光客を対象とした舞踊劇としてスンドラ・タリが創作されました。ワヤン・オランが基本にはなっていますが、言語が通じない海外からの観光客にも分かりやすく、広い舞台でも視覚的・音響的効果が出るように工夫されたものです。ワヤン・オランからスンドラ・タリへの変容は観光文化として改変された舞踊劇の代表例と言ってよいでしょう。

参考文献

【質問2】インド化が東南アジアで進んだ際に、東南アジアの方でインドよりも規模の大きな寺院(ボロブドゥール、プランバナン、アンコール・ワットなど)が作られたということですが、そのようなものをインドが逆輸入のような形で取り入れた例はあるのでしょうか?

【回答2】とても興味深い質問です。簡単な答えは、今のところそのような事例は知られていない、ということになります。たしかに、東南アジアの寺院と類似した寺院の事例はインドで見つかっていますが、これまでは、インドにある寺院が原型となって、その発展した形が東南アジアで具体化した、と説明されることがふつうです。おおむね、そのような説明が妥当だろうと言えますが、逆輸入の可能性を考えてみることもけっして無駄なことではないと思います。実際、少数ですが、東南アジアの王がインド北東部のナーランダーやインド南東部のナーガパッティナムに僧院を建立したという記録が残っています。ただ、いずれも現存しているのかどうか、現存しているならばどれなのか、不明なままです。

なお、技術史においては、ある技術が最初に生まれた地域よりも、それを後から受け入れた地域でより高度に発展するという事例は珍しくありません。たとえば、世界最初の超高層ビルというべきエンパイア・ステート・ビルディングは1931年にアメリカのニューヨークで建設されましたが、現時点で、世界でもっとも高いビルは、1位がUAEのドバイ、2位がマレーシアのクアラルンプール、3位が中国の上海にあります。

【参考資料】

【質問3】ラーマーヤナはヒンドゥー教の神であるヴィシュヌ神を扱っていますが、イスラームや上座仏教からはどのように理解されているのでしょうか。また、物語に出てくる神に対して信仰心のようなものはあるのでしょうか。

【回答3】イスラームと上座仏教ではヒンドゥー教の神々の扱いは少し異なります。

まず、上座仏教は、ヒンドゥー教と同様にインドで始まった宗教なので、ヒンドゥー教の神々の存在は否定することなく、むしろ、梵天や帝釈天のように、神々の多くもまた仏陀の教えに従い、教えを守る守護者であると解釈をすることが一般的です。上座仏教は、人は神の教えによってではなく、仏陀の教えを実践することで救済されるという立場なので、神々を否定する必要はとくにないのです。

一方、イスラームでは、創造主にして裁き主でもある唯一の神のみが神の名に値する存在であり、信仰の対象となります。したがって、ヒンドゥー教の神々を神と考えることはありません。しかし、ヒンドゥー教の「神々」もまた、神の被造物の一種である限りは、存在を否定されることはありません。

いずれにしても、ヴィシュヌ神やラーマは、神話の中の超人的な存在であり、物語の中のヒーローではあるけれども、信仰の対象ではないという点で、イスラームと上座仏教は共通していると言えます。

2022年4月21日

【4年次対象ゼミ】

先週に引き続き、ミニ課題の続きとして、オランダ領東インドに渡ってからのシュピースについて検討しました。

そのあと、このミニ課題と同じテーマ(ガムラン音楽)と材料(資料)をもとに、卒論にふさわしい構成(問いと答え)に組み替えるとしたら、どのような可能性があるか、みなさんに意見を述べてもらいました。

今回のミニ課題がみなさんの卒論制作に役立つことを期待しています。

次回からは、卒論制作の参考となるような、みなさんの卒論テーマに即した先行研究を少しずつ読んで、議論をおこなう予定です。

【3年次対象ゼミ】

先週に引き続き、ミニ課題の続きとして、オランダ領東インドに渡ってからのシュピースについて検討しました。

次回からは、以下の文献を読んで書評レジュメを作成し、ゼミでの議論を進める予定です。

  • アンダーソン、ベネディクト『定本 想像の共同体:ナショナリズムの起源と流行』(書籍工房早山、2007年)【附属図書館

書評レジュメの書き方については、「レジュメの基本」を読んでおいてください。

書評レジュメの提出は連休明けのゼミを予定しています。

2022年4月20日

【リレー講義】

今週は水曜1限に、東南アジア地域基礎のリレー講義の一環として、「歴史(その1)」というテーマでZoomによるオンライン授業をおこないました。リレー講義全体の代表は菊池陽子先生と鈴木玲子先生ですので、リレー講義の運営・評価に関わる質問はお二人の先生にお願いします。

資料の提供や授業後の課題テストはTUFS Moodle(ログインが必要)を使うので、かならず確認しておいてください。

2022年4月15日

【4年次対象ゼミ】

卒論を作成するにあたっては、テーマの選定、資料の収集とともに課題となるのが、適切な問いを立て答えを導く、すなわち、どのように論を立てるかという構成の問題があります。

具体的に考える手がかりとして、今週から、ミニ課題を読んで、一つのテーマと材料からどのように論(問いとその答え)を立てるかを考えてもらうことにします。

  • 青山亨. 2022.「世界につながったガムランの響き」『地球の音楽』(東京外国語大学出版会)pp.12-17

今週は、課題にしたがって、ガムランの特徴、1889年パリ万国博覧会の意義、ヨーロッパを離れるまでのシュピーズの生涯について報告をしてもらいました。
次回は、オランダ領東インドに渡ってからのシュピーズについて検討を進める予定です。

2022年4月14日

【3年次対象ゼミ】

今週から、ミニ課題を読んで、一つのテーマと材料からどのように論(問いとその答え)を立てるかを考えてもらいました。

  • 青山亨. 2022.「世界につながったガムランの響き」『地球の音楽』(東京外国語大学出版会)pp.12-17

今週は、課題にしたがって、ガムランの特徴、1889年パリ万国博覧会の意義、ヨーロッパを離れるまでのシュピーズの生涯について報告をしてもらいました。
次回は、オランダ領東インドに渡ってからのシュピーズについて検討を進める予定です。

2022年4月 7日

【4年次対象ゼミ】

2022年度春学期最初のゼミです。今週は、一人一人の近況および卒論の進捗を報告してもらいました。

しばらくは就活で卒論に専念できない時期が続くので、春学期はいろいろな文献を読んでコメントを述べてもらう予定です。

【3年次対象ゼミ】

2022年度春学期最初のゼミです。ようやくコロナ禍も一区切りついた感じで新年度を迎えることができました。Slackによる情報交換は今年度もおこないます。

今週は、春休みの経験から得た気づきについて話をしてもらいました。日常の気づきを言語化し、文化的・社会的な文脈において、抽象化・一般化することで、新しい視点を獲得することができます。卒論作成の第一歩になる作業です。

販売者と消費者が見るデパ地下のちがい、ペットショップを訪れる高齢者に見る社会の変化、大学生になって見える受験生の保護者の気持ち、嗜好の違いに現れる人の傾向、などの語りを共有することができました。

そのあと、3年次ゼミから卒論提出までの2年間のスケジュールについて説明をしました。

次回は、提出してもらった春休みの課題レポートをもとに議論をする予定です。そのあとの週では、基本的な文献を読んでいきます。

【大学院】

2022年度の大学院の授業は以下を予定しています。

  • 修論指導 木曜2限 現時点で青山の修論指導を受ける予定の学生はいません。
  • 博論指導 金曜4限 予約制です。メールで予約をとったうえで、指導を受けてください。
  • 院生ゼミ 金曜5限 春学期にはHIPSの学生も参加する英語によるゼミを開講します。留学生の渡日の状況によってはオンラインで実施します。秋学期の内容は未定です。

2022年4月 1日

【リレー講義】

2022年度に担当するリレー講義あるいはゲスト講師として参加する講義を掲示します。授業についての問い合わせは代表教員(括弧内)にお願いします。【更新】秋学期水曜4限の「日本における多文化共生」の開催日を1月18日から1月25日に修正しました。(2022年9月11日更新)

【春学期】

4月20日 水曜1限 オンライン 東南アジア地域基礎「歴史(その1)」(菊池・鈴木)
4月27日 水曜3限 オンライン アジア・アフリカ地域文化基礎「ラーマーヤナに見る東南アジアのインド化」(岡田)
4月28日 木曜3限 218    オセアニア地域基礎「インドネシアとオーストラリア」(山内)

【秋学期】

1月25日 水曜4限 オンライン 世界における多文化共生「日本における多文化共生」(眞鍋)

【2022年度の時間割】

2022年度には以下の授業を開講します。授業名をクリックすると詳細を読むことができます。2021年4月から2年間の任期で青山が副学長(教育、⼊試、点検評価担当)を務めることになったため、2022年度に担当する授業も学部と大学院のゼミとリレー講義の分担のみとなります。また、今年度で青山は定年退職の予定ですので、2022年度が最後の授業担当となります。

なお、2022年度の春学期の授業形態については、2021年度と同様に新型コロナウイルス感染防止のための対応がとられるので、大学から通知される最新の情報に常に気を付けてください。(最終更新2022-03-03)

  • 3年次ゼミ 木曜4限 641インドネシア語共同研究室
  • 4年次ゼミ 木曜5限 641インドネシア語共同研究室
  • 大学院修論指導 木曜2限 641インドネシア語共同研究室
  • 大学院ゼミ 金曜5限 オンライン
  • 大学院博論指導 金曜4限 641インドネシア語共同研究室

注:教室はCOVID-19および履修生の状況によりオンラインに変更する場合があります。

2022年度に担当するリレー講義については2022年度のリレー講義のページをご覧ください。

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2022年度時間割 PDF(2022-09-11更新)

          

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