【3年次ゼミ】11月29日
【3年次対象ゼミ】
今週は、Hさんに以下の文献の書評レジュメを報告してもらい、Kさんの司会で議論を行いました。
- 山岸智子「《うなじ》をめぐる政治的対立―イラン女子サッカーチームのユニフォーム問題について―」『スポーツ社会学研究』(2010, 18巻2号pp.53-66)
(DOI https://doi.org/10.5987/jjsss.18.2_53)
論文中の「魂と肉体」については十分な説明がないのですが、論文抄録の内容から「健全な精神は健全な肉体に宿る」という(古代ローマの詩人の言葉に由来する)西洋の近代的なスポーツ観を指していると推測されます。これをイランの近代主義的知識人が国民の精神と国家に奉仕する肉体に読み替えたということです。具体的には学校の体育教育や女性のスポーツ活動に結実します。しかし、1978-79年のイラン革命の結果、スポーツにおける男女隔離の原則の公的実施が進みます。ただ、この原則は国外では通用しないので、女性選手の国外試合ではイスラーム法に適したユニフォーム着用という課題が生じ、これが国際的に競技を統括する組織(サッカーだとFIFA)との軋轢を生むことになります。イランにおけるイスラームとスポーツの問題ですが、インドネシアにおける問題を考える上でも十分に参考にできる理解をもつことができたと思います。
なお、FIFAの立場については、反イスラームと捉えるよりは、あらゆる宗教からの中立性の維持と捉えるべきだという意見がありました。
今回は、古代ギリシアに遡る西洋の「裸体主義」へのイスラームからの批判については議論する時間はありませんでしたが、また別の機会にできるとよいと思います。
次回は、Mさんに書評レジュメの報告をしてもらう予定です。