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東京外国語大学のe-Learningの経緯

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Moodleについて考えた始めたこともあり、東京外国語大学におけるe-Learningのこれまでの経緯を少し整理してみた。あくまでも、これからのMoodleの使い方を考えるための材料なので、けっして網羅的なものではないことをお断りしておく。

東京外国語大学でe-Learningが最初に取り上げられたのは、2003年以降のことのようである。当時の「東京外国語大学の教育情報化」と題された学生向け冊子の中で、東京外国語大学のe-Learningシステムとして「TUFS e-Learningシステム」と呼ばれるシステムが紹介されている。説明によると、平成15年度(2003年度)文部科学省「特色ある大学教育プログラム」(通称「特色GP」)として採択された「26言語情報リテラシープログラム」の主要な成果である1年生必修授業「情報リテラシー」のために開発されたものである。2005年度の時点で約50の授業で利用されていたらしい。

日本政府がITに本腰を入れて取り組み始めたe-Japan戦略の策定が2001年であるから、おおむねこのような潮流の中で、東京外国語大学でもe-Learningへの取り組みが始まったと言ってよいだろう。

さて、その中味だが、「TUFS e-Learningシステム Type1」と題された教員用マニュアルを見てみると、Moodleでないことは明らかである。当時はMoodleも2002年にようやくバージョン1.0が出たところだったから、まだまだ開発途上だったのだろう(Moodleのバージョンアップの軌跡)。マニュアルによると、教員が自分の講義を登録したうえで、履修生の登録、課題レポートの管理、受講生への連絡、出席管理ができるようになっているので、おおむねMoodleと同様にe-Learningの基本は押さえている印象を受ける。ただ、教員が学籍番号を使って履修者の一括登録ができるところは、現行のMoodleの仕様よりも実は優れている。

その後、2007年以降に作られた「TUFS e-Learningシステム」と題した学生向け冊子を見ると、「掲示板機能」が付加されていることが分かる(Type 2なのかもしれない)。この冊子によると、「TUFS e-Learningシステム」は、2007年度から2012年度まで続いた「世界の『言語・文化・地域』に関する最適化教育プログラム」に引き継がれて運営されていると説明されている。

ところで、ここで興味深いのは、この同じ冊子に、「TUFS e-Learningシステム」とは別に、東京外国語大学の情報コラボレーションセンター(ICC)の方で、Moodleを利用した「ICCStudy」のサービスが提供されており、両者は違うシステムであることに注意を喚起していることである。二つのe-Learningシステムの並立という奇妙な事態がこの時期から始まっていたことが確認できる。なお、この冊子にはMoodleについて「コース管理(授業併用型のネットワークを通じた学習支援や電子フォーラムの開催)が可能なコンテンツ管理システム」と紹介されている。つまりCMS(Course Management System)であるという意味である。

現在運用されているTUFS Moodleは、文部科学省の2013年度(平成25年度)特別経費「学習の可視化・多様化を指向したe-Learning 教育システムの開発と教育の高度化」に基づいて行われている。当初はTUFS Moodle 2013と呼ばれていたようだ。本格的に運用され始めたのは2015年度からということになる。

これにともなって、東京外国語大学の授業用e-LearningシステムはTUFS Moodleに一本化されることになり、ICCStudyは授業には利用されないことになった(従来、ICCStudyにあったコースはTUFS Moodleへの移行が勧告されている。ただし、学術リテラシーなどの一部授業はICCStudyに残るとのこと。)。これについては、ICCのウェブサイトページで告知されている(2015年5月13日)。

以上の経緯を振り返ってみると、大学のe-Learningの運営にあっては、情報基盤を担っている部門(ICTの専門家)、教育プログラムを担っている部門(教員)、そして、教務を担っている部門(事務)の三者の連携が不可欠であり、これらの連携があってはじめて十全なe-Learningの運営が可能だということである。

e-Learningは、教育の内容が特定のICTシステムに組み込まれることを意味している。すなわち、大学として大きなコミットメントが要求されることである。ここで大学の方針がぶれるようなことがあると、そのしわ寄せを受けるのは、教員であり、学生ということになる。このような問題をできるだけ避けるためにも、教員側でのe-Learningについてのリテラシーを高めることが必要だろう。

          

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