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デジタル時代のビデオ教材の作成 その2/2

【ブログについて】

デジタル時代のビデオ教材の作成 その1/2」を書いたのが昨年6月のことなので、なんと一年近くが経過したことになる。むろん、好んで放置していたわけではないが、その2がすぐに書けなかったのは、その時点で十分な情報がなかったからである。その後、デジタル放送対応のメディアが一般化し、情報も増えてきたし、私自身が研究室周辺のデジタル機器(とくにHDD/BDレコーダー)の取り扱いにも慣れてきたので、ようやく自分でも納得のいくその2が書けることになった。

テレビ番組の録画という観点からみたとき、デジタル放送とアナログ放送の最大の違いは、デジタル放送にはCPRM(Content Protection for Recordable Media)というコピー制御信号が付加されていることである。CPRMは、2004年4月5日からBSおよび地上波のデジタル放送に導入された。この時点でのCPRMは「コピーワンス」と呼ばれる方式で、1回だけコピーすることが認められていた。1回しかコピーできないことにはユーザー側の不満が多かったため、2008年7月4日からは「ダビング10」という方式に変わり、9回コピー1回ムーブが認められるようになった。

ここで重要なポイントは、「コピーワンス」であろうが「ダビング10」であろうが、CPRMが施された放送番組をデジタルで録画するためには、CPRM対応のレコーダーが必要であり、さらに、DVDで再生するためには、CPRMに対応した録画メディアとCPRMに対応したプレーヤーが必要となるということである。

当然のことだが、VHSテープなどにアナログで録画する場合にはCPRMを気にする必要はない(むろん、DVDでもアナログ録画の場合は同様であるが、VHSテープの録画・再生環境ではデジタルという選択肢がそもそも存在しないので、ある意味気楽である。)。ここでは、あくまでもDVDによる再生を最終的な目標とした、デジタル放送の録画について考えてみたい。また、そのための手順としては、番組をいったんHDD(ハードディスクドライブ)レコーダーにまとめて録画しておき、そこから番組ごとにDVD(Blu-rayも視野にいれる)に保存するという方法を前提としておきたい。

そうすると、CPRMが施されたデジタル放送を録画し、DVDをメディアとするビデオ教材にするためには、以下のポイントをクリアしておく必要がある。

  1. CPRMに対応したHDD・DVDレコーダー
  2. CPRMに対応した記録用DVDメディア
  3. 2.のDVDが再生できる、CPRMに対応したDVDプレーヤー
  4. 2.のDVDが再生できる、CPRMに対応したノートパソコン

教材としての利用を考えると、できるだけ多くの再生機器に対応したDVDメディアであることが望ましい。また、長期的に安定して広く(安価に)供給されるメディアであることも考慮すべき条件であろう。これらの点を考えると、記録用DVDメディアとしてもっとも普及しているDVD-Rが第一候補となる。

ただし、DVD-Rにはひとつ注意すべき点がある。それは、CPRMに対応する記録用DVDメディアとしてはDVD-RWとDVD-RAMの製品化が先に進んだの対して、CPRMに対応するDVD-Rの製品化が遅れたことである。そのため、初期の機種ではCPRM対応のDVD-Rには対応していないものがあるし、CPRM対応のDVD-Rが安く出回りだしたのは最近である。

もう一つは、DVDに対する録画モードにはVideoモードとVideo Recordingモードの2種があるが、このうちCPRMに対応しているのはVRモードだけだということである。

したがって、DVD-Rにデジタル放送を録画して使うためには、上記の1.-4.すべてにおいて、CPRM対応、VRモード対応、DVD-R対応の三つの条件がそろっている必要がある。

また、パソコンについては、ハードが対応しているだけではなく、DVD再生ソフトの方も対応している必要がある。

いずれにせよ、最新の機種であれば問題はないと思われるが、DVD-RによるCPRMへの対応は2004年の冬になるので、この時期前後までの機種を使う場合には注意が必要となる。

長くなったが、結論から言えば、デジタル放送のテレビ番組にはCPRM(Content Protection for Recordable Media)と呼ばれるコピー制限がついており、そのような番組を録画しDVDに保存するためには、CPRMに対応した記録メディア(DVD-Rなど)と機器(HDD/DVDレコーダー)が必要だということである。

この点については、太陽誘電のDVD-Rに付いてきた説明書にうまく整理されているので、掲載しておきたい。当然のことながら、メディアとしてDVD-Rを想定している。

 CPRM対応レコーダーCPRM未対応レコーダー
デジタル放送 録画 ○ ×
 再生 ○ ×
アナログ放送 録画*  ○ ○**
 再生 ○ ○
注)*VRモードで録画した場合は、DVD-RのVRモード未対応機器では再生できない。 **一部の機種では録画できない。

この表をふまえて、あらためて基本を押さえておこう。デジタル放送のテレビ番組はCPRM対応の機器でなければ、録画も再生もできない。したがって、CPRM対応の機器を揃えておくことは最低限の条件となる。デジタル放送に対応していればアナログ放送はまったく問題なしである。

DVD-Rの規格は、DVD-RAMやDVD-RWと比べてCPRMへの対応が遅れていたが、現在はCPRM対応の機器も一般化しているし、メディアも安価なものが販売されようになった。DVD-Rは記録型のDVDとしてはもっとも普及している。こうとなると、デジタル放送の録画においてはDVD-Rは有力な選択肢といえる(これ以外ではDVD-RWであろう)。私自身もこの方向で教材作成をしていきたいと考えている。

すでに述べたように、DVD-Rでデジタル放送を録画する場合はVRモードで録画しなければならない。これは、VRモードしかCPRMに対応していないためらしい。かつては再生専用のDVDプレーヤーがDVD-Videoモードにしか対応していなかったのでVRモードで録画したDVD-Rが再生できないという問題があったのだろう。しかし、VRモード自体がVideo Recordingの名称どおり録画を前提としたモードであって使い勝手はいいし、現在ではVRモードに対応していないDVD再生環境の方が珍しいであろうから、大きな問題とは思えない。

というわけで、パソコン用のDVD再生ソフトを含めて、CPRM対応の録画・再生環境を整えておくという前提条件で、DVD-Rによるテレビ番組の教材化を進める、というのが現時点での結論である。

わかってみれば簡単な結論だが、実は、私の自宅のパナソニック製HDD/DVDレコーダーはDVD-RAMとDVD-Rに対応していて、DVD-RAMの方はCPRMに対応しているが、DVD-Rの方はCPRM未対応なため、HDDに録画したデジタル放送はDVD-RAMでしか持ち出すことができず困っていたのである。要は無理とわかった今では、大学で導入した新しいレコーダー(DVD-RのCPRM対応)で録画することにしている。できないことでも、できない理由がわかっていると、なにやら納得できるものである。

このエントリーを書くにあたっては、家電選び参考所のDVDレコーダーに関する記事が丁寧で分かりやすく大変に参考になった。

【追記】
記録用のDVDには、「データ用」と「録画用」がある。本来、基本的な構造には違いはないが、「録画用」の販売価格には著作権者への利益還元を目的とした私的録画補償金が含まれている。CPRM導入後は、「録画用」のみがCPRMに対応しているので、デジタル放送を録画するためには「録画用」のDVDを使うことが必須である。

【追記】
録画したDVD-Rを、録画に使った機材以外の機材で再生するためには、録画をおこなった機材でDVD-Rに対してファイナライズをおこなっておく必要がある。これはデジタル放送の録画自体とは無関係だが、ビデオ教材の作成にあたって忘れると困ることになるので、念のために特記しておきたい。

【追記】
DVD-RにVRモードで録画する場合は、録画に先だって、DVD-RをVRモードで録画できるようフォーマットしておく必要がある。これもデジタル放送の録画自体とは無関係だが、ビデオ教材の作成にあたって忘れると困ることになるので、念のために特記しておきたい。

          

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