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【リレー講義 地域基礎 II】 6月29日

【リレー講義】

この週は、リレー講義の分担者として、東南アジア地域基礎II「東南アジア研究入門 宗教と社会 その2 イスラーム」の授業をおこないました。授業の詳細と配付資料については岡野賢二研究室のページをご覧ください。

朝一の授業ですが、ビデオを見たうえでの作業を入れたので、心身ともに目覚めてくれたでしょうか。今日の授業では、以下の3点を押さえました。
・世界宗教としてのイスラームの基本を理解する。
・東南アジアへのイスラーム伝播の歴史と現状の基本を知る。
・20世紀後半からのイスラーム復興の潮流と現在の諸問題の基本を理解する。
いずれも、あくまでも「基本」なので、さらに理解を深めるようにしてください。

授業では以下の流れで話をしました。
1. 世界宗教としてのイスラーム
2. 東南アジアでのイスラームの歴史的展開
3. 東南アジアでのタイプ別のイスラームの特徴
4. タイプAの国におけるイスラームの現代の潮流
5. タイプBの国おける紛争

授業終了時に提出してもらったコメントシートによる出席点と、「宗教と社会」ユニットの最後にまとめておこなう小テストの点数でこの授業の評価をおこないます。

【追記】
メッカに巡礼者の数については正確な統計が見つかりませんが、メディアの報道によれば昨年2008年には史上最高の300万人が国内外からメッカに巡礼したとのことです。

【追記】
コメントシートに書いてあった質問の中から代表的なものを選んでお答えします。

《質問1》
インドネシアでは聖者崇拝は偶像崇拝として問題視されないのですか?
《解答1》
イスラーム社会はけっして一枚板でありません。たとえ教理が同一であっても、その解釈は多様でありえます。たしかに聖者崇拝はイスラーム主義の立場に立つ人々(たとえばサウジアラビアのワッハーブ派)からは非イスラーム的慣行として排斥されています。しかし、すべてのイスラーム教徒が同じ立場に立っているわけではなく、聖者崇拝はインドネシアに限らずイスラーム世界では広く見られる信仰です。とくにインドネシアのジャワでは、この地にイスラームを初めて伝道したとされる九聖人の聖廟への崇拝に根強い人気があります。

《質問2》
イスラームは仏教やキリスト教をどう考えているのでしょうか?
《解答2》
イスラームのなかには、クルアーンに現れた預言者以外にもさらに多くの預言者が歴史上現れて神の啓示をそれぞれの言葉で伝えたと考える立場があります。この立場では、仏陀も神の言葉を伝えた預言者の一人です。キリスト教の創始者であるイエスはクルアーンの中でも預言者として認められており、キリスト教徒はユダヤ教徒とともに啓典の民、すなわち神の啓示を受けた人々とされています。

《質問3》
日本におけるイスラームの布教はどうなっているのでしょうか?
《解答3》
日本に住む日本人ムスリムの数はけっして多くはありませんが、地道な活動が続いています。たとえば、日本ムスリム協会のウェブサイトをごらんください。

《質問4》
ビデオの中でインドネシアの女性が「礼拝をすませると借金を返済したような気持ちになる」と言っていたのはどういう気持ちでしょうか?
《解答4》
礼拝などの五行の実行は、ムスリムに対する神の命令です。命令という言葉が強ければ、約束と言ってもよいでしょう。この神の命令にしたがうことで、死後、最後の審判のあと、よいムスリムには天国での永遠の命が与えられると信じられています。このように、五行の実行は、ムスリムにとって文字通り「命がかかった」行為であることを忘れてはいけません。しかし、その一方で、そのような行為が子どもの頃から習慣化していれば、ちょうど私たちが歯磨きをしないで寝るのを気持ち悪く感じるように、感覚的な違和感として感じられるという心理的な側面も指摘できると思います。

《質問5》
ムスリム・ファッションはとてもかわいいですが、神聖といえるのでしょうか?
《解答5》
ムスリムの女性が頭にかぶるベールは宗教儀礼のための衣服ではなく、日常生活の衣服の一部です。したがって、それ自体が神聖であるべきものではありません。スライドでは白色のものを紹介しましたが、じっさいにはカラフルなものも多くあります。

《質問6》
イスラーム金融というのはどのような仕組みなのでしょうか?
《解答6》
イスラームでは利子は禁じられています。したがって、イスラーム銀行は、顧客から預かったお金を事業に投資し、得られた利益があれば配当金として顧客に分配する、という考え方に基づいて運用されています。

《質問7》
スンナ派とシーア派の違いはなんでしょうか?
《解答7》
シーア派は、ムハンマドの従弟であり娘婿であったアリーの子孫こそが最高指導者(イマーム)であるべきと考える派です。基本的な教理や実践のうえでスンナ派と大きな違いがあるわけではありません。シーア派の特徴的な儀礼の一つとして、アーシューラーがあります。これはアリーの息子フサインがウマイヤ朝の軍隊と戦って戦死したことを追悼する祭です。また、シーア派の主流である十二イマーム派は、アリーの子孫である12人のイマームが続いたあと、第12代イマームは「お隠れ」の状態になっており、その期間中は、法学者がイマームの意図に基づいて信徒を指導する、と考えています。現在のイランの法学者による統治はこの理論に基づいています。

          

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