今日のアフリカ
2026年04月
セネガル反同性愛法の根拠を問う
2026/04/18/Sat
セネガルでは最近になって同性愛者に対する抑圧が強まり、3月には厳罰化を趣旨とする反同性愛法が制定・発布された。これを正面から批判する人類学者Richard Powisの論説が、17日ルモンド紙に掲載された。彼は、この法律を正当化する二つの論理について、根拠がないと批判する。
第一に、同性愛はアフリカのものではなく、西側から輸入されたという主張である。こうした主張をするアフリカの指導者は少なくない。しかし、これまでの研究で、そうした主張に根拠がないことが示されている。植民地化以前のセネガルでは、同性愛者は社会に統合されていた。植民地期に持ち込まれたのが、同性愛を厳しく禁じる法律であった。今回のセネガルの法律についても、米国保守派(プロファミリー)の影響が指摘されている。
第二に、同性愛禁止は公衆衛生上の観点から必要だという主張である。しかし、性的マイノリティを罰することが、疾病の予防になるという主張には根拠がない。
セネガルはこれまで、安定した民主主義を実現してきた。サブサハラアフリカ諸国のなかではHIV/AIDSの感染率が低く、西アフリカでは妊産婦死亡率が最も低い国のひとつである。HIV感染率が低い理由として、WHOの勧告に迅速に対応してきたこと、イスラム宗教指導者・政府保健当局・議会が協力してきたことが指摘され、複合的要因によって感染症の流行が抑制されてきたと考えられている。妊産婦死亡率の低さも、過去数十年の政策的努力の結果と評価され、コミュニティ医療を重視するBajenu Goxという政府のプログラムが機能してきた。コミュニティの関与によって状況が改善してきたわけである。
罰則の強化は対象者に恥辱やスティグマを植え付け、コミュニティの関与を難しくする恐れがある。感染症予防など保健・衛生分野において、恥辱、スティグマ、孤立は状況を悪化させることが多くの研究で証明されている。
セネガルでは、2月以来、同性愛者と目された人びとが数多く逮捕されている。性的マイノリティを対象としたポピュリスト政策が、保健衛生に関する長年の蓄積に深刻なダメージを与えることが懸念される。(武内進一)
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2025年にODAの大幅減
2026/04/12/Sun
OECDは9日、2025年の援助動向について発表し、DAC加盟国の援助総額が2024年に比べて23.1%減少したと発表した。ODA供与額の減少は二年連続で、下げ幅は過去最大であった。特に米国のODAは前年度比で56.9%減少し、その供与額はドイツを下回って世界第2位に後退した。二国間ドナーの供与額は、ドイツ、米国、英国、日本、フランスの順となった。
二国間援助は前年度比26.4%、多国間援助は同12.7%の減少となった。二国間援助のなかでは借款より無償の切り下げ幅が大きく、前者がマイナス10.3%だったのに対して、後者はマイナス29.1%であった。多国間援助へのインパクトは機関によって異なる。国連への援助が27%と著しく削減されたのに対して、世界銀行など多国籍銀行への拠出は増加した。
開発プログラム、開発プロジェクト、技術支援向けODAは26.3%、人道支援向けODAは35.8%の減少で、国際協力の中核事業が大幅に削減された。
地域で見ると、ウクライナ向け二国間ODAは、米国支援の大幅カットの影響を受けて38.2%減少し、103億ドルとなった。ただし、ウクライナに対してはEU諸機関から巨額の支援がなされ、総額では449億ドルが供与された。2024年に比べて、18.7%の増加となる。これは単一の受益国に対する史上最大のODA供与額で、DAC加盟国による後発開発途上国向けODA総額(281億ドル)、対サブサハラアフリカ向けODA総額(292億ドル)を上回る。後発開発途上国(LDCs)向けとサブサハラアフリカ向けODAは、それぞれは25.8%、26.3%の減少で、貧困国向け援助が顕著に削減された。
ODA供与額は、2019年から2023年の間、新型コロナウイルス感染症対策の影響で32.7%増加した。その後、2024年に6.1%、2025年に23.1%と連続で大幅に切り下げられ、2019年を下回る水準となった。2026年もさらなる切り下げを見込んでいる国が多い。
ルモンド紙は、援助額の削減に加えて、援助のモダリティに関わる問題を指摘している。貧困国への連帯という観点が薄れ、ドナーの利益に応える必要性が強調されるようになった。典型的には米国で、稀少鉱物確保のために援助を利用している。米国はザンビアに対して、10億ドルのエイズ、結核、マラリアの治療薬購入の援助を与える見返りとして、鉱物資源へのアクセス改善を求めている(9日付ルモンド)。
ODA削減が憂うべき事態であることは確かである。これによって感染症対策が滞ることも懸念されている。一方、過去20年あまりを振り返ると、「テロとの戦い」、「コロナ対策」、「ウクライナ支援」など様々な理由でODA支出が増加を続けており、その検証も十分になされたとは言い難い。こうした形でODA予算を増やし続けることが、国内政治的に不可能になったという側面もあろう。ODAの理念や意義について再考するには良い機会かもしれない。(武内進一)
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ルワンダによるモザンビークへの派兵
2026/04/07/Tue
ルワンダ軍による対モザンビーク派兵の帰趨が注目されている。ルワンダ軍は、モザンビーク政府との二国間協定に基づいて、同国北部のカボ・デルガド州に約2000人の部隊を派遣している。同州ではトータルエナジーズ(仏)やエクソンモービル(米)といった企業によって大規模な液化天然ガス開発プロジェクトが計画されているが、イスラム急進主義勢力の活動によって中断を余儀なくされた。ただし、ルワンダ軍の派兵もあって、最近では治安状況が一定程度改善し、計画の再開が見込まれている。
一方、ルワンダ軍に対してはコンゴ民主共和国東部への軍事介入が指摘され、3月には米国が制裁対象とした。EUは2022年、ルワンダ軍に2000万ユーロを提供したが、今年5月以降は新たな資金を提供しないことを決めた。これに対して、ルワンダ外相は、EUからの資金が停止されれば部隊を撤収すると反発している(3月14日付New Times)。
国際危機グループ(ICG)のアナリストは、ルワンダは実のところ、モザンビーク派兵に際してEUの資金を必要としていないと述べている(3月27日付ルモンド)。そもそも2000万ユーロでは、2000人の派兵経費の一割程度しかカバーしない。ルワンダは、政権与党RPF系の企業Crystal Ventures 社を通じてモザンビーク経済に投資している。軍の進出によって、現地でビジネスを展開しており、撤退に利益はないという。「ルワンダは援助は必要ないが、(EUからの支援を通じて)モザンビークへの派兵に正統性を求めている」とアナリストは分析している。
ルワンダは国連PKOに積極的に参加し、現在は最大の兵員提供国のひとつである。国連PKOへの参加を通じて、軍の装備が近代化され、軍事的能力を高めたとの指摘もある。「部隊を撤収する」というルワンダ外相の発言が単なる脅しなのかどうかは、遠からずはっきりするだろう。(武内進一)
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大西洋奴隷貿易に関する国連決議
2026/04/05/Sun
3月25日、国連総会で、大西洋奴隷貿易を最も重大な「人道に対する罪」だとする決議が採択された。決議の正式名称は「奴隷化されたアフリカ人の人身取引および人種に基づく動産的奴隷制を、人道に対する最も重大な犯罪と位置づける宣言」と訳せる。これまでも何度か「人道に反する罪」だとされてきた大西洋奴隷貿易を、国連総会の場で、「最も重大な犯罪」だと認定したものである。
決議は、賛成123,反対3(米国、イスラエル、アルゼンチン)、棄権52の圧倒的多数で採択された。ヨーロッパ諸国や日本は棄権し、ほとんどのグローバルサウスの国々、中国、ロシア、韓国などは賛成した。
アフリカ諸国のなかでは、ベナンとマダガスカルが投票しなかった。ベナンは、行政上のミスだと述べ、内容には賛成するとしている。マダガスカルは明確な説明をしていないが、両国とも決議の提案国に名前を連ねているので、ベナンと同じく手続き的なミスによるものだろう。
決議には幾つかの議論のポイントがある。第一に、補償(reparations)に関するものである。決議では、奴隷貿易を「人道に反する罪」だと認め、その補償を求めている。奴隷制度や奴隷貿易が重大な「人道に反する罪」だという認識は、様々な機会を通じて共有されてきた。2001年に南アフリカのダーバンで開催された反人種主義世界会議はよく知られているし、同じ年にフランスはいわゆる「トビラ法」を制定して、その認識を法制化した。ただし、補償については依然として消極的である。ヨーロッパ諸国や日本が棄権した理由として、この点が大きいのであろう。
第二に、大西洋奴隷貿易の「特権化」という問題がある。奴隷貿易は、大西洋ルートだけでなく、インド洋やサハラ砂漠を経由したルートもある。しかし、この決議では、大西洋奴隷貿易だけが取り上げられている。大西洋奴隷貿易だけに光を当てることが、「記憶のヒエラルキー化」につながらないか懸念する声がある(4月2日付ルモンド)。
いずれも難しい問題である。補償について前向きな国はなく、奴隷貿易に関する理解を深め、記念事業を行うところから時間をかけて進めるしかない。また、大西洋奴隷貿易は、強制移住を強いられた人口の規模が巨大であることに加えて、現代資本主義経済の基盤を構築した点で特に重要だという識者の意見がある。ただし、奴隷貿易の他のルートについても忘却を防ぐ取り組みが必要なことは言うまでもない。(武内進一)
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ナミビア、Starlinkのライセンス申請を却下
2026/04/01/Wed
ナミビア政府は3月23日、アメリカの実業家イーロン・マスク氏率いるSpaceX社の衛星インターネットサービス事業、Starlink(スターリンク)の同国内展開のための申請を却下したと発表した。
スターリンクは、数千基の低軌道衛星を介して世界中の遠隔地に高速インターネット接続を提供しており、現在、世界150以上の国、アフリカ諸国では約25か国で事業を展開している。
ナミビア通信規制局(CRAN)によると、スターリンクの通信事業ライセンスおよび無線周波数帯域へのアクセス申請があったものの、同社は通信法で定められた6つの基準のうち3つしか満たしていなかったという。同社は、ナミビアの国民または現地企業が少なくとも51%の所有権を有することを義務付ける法定要件を満たしておらず、国家防衛および公共の安全上の理由から、スターリンクの外資所有100%というビジネスモデルが、管轄権および法令遵守義務の履行可能性に関して重大な規制上の懸念を生じさせると述べている(3月24日付BBC、25日付ナミビアン、APA、ウィントフック・オブザーバー)。
CRANの発表を受け、イライジャ・ングラレ首相は、外国投資家はナミビアの51%の現地資本比率要件を遵守しなければならないと主張し、「我が国に来る者は誰であれ、我が国の法律を遵守しなければならない。個人が権力を持っているからといって、法律を曲げることはできない」と加えている(25日付ナミビアン)。
隣国、南アフリカに目を向けてみると、スターリンクは同国でもライセンス取得に失敗しており、参入を阻むのは所有権に関する同国の規制であった。南アフリカでは、アパルトヘイト政策下で不利な立場におかれていた黒人への経済活動をうながす、黒人経済力強化政策(BEE)がとられている。この政策には、投資家に対し、南アフリカ国内の黒人企業に事業の30%の株式を付与することを義務付ける法律の制定も含まれている。
24日付BBCによると、昨年、マスク氏はソーシャルメディアへの投稿で、「私が黒人ではないというだけの理由で、南アフリカでの事業展開を認められなかった」と主張し、BEEが外国投資の障壁となっているとして、同政策を強く批判したという。
ナミビアに話を戻すと、同国は1884年から1915年までドイツの植民地支配を受け、その後1990年に独立するまで南アフリカの委任統治下にあり、アパルトヘイト体制が敷かれていた。独立後は、企業における地元資本の拡大とこれまで不利益を被ってきた人びとの経済的自立を支援することを目指す政策、新公平経済エンパワメントフレームワーク(NEEEF)がとられているが、今回焦点となっている通信法との関連は言明されていない。NEEEFはナミビア版BEEとも言われるが、NEEEFの支援対象は、黒人だけでなく、女性や障害者なども含む。
CRANは、決定はまだ再検討される可能性があると述べており、「自らの判断、または訴訟手続きにおける不服のある当事者からの申し立てに基づき、本通知から90日以内に、下した命令または決定を再検討することができる」として、猶予をのこしている(24日付BBC)。今後、どのような動きがスターリンク側からあるのか、引き続き注視する必要があるだろう。(宮本佳和)
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