中央アフリカとロシア
2024/06/19/Wed
17日付ルモンドは、中央アフリカの近況を伝えている。5月に国軍は、北部の拠点を相次いで反政府武装勢力から奪還し、制圧地域を広げた。この動きの背景には、ロシアなど同盟国の関与がある。
中央アフリカは2018年以降ワグネルを受け入れ、また二国間協定を結んでルワンダの部隊を駐留させている。2020年末に、反政府武装勢力の「変革愛国者同盟」(CDC)がバンギに迫ったときには、ワグネルとルワンダ軍が主力となって撃退した。
現在中央アフリカには、1500~2000人のロシア兵がいると見られる。以前より存在感が控えめになったとも指摘されるが、ロシア兵の数は変わっておらず、変化はプリゴジンの死によってワグネルがAfrica Corpsに再編されたことに伴うものとみられる。
政府による制圧地域拡大に際しては、強引な手法が取られたようだ。2月に米国外務省から刊行された文書は、「村ごと焼き払ったり、市民を殺害したり、鉱山をめぐる利益確保を優先している」と評価している。
中央アフリカには国連平和維持ミッション(Minusca)が2万人近い人員(兵力は14,000人程度)を置いている。兵力の最大拠出国はルワンダで、2022年以来、ルワンダ人女性のヴァランティンヌ・ルグワビザがトップを務めている。
Minuscaも、ルグワビザの就任以来攻撃的な手法を採用し、ロシア兵とも協力しつつ制圧地域拡大に貢献したようである。トゥアデラ大統領もMinuscaの活動を評価している。
フランス軍の撤退後、トゥアデラ政権はロシアやルワンダに依存して国内治安の確立に努め、一定の成果を挙げたと言える。ただ、これをどう評価するかは議論の余地があるところだ。外国兵力によって制圧された地域は、その後すんなりと国家に統合されるのだろうか。その地域に対して、政府は十分な行政サービスを提供できるのだろうか。
中央アフリカの野党政治家は、ダイヤモンドや金など鉱物資源の「ロシアによる略奪」を非難している。政府制圧地域の拡大を素直に喜べない国民も少なくないであろう。
(武内進一)
個別ページへ