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山形スタディツアー体験報告 ~コロナ禍でともに考える地域社会の持続可能性~

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東京外国語大学では、日本の地方の魅力を海外に発信し、良質なインバウンドを推進し、地域活性化に資するための取組として、山形県、そして山形県の4つの自治体(寒河江市・白鷹町・高畠町・飯豊町)と連携協定を締結し、2018年度から山形県で、夏学期と冬学期それぞれ8日間程度のスタディツアー(以後「山形スタディツアー」という)を実施しています。山形県東京事務所やJETRO等にご協力をいただいて、キャンパスでインバウンド推進等に関する事前学習を行った後、学生が現地に実際に赴いて地域の魅力を発見し、インバウンド推進や地域の魅力の国内外への発信について地域に還元をするプログラムです。山形スタディツアーは、3学部共通の「世界教養プログラム」において授業科目(夏学期・冬学期集中科目)として開講されています。

事前学習の様子(2019年夏)

コロナ禍の今年度は、夏学期の山形スタディツアーは中止、冬学期はオンラインでの実施となりました。新型コロナウイルス感染対策のため現地に赴くことができませんでしたが、3日間の日程で、リモートで山形県の自治体や事業者の方々と、新型コロナウイルスを経験した地域の持続可能性を考えるための新たな視点について意見交換を行ったほか、山形の高校生と交流するなどの取り組みを行いました。今回は、本学大学院総合国際学研究科「日英通訳・翻訳実践プログラム」の学生2名が同時通訳として入り、留学生も積極的な交流をすることができました。

オンラインスタディツアーの様子

2019年度以前に現地でのスタディツアーに参加し、今回オンラインでのプログラムにも参加した4名の学生に参加した感想とコロナ禍でできるインバウンドなどについてインタビューをしました。また、ドイツから山形スタディツアーに参加した学生、同時通訳として参加した大学院生からもコメントをいただきましたのでご紹介します。

2021年度夏学期もオンラインでの山形スタディツアー実施が決まりました!
冬学期に現地スタディツアーに参加したい方、また地域活性化の問題に関心のある方、ぜひご参考にしてください!

コロナ禍の2020年度冬学期の山形スタディツアー

2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の防止のため、夏学期の山形スタディツアーは中止し、冬学期はオンラインで開講しました。オンライン山形スタディツアーは、2月1日(月)、2月2日(火)、2月8日(月)の3日間の日程で行われ、14名(日本人学生11人・留学生3人)の学生が参加しました。

3日間のプログラム

1日目:2月1日(月)

  • 導入(新型コロナウイルスを経験した地域の持続可能性を考えるための新たな視点)と対象とする山形県の概要
    1. 授業の主旨説明
    2. 山形県の概要と現状説明
    3. 山形の形成と地域特性(今日に至る道、地域の産業の特徴と形成)
  • 新型コロナウイルスが地域社会に与えた影響(産業・観光・生活・医療・福祉等)
  • 日本の中小企業・地方の事業の海外展開について(JETRO日本貿易振興機構)の講義
  • 高校生との交流事業

2日目:2月2日(火)

  • 山形スタディツアーをとおした本学学生からの提言に対する地元自治体・事業者・住民の方々からの反応と意見交換(山形スタディツアーの振り返り、提案に対する意見交換と提案の作り込み)

3日目:2月8日(月)

  • 各グループでの意見交換
  • 高校生との交流事業
  • まとめ(成果と課題の整理、来年度スタディツアーに向けての問題共有)

担当教員の吉田ゆり子教授にインタビュー

——2020年度の夏学期は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で授業が中止となってしまいましたね。

2020年4月はじめに、山形県で受入れてくださっている4つの自治体様に、夏のスタディツアーが実施可能かを照会させていただきました。私たちとしては、東京からコロナを持ち込むことはできない、高齢な住民の方の安全を考えると、実施は難しいのではないかと考えていました。その頃、山形県内でも感染者が出ており、やはり自治体の方でも実施困難と判断されました。ただ、冬には受け入れてくださるという思いもお伝えいただき、それまでの間に、オンラインなどで繋がることはできないかというご提案もいただきました。東京や首都圏の自治体では、テレビ会議システムを利用したWEB会議の実施がセキュリィティ上難しい云々と、なかなか実施してもらえなかったのに対し、山形県の自治体の方々は、オンラインででも慣れておられるのだと、驚いた記憶があります。
その後、残念ですが、夏学期のスタディツアーを中止とし、8月に冬の実施の可否を判断しようということで、4カ月経ちました。

——結局、感染拡大はおさまらず、冬学期のオンラインでの実施となってしまいましたね。

有効な治療薬と安全で有効なワクチンがない限りは、どうしても危険はともない、ましてや、秋・冬にはいっそうの猛威を振るうことが素人でも予測できる状態で、冬のスタディツアーを実施できるとは到底考えられませんでした。
そこで、4月にいただいた「オンラインででも繋がることはできませんか」という飯豊町様からの言葉を頼りに、オンラインで、山形の関係者の皆さんと結び、「地域社会の持続可能性を考える」という授業題目で、冬学期集中授業に切り換えて実施することにしました。

——オンラインでの実施にあたり、どのように授業の組み立てを行われたのでしょうか。

目標とするところは、2018年度から3年目を迎える2020年度に一区切りをつけ、これまでの総括と今後の方向性を探るということです。
具体的には、(1)これまで夏冬スタディツアーごとに学生たちが提案してきた、インバウンド推進の方策や地域活性化のための諸々の案を、地元の方々がどのように受けとめていただいていたか、実施していただける部分はあるか、難しいのであれば何が問題か、を明らかにすること。(2)問題点や地元の方の意見等をふまえて、改めて提案を集約して、地元の方に提示すること。(3)地域の将来を担う高校生との交流を通じて、高校生にも地元のことを考えていただき、また東京外大の学生自身にも、世界を見据えながらも、自分の足元の地域社会の抱える問題に対して、考えるきっかけにしてもらうこと、でした。
とくに(3)は今回の新企画で、高畠町様からのご提案でした。昨今、大学進学を契機に地元を離れたまま、都会で就職し、定年退職を迎えるまで地元に帰らない、あるいは親たちも、子どもたちに地元に帰らなくていいと考える傾向にあるといいます。都会だけではなく、自分が生まれ育った地元で、あるいは自然に囲まれた地方で生活していきたいと地元の若い人たちは思っていないのだろうか。それをきいてみたいと思いました。
もしそう思えないのであれば、どうすればいいのか。自分の地元で生産されたものに対して、愛着と自信をもってもらいたい。地域の産物を使い、あるいは地域の特性を活かした産業が活発になり、若い人々もそこで働くことができ、生産と生活が持続できる、そのような社会が理想ではないか。そのような社会をつくるためには、どのような仕組みづくりが必要か。そんなことを考えながら、授業に臨んでいました。
実は、2018年に山形スタディツアーを始めた当初から、「観光・インバウンドで地域は持続できるのか」という問いを持ってこの事業を進めています。その問いに対する答えが、Noと出ても、それに学生たちが気づいてくれればいい、自分たちで問題に気づいてほしい、という気持ちでいました。
そういう意味では、今回のコロナ禍は、私たちにこの問いの答えを突きつけてくれたものと思っています。勿論、将来的にはコロナ禍も落ち着いて、観光も復活すると思いますし、観光産業や飲食等のお仕事に従事されている方たちのご苦難を思うと、復活してほしいと思います。ただ、やはり、観光・インバウンドだけに依存することの危険性、交流人口だけに依存する経済の脆弱さを痛感した今、地域社会の持続可能性のための新たな柱、取組みを考えていかねばならないという思いを強くしています。それを自覚できた一年だったと思います。

——オンラインでのスタディツアーは初めての試みだったわけですが、いかがでしたか。

教員の方も1年間Zoomを授業で使い、ずいぶんと慣れました。今回の大きな収穫としは、留学生支援アシスタントの石田理恵さんが大学院の通訳コースの先生方にお願いしてくださり、大学院生にZoomの通訳機能を使った同時通訳をしてもらうことができたことです。その技術を学ぶことができ、またオンラインだからこそ器械的な経費をかけずに同時通訳をしていただけたということで、逆にオンラインの利点を学ぶことができました。多くの留学生の方にも、日本語に自信がなくても、気兼ねなく参加してもらうことができると、新しい技能を修得できたことを嬉しく思っています。
また、山形のNPOの方や事業者の方など、学生たちがこれまでスタディツアーでお世話になった方々にも参加していただき、教員たちがはじめてご挨拶ができたことも、今回のオンラインの成果でした。
意外にも、うまくできた、というのが、終わった後の感想でした。山形の自治体関係者の方々のご協力をいただき、学生さんたちの積極的な取組みに支えられ、大学関係者も前に進むことができました。ほっとしました。
個人的には、私の持論ですが、現在のことを理解するには、その背後にある歴史的な経緯を知っていることが必要だと思っています。その意味で、今回のオンライン授業の中で、山形県が歴史的に日本の中でどのような位置にあったのか、とくに、いわゆる「中央」との関係を、地域の産物(米・紅花・麻)の物流、交通手段の推移によるモノや人の移動の変化を学び、学生さんにお話ができたことが、とても収穫となりました。学生の皆さん、覚えていますか。

——コロナ感染がまだ安心できない状況ですが、来年度(2021年度)はどのような計画になりますか。

自治体の皆さんと相談し、夏学期は9月にまたオンラインで実施し、冬学期には現地でのスタディツアーを実施しようということになりました。勿論、感染状況やワクチンの接種状況にもよりますが、冬には雪の山形に学生さんたちを送りたい、受け入れてくださりたいと、気持ちを共有していただいています。
今決まっていることは、夏学期は、9月21日(火)・22日(水)・27日(月)の3日間オンラインで、「社会協働/キャリアデザイン論」(1単位)で「地域社会の持続可能性を考える」という題目で、SDGsを意識し、地元住民の方や山形の小学校の子どもたちや高校生との交流企画もふやして、課題解決型授業を行います。その参加者には、冬に現地スタディツアーにぜひ参加してもらいたいと思っています。
他方で、これまでのスタディツアー参加経験のある学生たちが、自主的にタテの繋がりをつくろうと、活動を始めてくれているという咄を耳にしています。まだ、担当教員全員には披露してもらっていないのですが、とてもいい動きだと喜んでいます。
これまでも、参加した学生たちから、大学としてもっとこの授業を他の学生たちに周知すべきだという声をもらっており、教員たちの努力が足りない、どうすればいいか、と思い悩んでいました。大学広報でもいろいろご紹介いただいていますが、学生たちの活動により、もっと在学生の方や、そもそも山形県や関係者の方々にも知ってもらいたいと、強く思っています。

——おっしゃるとおりですね。大学として広報に努めてまいりたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

参加学生にインタビュー

篠原菫さん(言語文化学部フランス語2年)

高畠町2019冬参加と2020年年度オンライン参加

——オンラインでのスタディツアーに参加してどうでしたか。

私は昨年の冬も、この山形スタディツアーに参加していたので、実際に山形の地域を見たり、町や企業の方の話を伺った経験を経た上で、今回のスタディツアーに参加しました。今回のスタディツアーでは、オンラインという縛られた環境ではありましたが、これまでのスタディツアーで自分たちが考えたプランの成果を聞くことができたり、今までの成果を踏まえた上でこれからのスタディツアーについて考える時間が多かったりと、非常に充実していたと思います。

——昨年現地に赴いてのスタディツアー以降、どのような心境の変化がありましたか。

昨年度のスタディツアーで山形の地域課題について考えてから、今まで全く関心のなかった自分の地元である佐賀県の課題にも目を向けるようになりました。そのため、今回のスタディツアーでまた新たな刺激をたくさん受けました。これからも自分の地元や日本全体の地域社会の問題について自分ができることに取り組んでいきたいと思いますし、こういう課題に興味を持ってくれる学生がもっと増えてほしいと思います。

——自分の地元や日本全体の地域社会の課題に目を向けられるようになったのは、とても良いことですね。その上で今回参加したスタディツアーでは、どのような考えを持ちましたか。

今回のスタディツアーでは、自分の担当した地域に限定した課題だけでなく、日本全国の地域社会の持続可能性について考えさせられました。その中で私は、日本の地域社会を持続させるために必要なキーワードとして「関係人口の創出」と「学生」を考えました。「関係人口の創出」とはつまり、高齢化の進んだ地域や過疎地域において、地域外部の人を巻き込んで課題解決を図ることです。内部の人だけでは発信力が弱かったり高齢化により行動範囲が狭かったりすることも課題なので、まずは地域に関係する人口を増やそうということです。「学生」をキーワードにあげるのは、学生には学生にしかないチカラがあると考えるからです。発信力、発想力、多様な価値観や若さ、自由など、学生に地域社会に貢献できるさまざまなチカラがあると思います。スタディツアーもそうですが学生には授業を通して地域社会について考えるきっかけを与えることができます。こうした2つのキーワードを活かして、各自治体の取り組みについて考え直してもらったり、教育現場にもっと学生自身の地元ついて考える時間を設けたりすることが、地域社会の持続可能性につながるのではないかと考えました。

——コロナ禍で地方へ出かけにくい状況が続いていますが、コロナ禍において、インバウンド推進や地域の魅力の発信という点で、できることはどのようなことだと思いますか。

コロナ禍でインバウンドや観光に来てくれる人が減るのは仕方のないことなので、重要なのはこの時間をどうやって活かすかということだと思います。今回のスタディツアーの中では、この期間を利用して、自治体のホームページに海外の人に分かりやすいように英訳をつけたり、見た人を惹きつける動画を載せたりすることや、インバウンドのパッケージツアーの内容を見直すことなどがコロナ禍で出来ることとして上がっていました。他にも、私の担当した高畠町ではオンラインで海外のバイヤーと商談会を行っているという話を聞きました。いずれにしても、今の状況でもできることはたくさんあると思うので、自治体の方や各団体の方々が、コロナ禍だからといって消極的にならず、地域のために前向きに取り組む姿勢が大切なのではないかと思います。

——コロナが収束したら、また山形に行きたいですね。

私が昨年度訪問したのはほぼ高畠町だけなので、山形の他の地域にも行って観光をしたり地域の人から話を聞いたりしたいと思います。また、高畠町の最終発表では、「たかはたみんなのホームタウン化計画」という名前で、高畠に関係する学生が、高畠に来て小中学生のいる家庭に無料でホームステイできるというプランを発表したのですが、それもスタディツアーが回を重ねる中で実現できたらいいなと思っています。
さらに、今回のスタディツアーではこれまで3回のスタディツアー参加経験者と話すことができ、学生の中で地域の持続可能性やインバウンド推進などについてのサークルを立ち上げるという話が出ています。サークルでも山形やその他全国を訪れてみたいと思っているので、コロナが終息してサークルの活動も本格的にできるようになればと思います。

田丸大雅さん(国際社会学部ロシア地域2年)

飯豊町2019夏参加と2020年度オンライン参加

——スタディツアーに参加されてどうでしたか。

私が参加した2019年度夏の飯豊町では「着地型観光の旅行商品の提案」という目標が設定されていました。私は当時1年生で、自分の専門分野を持っているわけでもなく、ロシア語の基礎文法の勉強も途中だったため、スタディツアー中は常に「飯豊町に対して貢献できるのだろうか」という不安を抱えていました。また、滞在中は農家民宿にブラジル人留学生と共に宿泊することが決まっており、その際の共通言語が英語のみということで言語面でも不安がありました。
そんな不安だらけの中始まったスタディツアーでしたが、現地の方々は温かく、留学生との会話も、持っている拙い英語力をフル活用することで何とか乗り越えていけました。終わってみると、飯豊町への愛着も沸き、ともに苦楽を乗り越えた仲間たちとの絆も深まり、想定していた以上に得るものが沢山あったなと思います。
意外と留学生の方々と交流する機会の少ない外大ですが、彼らとともに滞在することで多くのことを語り合えたことも貴重な体験でした。

——スタディツアーで特にどのようなことを学びましたか。

一番の学びは、「田舎での生活」を知ることができたことだと思っています。私は、いわゆる田舎暮らしの経験がなく、田舎での暮らしやそこに住む人々の様子について知る機会が今までありませんでした。スタディツアーで飯豊町を訪れてみると、広い空、おいしい料理、身近な自然の数々に驚かされました。多くの外大生は留学などを通して多文化に触れ、多様な価値観、多様な生き方を知ると思いますが、日本国内にも多様な価値観、多様な生き方があるということを再認識しました。もちろん、飯豊町のすべてを知ったわけではありませんし、都会と比べて不便なこともありますが、田舎の様子を伝聞や憶測ではなく、実際に体験することができたことは自分の視野や価値観を相対化するような学びであったと思います。

——インバウンド推進や地域の魅力発信という観点で、コロナ禍でできることはどのようなことだと思いますか。

私は、コロナ禍でオンラインによる魅力発信が行いやすくなっていると思います。今では「オンライン会議を行う」ことのハードルはかなり下がっています。大学では多くの授業がオンラインで行われていますし、企業でもリモートワークが増加し、多くの人々にとって、オンラインで交流することが身近になってきたと思います。このことを利用して、例えばオンライン編み笠づくりのような体験型の商品が作れると思います。購入者のもとに編み笠づくりの材料と、特典で地元の特産品を贈って、地元のお母さん方と一緒に編み笠を作ってみる、なんてこともできます。こうした商品は、大学生や外国人留学生などの若い層に響くのではないかと思います。実際、飯豊町ではオンライン料理教室イベントの開催に向けて動いていて、私もモニターとして体験させていただきましたが、とても面白かったです。

——コロナが収束したら、また山形に、現地に赴きたいですね。

スタディツアー中に巡った観光スポットにもう一度訪れたり、おいしいものを食べたりしてゆったりしたいですね。あとは飯豊町の名物である水没林を自分の目で見てみたいなと思います。

トンノッパラット・プラウドさん(言語文化学部日本語専攻4年)

白鷹町2018夏参加と2020年度オンライン参加

——オンラインのスタディツアーに参加されてどうでしたか。

今回はオンライン開催ということもあり、取り組みとしては初の試みとなった部分が多かったと思いますが、オンラインでの開催だからこそ、可能になったことも多く、かなり充実したスタディツアーであったのではないかと思います。

——かなり充実したスタディツアー!それは良かったです。具体的には、どのようなことが充実していましたか。

リモートで山形県高畠町の高校生と交流することができたこと、また、過去にスタディツアーに参加したメンバーともオンラインでつながり、これまでの取り組みやその成果、課題について、参加年度を超えて情報共有することができたこと、さらに、自分が参加した自治体だけでなく、他の自治体の現状、提案についても聞くことができたこと。これらの点が、特によかった点だと感じています。

——今回のスタディツアーでは、どのようなことに取り組みましたか。

今回のスタディツアーでは、前年度もお世話になった寒河江市田代地区という地域に焦点をあてて、「地域社会の持続可能性」について検討しました。その中で感じたこととしては、持続可能な地域をつくるためには、まずは地元の人々が、その地域の魅力を認識し、その地域に貢献したい、将来にわたってこの地域を持続・発展させていきたいと思うこと、そう思わせる施策を考えていくことが重要だと感じました。田代地区の方々との意見交換では、地域の課題として、「地元民への認知度の低さ」、「後継者不足」などが挙げられていて、「まずは地元民の意識、意欲が変わること、変えていくことが重要だ」とおっしゃっていたことが印象的でした。ただ、そのためには、私たちのような、地域外の人々との交流や関係づくりが重要だということも感じています。地元の人だけでは気づくことができない魅力や課題・解決策について、外部との交流、協力を通して見えてくる部分があるのではないかと思います。そして、これらは、今回取り上げた寒河江市田代地区だけでなく、私の地元であったり他の地域でも同じことが言えます。このスタディーツアーを通して、私自身も、自分の地元や今住んでいる地域に、これからどうコミットしていくべきなのか考えるきっかけになりました。

——コロナ禍ではいろいろ制約がありますよね。インバウンド推進や地域の魅力の発信という観点で、コロナ禍でできるこというのはどのようなことだと思いますか。

今この時期をインバウンドや地域観光推進のための「準備期間」と捉えることもできるのではないかと思います。今のうちに、コロナ後を見据えた色んなアイデアを考案したり、異なる地域同士で情報を共有したり、そのうえで、自分の地域でも取り組めそうな要素を見つけていくこと。そのようなことが必要なのかなと思います。そのツールとしてはやはり、オンラインやSNSが有効だと思います。それらのツールを活用して、異なる地域間でのつながりを持ち続けること、同じ議題について一緒に考える機会をつくること、などがあるのではないかと思います。これらは学生の私たちでもできることだと思いますし、私自身も、オンラインを駆使して、様々な人とコミュニケーションをとり、色んな地域について知る機会にしたいと思っています!

——コロナが収束したら、また山形に行きたいですね。

是非、コロナが収束したら、山形にいきたいと思っています。今回のスタディツアーでは現地の皆さんと、オンラインでコミュニケーションをとりながら進めていきましたが、やっているうちに、「早く現地に行きたい!」という気持ちがどんどん強くなっていきました。おそらく、この感覚は私だけでなく、他の参加者も持っていていたのではいかと思っています。参加メンバーのこのような想いが、「サークル立ち上げ構想」につながりました。この山形スタディツアー事業を通して、お世話になっている山形県の方々との関係を、「学校の授業」という枠組みにとらわれず、これからも大切にし、さらにつなげていくために、学生主体のサークルという形で取り組んでいきたいと思っています!山形スタディーツアーでやってきたことをベースに、学生が継続的にできることは何かということを、現在話し合っているところです!

ドイツから参加したDana Soltauさんのコメント

From the beginning, I was really interested in the class, since I only heard a bit about this topic in Germany. However, I didn’t expect to actually have any kind of influence on a community (that I haven’t even visited) as I am just an ordinary university student. Moreover, I feared a possible language or value barrier.
But when the class ended, I realized that my prior judgement was wrong. Furthermore, I had nothing to fear as everyone was understanding and supported me. As expected, talking to locals helped me understand problems in Japan’s countryside much better than lectures could. More important than that, though, is that I could see how our ideas and plans were listened to carefully and discussed thoughtfully. That made me glad I joined this class. It gave me the feeling of doing something meaningful by sharing my insights and putting my studies to practice. Moreover, the amount of work and love the students put in this class really amazed me. I hope I can join again and visit the place to fully understand everyone’s dedication.
(このテーマはドイツではなじみのないテーマで、最初からとても興味がありました。しかし知らない地域について、言葉も価値観も異なる自分に何ができるのか、と不安でした。
その不安は杞憂に終わりました。皆さんの理解とサポートで、何も心配はありませんでした。自治体の方々と直接話すことで日本の地域社会が直面している問題をより深く理解できました。何よりも私たちの提案に耳を傾け、真剣に検討してくださっている姿に感銘を受けました。これこそがこの授業を履修してよかったと思えた一番のポイントです。自分の参加も意味があったと実感できました。参加学生がこの授業に注いだ努力と愛情にも驚かされました。いつの日か実際に地域を訪問し、皆の熱心さがどこから来るのか、それを実感してみたいです。)

同時通訳を担当した学生のコメント

ファム・トゥ・トゥイさん

今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で実際に山形県を訪れる代わりに、オンライン形式に切り替えられ、遠隔での同時通訳は知らない部分がたくさんありましたが、参加できて良かったと深く感じました。未熟な通訳訓練生の私はコーディネーターの先生に大変お世話になりました。事前打ち合わせでも本番においても、同時通訳をスムーズに進めるため常に資料共有や意見交換を行っていただきました。さらに、通訳として参加したおかげで地域活性化及び地域の持続可能性に関する知識を身につけることができました。貴重な機会を設けていただきありがとうございました。

栗田裕香さん

今回通訳を担当させていただいて、柔軟に対応する力と事前準備を綿密に行うことの重要性について改めて実感することができました。至らぬ点も多々ありましたが、無事に全日程を終えられたことに安心感を覚えました。また、集中講義に参加していた留学生から感謝の言葉を述べられたときに、通訳者としてのやりがいを少し感じることができました。さらに、山形県のこと、各自治体のこと、地域活性化のことなど多くの新しい学びもありました。通訳という立場で参加していましたが、山形県にとても興味を持ったため、いつか実際に訪れてみたいです。このような機会を設けてくださったことを心よりありがたく思います。

夏学期・山形スタディツアー(オンライン形式)

夏学期「地域社会の持続可能性を考える」(通称:山形スタディツアー、オンライン形式)の説明会を開催します!

日時:4月21日(水)11時50分~12時30分
場所:Zoom オンライン

もっと山形スタディツアーを知りたい方へ

これまでの山形スタディツアーの報告は、下記の公式ブログに掲載しています。ぜひご覧ください!
https://tufsyamagata.jp/

山形スタディツアー3年間の総括報告書は次のファイルをご覧ください。

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