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【古典文化論】4月17日

【東南アジア古典文化論】

今週は、東南アジアにおける文化・宗教の重層性を実感として掴んでもらうために、映像資料「アジアの古都 ジョグジャカルタ」(NHK、2002年放送、50分)を見てもらいました。見る前にイスラームや精霊信仰についてのイメージを話してもらい、映像資料を見ながらワークシートに書き込んでもらいました。ワークシートは授業後に提出してもらいました。

今週は宿題があります。東南アジア11か国の国名の意味と由来を調べ、来週の授業時に提出してください。下に様式があります。

次回は、東南アジアの宗教的多様性を生み出した歴史的背景を検討します。

■今週の配布物
・映像資料「アジアの古都 ジョグジャカルタ」ワークシート
・「東南アジア11か国の国名の意味と由来」ワークシート(宿題)
まとめてダウンロードする (PDF)


映像資料「アジアの古都:ジョグジャカルタ」のワークシートを読ませてもらいました。熱心な書き込みをしてくれた人が多かったです。以下、書き込みへのコメントや質問への回答を順不同で書いておきます。(2014-04-20更新)

映像資料で「人々はスルタンを神の使いとして崇めている」と述べられている
本来、イスラーム社会におけるスルタンは神の使いではなく、いわんや崇拝の対象とすべき存在でもありません。これは、ジョグジャカルタ周辺のジャワ人がもつ独特の価値観と言うべきものです。ここにも、イスラーム以前の土着的文化の影響をみてとることができます。

アブディ・ダラム(宮廷家臣)の男性がかぶっているターバンのような帽子
これはブランコン(belangkon)と呼ばれるものです。もともと正方形のバティックの布を頭に巻いていた(これをイカット・クパラ(ikat kepala)と呼ぶ)ものを帽子型に縫い合わせものです。帽子型にしたのはヨーロッパの影響と考えられます。

スルタンの供物や食べ物に日傘をさす
日傘を権威の象徴とするインド文化の影響と考えられます。

手を合わせる挨拶
これはスンバ(sembah)と呼びます。東南アジアに広く見られる習慣で、インド文化の影響と考えられます。

宮廷音楽
宮廷舞踊ブドヨの舞踊の伴奏に流れていた音楽はガムラン(gamelan)と呼ばれる民族音楽です。ジャワを中心に東南アジアの島嶼部で行われています。

スルタンは自分の衣服や髪・爪を山の神や海の神にささげる
イスラームの神ではなく、土着の精霊信仰の神々に対する供犠です。イスラーム到来以前の土着の文化の影響が残ってます。

スルタンの配るコインに神の恵みがある
人間に過ぎないスルタンから神の恵みが与えられるという考え方は、本来のイスラームの教理から外れた、ジャワ社会独特の価値観です。神の恵みはルズキ(rezeki)あるいはブラカ(berkah)と呼ばれます。ちなみに、オバマ米大統領の名前であるバラク(Barack)もブラカと同じ語源です。

スルタンの家臣を勤めても給与が少なく、他の仕事で生計を立てなければならない
スルタンの家臣を勤めることは名誉職と見なされています。家臣を勤めることは、生計の手段にはならないかもしれませんが、本人の自尊心と社会的威信を高めることになります。

スカテンの時に作られる御輿
グヌンガン(gunungan)と呼ばれます。「山のようなもの」という意味で、インド的世界観で世界の中心にあるメール山(須弥山)を象徴しています。もともとは土着の豊穣儀礼と考えられますが、メール山への参照はインド文化の影響です。

王宮の配置が南北の軸に沿っている
これは基本的にはインド文化の影響と考えれますが、同時に、北にある活火山のムラピ山、南にあるインド洋にそれぞれ王都を守る土着の神がいるとする精霊信仰の影響もあると考えられます。


          

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