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2013年9月10日

【インドネシア語専攻で勉強する人のために】

このリストは、本学の《学生のための基本文献ガイド「TUFS-ビブリオ」》の一部として青山が作成したものです。「TUFS-ビブリオ」は、本学に進学したばかりの学生が、地域研究を自分で始めようとするときの初歩の案内となることを目指しています。「TUFS-ビブリオ」にはこのリストのPDF版が掲載されているのでプリントアウトするのに便利です。

リストの内容の一部は、以前に作った「インドネシアについて学ぶ本」とも重複していますので、そちらも参照してください。

2013年に作成したリストに2015年と2019年に追加しました。(最終更新日2018-07-05)

〈事典・工具書〉
1. 石井米雄・高谷好一・立本成文・土屋健治・池端雪浦(監修)『新版 東南アジアを知る事典』平凡社、2008年
飛躍的な変貌を遂げている東南アジアの状況を総覧するのに便利で信頼のおける事典。テーマ別の項目ガイドが付いているので参考にして欲しい。巻末の各国別の概論や年表、文献案内も便利だ。

2. 土屋健治・加藤剛・深見純生(編)『インドネシアの事典』同朋舎、1991年
インドネシアに特化した事典としては最良の事典。内容的にはやや古くなった部分(とくに政治・経済関連)もあるが、そこにさえ注意しておけば、有益な情報も多い。1994年に出た第2刷の利用を勧める。

〈入門・概説書〉
3. 今井昭夫(代表)・東京外国語大学東南アジア課程(編)『東南アジアを知るための50章』(エリア・スタディーズ129)明石書店、2014年
東京外国語大学の東南アジア課程教員が協力して作り上げた東南アジア入門書。東南アジアについて学ぶ1年生を対象にした「地域基礎」授業の実践に基づき、地理、歴史、宗教、社会、政治、経済、文学、言語などの切り口から東南アジアの全体像を理解することを目指している。

4. 村井吉敬・佐伯奈津子・間瀬朋子『現代インドネシアを知るための60章』(エリア・スタディーズ113)明石書店、2013年
自然、暮らし、文化・芸術、教育・宗教、政治、地域紛争とテロ、経済、開発、インドネシアと日本という9つの領域のもとに、最新かつ豊富な情報をコンパクトに盛り込んでいる。巻末のブックガイドもさらに深い理解のために有益だ。姉妹編として『インドネシアを知るための50章』もあるが、入門としては『60章』の方がバランスが取れている。

5. 宮崎恒二・山下晋司・伊藤眞(編)『アジア読本 インドネシア』河出書房新社、1993年
インドネシア世界へ、日々の暮らし、文化に触れる、国家と開発、インドネシアと日本という5つの領域のもとにテーマ別の解説をまとめている。「暮らしがわかるアジア読本」という副題のとおり、日常生活や伝統文化の記述が興味深い。

〈通史〉
6. 池端雪浦(編)『東南アジア史II 島嶼部』(世界各国史6)山川出版社、1999年
インドネシアが国家として独立したのは1945年のことである。とすれば、古代からのインドネシアの歴史は東南アジア全体の歴史の中で読み解かなければならない、ということが理解されよう。現時点で最良の東南アジア通史である。姉妹編である『東南アジア史I 大陸部』も読んで欲しい。

7. 宮本謙介『概説インドネシア経済史』(有斐閣選書)有斐閣、2003年
経済史と銘打っているが、ジャワを中心に社会状況にも目配りしたインドネシア通史として読める。とくに、独立前のオランダ植民地支配や、独立後のスハルト体制下の開発独裁を知るための入門として有益。

8. 増原綾子・他(編著)『入門 東南アジア現代政治史』福村出版、2010年
構成が東南アジア史の枠組みなので、インドネシアについての記述は分散しているが、記述を繋いで通して読むことで、独立以降から民主改革期を経てユドヨノ政権にいたるインドネシアの政治・経済の流れがよく理解できるように整理されている。

〈専論・研究書〉
9. 永積昭『インドネシア民族意識の形成』東京大学出版会、1980年
20世紀初頭のインドネシアにおける「我らインドネシア人」という意識の形成を描いた研究。エピソードも豊富で読みやすく、インドネシアにおけるナショナリズムを理解するための好著。

10. 後藤乾一・山崎 功『スカルノ―インドネシア「建国の父」と日本』(歴史文化ライブラリー117)吉川弘文館、2001年
スカルノの生涯はインドネシア建国の歴史であるとともに、日本とインドネシアの交渉の歴史の一コマでもある。本書は、日本側の史料も多く使って、スカルノが駆け抜けた時代を生き生きと描いている。

11. 小林寧子『インドネシア―展開するイスラーム』名古屋大学出版会、2008年
インドネシアのムスリムは国民の約9割、信徒数では世界最大であり、イスラームの理解なくしてインドネシアを理解することはできない。この本はインドネシアにおけるイスラームの展開を、初期から現在にいたるまで、実証的なデータに即して論じている。

12. 佐藤百合『経済大国インドネシア―21世紀の成長条件』(中公新書)中央公論社、2011年
1998年のスハルト権威主義体制の崩壊のあと、民主改革期の混乱を乗り越え、インドネシアは着実に経済成長を遂げており、日本企業の進出も著しい。本書は、人口ボーナス、民主主義的制度、経済テクノクラート、産業人といったいくつかの成長の条件を、豊富なデータを用いて明らかにしている。

13. 倉沢愛子・他(編著)『消費するインドネシア』慶應義塾大学出版会、2013年
経済成長にともなって都市中間層が台頭し、インドネシアは急速に消費社会へと変貌しつつある。本書は、そのようなインドネシア社会の今を、消費、商品化、大衆化というキーワードを使って複数の研究者が切り取っている。「コンビニ」、「フィスブック」といったコラムもあって興味深い。

14. マルバングン・ハルジョウィロゴ(著)、染谷臣道・宮崎恒二(訳)『ジャワ人の思考様式』めこん、1992年
多民族国家であるインドネシアの人口の中で、約4割の最大数を占めるのが、独自の言語、伝統、文化を持つジャワ民族である。本書はジャワ人の知識人が、ある時は批判的に、ある時は弁護的に、自分の文化であるジャワ文化の特徴と価値観を説明する「ジャワ人論」である。丁寧な注と解説をあわせて読むことで、インドネシアの多様な文化の一端を知る手掛かりとなるだろう。

15. プラムディヤ・アナンタ・トゥール(著)、押川典昭(訳)『人間の大地』(上・下2巻)めこん、1999年
プラムディヤはインドネシアを代表する作家(1925年~2006年)。彼の代表作であるこの長編小説は、オランダ植民地支配末期の社会における民族主義運動の胎動を、青年ミンケの人生を軸に描く。著者がスハルト政権期に政治犯として流刑されていたブル島で完成したブル島4部作の第1部にあたる。いずれも日本語に訳されているので、ぜひ読破して欲しい。

【追加】

16. 貞好康志(著)『華人のインドネシア現代史―はるかな国民統合への道』木鐸社、2016年
中国から海外に移住し、現地の国籍を得た人々とその子孫を華人と呼ぶ。世界最大の華人人口を抱えるインドネシアにとって華人の国民統合は大きな課題の一つである。本書は、20世紀以降のインドネシアにおける華人の国民統合への歩みをまとめた労作。

17. 増原綾子・鈴木絢女・片岡樹・宮脇聡史・古屋博子『はじめての東南アジア政治』有斐閣、2018年
第1部各国政治史、第2部比較政治、第3部国際政治からなり、現代の東南アジア地域を理解するための好入門書である。

          

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