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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2020年10月

エチオピアへのバッタの襲来

2020/10/25/Sun

国連食糧農業機関(FAO)が10月15日に公開した最新情報によれば、エチオピア北東部において、サバクトビバッタが大規模な蝗害を引き起こしている。 現在、エチオピアは、数ヶ月に及ぶ雨期が終わった後の穀物の収穫期を迎えている。こうした状況は、バッタにとって繁殖に理想的な環境となっている。バッタの群れは、紅海を挟んで対岸のイエメンからエチオピアに飛来した。 10月22日付のAljazeeraによれば、エチオピアでは、アムハラ州、ティグライ州、オロミア州東部で穀物に甚大な被害が出ている。この地域では、穂をつけたモロコシやテフ(主食であるインジェラの主な原料となるエチオピア原産の穀物)が、バッタにほとんど食べ尽くされてしまったという農家も少なくない。エチオピアでは、ことし1月以降、推定約20万ヘクタールの土地がバッタの被害を受けており、今回のバッタ襲来が、食糧不足に追い打ちをかけるものになることが懸念されている。 バッタの襲来に対して、FAOとエチオピア政府は、地上と上空から殺虫剤散布を行い、群れの拡大を抑え込もうとしている。FAOによれば、農薬や殺虫剤の在庫は十分にあり、飛行機を使った殺虫剤散布も一定の効果を出していると考えられ、昨年のバッタ襲来時よりも被害の拡大を抑え込めているという。これまでの防除対策によって、エチオピアでは、約100万トンの穀物が被害を免れ、50万世帯が家畜に必要な食糧を確保できたとしている。 今後、バッタの群れは、南風に乗ってエチオピアのソマリ州に到達し、さらに、ケニアやウガンダの北部に侵入すると予想されており、早期の対策が望まれている。

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大統領選挙を前にした緊張―ギニアとコートジボワール

2020/10/17/Sat

16日、ギニアの首都コナクリ北東部約140kmで軍の基地が襲撃され、大佐が暗殺された。ギニアでは明日18日が大統領選挙の投票日で、政治的緊張の高まりが伝えられていた。大統領選挙には現職のアルファ・コンデ(Alpha Condé)が立候補し、野党候補のジャロ(Cellou Dalein Diallo)との選挙戦を繰り広げている。82歳のコンデの立候補を巡っては、憲法の三選禁止規定に違反するとの批判がなされてきた。2010年に大統領選挙初当選を果たしたコンデは既に二期の任期を務めたが、この3月に実施された憲法改正によって、これまでの二期はクリアされ、三選禁止規定には抵触しないと主張している。3月のレファレンダムも激しい抗議の中で実施され、米国大使館が「深刻な懸念」を表明した(2020年3月26日付ルモンド)。 似た状況にあるのがコートジボワールである。10月31日に大統領選挙が予定されているが、現職のワタラ(Alassane Dramane Ouattara)が立候補し、先のコンデと全く同じ理由で三選禁止規定違反の批判を受けている。有力な野党候補のベディエ(Henri Konan Bédié)とンゲッサン(Pascal Affi N'Guessan)は、15日共同で記者会見を開き、大統領選挙に参加せず、市民的不服従を行うと発表した(10月15日付ルモンド)。事実上の選挙妨害を宣言するもので、今後の治安情勢悪化が懸念される。 選挙はしばしば紛争を引き起こすが、今年はコロナ禍の影響もあり、悪化した経済状況が政治的緊張をさらに高めることが懸念される。

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マリの人質解放と新政権の性格

2020/10/15/Thu

10月8日、2016年12月に誘拐されたフランス人女性ソフィ・ペトロナン、去る3月に誘拐された野党党首スマイラ・シセなど4名の人質が解放された。解放に応じたのは、アルカイダ系の「イスラムとムスリムを支持するグループ」(Groupe de soutien de l'Islam et des musulmans:GSIM)で、指導者はトゥアレグ人のイヤド・アグ・ガリ(Iyad Ag Ghali)である。4人の解放と引き換えに、GSIMの戦闘員200人が解放された。 13日ルモンド紙に掲載された、クレモン・ボレ(Bruno Clément-Bollée)の論説は、この人質解放を批判的に分析している。同氏はフランス軍に長く在籍し、サルコジ政権下で外務省治安・国防協力局長を務めた人物で、この論説はフランス軍事筋の見解を反映していると思われる。論説の概要は以下のとおりである。 8月のクーデタによって成立したマリ新政権は、ECOWASの圧力にもかかわらず、反乱軍の影響力が強いことが知られている。ケイタ前大統領に対する辞任要求運動で大きな役割を果たした反政府グループM5から、市民活動家の入閣はなかった。M5は失望を表明している。一方で、やはりケイタ前大統領に批判的だった宗教指導者のディコ(Dicko)師は、側近を政権に送り込んだ。ディコ師はワッハーブ派の指導者で、イヤド・アグ・ガリともパイプを持っている。今回の人質交換にフランスは関与しておらず、マリ新政権の強いイニシャティブで行われた。4人の人質が解放されたことはよかったが、その代償は大きい。交換に解放された200人の戦闘員のなかにはフランス軍が拘束した者も含まれており、フランスとしては、イスラーム急進主義運動に対するマリ新政権の姿勢を確認し、協力関係を再考する必要がある。 フランスはバルカンヌ作戦でサヘルに5000人の兵士を派遣するなど、この地域の治安に深くコミットしてきた。今回の人質解放には、自分たちの苦労を無に帰すものだという印象を持つのであろう。フランスや国連等のコミットにもかかわらず、マリをはじめ、サヘル地域の治安情勢は改善していない。新政権の誕生が事態にどのような影響を与えるのか、注視する必要がある。

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ECOWASがマリに対する制裁を解除

2020/10/07/Wed

10月6日、ECOWASはマリに対する制裁解除を発表した。これは、10月1日、移行政権の活動を規定する移行憲章において、大統領不在時に副大統領が昇格する条文が取り消されたことに対応する措置である。8月18日に起こったクーデタの首謀者ゴイタ大佐が副大統領に座る移行政権で、有事の際にゴイタがそのまま大統領に昇格する仕組みを作らないというのが、ECOWASの意向であった。その条件を移行政権が吞んだわけである。  とはいえ、制裁解除の前日に発表された移行政権の新内閣では、国防相、治安相、地方行政相、国民和解相など重要ポストを軍人が占めた(6日付ルモンド)。新内閣を主導しているのが反乱軍であることは明らかである。また、クーデタの際に逮捕された首相らの釈放や、反乱軍が樹立したCNSPの解散といった、もともとECOWASが主張していた要求はまだ完全に実現していない。ECOWASとしても、そろそろ区切りをつけて次のステージに進みたいという意向が透けて見える。

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スーダン政府と反政府勢力が和平協定を正式に承認

2020/10/05/Mon

10月3日付のロイター通信によれば、南スーダンの首都ジュバにおいて、スーダン政府と反政府勢力が和平協定を正式に承認した。 9月1日付の「今日のアフリカ」で伝えたように、双方は8月31日に和平協定に合意している。今回の署名は、この和平協定を正式に承認する最終合意となる。スーダン政府と反政府勢力の和平交渉は南スーダンが仲介役となっており、署名式は南スーダンの首都ジュバで行われた。今回の式典では、スーダン暫定政府の軍部の最高権力者、モハンマド・ハムダン・ダガロ(通称、ヘメティ)中将が出席し、スーダン政府の代表として合意文書に署名した。署名した反政府勢力は、西部のダルフール地方を拠点とする2つの勢力――「スーダン革命戦線(Sudan Revolutionary Front: SRF)」および「ミンニ・ミナウィのスーダン解放運動(Sudan Liberation Movement-Minni Minnawi (SLM-MM) 」――と、南部を拠点にする「スーダン人民解放運動-北部(Sudan People's Liberation Movement-North: SPLM-N)」のうちマリック・アガルが率いる勢力である。 今回の最終合意によって、反政府勢力の軍隊をスーダン軍の治安部隊に統合することや、彼らの土地や政治的な権利を認めることが決められた。また、10年間で7.5億米ドルの資金が、南部と西部の開発や難民・国内避難民の帰還に投じられる予定である。 今回の最終合意には、南コルドファン州を拠点とするアブデルアジズ・アル=ヒル率いるSPLM-Nと、ダルフールを拠点とするアブドゥル・ワヒド・アル=ヌル率いる「スーダン解放運動(Sudan Liberation Movement: SLM-AW)」という2つの有力な反政府勢力が署名していない。このうち、アル=ヒルのSPLM-Nは、バシル政権下においてジャンジャウィードの民兵を再編して組織された準軍組織である迅速支援部隊(Rapid Support Forces: RSF)を率いる司令官であるヘメティが和平プロセスを主導することに反対している。しかしながら、アル=ヒルは9月にアブダッラー・ハムドゥク首相とアジスアベバで和平交渉を行い、敵対行為の停止と政教分離の原則に基づく世俗国家の樹立に関して合意を結んでおり、独自にスーダン政府との和平交渉を水面下で進めているとみられている。一方、SLM-AWは、スーダン暫定政府との和平プロセス自体に参加していない。 スーダン暫定政府、南スーダン政府、ヨーロッパ連合(EU)および国連は、いずれも今回の和平合意を評価するとともに、まだ署名していない2つの反政府勢力に対し、和平プロセスに参加するように呼びかけている。

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ザンビアの債務モラトリアム要請

2020/10/03/Sat

ザンビアの債務利払いモラトリアム要請に対し、債権者側が反発している。9月22日、ザンビア政府はドル建て債券(ユーロ債)の利子支払いを半年間猶予するよう債権者側に要請した。これは、事実上、コロナ感染拡大後のアフリカで初めての民間債務支払い拒否宣言であった。  ザンビアは、2012年に初めてユーロ債を発行し、2014、15年にも発行した。合計額は110億ドルに上り、中国による所有も多いと言われる。政府は今回、このうち30億ドル分についてモラトリアムを要請した。しかし、ザンビア発行ユーロ債の4割を所有するヘッジファンドグループは、政府の対応が不透明であり、中国向け債務と同じ扱いを求めるとして、モラトリアムの受け入れを拒否した(10月1日付ファイナンシャルタイムズ)。  ザンビアの対外借り入れに関しては、与党「愛国戦線」(PF)による選挙対策として農業支援プロジェクトに向けられたとの分析がある(9月24日付Africa Confidential)。「農民投入財支援プログラム」(Farmer Input Support Programme: FISP)がそれで、中小農家向け肥料・種子補助金に充てられる。政府は最近になって、来年度予算にFISPを大幅に増額させると発表した。従来5000万ドル程度だった予算を5億ドルと10倍に増額するという。その目的は、来年8月に予定される選挙対策だと言われている。FISPは財政負担が大きい一方、農民には好評である。加えて、与党系の企業が入札に絡んで優遇されたとの疑惑も指摘されている。  ザンビアの債務危機は、昨年来しばしば報じられてきた。政府は正式なデフォルト宣言を出しておらず、政策介入を恐れてIMFに対する融資要請も行っていないが、このままでは事態は打開できず、来年の選挙への影響は必至であろう。

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