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3年次ゼミで学ぶこと

【インドネシア語専攻で勉強する人のために】

2年生のみなさんは、2学期になると、3年次に所属するゼミを決めなければなりません。

3年次のゼミの大事な目標の一つは、4年次に卒業論文(または卒業研究、以下、卒論)を作成するための基本的な概念と技法を身につけることです(なお、もう一つの大事な目標は、対象となる地域―インドネシア―を理解することです)。

ここでは、とくに基本的と思われる概念と技法の概要を書き出しておきます。これらの概念と技法は以下のようにいくつかのグループにまとめることができます。(最終更新2021-02-06)

0. 論文とは何かの理解
卒論を作成するためには、論文とは何かを理解することが前提となります。一般に論文として必要な要素とされているのは次の4点です。

1. 「問い」:何らかの「問い」を提起している。
2. 「答え」:「問い」に対して、論理的に「答え」(結論)を出している。
3. 「理由」:「答え」を出すにあたって、「理由」を示している。
4. 「根拠」:「理由」を裏付けるための「根拠」(文献やデータなどの資料)を提示している。

卒論を書くにあたっては、まず、「問い」から「理由」を経て仮の「答え」に至る全体の見通しを立てる必要があります。これを「仮説」を立てると言います。仮説を立てるためには、上の4要素を意識しながら多くの関連文献を読むことが大切です。仮説をまず立ててみることで、仮説を支えるためにはどのような根拠をどのように集めるか、という次の具体的なステップが見えてきます。
【参考になる本】
・山田剛史・林創『大学生のためのリサーチリテラシー入門:研究のための8つの力』第3版(ミネルヴァ書房、2011年、とくにpp.110-111)(amazon

1. 発想にかかわる技法
卒論作成の全般にかかわる技法ですが、とくに、卒論のテーマを考え、具体的な構成を考えるときに、必要となります。この部分では、ロジカル・シンキング、クリティカル・シンキング、ブレーン・ストーミング、kJ法といった、発想法にかかわる技法が役にたちます。また、卒論のテーマは、「○○における□□ついて」といった体言止めにするよりも、「なぜ○○は□□か?」といった疑問形にする方が発展性があることも覚えておきましょう。

2. 論文の作成にかかわる技法
卒論という最終成果を作成するために、かならず身につけておくべき技法です。論文の構成も理解しておくべきことですが、加えて、1) 参考文献リストを書く方法、2) 「正しい引用」を行う方法、3)注の付け方の3点は絶対におさえておく必要があります。
【参考になるページ】
参考文献一覧の書き方
引用するときの出典表示の方法 引用の方法 最新・ウェブページの引用の方法
最新・卒論の注の付け方

【参考になる本】
・河野哲也『レポート・論文の書き方入門』第3版(慶應義塾大学出版会、2002年)(amazon
・石井一成『ゼロからわかる大学生のためのレポート・論文の書き方』(ナツメ社、2011年)(amazon
・白井利明・高橋一郎『よくわかる卒論の書き方』第2版(ミネルヴァ書房、2013年)(amazon

3. 論理的な日本語を書く技法
論文の作成にかかわる技法ですが、これだけの独立した技法と考えた方がいいでしょう。大きく分けると、1) 悪文でない日本語を書くという、文レベルの技法と、2) パラグラフ単位で文章を組み立てるという、文章レベルの技法に分けることができます。
【参考になるページ】
読みやすい文章を書くために 悪文と良文から学ぶロジカル・ライティング
パラグラフの重要性と書き方
【参考になる本】
・岩淵悦太郎『悪文』第3版(日本評論社、1979年)(amazon
・倉島保美『論理が伝わる「書く技術」(講談社、2012年)(amazon
・吉岡友治『シカゴ・スタイルに学ぶ論理的に考え、書く技術』(草思社、2015年)(amazon

4. データの収集にかかわる技法
卒論の材料の集め方にかかわる技法です。大きく分けると、1) 文献資料を集める方法と、2) フィールドワークによって資料を集める方法に分けることができます。文献資料は1次資料と2次資料にわけることができます。文献資料を集める最初の一歩は大学の附属図書館を活用することです。附属図書館のオンラインジャーナル・データベースも積極的に利用してください(学外からアクセスする方法)。フィールドワークには参与観察、聞き取り、アンケートなどの方法があります。実際には、研究のテーマによって必要となるデータの種類は変わってきますが、ほとんどの場合、複数の種類のデータを収集する必要があります。当然のことながら、先行研究に関わる文献の収集はどのような研究テーマでも必要となります。また、現地(インドネシア)に行かなければデータが入手できない研究テーマの場合は、現地に行く時期や予算、データの収集方法なども計画しておく必要があります。
【参考になるページ】
日本語の図書や雑誌論文を検索する
社会調査工房オンライン

【参考になる本】
・小笠原喜康『新版 大学生のためのレポート・論文術』(講談社、2009年)(amazon)
・佐藤郁哉『フィールドワーク―書を持って街へ出よう』増訂版(新曜社、2006年)(amazon
・波平恵美子『質的研究 Step by Step:すぐれた論文作成をめざして 第2版』(医学書院、2016年)(amazon
・森山和夫『社会調査法入門』 有斐閣ブックス(有斐閣、2003年(amazon

5. パソコンの使用にかかわる技法
卒論の作成にパソコンの使用は必須です。とくに、ワード(ワープロソフト)の使い方に慣れておくことは大切です。ワードにはたくさんの機能がありますが、タブ、インデント、スタイルシート、セクション、注などの機能を使いこなせるようになると作業がはかどります。また、データの保存・バックアップ・共有のためにクラウド・ストレージの活用を検討するとよいでしょう。ほかに、研究テーマによっては、エクセル(表計算ソフト)や画像処理ソフトを使う必要が生じることがあります。学生時代に身に付けておくと、卒業後も役にたつ技法です。
【参考になる本】
・田中幸夫『卒論執筆のためのWord活用術』(講談社、2012年)(amazon

6. データの分析にかかわる技法
これはデータの種類と性格によって異なります。さらに、データの種類と性格は、研究のテーマによって異なります。大学に歴史学、社会学、文化人類学といった学問分野が存在するのは、それぞれの研究テーマに特有のデータの種類と性格があり、データの特性に応じた分析方法が工夫されてきたという歴史的経緯に理由があります。したがって、この点についてはゼミだけではカバー仕切れないので、専門分野の授業でしっかりと学んでおくことが必要です。アンケートやインタビューのデータを処理する場合にも基本をしっかりと理解しておく必要があります。地域研究では、さらに地域の言語の習得と文化の理解という条件が加わります。

7. 研究倫理の理解
最後になりましたが、実は研究にあたって必ず踏まえておかなければならない大切な前提条件として研究倫理があります。とくに理解しておいて欲しいポイントは以下の2点です。
1) 個人情報を適切に取り扱うこと
「研究活動のために収集した資料、情報、データ等により得られた個人情報については、プライバシー保護の重要性を十分認識のうえ、適正に取り扱う」ことが求められています(本学の『研究活動に関する研究者行動規範』第8条より抜粋)。
2) ねつ造・改ざん・盗用を行わないこと
これらは、存在しないデータを勝手に作り上げること、データを自分の都合の良いように作り替えること、他人の意見やデータを出典を明示することなく利用して自分の意見やデータであるかのように記すことで、いずれも研究倫理に反する不正行為です。人文社会系の学生の皆さんの場合は、とくに「意図しない盗用」を避けるよう気をつけてください。「意図しない盗用」を避けるためにも上記の「正しい引用」を徹底することが大切です。あわせて本学の『剽窃・盗用防止ガイドライン』を必ず読んでおいてください。

          

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