グリーンエコノミーの行方と鉱物価格
2020/03/14/Sat
3月5日付のAfrica Confidential は、グリーンエコノミー政策と鉱物資源価格の関連についての分析記事を掲載している。ヨーロッパや米国では、2030年以降にディーゼル、ガソリンを燃料とする車両販売を禁止する動きが顕著になっており、これに伴って、電気自動車エンジン、太陽光発電、風力発電で利用される鉱物への需要が高まっている。リチウムイオン電池生産に欠かせないコバルトはその一つで、2018年にはその価格が大幅に上昇し、トン当たり94,000ドルの高値をつけた。
これに対して、複数のアフリカ諸国が課税を強める動きに出た。例えば、コバルトの世界生産量の半分以上を占めるコンゴ民主共和国(DRC)政府は、これを「戦略的鉱物」に指定し、輸出に10%の課税を行った。これが一因となって、コバルト価格は2019年に暴落し、トン当たり価格が30,000ドル水準にまで低下した。コンゴの政策だけでなく、中国が2019年に電気自動車に対する補助金を削減したことや、2017-18年に積みあがった在庫がこの時一斉に放出されたことも、コバルト価格暴落の要因となった。
2019年8月になって、生産大手のグレンコア(Glencore)社がコンゴのムタンダ(Mutanda)プラント操業の停止を決め、供給量が15%程度下がったことで価格は安定に向かった。世界中でリチウムイオン電池生産拡大に向けた投資が続けられており、長期的に見れば、コバルト需要の逼迫に備える必要は当然予想される。
一方、電気自動車への移行はプラチナ、パラジウム生産者には悪いニュースだ。これらの鉱物はガソリン・ディーゼルエンジンの二酸化炭素排出量を減らすための触媒として使われる。先々の生産縮小が予想されるため、南アのプラチナ、パラジウム生産者は、2008年以来需要不振に苦しんでいる。自動車メーカーは、投資を拡大せずに、ガソリン・ディーゼル燃料使用車を売り切ってしまおうとしている。そのため、逆説的だが、プラチナ、パラジウムの供給が当面の自動車需要に追いつけず、価格が上昇してきた。今後数年間はこのトレンドが続く見込みだが、長期的に見れば一時的現象であろうとアフリカ・コンフィデンシャル誌は分析している。
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