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【アジア・アフリカ地域文化基礎】11月4日「ラーマーヤナに見る東南アジアのインド化」

【リレー講義】

今週は、アジア・アフリカ地域文化基礎のリレー講義の一環として「ラーマーヤナに見る東南アジアのインド化」という題目で水曜3限に授業を行いました。リレー講義全体の代表は島田志津夫先生ですので、リレー講義の運営・評価に関わる質問は島田先生にお願いします。

このリレー講義では資料の提示、レポートの提出等にはTUFS-Moodleを利用しているので、必ず確認をしておいてください。

【追記】

東南アジアにおけるラーマーヤナの翻訳について質問があったので、こちらで補足しておきます。

東南アジアにおけるラーマーヤナのもっとも古い翻訳は、9世紀頃に作られた古ジャワ語への翻訳です。これは、インドも含めて、サンスクリット語以外の言語にラーマーヤナが翻訳されたもっとも古い事例であるとともに、東南アジアの文学作品として現存する最古の作品です。

この作品は、ヴァールミーキ版からの翻訳ではなく、ヴァールミーキ版をもとに7世紀のインドの詩人バッティが著したサンスクリット語の韻律作品です。ヴァールミーキ版の7巻を1巻に圧縮したダイジェスト版です。とくに顕著なのは、ヴァールミーキ版の第7巻を省略している点です。ラーマとシーターの帰還は第6巻で描かれており、その後を語る第7巻は後代の補作とされているので、バッティの判断は妥当と思われます。

このため、古ジャワ語版「ラーマーヤナ」は、ヴァールミーキ版の第7巻を欠く以外は、あらすじはほぼ一致していると言えます。

この古ジャワ語版ラーマーヤナのように、古い書承作品が残っているのは、東南アジアでは例外的で、多くの場合は、芸能などの口承で伝わるか、浮彫に記録されるものでしか知ることはできません。以下のマレー語版やタイ語版は特定のテキストの翻訳や翻案というよりは、東南アジアにおける独自の発展と言った方が適切だと思われます。

15世紀にマレー半島にマラッカ王国が建国すると、書承のマレー文学が興隆します。その中に、マレー語版のラーマーヤナである「ヒカヤット・スリ・ラマ」が作られました。異本が多いのですが、全体として、ラーマの弟ラクシュマナが活躍したり、シーターをラーヴァナの娘としたり、ハヌマーンをラーマの息子とするなど、ヴァールミーキ版とは異なるところが多々あります。また、イスラームの世界観を受け入れているところも特徴的です。ただし、口承による語り自体はイスラームの到来に先立つものと推測されます。

その後、現存するタイ語版のラーマーヤナである「ラーマキエン」は19世紀初頭に作られました。その原型はすでに18世紀に成立していましたが、18世紀末に王都アユタヤが戦争で敗れたときに消失したとされています。タイ語版では、ハヌマーンの活躍が強調されたり、仏教的な世界観を受け入れているところが特徴的です。

このようにインドの古典文化に源泉があるラーマーヤナは、イスラーム化あるいは上座仏教化した東南アジアにおいても、その時々の文化的潮流の影響を受けて形を変えながら、生きつづけてきたと言えます。

さらに詳しいことは、こちらの記事を参照してください。

          

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