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11月17日 【ジャワ文化概説の授業】

【ジャワ文化概説】

今日のジャワ文化概説では、先週に引き続いて、ヒンドゥー叙事詩「ラーマーヤナ」について講義をおこないました。

前半は、先週に続いて、9世紀に建立されたプランバナン寺院の浮き彫りをスライドで紹介しながら、ラーマーヤナの物語をたどりました。このなかで、いくつかの注意点をあげています。

1. 言葉の力。言葉、とくに神やバラモンや王によって発せられた言葉は、必ず実行または実現されなければならないという物語的約束があります。これが未来についての言葉であれば予言、相手を傷つける言葉であれば呪いということになります。ラーマーヤナでは、発せられた言葉によって登場人物の行動が規定される場面があり、物語の展開の鍵をにぎることになります。

2. 森と都の対比。森は危険な所として描かれています。森は野獣や化け物が徘徊するところであり、普通の人間が入るところではありません。森に入っていく人間は、猟師のような特別な職業をもつ人か、修行者のように自らの意思で文明の生活を捨てた人々です。森の化け物は、マラリアのような伝染病がはびこっていた古代においては、目には見えなくても現実に人間を危険にさらす存在を、物語的に表現したものだと言えるでしょう。

3. 肉体に出入りする霊。古代インド的生命観では、地上に肉体をもって存在する生き物は、死ぬと、その肉体から霊が抜け出し、新たな生命形態を得ると考えられていました。これが輪廻転生の考え方です。しかし、ジャワでは、生まれ変わるという側面よりも、もともと天界にいた存在が、何かの理由で(罪に対する罰として)地上に肉体をもった存在として生まれ変わり、それが死ぬことによって、霊を捉えていた肉体を脱して、本来の姿に戻って天界へと帰還するという側面が強調されています。この、死による肉体からの霊の解放と、天界への帰還を、ジャワやバリではモクサと呼んでいます。

プランバナン寺院の浮き彫りを紹介したあと、現在のワヤン・クリ(人形影絵芝居)やワヤン・オラン(人間が演じる芝居)やラーマーヤナ・バレーを紹介し、ジャワでは1000年以上の年月を経ても、ラーマーヤナの基本的な構造やディテールが維持され、イスラームが多数派をしめるようになっても、民衆の間で愛好されていることを示しました。

最後に、バリのケチャッのビデオを紹介し、スグリウォ(スグリーヴァ)に破れたスバリ(ヴァーリン)がモクサする場面を示して、プランバナン寺院の浮き彫りに見られるモクサの概念が現在も生き続けていることを説明しました。

来週が外語祭のため、休講です。次回の講義は、再来週になります。タイのラーマキエンなど、大陸部でのラーマーヤナの展開に触れる予定です。

          

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