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2017年11月30日

【3年次対象ゼミ】

今週は、Oさんに第8章「愛国心と人種主義」の書評報告について、Mさんの司会で議論してもらいました。

いくつかの疑問は議論のなかで解消できたと思います。ただ、以下の点については、次回以降も検討する必要があると感じました。

1. 「ナショナリズムが歴史的運命の言語で考えるのに対し、人種主義は、歴史の外にあって、ときの初めから限りなく続いてきた」(p. 244)。ここでの「歴史」という概念は、ナショナリズムと人種主義を区別するうえで、どのように理解されているのか、もう少し考察する必要がある。

2. 国民は言語によって想像された共同体であるがゆえに、「国民は同時に開かれかつ閉ざされたもの」(p. 239)である。なぜなら、「我々はいかなる言語でも修得することができる。しかし、言語の修得には人生のかなりの部分を必要とする。新しい征服のたびに、人生の残りの日々は減っていく。...こうして、すべての言語は一定のプライバシーをもつことになる」からである。この主張についてもう少し考察する必要がある。

次回は、これらの点も検討したうえで、Mさんに第7章「最後の波」の書評報告をおこなってもらう予定です。

2017年11月27日

【一般】

11月7日にインドネシアの憲法裁判所(Mahkamah Konstitusi)はインドネシア国民の信教の自由に関する憲法の規定について判断をくだしました。これは画期的な判断だと思われるのでご紹介しておきます。

判断の要点を整理すると、以下のようになります。

  • 国民の信教の自由は、自然権にもとづく基本的人権の一つであって、憲法で保障された権利であり、国家によって与えられるものではない。
  • 国家には国民の信教の自由を保護し保障する義務がある。
  • 現行の1945年憲法第29条で規定されている「宗教」(agama)と「信仰」(kepercayaan)は二つの対等な事象である。したがって、現在、公認されている6宗教(イスラーム、プロテスタント、カトリック、ヒンドゥー教、仏教、儒教)以外のインドネシア土着の信仰についても、国家は保護し保障する義務がある。

今回の憲法裁判所の判断は、今後、インドネシア社会に大きな影響を及ぼす可能性があります。

インドネシアでは、家族登録証(KK)と住民登録証(KTP)の制度が住民登録法で定められており、国民には登録が義務づけられています。KKとKTPには宗教(agama)の欄があり、公認されている6宗教のいずれかを記載することが求められてきたため、インドネシア土着の信仰を奉じる人々から改善の要求が続いていました。今回の憲法裁判所の判断は、インドネシア土着の信仰をKTPやKKに記載する道を開くものとなります。

また、国民一人一人の信教の自由は基本的人権の一つであると明言し、国家にはそれを保護し保障する義務があると判断したことも、インドネシアにおける宗教的寛容性の動向を考えるうえできわめて重要なできごとであると思われます。

詳しくは、憲法裁判所の判断を報道する以下の記事を参照してください。
・インドネシア語の新聞記事(2017年11月7日付けKompas紙
・同記事の日本語訳(メディア翻訳

以下のインドネシア語のサイトも参考になります。
インドネシア共和国1945年憲法
住民登録に関する2006年法律第23号

2017年11月22日

【一般】

2017年11月22日(水)~26日(日)に東京外国語大学の第95回外語祭が開催されます。インドネシア語専攻関係では、例年のように1年生は料理店、2年生は語劇、インドネシア舞踊部はインドネシア舞踊公演をおこないます。なお、場所・時間は変更される場合があるので、最新の情報にご注意ください。(更新:2018-01-31)

第95回外語祭は第9回学園祭グランプリにおいてグランプリ(MVP)を受賞しました。来場し応援していただみなさんにお礼を申し上げます。ぜひ来年の外語祭にも足をお運びください。

外語祭の詳細は外語祭公式サイトおよび大学広報サイトTUFS Todayをご覧ください。

最新の情報は第95回外語祭実行委員会 Twitterおよび東京外国語大学学園祭外語祭 Facebookも参照してください。


インドネシア語劇

2017年のインドネシア語劇のタイトルはAnde-Ande Lumut(アンデ・アンデ・ルムット)です。ジャワ地方のよく知られた民話で、田舎の娘が王子さまと結ばれるというシンデレラ物語を思わせるお話です。ぜひご観覧ください。

・日時:2017年11月24日(金)10:00-10:50
・場所:アゴラ・グローバル内 プロメテウス・ホール
・詳細は外語祭の語劇プログラムをご覧ください。

最新の情報はインドネシア語劇2017 Twitterも参照してください。


インドネシア料理店

インドネシア料理店Masakan Indonesiaでは、定番のミー・ゴレンやサテ・アヤム、デザートのピサン・ゴレン、インドネシア料理店に欠かせないビル・ビンタン、新メニューのホワイト・コーヒーなどが揃っています。

・場所:円形広場25番ブース(正面入口から入ると、左手の図書館入り口付近)
・詳細は外語祭の料理店プログラムをご覧ください。

最新の情報はインドネシア語科2017 Twitterも参照してください。


インドネシア舞踊

インドネシア舞踊部の公演には、屋内公演と野外ステージ公演があります。スケジュールは以下のとおりです。

・11月22日(水)11:10, 14:40 218教室(各20分)
・11月24日(金)15:00 101教室(10分)
・11月25日(土)11:10, 14:40 218教室(各20分)
・11月26日(日)13:50 野外ステージ(30分)

いずれも入場無料。218教室は公演10分前に開場。公演後踊り子との記念撮影の時間があります。

詳細は下記のインドネシア舞踊部パンフをご覧ください。

・パンフ(PDF)をダウンロードする。
・ビラ(PDF)をダウンロードする。

最新の情報はインドネシア舞踊部のTwitterおよびFacebookを参照してください。

2017年11月18日

【一般】

2017年11月18日に下記のとおり、言語研修ジャワ語フォローアップミーティングを開催します。青山も「ジャワ文字の変遷」という講義をおこないます。
どなたでも事前申し込み不要で参加できますので、関心のある方はぜひお越しください。

言語研修ジャワ語フォローアップミーティング

  • 開催日:2017年11月18日(土)~2017年11月19日(日)
  • 開催時間:10:00 - 16:30
  • 場所:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所セミナー室(301)
    アクセス
  • 使用言語:英語(通訳なし)
  • 参加費:無料
  • 事前申し込み:不要(一般公開)

プログラム
11月18日
1. 10:00-12:00,13:00-15:00 
 ウィルム・ファン・デル・モーレン(KITLV,オランダ)・菅原由美(大阪大学) ジャワ文字基礎・読解
2. 15:15-16:30 
 青山亨(東京外国語大学)講義「ジャワ文字の変遷」
11月19日
3. 10:00-12:00, 13:00-15:00 
 ウィルム・ファン・デル・モーレン・菅原由美 ジャワ文字基礎・読解
4. 15:15-16:30 
 ウィルム・ファン・デル・モーレン 講義「印刷されたジャワ文字」

共催:AA研, 科研費基盤研究(B)「ジャワ語文献にみるジャワのイスラーム化再考」(研究代表者:菅原由美(大阪大学)#16H05662), 東京外国語大学社会・国際貢献情報センター

2017年11月16日

【4年次対象ゼミ】

今週は、Fさんに卒論の進捗状況を報告してもらいました。ジャワにはプルクトゥット(perkutut、鳩の一種)を飼う文化があること、宮廷ではククトゥタン(kekututan)と呼ばれる、プルクトゥットを飼うことにまつわるさまざざまな行事がおこなわれていたことを報告してもらいました。ジャワの文化を理解するうえでも大変に興味深いテーマであると感じました。

来週は外語祭があるので休講です。次回は12月7日にKさんに卒論の進捗状況を報告してもらう予定です。

【3年次対象ゼミ】

今週は『想像の共同体』の第6章「公定ナショナリズムと帝国主義」の書評レジュメをTさんに報告してもらいました。

公定ナショナリズム=普遍・帝国に対して民衆ナショナリズム=特殊・国民という構図が描かれていました。

来週は外語祭なのでお休みです。しっかりと楽しんでください。

次回は、11月30日に第8章「愛国心と人種主義」の書評報告をOさんにしてもらう予定です。第7章「最後の波」のMさんの書評報告と順番が入れ替わっているので注意してください。


2017年11月 9日

【4年次対象ゼミ】

今週は、Sさんに卒研のビデオ制作の進捗報告をしてもらい、参加者にコメントをしてもらいました。

そのあと、引用や注の付け方をパソコンとプロジェクタを使って説明しました。

次回は、Fさんに卒論の進捗報告をしてもらう予定です。

【3年次対象ゼミ】

今週は、Tさんに青山亨「インドネシアの華人:同化から統合へ」長谷部美佳・受田宏之・青山亨編『多文化社会読本 多様なる世界、多様なる日本』(東京外国語大学出版会、2016年)第7章の書評レジュメを報告してもらいました。

華人に対する差別が続く要因とその解決について議論をおこないました。インドネシアでは独裁から民主主義に転換したことで、多数派による少数派の圧迫のリスクがかえって高まったことが指摘されました。差別の解消については効果的な提案が出なかったので、次回の議論に期待したいと思います。

次回は、Oさんに同じく第7章の書評レジュメを報告してもらいます。

そのあとは、『想像の共同体』に戻って、第6章「公定ナショナリズムと帝国主義」をTさん、第7章「最後の波」をMさん、第8章を「愛国主義と人種主義」をAさん、第9章「歴史の天使」をFさんの担当で書評レジュメを報告してもらう予定です。

2017年11月 2日

【4年次対象ゼミ】

今週は、最初に、IさんにInkulturasi(英語inculturation)について説明をしてもらいました。これはカトリック教会の用語で、教会の教えが非キリスト教文化をもつ社会に展開するなかで土着の文化の影響を受けることを意味します。

そのあとに、Kさんに卒論の中間報告をしてもらいました。報告のあと、章の中の節と節の関係を重視すべきことの指摘や、本文中の引用の仕方についての説明をおこないました。引用の仕方には、短い引用、長い引用、要約の3種類があることを説明し、要約の仕方について少し時間をとって練習をおこないました。別のページで引用の方法を説明しているので参考にしてください。

次回は、引用の方法を改めて説明したあと、Sさんに卒論の進捗報告をしてもらう予定です。

【3年次対象ゼミ】

今週は、先週に続いて、ベネディクト・アンダーソン『定本 想像の共同体』の第5章「古い言語、新しいモデル」について、KさんとMさんの書評レジュメにもとづいて議論をおこないました。

今回は、ナショナリズムを主張する中産階級インテリゲンチャがなぜ「大衆を歴史に招じ入れ」なければならなかったかを、インドネシアを事例に検討しました。また、歴史上の概念の多くが事後的に「発明された」ものであることを確認しました。

次回は、2週間にわたって、OさんとTさんに青山亨「インドネシアの華人:同化から統合へ」長谷部美佳・受田宏之・青山亨編『多文化社会読本 多様なる世界、多様なる日本』(東京外国語大学出版会、2016年)第7章の書評レジュメを報告してもらう予定です。


          

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