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【3年次ゼミ】6月11日

【3年次対象ゼミ】

今週は、先週に引き続いてベネディクト・アンダーソン『定本 想像の共同体:ナショナリズムの起源と流行』の書評レジュメをもとに、とくに第3章の「国民意識の起源」で焦点が当てられている「出版資本主義」(print capitalism)について検討しました。

前半では、出版言語の出現について検討しました。ヨーロッパの知識人の文章語であったラテン語から、民衆が読み書き可能なドイツ語などの「俗語」に出版言語が変化したことの重要性を確認しました。また、出版言語の確立は、多数の方言の中から有力な方言が標準語としての地位を得る過程でもあったことを確認しました。

近代における標準的な文章語の出現については日本の言文一致運動も参考になります。

印刷機による大量印刷が可能になったこと、出版言語の確立で大きな市場が生まれたことが、出版資本主義を生み出します。とくに新聞の出現によって、読み手が、毎日、「同時」に起こった出来事を伝える同じ記事を読むという状況を生み出し、想像の共同体、つまり国民意識が生まれる前提になったとアンダーソンが論じていることを確認しました。

近代における印刷出版の重要性を考えるうえで、日本でも明治時代に銀座の一等地に新聞社や印刷所が集まって情報発信拠点になっていたことが参考になります。現在のソーシャルメディアとの比較も興味深いトピックです。

『想像の共同体』についてはいったんここで終えることにします。これまで読んできた『想像の共同体』をもとに小論文の課題を出しました。

次回からは、ホブズボウム編著『創られた伝統』(紀伊國屋書店、1992年)のホブズボウム「序論:伝統は創り出される」の書評レジュメをもとに議論をします。同書の青木保による解説「「伝統」と「文化」」も参考にしてください。

参考までに、ゼミのZoomで画面共有をしたScrbleの画像を貼っておきます。

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