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【3年次ゼミ】6月17日

【3年次対象ゼミ】

次回は、第3章の後半の中心的なトピックになっている出版資本主義についてさらに検討しました。

出版語が以下の3つの理由で国民意識の誕生に寄与しましことを確認しました。

第一に、出版語になった俗語は、出版語として大きな人口を有する広範な地域で通用することで、ヨーロッパ全域で通用するがエリートしか理解できないラテン語の下位、狭い地域でしか通用しない口語俗語の上位に位置し、ひと・もの・情報の交換がおこなわれる統一的な空間を造り上げたこと。

第二に、出版語の言語は、テキストが印刷されて固定されたことで変化しなくなり、古から永続するという国民の観念に重要な要素を創り出したこと。

第三に、出版語になった俗語は、出版語に同化可能な他の類似の口語俗語が方言の地位に格下げされたことで、特権的な地位を持つに至ったこと。

出版資本主義は、商品としての本を出版語の読み手からなる市場に売り込むわけですが、この同じ出版語の本を読むことでつながった読み手の集団が、国民想像される共同体の基礎となったとアンダーソンは論じています。

次回からは、『創られた伝統』の序論をもとに「創られた伝統」について検討をする予定です。

  • エリック・ホブズボウム、テレンス・レンジャー編『創られた伝統紀伊國屋書店、1992年

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