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アジアを学び、世界を繋ぐ

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東京外国語大学で学べることを調べてみると、中国語、朝鮮語のような皆さんもよく知っている言語のほかに、ちょっと見慣れない言語、あるいは「それって、どんなとこ・・・?」と思われる地域の名前が並んでいますよね。インドネシア語、マレーシア語、フィリピン語、タイ語、ラオス語、ベトナム語、カンボジア語、ビルマ語、モンゴル語、ウルドゥー語、ヒンディー語、ベンガル語、アラビア語、ペルシア語、トルコ語といった言葉、それらの言葉が用いられている東南アジアや南アジア、西アジア・北アフリカといった地域。それらを大学で学ぶとはどういうことなのでしょうか。今回のTUFS Todayでは、東京外語大でこそ学べる、これら、日本からちょっと遠い地域・言語の教育についてご紹介します。

まずは、いくつかの教室をちょっとのぞいてみましょう。

ビルマ語授業風景

タイ語授業風景

カンボジア語授業風景

ウルドゥー語授業風景

ヒンディー語授業風景

アラビア語授業風景

これらの授業は世界教養プログラムのなかで、言語文化学部・国際社会学部共通の科目として教授されています。東京外大では1年次、2年次を通じて週に5コマ(90分)の授業でこれらの言語を専門的に身に着けてゆきます。

言葉を使って・・・

さて、言語の習得はあくまで言葉を使って何かをするために行うことです。言語を身につけ、その言葉で書かれたテキストを読みこなし、その言葉が用いられている地域に、そしてそこで暮らす人々の間に深く入り込んでいくことは、東京外大で学んだからこそできること。しかも勉強する言葉が日本で学習機会が少ない、つまり、日本でわかる人が少ないアジアの言葉だとしたら、あなたは言葉と地域に通じた貴重な人材として世の中の役にたつこともできるのです。そんなわけで、東京外大ではアジアの言葉への知識をいかした様々な活動も活発です。

こちらは、日本語からカンボジア語へ絵本を翻訳したカンボジア語専攻3年の伊東さん、伊藤さん、田中さん。彼らの訳した絵本はNPO法人「幼い難民を考える会」を通じてカンボジアで出版され、カンボジア全国の保育所で現地の子どもたちに親しまれています。

また、積極的に現地に飛び込み、様々なボランティア活動に参加する学生たちもいます。そんな活動の一端はここでご覧いただけます。

さらに、「日本語で読む世界のメディア」は、アジア各国メディアのインターネット版記事を、日々、日本語に翻訳し、公開しているプロジェクトです。ここには、本学で、アラビア語、ペルシャ語、トルコ語、インドネシア語、ビルマ語、ベトナム語、ウルドゥ語を勉強する多くの学生が参加しています。

このうち、アラビア語、ペルシャ語、トルコ語メディアを対象とする「日本語で読む中東メディア」は、2005年から続く活動です。アラブの国々、イランやトルコの人々は、何を考え、どんな暮らしを送っているのか。日本のメディアからは伺いしれない中東の日常を毎日10本ほどの記事の翻訳により日本に伝えています。新聞記事はそれぞれの国の法律や制度、そして政治や経済の動向がわかってこそ訳せるもの。学部生や大学院生らが参加するメディア翻訳は東京外大での「地域と言葉」の教育の産物でもあります。

翻訳された記事は朝日新聞のインターネットサイト「Asahi中東マガジン」にも転載されています。

この翻訳の参加メンバーに話をききました。

アラビア語専攻3年 辰巳新さん

「アラブの情報を現地からそのまま仕入れたい」、そんな気持ちからアラビア語という言語を大学で専門にしようと思った人たちは私の周りに少なくありません。そして私もそういう人間の一人でした。その目的を学部で学ぶ間から早くも実現させてくれるのがこのメディ翻(「メディア翻訳」の略称!)の活動です。翻訳を通すことで、ただ単に新聞を読んで情報を得る以上に記事の情報が頭に残ることも魅力の1つです。

ペルシア語専攻4年 小原智恵さん

「様々な記事を読むことでペルシア語を上達させたい!」と思い、1年生の後期からメディア翻訳に関わり始めました。ペルシア語の上達はもちろんですが、翻訳する過程で様々な背景知識などを調べ、いつの間にかイランの事情に詳しくなっていったように思います。こうした活動がきっかけとなり、4月からは新聞社に務め、記者として働くことになりました。いつかはこの活動を活かし、多くの人にイランの様々な姿を伝えたいと思います。

トルコ語専攻3年 池田桃香さん

今はトルコに留学中ですが、アンカラからプロジェクトに参加しています。自分の力でトルコの情報を発信することでトルコ語学習への意欲を高め、自信を持つことができました。また最先端の情報を伝えるために基礎知識が必要であるため、自然とトルコについて勉強するようになったと思います。

留学

大学4年間の間にはアジアの国々に留学する大勢の学生がいます。本学が交流協定を結び学生交換を行っている、東南アジア、南アジア、中央アジア、中東・北アフリカの大学は次のとおりです。

  • カンボジア: 王立プノンペン大学
  • インドネシア:ガジャマダ大学
  • インドネシア:インドネシア大学
  • ラオス:ラオス国立大学
  • マレーシア: マレーシア国民大学
  • フィリピン: フィリピン国立大学
  • シンガポール:シンガポール国立大学
  • タイ: シーナカリンウィロート大学
  • タイ:チュラーロンコーン大学
  • ベトナム:ハノイ国家大学人文・社会科学大学
  • ベトナム:ホーチミン国家大学人文・社会科学大学
  • バングラデシュ: ダッカ大学
  • インド:デリー大学
  • インド:ジャドブプル大学
  • モンゴル:モンゴル国立大学
  • ウズベキスタン:タシュケント国立東洋学大学
  • イラン:アッラーメ・タバータバーイ大学
  • イラン:イスラーム自由大学シーラーズ分校
  • イラン:イスファハン大学
  • シリア:ダマスカス大学
  • トルコ:アンカラ大学
  • トルコ:ボアジチ大学
  • エジプト: カイロ大学
  • エジプト:アインシャムス大学
  • モロッコ:ムハンマド5世大学アグダール校

多くの大学には毎年1、2名づつの学生派遣を行い、先方からの留学生が本学にやってきます(エジプト、シリアなどは政情の関係で派遣を休止中)。先方大学からの留学生の多くはティーチングアシスタントとして本学での出身国の言語についての授業に参加し、本学学生との交流を深めています。

さらにタイ語、ベトナム語、トルコ語を専攻する学生については今年の夏から専攻語単位でのサマービジット・プログラムがはじまります。ベトナム語とトルコ語は新1年生が対象。どうぞお楽しみに!

就職

アジアの諸言語への需要は高いものの、就職にあたり、勉強した言語をストレートに用いる職業が限られていることは事実です。外務省や在外公館、東南アジアや南アジア、中東との貿易をおこなっている商社、工場をもつ製造業企業、旅行業などでは、地域の言語を用いる機会がありますが、現地の言葉と並んで英語の力が重視されることもまた事実です。本学が地域の言語の習得と並んで改めて英語教育に力をいれている所以です。

しかし英語と並んでひとつの地域の言葉を知り、ある地域・社会を深く理解している「あなた」は、日本語・英語のニュースからしか世界を知ることができない「あなた」とは違います。日本と、もう一つのホームグランドをもってしっかり立ち、世界を見渡し、世界に貢献する。そんな未来の自分を夢見てほしいと思います。


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