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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2022年07月

アフリカの化石燃料をめぐる動き

2022/07/31/Sun

 ロシアによるウクライナ侵攻と対ロシア制裁の影響を受けて、アフリカの化石燃料に対する世界的な注目が高まっている。7月29日付ルモンド紙は、それに対応したアフリカ側の動きを2件報じている。  第一に、トランスサハラ・ガスパイプライン(TSGP)計画の再活性化である。28日、ナイジェリア、ニジェール、アルジェリアのエネルギー担当相は、同プロジェクトの合意に向け協定に調印した。このプロジェクトは、ナイジェリアで生産された液化天然ガスをニジェール経由でアルジェリアに運び、アルジェリアがTransmedパイプライン(チュニジア経由でイタリアにつながる)を通じてEUに供給するというものである。全長4128Kmの長さで、うち1037kmがナイジェリア領、841kmがニジェール領、2310kmがアルジェリア領を通過する。2009年にこの構想が打ち上げられたとき、投資額は100億ドルとされた。長く休眠状態にあったプロジェクトだが、ロシアのウクライナ侵攻以来急速に関心を集め、プロジェクトの再活性化に至った。  第二に、コンゴ民主共和国によるコンゴ盆地開発計画である。同国政府は28日、開発計画の一環として、コンゴ盆地に位置する27の石油鉱区、3つの天然ガス鉱区を正式に入札に付すと発表した。特に、政府はルワンダ国境のキヴ湖周辺に220億バレルの石油と660億立方メートルのガスが埋蔵されていると推計している。  一方で、この計画に懸念を表明する声も強い。この地域で続く武力紛争への影響はいうまでもないが、地球環境への深刻な影響が指摘されている。キブ湖近くにはマウンテンゴリラをはじめとする希少野生動物が生息するヴィルンガ国立公園がある。さらに、コンゴ盆地は巨大な泥炭地で、莫大な量の二酸化炭素を含んでおり、開発はこの大量放出を招く。自然保護団体グリーンピースの推計では、コンゴ盆地開発による二酸化炭素放出量は60億トンで、これは2021年の二酸化炭素総排出量の15%に達する。  コンゴ政府は、資源開発は主権に基づく正当な権利だとして、NGOの訴えに耳を貸さない構えである。現在のところ大手石油開発企業は応札する意向を示していないが、今後の展開を注視すべきである。  ロシアのウクライナ侵攻は世界に様々な余波をもたらしており、エネルギー危機はそのひとつである。それがアフリカの化石燃料をめぐる情勢を急速に変化させている。

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コンゴ東部で反国連暴動広がる

2022/07/30/Sat

 7月25日以降、コンゴ民主共和国東部で国連平和維持部隊Monuscoを標的とした暴動が広がり、多数の死者が出る事態となった。暴動の発端はMonuscoの撤退を求めるデモで、市民団体のLuchaや政権与党UDPS青年部が呼びかけた。それが暴動へと変わり、ゴマ、ベニ、ブテンボ、サケ、ウヴィラといった東部の主要都市に広がった。国連部隊兵士3人を含む15人が死亡したと報じられている(29日付ルモンド)。  国連の撤退を求めるデモは、M23による反乱が継続するなかで起こり、M23を制圧できないMonuscoは出て行け、と主張された。このデモに先立って、7月15日にはバハチ(Modeste Bahati)上院議長がMonuscoの撤退を要求していた。  Monuscoに問題がないわけではないが、それに対する批判には筋違いのところがある。そもそもMonuscoのミッションは、コンゴの治安部隊を支援して文民保護を行うことである。コンゴ東部は昨年5月以降戒厳令下にあり、州知事なども軍人が務めているが、治安の改善に成功しておらず、コンゴ軍自体が住民への人権侵害の疑いを指摘されている。また、Monuscoの撤退計画は既に進んでおり、東部の活動を縮小しつつある。  加えて、Monusco撤退が問題解決につながるわけではない。現在、東アフリカ共同体(EAC)で平和維持部隊をコンゴ東部に派遣する議論がされているが、それがMonuscoに代わることで事態が改善する見通しは薄い。先の上院議長の要求などは、Monuscoをスケープゴートにしている感がある。  M23の活動に対しては、ルワンダやウガンダの支援が指摘されている。特にルワンダについては、厳しい対応を求める声が出つつある。先週、米国上院外交委員会のメネンデス委員長は、米国の対ルワンダ援助を再考すべきだと述べた(29日付ルモンド)。  まずはM23の活動を抑え込む必要があり、ルワンダへの国際社会の圧力が強まることになろう。

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チュニジアで憲法改正国民投票可決

2022/07/27/Wed

 7月25日、チュニジアで憲法改正の是非を問う国民投票が実施された。約930万人の有権者のうち246万人が投票し、賛成票が92.5%を占めた。有力諸政党がボイコットを呼びかけたこともあり、投票率は27.54%にとどまった。憲法改正によっては、大統領は強大な権限が与えられる。議会の解散権を持ち、議会の不在時には行政令を法律の代替措置として発出できる。国家が「危機」にあれば任期制限を超えて大統領職にとどまることができる。大統領権限に対するチェック・アンド・バランスは弱体化した。  ちょうど1年前の2021年7月25日、サイエドは議会を停止し、「例外状態」を宣言して、個人支配体制を樹立した。今回の国民投票によって、その体制が制度化されたことになる(27日付けファイナンシャルタイムズ)。  サイエドの議会への攻撃や「例外状態」は、とりわけ当初、国民から熱狂的な支持を得た。「ジャスミン革命」以降のチュニジアは、経済状態が悪化を続ける一方で、政党間の対立によって適切な政治的対応ができなかった。国民はこれに嫌気し、「強い大統領」を求めたのである。サイエドは、この1年間、議会の指導者に圧力をかけ、また裁判官を大量に解職するなど、自身を批判する人々を抑圧してきた。それに伴ってサイエドの人気にも陰りが見えており、悪化する経済情勢も相まって、6月には大規模なゼネストが実施された。  今回の憲法改正案は、サイエドが一人で作ったと言われている。6月20日、憲法草案作成委員会からサイエドに憲法草案が提出されたが、その10日後に官報で公表された改正案は大きく変更されており、その内容を草案作成委員会委員長が激しく批判するという異例の事態となった。今回の投票率の低さは、サイエドと人々の距離感を示している。  憲法改正によって「例外状態」が制度化された事実は、内外に衝撃を与えている。26日付けルモンド紙は社説で、これによって「『ジャスミン革命』以来育てられてきた民主主義は終わりを告げ」、「民主主義の『チュニジア・モデル』は埋葬された」と述べた。  ポピュリズムが生んだ指導者が民主主義を破壊した。一方で、経済危機は変わらず、今後IMFとの交渉が控えている。人々の生活が改善しなければ、サイエドへの支持は急速にしぼむことになろう。

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アフリカ各国の物価上昇と対策

2022/07/20/Wed

ロシアによるウクライナ侵攻が、アフリカ諸国で食料や燃料の価格高騰を引き起しているが、その中で、不満を募らせた人々が各地で警察と衝突する例が続いている。  モザンビークでは、先週木曜日に首都マプトと郊外のマトラで高騰する生活費にたいするデモが行われた。警察は、「無秩序行為と破壊行為」を行ったとして、98人を逮捕・起訴したとされる[BBC 7月19日]。また、六月に29.8%の消費者物価上昇率を記録したガーナにおいても、先月、物価高や経済停滞を不満とする人々のデモと警察の衝突が起こっている。デモ隊には催涙ガスがまかれ、29人が逮捕された[Aljazeela 6月29日]。  人々の不満が高まる中、各国政府は様々な対応を行っている。ガーナ政府は、苦境から脱するためにIMFに緊急援助のパッケージを要請に踏み切った[Aljazeela 7月13日]。ケニアにおいては、主食であるウガリに使用されるトウモロコシ粉の価格を下げるための補助金を出すことを決定した。しかし、この施策はその実施タイミングから、来月9日の選挙の票集めだという批判もある[BBC 7月19日]。  主要穀物の栽培も見直されている。ジンバブエでは、主な主食であるトウモロコシと小麦の価格が、ロシア侵攻が始まって以来、50%以上値上がりした。また、ロシアに依存している肥料原料の価格も3倍となった。このため、政府や国連開発計画(UNDP)は、肥料が少なくて済み、干ばつに強く、栄養価の高いソルガムやトウジンビエなどの伝統的な穀物を植えるよう農民に呼びかけている[BBC 7月19日]。  差し迫った困窮に対する支援と今後の食糧安全を見通した施策、各国政府にはその両方が求められているといえるだろう。

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米国における人工中絶権破棄判決の影響

2022/07/03/Sun

 6月24日、米国最高裁は、女性の人工中絶の権利を認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を破棄した。このアフリカへの影響が懸念されている。  6月29日のルモンド紙によれば、サブサハラアフリカ48カ国のうち、南アフリカ、サントメ・プリンシペ、カーボヴェルデ、ギニアビサウのみが、12週まで中絶を無条件で認めている。多くの国は、母体が危険である場合という条件づきで中絶を認めている。一方で、セネガル、モーリタニア、アンゴラ、コンゴ共和国、マダガスカル、シエラレオネは、レイプの場合も含めて中絶が違法化されている。  シエラレオネでは、2015年12月に中絶を認める法律が議会で採択されたものの、翌年バイ・コロマ大統領(当時)が署名を拒否した。背景に宗教指導者の圧力があったと言われている(BBC 2016年3月12日付)。  米国国内の動きは様々な形で世界に影響を与える。今後各国で生じるであろう米国最高裁判決のリパーカッションについて、注意深く観察する必要がある。

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