• アクセス
  • English
  • 東京外国語大学

Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2019年05月

コンゴ民主共和国で首相任命

2019/05/29/Wed

新大統領就任から4か月、コンゴ民主共和国でようやく新首相が決まった。5月20日、イルンガ・イルンカンバ(Sylvestre Ilunga Ilunkamba)が新首相の任命を受けた。新首相は78歳。経済学博士で、モブツ時代に副大臣を4回、また計画大臣、財務大臣を務めたが、最近は政治活動から引退し、鉄道公社(Société nationale des chemins de fer congolais: SNCC)総裁を務めていた。20日付ルモンド紙によれば、この人事は前大統領のカビラが提案し、チセケディが受諾したという。新大統領就任から4か月の長きにわたって首相が決まらなかったのは、チセケディとカビラの間で綱引きが続いていたからである。経歴から見ると新首相はテクノクラートだが、チセケディとカビラのつなぎ役を期待されているようだ。  同じ20日、有力政治家カトゥンビが地元のルブンバシに帰還した。カトゥンビはちょうど3年前に不動産問題で有罪判決を受け、それ以来事実上の亡命生活に入っていた。カビラと何らかの合意があって帰国が可能になったと見られ、帰還に伴って訴追するなどの動きはない。大統領選挙でカトゥンビが支持したファユルは、依然としてチセケディが勝利した選挙結果を認めていないが、カトゥンビはチセケディを大統領として認める立場を取っている。  やはり同じ20日、ルドリアン仏外相がキンシャサを訪問し、チセケディと会談した。ルドリアンは、今年1月大統領選挙の結果が発表された際、チセケディ勝利に強い疑念を示したことで知られる。過去は水に流して、関係修復というところだろう。中部アフリカの大国コンゴ民主共和国で、ようやく新体制がゆるゆると動き出した感がある。

個別ページへ

サヘル地域の治安悪化

2019/05/28/Tue

5月16日、国連安保理において、ブルキナファソ外相が「G5サヘル」加盟国(モーリタニア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、チャド)を代表して演説し、協調してサヘルのテロ対策にあたるよう国際社会に呼びかけた。こうした呼びかけがなされた背景には、この地域におけるイスラーム急進主義勢力(ジハーディスト)の活動が依然活発で、国際社会が危機感を募らせているという事情がある。  5月9日夜には、ベナン北部の国立公園でサファリ観光の最中に誘拐されたフランス人などの救出作戦が実行された。この作戦では、フランス軍海兵隊部隊が米軍諜報の協力を得て4人の救出に成功したが、仏海兵隊員2名が作戦中に死亡した。10日付ルモンド紙によれば、誘拐グループは「大サハラのイスラム国」(Etat islamique au Grand Sahara: EIGS)メンバーとみられ、人質をマリに連れていこうとしていた。2018年11月、フランスはIEGSの指導者クファ(Amadou Koufa)を殺害したと発表したが、今年になってクファは新たなビデオメッセージを発表するなど、死亡説が揺らいでいる。  この地域には2013年以来、国連、AU、「G5サヘル」、フランスが派兵しているが、治安はむしろ悪化している。17日付ルモンド紙は、地元で製造される即席爆発装置(IED)が大きな脅威になっていると報じている。軍事作戦の開始以来、15人の仏軍兵士が犠牲になっているが、うち8人がIEDによるものである。地雷と同じく、ジハディストはIEDをばら撒いて姿を隠し、それに触れた人が犠牲になる。仏軍兵士は「卑怯者の兵器だ」といら立ちを見せるが、非対称戦争にあっては非常に有効な武器である。一般住民が犠牲になるケースも増えており、2019年にはIEDの犠牲者の48%を占めている。  IEDは農薬(硝酸アンモニウム)を使って爆破装置を作る。農民から農薬を取り上げることはできず、ローカルに調達できる材料で、製造することができる。マリなどで使われているIEDは、アフガニスタンと同じ方法で製造されるという。「弱者の武器」として広く利用されているわけである。

個別ページへ

中国の2つのサミット

2019/05/14/Tue

4月25~27日に第2回一帯一路サミットが北京で開催された。ルモンド紙によれば、アフリカ54か国のうち同サミットに参加しなかったのは15か国だけだったという(5月8日付)。債務の罠との指摘があるが、ルモンド紙の中国専門コラムニスト(Sébastien Le Belzic)は、中国はアフリカ債務のかなりの部分を減免していると述べている。2000年~2018年に、72件の債務(総額22億ドル)が、ザンビア、ガーナ、スーダン、ジンバブウェなど約30か国で帳消しにされたという。 同紙によれば、一帯一路サミットの1週間後、第2回中国アフリカ軍事サミットが開催され、アフリカ45か国から軍の代表などが参加した。最初の軍事サミット開催が2018年6月だから、2年足らずのうちに第2回を開催したことになる。アフリカからの参加者は、人民解放軍の施設を見学するため天津、北京などの都市を訪問した。 中国が意図的にアフリカを債務の罠に引き摺り込んでいるというのは単純な見方だが、中国が善意だけでアフリカ外交を行っているわけでもない。軍事サミットは、中国のアフリカ外交が軍事面も重視していることを物語る。中国はアフリカのPKOでも重要なプレイヤーになっているが、アフリカの軍との関係強化や武器の売却もサミットの重要な目的になっている。

個別ページへ

河野外相のアフリカ訪問

2019/05/08/Wed

毎年、ゴールデンウィークは閣僚外遊の時期となる。しかし、今年は連休の真ん中に天皇陛下の御譲位と御即位があり、国を離れる日程作成は容易でなかったと思われるが、安倍総理や河野外相が海外訪問している。欧米中心の安倍総理に対し、河野外相はアフリカを訪問した(5月2日~6日)。訪問国はアンゴラ、南スーダン、エチオピア(訪問順)であった。アンゴラは長期政権終焉後の新たな体制の国、南スーダンは和平プロセスの進展に期待がもたれている国、エチオピアはAU本部の所在国、ということでそれぞれ特色のあるところである。 今回の訪問については、外務省公式ウェブサイトの「河野外務大臣のアンゴラ、南スーダン及びエチオピア訪問」に記されているが、二国関係では、アンゴラとエチオピアでは投資協定が交渉されており、これは経済関係を進める上で重要な投資環境整備案件となっている。南スーダンでは2017年の自衛隊南スーダン派遣施設隊の活動終了以降も司令部要員配置が継続され、また、JICA邦人職員の常駐も2018年から再開され、和平と協力関係が重視されている。アンゴラとは今回の外相会談で、地デジ日本方式の導入の話が出ている。過去、アンゴラによって反故にされたこの案件が再び表舞台に出てきたということである。果たして実現するのか・・・今後の交渉に期待したい。

個別ページへ

モザンビークに二度目のサイクロン上陸

2019/05/07/Tue

3月14日にサイクロン・アイダイが上陸したモザンビークであるが、6週間後の4月25日に2つ目のサイクロン・ケネスによる被害を受けた。ケネスの上陸直後の中心気圧は940hPa、最大風速は57m/sで、大きな被害を出したアイダイを上回る「強烈な(Intense)」勢力であり、国家史上最強の勢力であった。ケネスが上陸したモザンビーク北部のイボ島では、41人の死者が出ており、病院を含めた1万棟以上の家屋が倒壊、4000人以上がいまだ家のない生活をしており、1500人以上が仮設キャンプで生活している。このほかコモロで3人の死者が出ていると伝えられている。イボ島の病院では医療機器や薬も浸水被害に遭っており、被災者に十分な医療的処置が施せないことが課題となっている。 モザンビークに最大風速33m/s以上の規模のサイクロンが上陸するのは9年に一度のこととされており、わずか6週間の間に2度もサイクロンが上陸したことは統計開始以来初となる。世界中で2015年から史上最強クラスのサイクロンや台風が立て続けに発生しており、発生頻度が増していることが指摘されている。また、ケネスはアフリカ史上では最北に上陸したハリケーンとなり、ハリケーンの発生域の拡大も懸念される。

個別ページへ

ラマポサの選挙戦

2019/05/06/Mon

南アフリカでは8日の総選挙に向け、選挙戦も終盤である。5日、ラマポサ大統領はジョハネスバーグのスタジアムで数千人の支持者を前に選挙演説を行い、「不処罰の時代は終わった」として、汚職への加担がはっきりすれば誰であれ党や政府の要職から外すことを明言した(6日付ファイナンシャルタイムズ)。当たり前のようにも聞こえるが、この発言からANC内の亀裂とラマポサの苦しい立場を読み取ることができる。 5月3日付Africa Confidentialは、ラマポサが野党のみならず、ANC内でも前大統領ズマに近い議員らと熾烈な主導権争いを強いられていると分析している。ズマ政権の下で汚職が拡大し、「国家の簒奪」(State Capture)が議論されてことはよく知られている。しかし、ラマポサ政権においてもズマ派の影響力は衰えていないし、次回の選挙でも大きく変わらないと予想されている。 南アの選挙は拘束式比例代表制で行われるが、ANCの書記長マガシュレ(Ace Magashule)はズマ派であり、ズマに近い議員を名簿上位に配置した。選挙でANCの得票率が少々下がっても、ズマ派は勢力を維持すると見られる。 ズマ派の戦略として、地方選挙に力を入れ、国政選挙はラマポサらに協力しない姿勢を取っているとの指摘がある。ラマポサの地元であるハウテン(Gauteng)ではANCが民主同盟(DA)と激しく競合しているが、ラマポサの地盤でANCが敗北すれば選挙後に党内で優位に立てるとの見通しから、ズマ派は選挙戦から手を引いているとされる。 ラマポサの戦いは厳しい。ANCを強力に支えてきた労働組合のCosastuは、巨大電力会社Eskomの再編政策に反対し、今回の選挙ではANCに資金的支援を提供していない。ANCの女性・青年組織もラマポサには冷淡で、青年組織指導者のなかには急進的なEFF(経済的自由戦士)に流れた者も多いという。 8日の選挙がラマポサ政権の基盤強化に資するのか、その弱体化をもたらすのか。結果が注目される。

個別ページへ

ベナンで野党を排除した下院選挙

2019/05/06/Mon

1991年に複数政党制を導入して以来、ベナンでは選挙を通じた平和裏な政権交代が何度も起こり、アフリカでも民主主義が定着した国のひとつと見なされてきた。しかし、そのベナンで民主主義の危機と呼びうる事態が起こっている。 4月28日の下院選挙では、タロン(Patrice Talon)大統領の支持政党である共和ブロック(Bloc républican)と進歩連合(Union progressiste)の2つしか参加を許されなかった。野党から呼びかけに答えて多くの有権者が投票をボイコットし、投票率はわずか22%に留まった。選挙後も都市部では緊張が続き、首都コトヌではボイコット運動の中心ボニ・ヤイ前大統領が逮捕されるとの噂が流れ、自宅周辺にバリケードが築かれる事態となった。デモ隊に対して治安部隊が実弾を発射し、数名が死亡したとの報道もある(5月2日RFI放送)。 タロンは2016年の大統領選挙で、前職のボニ・ヤイが推す対立候補のザンス(Lionel Zinsou)を破って当選を果たした。実業家のタロンは、前政権の腐敗を攻撃し、大衆の支持を得た。就任後、財政健全化を果たし、公共サービスを改善するなどの手腕を見せたが、ラジオ局を閉鎖したり、元側近の実業家アジャヴォン(Sébastien Ajavon)を亡命に追い込むなど、強権的な政権運営が目立ってきていた。野党を排除した選挙は、こうした背景の中で実施された。 このところ、民主主義が定着したと思われていたアフリカ諸国で、権威主義的統治の傾向が見られることは懸念される。セネガルでも、2月の大統領選挙では有力者が排除され、4月には唐突に首相職の廃止が閣議決定された(4月18日付ルモンド)。報道によれば、タロンはルワンダの大統領カガメの信奉者だという(5月3日付Africa Confidential)。ビジネスに重きを置き、民主主義や人権を後回しにするスタイルが広がっていくのだろうか。

個別ページへ