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インドネシア語劇でRara Jonggrangを上演

【一般】

今年も外語祭とともに語劇の季節がやってきました。インドネシア語劇では2年生が中心になってRara Jonggrang(ララ・ジョングラン)を上演します。

■日時:2008年11月20日(木)午後4時20分~5時20分
■場所:研究講義棟101教室(マルチメディアホール)
■詳細は外語祭公式サイトをごらんください。

■物語の紹介
東京外国語大学の語劇は今年で100年を迎えます。その伝統ある語劇にインドネシア語専攻が今年出す演目は「ララ・ジョングラン」となりました。

悲劇のヒロイン、ララ・ジョングラン(ロロ・ジョングランとも言います)の物語はインドネシアでもっとも知られた伝説の一つでしょう。この物語の中心となる舞台は、世界遺産にも選ばれたジャワ島中部のプランバナン寺院遺跡です。このすぐ北どなりには、一対の巨大な羅刹像が門を守るチャンディ・セウ寺院遺跡、南方の丘の上にはラトゥ・ボコ遺跡があり、いずれも物語の中に織り込まれています。現在、遺跡の多くは復元されましたが、長い歳月のなかで崩壊した建物の石材が散乱する様子は、現代の観光客にも異世界に迷い込んだような気持ちを引き起こさせます。数世紀前のジャワの農民たちが、魔神が造り上げようとして途中で放棄したのだ、と想像したのも無理はありません。

プランバナン寺院はもともと9~10世紀頃のマタラム王朝が建立したヒンドゥー教の寺院でした。中心に三つの祠堂がありますが、なかでも一際高くそびえ立つのが、中心のシヴァ祠堂です。この祠堂には、シヴァ神の石像のほかに、息子ガネーシャ、妃ドゥルガーなどの像が納められています。このドゥルガー像はヒンドゥー教では「マヒシャという阿修羅を退治する者」という名前で知られており、実はかなり血生臭い由来があります。しかし、その姿は細腰でたおやかな若い女性の姿に描かれており、一つの石像作品と見たとき、ララ・ジョングラン、すなわちジャワ語で「ほっそりとした乙女」という名前が付けられたのも納得がいきます。

マタラム王朝の中心がジャワ島の東部に移ってからは、頻発する地震や火山の爆発のため、プランバナン寺院は崩壊したまま、朽ちていきました。やがて住民もイスラームに改宗し、寺院の意味は記憶から失われていきました。そこで、荒廃した巨大な建造物の由来や、石像の意味を説明するために、住民は、新しい記憶、ララ・ジョングランの物語を創りあげたのです。

こうして1000年を超える時空を超えて過去と現在の二つの世界が重なるところに、この伝説は生まれました。王女ララ・ジョングランは架空の存在であっても、その伝説はまさに人々の心の中に生きているプランバナンの物語と言ってよいものです。2006年に発生した中部ジャワ地震では祠堂の一部に被害が出ましたが、幸いにも倒壊することは免れました。物語が伝承され続ける限り、遺跡は人々の文化財として守り続けられることでしょう。

最後に、劇の上演にあたっては、今年から本学の特任外国教員になられたスハンダノ先生に脚本の制作から学生の指導まで多大な努力をしていただきました。スハンダノ先生がいらしたガジャマダ大学はジョグジャカルタにあり、プランバナンはそのすぐ東にあります。今年の語劇のテーマとして最適な選択であったと思います。

          

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