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世界のうさぎ特集〜卯年を祈念して〜

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新年、明けましておめでとうございます。

2023年になりました。新しい年が皆様にとって良いことがたくさん詰まった1年でありますように。

新年最初のTUFS Today特集は、今年の卯年を記念して、本学教員が世界で出会ったうさぎを紹介します!

インドネシア、ボロブドゥール寺院遺跡

9世紀に建立された大乗仏教のボロブドゥール寺院に描かれた「兎ジャータカ」の浮き彫りの一場面。日本でも『今昔物語集』で知られている「兎本生物語」です。森に住む兎(実は仏陀の前生)は旅の修行僧(実はインドラ神の化身、図の右)のために食事を約束しますが、自分の力では相手にふさわしい食べ物を手に入れることができません。そこで自分の肉を提供しようと焚き火(図の上)に飛び込みます。他者への布施のために兎が示した自己犠牲に心打たれたインドラ神は、兎を讃えてその姿を月に描いたという物語です。本生物語というとパーリ語による上座部仏教の『ジャータカ』が有名ですが、ボロブドゥール寺院の本生物語は6世紀のインドの仏教詩人アーリヤシューラがサンスクリット語で書いた『ジャータカマーラー』を典拠にしています。

撮影地:インドネシア、中ジャワ州、ボロブドゥール寺院遺跡
撮影者:青山 亨

モンゴルの民話

「うさぎの上唇が裂けているわけ」

昔々、うさぎの長老がうさぎたちを集めてこう言った。「この世のあらゆる生き物は、 敵を追い払ったり身を守ったりするすべを知っている。 しかしわれわれは木の葉が揺れるだけでびくびくするみじめな生き 物だ。 こんなみじめな生き方をするくらいなら井戸に身を投げるべきでは ないか」

そう言われたうさぎたちが井戸に向かってとぼとぼ歩いていくのを 見て、カササギが話しかけた。

「きみたち、どうしてそんなに悲しそうに歩いているんだい?」

「わたしたちは生きている価値のないみじめな生き物だから、 井戸に身を投げるしかないんだ」

そううさぎたちが説明すると、

「そんなバカなことを言うもんじゃない。 このあと羊飼いの少年が羊に水を飲ませにやってくるから、 みんなで一斉に走り回ってごらんなさい」

とカササギは伝えた。

カササギの言う通り、しばらくして少年が羊を連れてきた。 そこでうさぎたちが一斉に走り回ると、 羊たちはあわてふためいて散り散りになってしまい、 羊飼いの少年は鞭をふるって羊の群れをまとめようと必死になった 。

その光景のあまりのおかしさにうさぎたちは笑い転げた。 あまりに笑いすぎて、とうとう上唇が裂けてしまった。

上唇は裂けてしまったけれども、 こうしてうさぎたちはみじめに思うこともなく、 幸せに暮らすようになったのだった。

(モンゴルの民話より)

提供:山越 康裕

英国、「ヘイスティングズの戦い」の戦場跡

世界史で習った1066年「ヘイスティングズの戦い」の戦場跡にいた警戒心の強い野ウサギたち。

撮影地:Battle, near Hastings, UK.
撮影者:斎藤 弘子

鉄道に競争を挑んだうさぎの話

乾いた平原に、鉄道に競争を仕掛けているような兎が見えた。先頭の兎を五匹の兎があとから追いかけていた。先頭の兎は窓のほとんど真横にいて、両目をぱっちりと開け、鉄道との競争に超人的な(あるいは超兎的な、と弁護士は思った)努力を払っているようだった。いっぽう、追いかけているほうの兎は縦一列に並び、まるでツール・ド・フランスの選手のように見えた。順位を交代するうさぎは、二、三回飛び跳ねて先頭に躍り出て、先頭にいた兎は最後尾まで下がり、三番目の兎は二番手に、四番手の兎は三番手と順位を上げていく。そのようにして、集団は次第に弁護士のいる窓の下を走っている単独の兎との距離を縮めていった。兎か!と弁護士は思った。まったく素晴らしいね!(ロベルト・ボラーニョ「鼻持ちならないガウチョ」より)

これは、チリの作家ロベルト・ボラーニョ(1953-2003)が書いた短篇の一部です。アルゼンチン人の弁護士が経済破綻で荒れる首都ブエノスアイレスを飛び出して田舎に向かい、昔ながらのガウチョのような暮らしをする話。鉄道の窓から見えるうさぎが線路と並行して走る様子はまるで童話の一場面のようです。今年は「超兎的」な努力を払って仕事をします。

久野量一

インド由来の日本文化

釈迦涅槃図(縦240㎝×横130㎝、長野市・往生寺蔵)の右下隅に描かれた2匹のウサギ(原寸・横10㎝ほど)(ブッダ入滅の際、その死を悼んで沢山の動物たちも枕元に駆けつけたと経典に記されています。)

撮影地:長野県長野市 往生寺
撮影者:水野 善文

月の兎

 ブッダが前世、ウサギとして生まれたとき、猿、ジャッカル、カワウソと友だちで、仲良く暮らしていました。4匹はいずれも賢く、生活上の規律を遵守していて、ある日、乞食修行者に施食するため、それぞれ普段、餌としている食べ物を蓄えることにしました。ですがウサギは、自分がいつも食べている野草を乞食修行者に布施するわけにはいかないと考え、自身の肉を施す決心をします。

 4匹の動物それぞれがどれほど強い利他の心をもっているか試してみようと考えた帝釈天が乞食修行者の姿をして、カワウソ、ジャッカル、猿と順次訪れ、最後にウサギのところへやって来ました。ウサギは、その修行者に火を熾してくれるよう頼み、自分はその火の中に飛び込むので、焼けた自分の肉を食べてくださいとお願いします。乞食修行者に化けていた帝釈天は、ウサギの要求通り火を熾してあげるのですが、その火は冷たいものでした。ウサギから理由を問われて帝釈天は素性をあかし、「汝の利他行が永遠に遍く知られますように」と山を圧搾して汁を絞り出し、満月の円のなかにウサギの姿を描いたのです。

(松村恒訳「ウサギ本生物語」中村元監修・補註『ジャータカ全集4』春秋社、1988、53-57頁を参照して要約した)

<補足>インドの古典語サンスクリット語には、「月」を意味する単語が数多存在しますが、「兎を持つもの(シャシン、シャシャダラなど)」「兎の相をもつもの(シャシャーンカなど)」のほかに「鹿の相をもつもの(ムリガーンカなど)」もあります。

水野善文

中国近代漫画

画集《豊子愷児童漫画》(彩図注音版)、豊子愷著(少年児童出版社 [上海]、2013年)より

「小さな椅子に座って、女の子が画集に見入っているよ。

表情はこんなにも真剣です。

いつも可愛がっている大好きな二匹の子うさぎが足もとに遊びに来ても、

まったく気づいていないねえ。」

(絵に付されている中国語短文を橋本が翻訳)

提供:橋本 雄一

多磨、外大の近くにも

うさぎは外大の近くにもいる!

撮影地:東京都府中市 武蔵野の森公園
撮影者:藤縄 康弘

エジプト、うさぎ出汁のモロヘイヤ・スープ

エジプト式のモロヘイヤ・スープを作る時、いろいろな食材からだしを取ります。大抵の場合は鶏肉を使いますが、うさぎが一番美味しいとされています。魚やエビなど海産物でだしを取ることもあります。変わり種では鯰のモロヘイヤ・スープをごちそうになったことがありますが、さばくのが大変そうでした。だしを取った後の肉は、スパイスなどをつけて焼いた後 、一緒に食卓に上ります。

食用です。鶏と一緒に市場で売られています。
さばいた後、内臓など人間が食べない部位のおこぼれにあずかるため、
ひそかに野良猫が目を光らせています。猫は食用ではありません。

エジプト式のモロヘイヤを細かく刻んで作ったスープ。

文:三代川 寛子

撮影地:エジプト・アレクサンドリア、2022年。(2枚とも)
撮影者:佐々木舞香さん(言語文化学部2年)(2枚とも)

ベトナムはウサギ年じゃなくてネコ年だニャー

ベトナムにも干支の文化はあるのですが、中国や日本と異なり、卯年は、ウサギ年ではなくてネコ年になります。

卯(う)の字はベトナム語ではマオmãoと読みますが、このマオが、ベトナム語でネコを意味するメオmèoと発音が近いことから、ネコ年になったと考えられています。

ちなみに、ベトナム語でのネコの鳴き声は、メオ、メオmeo meoです。

文:野平 宗弘

撮影地:ベトナム ハノイ 医廟
撮影者:小田なら

撮影地:ベトナム ホーチミン市 天后宮
撮影者:小田なら

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