6.20 「世界難民の日」―東京外大の取組み
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6月20日は何の日かご存知ですか…?まだ知らない方も多いかもしれませんが、この日は国際連合によって、世界難民の日と定められています(2000年12月)。地域紛争、国際紛争の結果、世界の各地には、故郷を追われた難民が多数、発生しています。世界の諸地域の言語や文化を学ぶ本学学生にとって、難民の問題は、決して遠い話ではありません。各地の地域紛争、国際紛争への理解を深め、難民の人々の窮状へ思いをはせるため、本学ではさまざまな活動が行われています。たとえば、学生グループ「みんがおキッチン」とボランティア活動スペース(VOLAS)は、特に在日難民に焦点をあて、6月を「難民月間企画」とし活発な活動を実施しています。今回のTUFS Todayでは、その取組みをご紹介します。
取組み1 日本に暮らす難民の「ふるさとの味」を知ろう!@大学食堂ミール
一つ目は、生協の大学食堂ミールでの「難民のふるさとの味」紹介の取組みです。その実現に取組んできた学生グループ「みんがおキッチン」の代表、野口鵬さんにお話をききました。
私たちみんがおキッチンは、在日難民の存在を、身近な「食」を通して知ってもらおうと活動しています。
今までみんがおキッチンとして勉強会を行ってきて、「難民」とひとことで言えども、一人ひとりには実に多様なバックグラウンドがあるということを、実感しています。その人たちのバックグラウンドや、各地域で起きている争いや問題を理解するだけでも、在日難民問題に対する小さなアクションを起こしていることになる、と、私は信じています。
美味しい異国の味に舌鼓を打ちつつ、日本に暮らす難民の方々へ、思いを馳せていただければと思っています。
さて、どんなメニューかというと・・・
- アゼリ風トマト肉じゃが:毎回大好評をいただいているメニューです。トマトなのに肉じゃが…その優しい味わいは、本当に美味しいです。(アゼルバイジャンの味)
- チン族のコーン煮込み:彩りがきれいな野菜料理です。塩味控えめの優しい味なので、付け合せにどうぞ。(ミャンマーの味)
- カレン風ココナッツ白玉:みんがおキッチン初のデザートメニューになります。やわらかい白玉とココナッツが合う、夏にぴったりの冷たいデザートです。(ミャンマーの味)
以上3点は、6月16日~20日の一週間、本学生協のご協力のもと、学食にて販売されます。どうぞ、一度ご賞味ください。
取組み2 VOLASランチタイム学習会「日本に暮らす難民を知る!」
「難民月間」の企画として、5月29日にVOLASランチタイム学習会が開催されました。本学教員で、インドシナ難民の支援について詳しい長谷部美佳先生が世界の難民の状況と日本での受け入れの仕組みと現状について報告しました。この学習会には、大勢の学生が参加し、実りのある学習会となりました。参加した学生の皆さんからの声です。
- 日本が外国人嫌い(というか慣れていない)国だということは、前から聞いたことがあったが、ここまで受け入れ体制が整っていないとは…。
- 難民という単語自体あまり耳慣れないが、今回の講座で少し詳しくなれた。
- もっと日本に住んでいる難民の方々の実情を知りたかった。日本政府の考えていることも知りたい。
- 自分の身近なところに難民として来ている外国人の方はいないか?駅や街中ですれ違う人たちの中に、難民の方がいるかもしれないと思った。
- 日本で暮らす難民のひとの生活や実態や、難民として暮らしている人に対するサポート等がどうなっているのか、知りたいと思いました。
取組み3 VOLASランチタイム学習会「ミャンマー出身のTINさんのお話を聞く会」
「難民月間企画」の第2弾として、6月12日には、ミャンマー出身のTINさんにお越しいただき、お話を伺う会が開催されました。TINさんはミャンマー出身で、日本に暮らしている外国人です。ヤンゴン大の大学院生で講師もしていた頃、1988年の民主化デモに関わり、そのために軍隊に迫害され、身の危険を感じて1992年10月に日本にいらしたそうです。TINさんに昨年4月にも本学にお越しいただき民主化デモ当時のお話(昨年の報告)を伺いましたので、今回の講演は2度目となります。
今回は長谷部先生と対談形式で話していただきました。お話の要旨は、次のとおりです。
1992年来日しました。日本に来ていた友達の紹介で、大学の学食の洗い場で働きはじめました。外国人ばかり5人の職場でした。
時給750円で1日16時間働きました。健康保険に入ることができないため、風邪を引いた時はとても不安でした。銀行のカードも作れない暮らしでした。
日本語を学ぶのは電車の中。つり広告や駅の看板を見て勉強しました。自分はクリスチャンで英語は堪能です。聖書も日本語学習の重要なツールでした。
難民申請はしましたが、却下されました。でも、厨房で一生懸命働いて、今は焼き肉店の料理長として働いています。
参加した学生グループ「みんがおキッチン」の皆さんからの声です。
- 「日本に来たら全てゼロ」という言葉が一番、刺激的、印象的だった。全てゼロの状況から、料理長にたどり着くまでの約20年間、本当に長かったんだろうと思う。日本語で必死に言葉を紡ぐ姿から、日本に来てからの20年間の重みが伝わってくる気がした。
- 今まで知らなかったことを、たくさん知ることができた時間だった。自分でももっと調べてみたい。今日の情報量が多くて、そして考えていたよりずっと過酷で、どれだけ吸収できたかわからないけど、これから少しずつ自分の身に付いたことになってくれると嬉しい。自分のこととして思えるように、考え続けたい。
また、次のような感想も寄せられました。
- 自分のふるさとを離れて、言葉も習慣も違う国でゼロからスタートした苦労には、生の声として語られるこその重みを感じました。国の情勢など、個人の力ではどうにもできないところからも影響を受けてティンさんは、長い間さまざまな面で常に不安が付きまとう人生を送られてきたと思います。しかし、困難な状況でも「絶対に生き抜く、がんばり続ける」という強い意志を持ち続けていたということを、ティンさんの言葉の端々から強く感じました。これは、バックグラウンドには関係なく、人として私自身が大事にしていきたい気持ちでもあります。今回ティンさんのお話を聞いて、「難民」について知る以上に、ティンさんのお話からエネルギーをいただけた気がします。
今回の「難民月間企画」に、学生の自主的な学習会の段階から関わっていただいた、長谷部先生からコメントをいただきました。
6月20日は世界難民の日です。難民条約成立からすでに60年、日本が加盟してから30年以上が経ちます。では難民の状況はよくなったかといえば、残念ながらそうではありません。2012年末に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が発表した統計によれば、迫害、紛争、暴力、人権侵害などで故郷を追われた人たちは、4520万人。この数には、国内避難民も含まれますが、直近の資料では、シリアではその4分の3に当たる3000万人程度が新たに国内避難民となっているといわれています。こうした難民問題を解決するには、3つ方法があるとUNHCRは言います。一つは母国への安全な帰還、一つは、避難した地域での定住、そしてもう一つがそれ以外の第3国への定住です。その3つ目に、日本は大きく貢献することができます。日本はすでに1970年代後半のインドシナ難民以降、難民を受け入れてきた経験があります。ただし、条約に定められた基準で、日本への定住を認められた人は、多くはありません。2013年の難民認定者数は、6人。単純に比較することはできませんが、毎年万単位の難民を受け入れている米国の5000分の1程度に過ぎません。また、難民として定住を認められた人でも、私たち日本社会が、温かく社会の一員として迎えているかといえば、そうではないことが多いといわざるを得ません。
学生の皆さんにできることはたくさんありますが、一番してもらいたいと思うことは、世界の紛争のニュースを見たときに、私たちの社会とまったく無縁であると思わないでほしいということ。日本の社会に受け入れる、という形ですでに在住している人もいるのです。そういう人たちは、日本でどうやって暮らしているのか、どういう思いで生活しているのかを想像してみてください。それから、彼らがもし隣に住むことになったら、私たちには何ができるだろう、と想像してみてください。いつか、難民が普通に隣に住む社会が、やってくるかもしれません。そのときに、彼らと私たちはどのような関係を、社会を築くのか、いつも心に留めておいてほしいと思います。
取組み4 『シリア、踏みにじられた人々と希望』上映会
「世界難民の日」にあわせ、シリア問題に関する「世界同時上映プロジェクト」が開催されます。本学では、外大シリア研究会が主催し開催されます。
『シリア、踏みにじられた人々と希望』
6月19日(木) 17:40~19:30 226教室 (なお、学外からのご参加の場合は、申込が必要です)
どうぞ奮って、ご参加ください。