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プレ・シンポジウム《東南アジアの「インド化」を再考する》

【一般】

2013年5月28日(金)に開催を予定している第58回国際東方学者会議(ICES)でのシンポジウム《東南アジアの「インド化」再考》に先立ち、プレ・シンポジウム《東南アジアの「インド化」を再考する》というタイトルを以下のように開催します。(更新:5月27日)

《東南アジアの「インド化」を再考する》趣旨説明

東南アジアの「インド化」の歴史叙述を振り返ると、植民地期の「外因史観」と脱植民地期の「自律史観」という段階を経て現在に至っています。前者は、インド文化の導入が東南アジアの初期国家形成と文化の「インド化」をもたらしたとし、後者は、初期国家の形成は自律的で、「インド化」は表層的に過ぎないとします。しかし、一見対立的な両者は、「変わらない東南アジア」という停滞史観に陥っている点で同根です。今求められるのは、自律史観の言う「現地化」のあり方を再検証して、「インド化」における東南アジアの主体的関与(Agency)を明らかにすることで、新しい「インド化」論を構築することであると考えます。

そのためには、とりわけ以下の3点が重要と思われます。
 1)東南アジアにおける初期国家の形成と「インド化」は一括りにして論じられてきたが、この2つは分けて議論することができる。近年の考古学の成果は「インド化」に先立つ時代における首長制社会の出現を明らかにしている。これは、クルケのインド的国家形成論とも整合的である。
 2)「インド化」の最初期の「過程」と「インド化」した社会のその後の「状態」とを区別することが「インド化」の議論を再活性化する上で有効である。特に初期の「過程」の地域ごとの差違とその意味を検証することが求められる。
 3)「インド化」を東南アジアの独自の歴史現象と見るのではなく、ポロックの「サンスクリット・コスモポリス」を踏まえて汎ベンガル湾的な運動と見ることが有効である。

今回のシンポジウムでは、「インド化」を、インド系文字(及びサンスクリット語彙)を媒介とした、東南アジアの土着勢力による能動的なインド文化の導入過程と理解した上で、2)と3)の問題意識を持ちつつ、1)に焦点をあてて、考古学と歴史学の成果の接合を目指します。具体的には、最初に漢籍(深見報告)によるフレームを提示し、考古学(田畑報告)との接合を図ったうえで、建築(小野報告)と初期刻文(松浦報告)のデータを照合することでどのようなモデルが描けるかを試みます。


プレ・シンポジウム《東南アジアの「インド化」を再考する》
東南アジア学会関東例会・東南アジア考古学会・東南アジア歴史研究会・上智大学アジア文化研究所共催
日時:2013年5月11日(土)13:00-18:30
場所:上智大学2号館2-510教室(四谷キャンパス・アクセス


13:00-13:15
 青山亨:趣旨説明
13:15-13:55
 青山亨:東南アジアの「インド化」論の整理と課題:外来と自律、物質と精神の対立を乗り越えるために
14:00-14:40
 深見純生:漢籍史料から見る東南アジアの「インド化」の再検討:混填・蘇物・法顕・婆羅門
14:45-15:25
 田畑幸嗣:考古学史料から見る東南アジアの「インド化」の再検討:アンコールボレイ、オケオ遺跡等を中心に
15:25-15:40
 休憩
15:40-16:20
 松浦史明:刻文史料から見る東南アジアの「インド化」の再検討:初期クメール刻文史料の再検討
16:20-17:00
 小野邦彦:建築遺構から見る東南アジアの「インド化」の再検討:山岳信仰から探るジャワ島のヒンドゥー教文化
17:15-18:30
 総合討論:シンポジウムに向けて

一般公開していますので、どなたでもご参加いただけます。忌憚ないご意見を期待しています。
内容についての問い合わせ:青山亨 (東京外国語大学)

このプレ・シンポジウムでの総合討論の結果を受けて、2013年5月24日(金)に同じメンバーによるシンポジウム《東南アジアの「インド化」再考》を第58回国際東方学者会議(ICES)において開催します。ぜひこちらの方にもご参加ください。(訂正:掲載時には「5月28日(金)」と記していましたが、正しくは「5月24日(金)」です。)

          

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