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【4年次ゼミ】10月20日

【4年次対象ゼミ】

今週はMさんに「タマン・シスワと当時のインドネシアでの民族運動との関係性」というテーマで、卒論の進捗報告をしてもらいました。「民族運動ではなく、政治運動とするべきか否か」という問題設定が立てられています。この議論をするためには、まず、「民族運動」(正確には民族主義運動)と「政治運動」の定義をはっきりさせるとよいでしょう。

民族主義運動を植民地支配からの民族(=nation)の独立を目指す運動と定義するのであれば、ブディ・ウトモは民族主義運動ではなく、民族主義前史としてとらえるべきでしょう。また、政治運動を政治的な目的(植民地支配からの独立も含む)を実現するための運動と定義するのであれば、民族主義運動の多くは政治運動の中に含まれることになります(ただし、合法的な手段による独立が実現困難な場合には、非合法的な手段による独立、武力による独立の達成が目的になる場合もあります)。タマン・シスワは民族意識を重視した教育をおこなったという点で、広い意味での民族主義運動の一部に含まれるでしょうが、タマン・シスワ自体を政治運動とみなすことはできないと思われます。

また、タマン・シスワの民族教育という場合、その民族がジャワやバリという民族(ethnic group)の意味なのか、インドネシアという独立前にはまだ存在していない国民(nation)の意味なのか、区別する必要があること、さらに、後者であっても、実際にはジャワの文化がインドネシア国民の文化を代表しているという事情があったことに留意する必要があることが確認されました。

次回は、Tさんに進捗報告をしてもらう予定です。
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