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リレー講義

2022年1月12日

今週は水曜4限に、世界における多文化共生のリレー講義の一環として「日本における多文化共生」という題目でZoomによるオンライン授業を行います。リレー講義全体の代表は水野善文先生ですので、リレー講義の運営・評価に関わる質問は水野先生にお願いします。

2021年6月 2日

今週は水曜1限に、東南アジア地域基礎のリレー講義の一環として、「宗教と社会(その1)」というテーマで、Zoomによるオンライン授業をおこないました。この授業では主に東南アジア島嶼部のイスラームについて、宗教としての概要、東南アジアでの定着と受容、現状について講義をおこないました。

資料の提供や授業後の課題テストはTUFS Moodle(ログインが必要)を使うので、かならず確認しておいてください。

小テストの結果は平均8.99点でよい成績でした。10問の中でも誤答が多かったのは問4のイスラームの神の意味を尋ねる質問でした。イスラームのような唯一神信仰の立場では、唯一の神以外に神々が存在することは認めないので、そもそも神々のあいだの優劣を考えること自体が無意味である点に注意してください。

コメントシートの中でいくつか質問をいただいたのでお答えします。質問の文章は少し変えているところがあります。

過去のページでも質問と回答や関連資料の紹介をおこなっているので、ぜひ目を通してみてください。


質問1

 現在、なぜ全世界のムスリムの人口は増加しているのでしょうか?

回答

 授業では、キリスト教などの主要宗教に比べて、イスラームの信徒数(ムスリム)の増加が顕著であると説明しました。

 Pew Research Centerが2015年に発表した報告(下記)によると、2010年から2050年間の40年間で、イスラームは世界の主要宗教のなかでもっとも信徒数が増大すると推定されています。また、その結果として、2050年にはムスリムの人口はキリスト教徒の人口に接近し、さらにこの傾向が続くと2070年には上回ると推定されています。

 まず、基本的に、信徒数を増減させる要因としては、(信徒集団の)出生率、移民、改宗が考えられます。また、全世界での増減とある国・地域での増減は必ずしも一致しないことに注意してください。

 質問に対するもっとも簡単な回答は、出世率の違いで説明することができます。一般的に、キリスト教徒が多い先進国では高齢者の割合が高く出生率が低くなる傾向にあります。他方、ムスリムが多い発展途上国では若年層の割合が高く出生率が高い傾向にあります。インドネシアにおけるムスリムの増加は(サハラ以北での増加と同様に)このような要因が大きく影響していると考えられます。このことから、全世界で見た場合のムスリム人口の増加は、ムスリムの多い国・地域と出生率の高い国・地域が重なっていることが多いからと言ってよいでしょう。

 他方、特定の国・地域を見た場合のムスリム人口の増加には、移民や改宗が要因となることがあります。たとえば、フランスのムスリムは全人口の8.8%を占めていますが、2050年には10%を超えるとする推定があります。これには国外からのムスリムの移民が大きな要因となっています(また、移民してきたムスリムのコミュニティの出生率の高さも要因になります)。くわえて、フランスなどの先進国では既存のキリスト教から他宗教に改宗する(あるいはそれ以上に、特定の宗教に所属しない)人が増加する傾向にあり、このことが、相対的にムスリムの人口を増加させる要因にもなっています。 

詳しくはPew Research Centerの報告を読んでみてください。


質問2

 シーア派とスンナ派を比べた場合、シーア派の方が保守的なのでしょうか?復古主義者や急進派が多いような印象を受けました。

回答

 授業でも1979年のイラン革命の重要性を取り上げたので、政教一致の政権をイランに打ち立てたシーア派について保守的な印象を持ったかもしれません。

 ただ、そもそも「保守派」という概念は、時、場所、状況に応じて様々な(ときには真逆の)意味を持ち得るので注意する必要があります。保守的だから復古主義者や急進派であるとは限らないことにまず留意してください。むろん「保守派」や「保守的」という言葉を使わざるを得ない場合もありますが、どのような意味で使われているかを常に意識しておくことが大切です(「改革派」、「急進派」についても同様です)。

 次に、シーア派とスンナ派はイスラームの根本的な教理において違いがあるわけではありません。歴史的に、イスラーム共同体の指導者を巡る争いのなかで、アリー(ムハンマドの従兄弟)の血筋を重視して分派したのがシーア派で、残った多数派がスンナ派となります。スンナ派はイスラーム共同体のコンセンサスを重視しており、その意味では、スンナ派の方が「保守派」と言えなくもありません。

 19世紀になるとイスラームの中に新しい潮流が生まれますが、急進的な復古主義を唱えたワッハーブ運動の創始者はスンナ派ですし、イスラーム内部からの改革を訴えたアフガーニーはスンナ派とかシーア派といった枠を超えた思想家でした。

また、21世紀になってカリフ制の復興を主張したISもスンナ派です。ですから、シーア派だから、あるいは、スンナ派だから「保守派」という見方にはあまり意味が無いと言えるでしょう。


質問3

 アラビア語を母語としないムスリムにとって、アラビア語を学ぶことは必須のことなのでしょうか?

回答

 ムハンマドの時代には、アラビア語を母語とする人々がムスリムでしたから、アラビア語を学ぶということはとくに意識されていなかったと考えられます。したがって、イスラームの教理のなかでアラビア語を学ぶことは義務とはされていません。

 しかしながら、東南アジアのようにアラビア語を母語としない社会であっても、イスラームの五信の第一である信仰告白はアラビア語で唱えなければなりませんし、イスラームの影響で現地語にもアラビア語からの借用語が多いので、たとえ細かな意味は分からなくても、子どもの頃からアラビア語の語句には馴染みがあると言ってよいでしょう。それでは、東南アジアのイスラーム教育では、アラビア語の学習はどのように位置づけられているのでしょうか。

 イスラームではアラビア語は神が選んだ言語と考えられていますから、アラビア語で書かれたクルアーンのみが聖典の名に値します。そして、アラビア語はアラビア文字で表記されています。したがって、イスラーム宗教教育では、まず、アラビア文字の読み方を習得して、クルアーンを読誦できるようになることが重要視されています。クルアーンの朗唱コンクールも盛んです。

 ただ、初心者の段階では、文字をなぞって発音はできるが、意味は必ずしも分からない、というのが普通です。むろん、先にも述べたように、イスラームの影響を受けた社会では、アラビア語からの借用語が多いので、意味は何となく分かる、という場合もあります。たとえてみると、仏教を学んだことのない日本人が漢文で書かれた仏教経典(たとえば「色即是空、空即是色」)を声に出して読んでいるような状態を想像してみるとよいでしょう。だいたいの漢字は声に出して読めるし、部分的には意味も分かるところもあるが、全体として理解できている訳ではない、というイメージです。

 上級の段階に入るとアラビア語の文法の学習が始まり、意味も理解できるようになります。しかし、多くの人は文字が読めるところまでで終わり、アラビア語の習得まで進むのはイスラームに深い興味をもった人に限られます。

 また、アラビア語について注意しなければならないのは、クルアーンが書かれている文語と日常会話に使われている口語に分かれていることです。文語と口語の間には大きな違いがあり、口語は、さらに方言によって差異があります。したがって、イスラーム教育でアラビア語を学習したからといって、アラビア語を母語とする人とアラビア語で会話が流ちょうにできるようになる訳ではありません。さきほどの例で言えば、学校で古典漢文を習ったからといって中国語の会話ができる訳ではないのと似ています。

 最後に、アラビア文字(をもとに若干の改良を施された文字)はアラビア語以外の言語を表記するために使われてきました。ペルシア語やウルドゥー語の例が有名ですが、東南アジアでもマレー語を表記するジャウィ文字があります。現在では学校教育の普及によりラテン語による表記が一般的になりましたが、伝統的には、アラビア文字のアラビア語を読み書きすることとジャウィ文字のマレー語を読み書きすることは連続していたことに注意する必要があります。


質問4

 世界的に女性の権利を認める動きが活発になっている現代でも、ムスリム女性の被り物の着用は増えているのでしょうか?

回答

 インドネシアを例にとると、明らかに増えていると言えます。授業でも説明したように、インドネシアではとくに1980年度以降、経済的に余裕のある都市中間層が育つなかで、ムスリムとしてのアイデンティティが強まってきました。その結果として、女性の間では、ムスリムとしての自身のアイデンティティを確認するために、被り物の着用を選ぶ女性が増えてきました。この場合、被り物の着用は、強制されたものではなく、あくまでも良きムスリムとしての自らの意志で選んでおり、女性の権利と矛盾するものとは考えられてない点に留意する必要があります。インドネシアでは被り物がファッション(消費社会で顕著な現象です)のアイテムになっているのも、このような文脈で理解する必要があります。

 一方で、世界の他の地域に目をやると、被り物の着用が強要されている社会では、女性の権利を主張する手段として被り物を着用しないという選択肢が主張されていますし(イランの例)、公的な空間での宗教的シンボルの利用を禁じているフランスでは、ムスリムの女性が、被り物を着用する権利を主張しています。このように、被り物と宗教とジェンダーの関係は深く絡み合った問題であり、単純な答えがないことに留意してください。


質問5

 イスラームの信仰がコロナウイルスの感染拡大(あるいは防止)に影響することはあるのでしょうか?

回答

 コロナウイルスの感染拡大に関連して、インドネシアで、ある会社のワクチンがハラールか否かの議論が起こったりしており、イスラームの信仰とも無関係ではないと言えます。しかし、一方では、アメリカ合衆国でも一部の福音派キリスト教指導者がコロナウイルスの危険性を無視する発言をしたりしており、コロナウイルスへの対応については、イスラームだからという形で一般化することはできないと言えるでしょう。イスラームに限らず宗教の教理は教理だけで存在しているわけではありません。常に、教理を解釈し、その内容を信者に伝える「人」が介在していることに注意が必要です。問題となるのは、その「人」が何を意図してある解釈を広めているのかということになります。

2021年5月19日

今週は水曜3限に、アジア・アフリカ地域文化基礎のリレー講義の一環として「ラーマーヤナに見る東南アジアのインド化」という題目でZoomによるオンライン授業を行います。リレー講義全体の代表は土佐桂子先生ですので、リレー講義の運営・評価に関わる質問は土佐先生にお願いします。

このリレー講義では資料の提示、レポートの提出等にはTUFS-Moodleを利用しているので、必ず確認をしておいてください。

2021年5月14日

今週は金曜2限に、山内由理子先生のオセアニア地域基礎の授業にゲスト講師としてお招きいただき、「インドネシアとオーストラリア」というテーマで、Zoomによるオンライン講義を行います。

2021年4月21日

今週は水曜1限に、東南アジア地域基礎のリレー講義の一環として、「歴史(その1)」というテーマでZoomによるオンライン授業をおこないます。

資料の提供や授業後の課題テストはTUFS Moodle(ログインが必要)を使うので、かならず確認しておいてください。

2021年4月 1日

2021年度に担当するリレー講義あるいはゲスト講師として参加する講義を掲示します。授業についての問い合わせは代表教員(括弧内)にお願いします。注意:水曜3限アジア・アフリカ地域文化基礎の日程が5月12日から5月19日に変更されました。(2021年4月5日更新)

【春学期】

  • 4月21日 水曜1限 オンライン 東南アジア地域基礎「歴史(その1)」(宮田)
  • 5月14日 金曜2限 オンライン オセアニア地域基礎「インドネシアとオーストラリア」(山内)
  • 5月19日 水曜3限 オンライン アジア・アフリカ地域文化基礎「ラーマーヤナに見る東南アジアのインド化」(土佐)
  • 6月02日 水曜1限 オンライン 東南アジア地域基礎「宗教と社会(その1)」(宮田)

【秋学期】

  • 1月12日 水曜4限 オンライン 世界における多文化共生「日本における多文化共生」(水野)

          

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