ハワイの食と農業を通じて学ぶ──文理協働のスタディツアー報告
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東京外国語大学は、東京農工大学との連携のもと、文理協働による研究を推進しています。この連携は、東京農工大学が採択された日本学術振興会「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に基づくもので、本学はその連携大学として参画しています。
その一環として、夏学期期間中の2025年9月1日(月)から7日(日)に、ハワイスタディツアーを実施しました。 本ツアーは、東京外国語大学学際研究共創センター(TReNDセンター)と、大学の世界展開力強化事業「太平洋を≪架橋≫するブリッジ・パーソン養成プログラム(TP-Bridge)」が、東京農工大学西東京三大学共同サステイナビリティ国際社会実装研究センターと協力して企画・運営したものです。
今回のスタディツアーには、東京外国語大学(以下、東京外大)から8名、東京農工大学(以下、農工大)から9名の学生が参加しました。「ハワイの食と農業」をテーマに、農工大での3回にわたる事前講義を通じて研究関心を共有したうえで現地に赴きました。現地では、農場やフードバンクを訪問し、観光ではなかなか触れることのない「食と農業」の視点から、ハワイの人々の文化や歴史に理解を深めました。また、ハワイ大学マノア校では、農工大がカウアイ島で栽培した日本米を提供する試食会も開催しました。
今回のTUFS Todayでは、ハワイスタディツアーの様子を紹介いたします。
現地での学びと交流
Day 1|到着、お米の試食会の準備
ダニエル・K・イノウエ国際空港(アメリカ合衆国ハワイ州オアフ島)に到着後、ホテルでミーティングを実施しました。その後、有志で日本食スーパーマーケットへ行き、お米の種類や価格等の販売状況を調査しました。3日目に開催を予定している試食会に向けて、農工大が栽培している日本米と比較する2種類のお米を購入しました。

Day 2|ガーデンセンター訪問、フードバンクでのボランティア体験
午前はハワイ大学マノア校が運営する「Urban Garden Center(アーバン・ガーデン・センター)」(植物園)を訪問しました。畑に入る前にハワイ語の祈り「oli」を捧げ、水田ではなく陸地で育てられているタロイモ(kalo)の収穫を体験しました。その後、パンノキの実(ブレッドフルーツ、ʻulu)とタロイモのポイ作りを体験しました。ポイはハワイの伝統的主食で、通常は蒸したタロイモをペースト状になるまですりつぶしたものです。この日収穫したタロイモはフードバンクに寄付されました。




午後は「The Pantry」というフードバンクを訪問しボランティアをおこないました。倉庫のような建物にいろいろな種類の食べ物(缶詰、保存食など)があり、カスタマー(食料を必要とする人々)からのオーダーシートに沿って、2人一組で箱詰めをおこないました。その日のオーダーすべてをパッキングし終了しました。

Day 3|お米の試食会を開催
ハワイ大学マノア校にて、農工大がカウアイ島で栽培した日本米、アメリカ合衆国カリフォルニア州産の「カルローズ」および「タマキライス」の3種を提供し、味や香りについて評価してもらう「Rice Tasting Event」(試食会)を開催しました。予約枠はすべて埋まり、ハワイ大学の148名の教職員や学生が来場しました。農工大の学生が調理を、東京外大の学生が接客を担当しました。


Day 4|ワイアナエ地区の農場3ヶ所を訪問
この日はワイアナエ地区にある農場3か所を訪問しました。
はじめに商業的農業を営む「Kaneshiro Farm」へ。葉野菜の栽培が中心で、鳥害対策や農薬による作物管理のほか、農家の後継者不足の問題についても学びました。

次にネイティブ・ハワイアンが運営し、インターンも広く受け入れ、収益を生み出す非営利組織である「MA‘O Farm」へ。ハワイアンにとっての土地や水の大切さ、それらが奪われてきた歴史を学びました。水を含むと膨らむ特徴的な土壌に実際に触れて体験しました。数年前に導入された野菜の洗浄などをおこなう農業機械を見学しました。

最後にネイティブ・ハワイアンが運営する教育センターである「Ka‘ala Farm」へ。ハワイアンのお祈り「oli」を捧げ、農場に入りました。ハワイアンの歴史、神話を学んだほか、ハワイにおける貧困についてのお話もうかがいました。ここでは水田(lo‘i)で栽培されているタロイモ畑を見学しました。

Day 5|振り返りのディスカッション
ホテルの会議場にて、スタディツアーでの学びを振り返り、ディスカッションをしました。
スタディツアー参加前に設定した各自の問い、それに対する現時点での考えや想い、スタディツアーにより生まれた新たな気づきや問いについて、参加者一人一人が話しました。ハワイの農業が抱える問題について考えたいという意見や、ネイティブ・ハワイアンの歴史や文化に触れ、それらを大切にしたいと考える学生の意見が多く聞かれました。


Day 6–7|帰国
2グループに分かれて帰国。全員が無事に日本へ戻りました(6日現地発、7日日本着)。
研究報告会
9月30日|ハワイスタディツアー研究報告会を開催
東京外国語大学にて、スタディツアー参加学生による研究報告会を開催しました。東京外大と農工大合わせて17名の学生が、土地利用、ハワイの社会と文化、食文化、米作り、農業、個人発表の6つのセッションで成果を共有しました。春名展生学長及び中山俊秀副学長も参加し、活発な議論が展開されました。

今回のスタディツアーは、食の安全保障を考えるプロジェクトとして、農学や工学を専門とする農工大と、言語・文化・社会を専門とする東京外大が、文理の枠を超えて協働的に研究する機会となりました。事前講義や現地訪問の企画・調整を担ってくださった農工大の山中晃徳教授、西東京三大学共同サステイナビリティ国際社会実装研究センターの田上志宝美さんをはじめ、農工大の関係者のみなさまに、様々な面でご尽力とサポートを賜りましたことに心から感謝申し上げます。
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本件に関するお問い合わせ先
世界展開力強化事業(米国) TP-Bridge事務局
tenkai-bridge-coordinator[at]tufs.ac.jp([at]を@に変えて送信ください)