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2012年9月30日

【インドネシア語専攻で勉強する人のために】

プランバナン寺院の浮彫に描かれたラーマーヤナを理解するための文献・資料・ウェブ上のリソースの紹介をします。データは順次追加していく予定です(2017-01-06改訂)。
【お断り】ここで紹介している文献・資料等はラーマーヤナの浮彫の理解に資すると私が判断したものを挙げています。個々の文献・資料等の内容のすべての正確さを保証するものではありません。みなさんの判断でご利用ください。修正すべき点や追加すべき文献・資料等があればぜひお知らせください(ただし、掲載の是非はこちらに任せていただきます)。

■ラーマーヤナの浮彫に関するもっとも基本的な研究書です。オランダ語の原書の英訳で、新しい序論が付けられています。

Stutterheim, Willem. R?ma-Legends and R?ma-Reliefs in Indonesia. New Delhi: Indira Gandhi National Centre for the Arts, 1989.

■世界文化遺産に登録されたボロブドゥール寺院とプランバナン寺院を概説しています。

青山亨「ボロブドゥールとプランバナン」『季刊 文化遺産』5, 1998, p.14-21.

■インドネシアにおけるラーマーヤナの受容と展開を概観した論文です。

青山亨「インドネシアにおけるラーマ物語の受容と伝承」金子量重・坂田貞二・鈴木正崇(編)『ラーマーヤナの宇宙:伝承と民族造型』春秋社1998, p.140-164.

■書名には出てきませんが、後半にプランバナン寺院の紹介があり、小さいですがきれいに撮影された浮彫の写真も掲載されています。

伊東照司、田枝幹宏『ボロブドール遺跡めぐり』(とんぼの本)新潮社1992.

■インドネシアの古代宗教建築を建築学の立場から詳説した研究書です。プランバナンについても豊富な図版をつけて説明しています。

千原大五郎『インドネシア社寺建築史』日本放送協会1975.

ただし、チャンディAとチャンディBの名づけ方が現在の慣行とは逆になっていることに注意してください。この本のチャンディAは一般にチャンディB、チャンディBはチャンディAと呼ばれています。

■バッティが書いたサンスクリットのラーマーヤナ『バッティ・カーヴィヤ』は9世紀中頃に古ジャワ語に翻案されました。これが『ラーマーヤナ・カカウィン』です。翻訳ではなく翻案というのは、前半はかなり忠実な訳ですが、後半は自由な訳になっているからです。この作品は東南アジアで現存する最古の文学作品と呼んでもよいでしょう。古ジャワ語のテキストとあわせて英訳が出版されています。2015年に新しいテキストと英訳が出版され、今まで以上に原文に親しむことができるようになりました。

Soewito Santoso. Ramayana Kakawin. 3 vols. New Delhi: International Academy of Indian Culture. 1980.
Willem van der Molen.?R?m?ya?a: The Story of R?ma and S?t? in Old Javanese. Romanized Edition. Tokyo:?ILCAA, Tokyo University of Foreign Studies. 2015.
Stuart Robson.?The Old Javanese R?m?ya?a: A new English Translation with an Introduction and Notes.?Tokyo:?ILCAA, Tokyo University of Foreign Studies. 2015.

■ラーマーヤナの浮彫を理解するためには、現在のバリの文化を参考にすることができます。バリのヒンドゥー文化を知るための日本語の基本的な文献です。

吉田貞吾(監修)・河野亮仙・中村潔(編)『神々の島バリ:バリ=ヒンドゥーの儀礼と芸能』春秋社1994.


■ジャワ社会の「インド化」は同時にインド文化の「現地化」とも言えます。ラーマーヤナの浮彫とは直接には関係がありませんが、この現地化(localization)の考え方を提案した文献です。

Wolters, O.W. History, Culture and Region in Southeast Asian Perspectives. Rev. ed. Ithaca: Cornell University Southeast Asia Program Publications, 1999.

■世界文化遺産であるボロブドゥール寺院、プランバナン寺院およびラトゥ・ボコ遺跡は現在、観光公園となっています。公園の公式サイトです。

Borobudur, Prambanan & Ratu Boko.
http://www.borobudurpark.com/temple/prambananTemple

■インドネシアが大好きな方が個人で運営されているサイトです。ラーマーヤナの浮彫の写真を解説付きで見ることができます。

私の好きなインドネシア:ボロブドゥール、プランバナンとジャワの遺跡.
http://www.geocities.jp/indo_ka/candi/candi320.htm

■植民地期から現代までのオランダ人研究者によるプランバナン寺院についての研究を振り返る研究書です。編者による序論に続いて重要な研究論文の英訳(抄訳もあり)が集められています。
Jordaan, Roy E. ed., In Praise of Prambanan: Dutch Essays on the Loro Jonggrang Temple Complex. Leiden: KITLV Press, 1996.

■東南アジアのインド化について大きな見取り図を示すことを狙いとしています。

青山亨「インド化再考―東南アジアとインド文明との対話―」『総合文化研究』10, 2007, p.122-143.

■ラーマーヤナの浮彫など中部ジャワの寺院の浮彫に見られる奏楽舞踊の図を音楽人類学の視点から文責します。

由比邦子「中部ジャワの奏楽舞踊図浮彫に見る舞踊と音楽」『民族藝術』12, 1996, p.130-138.

■ラーマーヤナの伝統が現在のインドネシアにも脈々と受け継がれていることを明らかにする論文です。

小池まり子「インドネシアにおける国民文化の創成:中部ジャワとバリにおける舞踊劇スンドラタリ・ラマヤナを事例として」『言語・地域文化研究』15、2009、p.163-184.

■ラーマーヤナの浮彫に見られる人物の仕草や姿勢をインドの古典的な舞踊理論から読み解く試みです。

Levin, Cecelia. "The R?m?ya?a, R?makath? and Loro Jonggrang," in Narrative Sculpture and Literary Traditions in South and Southeast Asia, ed. Marijke J. Klokke (Leiden: Brill, 2000), 59-72.
          

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