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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2020年07月

コロナ禍の女性への影響

2020/07/29/Wed

 7月27日付ルモンド紙は、新型コロナウイルス感染症がアフリカの女性に対して深刻な影響を与えているとのNGOの調査報告を紹介した。去る4月~6月に西アフリカ7か国(ベナン、ブルキナファソ、コートジボワール、ギニア、マリ、ニジェール、セネガル)において、フランスに本拠を置くNGOのEQUIPOP(Equilibres & populations)が約30の団体に対して行った調査によれば、マタニティ・サービスや避妊へのアクセスがコロナの影響で大きく阻害されている。  Covid-19の感染拡大に伴い、女子保健に関わる様々なサービスが影響を受けている。保健センターが閉鎖されたり、家族計画のための訪問も大幅に縮小された。集会が禁止されたため、啓発キャンペーンが開けなくなっているとの報告もある。また、中国やインドから輸入していた避妊具や医薬品が調達ルートの混乱から入手しにくくなっている。  エボラ出血熱が流行した際には、病院の閉鎖によって、妊産婦の死亡率が70%増加したと言われる。感染症の拡大が従来の医療サービスを混乱させ、そのしわ寄せが妊産婦のような社会的弱者に及ぶ構図が見て取れる。日本でも、コロナ禍の中で女性への暴力が顕在化したり、望まない妊娠が増えているとの報告がある。共通する問題状況を指摘できよう。  

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ナイル川のダム建設をめぐりエチオピア、エジプト、スーダンが協議再開に同意

2020/07/26/Sun

7月22日付のBBCによれば、論争を招いているナイル川の「大エチオピアルネッサンスダム(the Grand Ethiopian Renaissance Dam: Gerd)」建設工事に関して、エチオピア、エジプト、スーダンの3国が協議を再開することで合意した。 Gerdは、2011年にエチオピアがナイル川の支流である青ナイルに建設を開始した巨大ダムであり、スーダンの国境から30キロ離れたベニシャングル=グムズ州内に位置する。現在、総工費45億ドルをかけて建設工事が進められている。完成すると、総貯水量740億立方メートル、総発電量6000メガワットを誇るアフリカ最大の水力発電所となる。 ダム建設が始まってから、エジプト、スーダン、エチオピア3国の関係は急速に悪化した。エチオピアは、ダム建設によって、国内の不安定な電力事情の改善と経済開発の進展を期待している一方、国内の水需要のほぼすべてをナイル川に依存しているエジプトやスーダンは、ダム建設によって水量が減少するのではないかと強い危機感を表している。 エチオピアとエジプトは、AUやアメリカの仲介の下、いつ、どのようにダムの貯水を行うか、どれぐらいの水量を放水するかに関して交渉を続けてきたが、未だに同意には至っていない。背景には、ダムがナイル川下流域の水量に及ぼす影響について誰も明確な答えを出していないことがある。エチオピアは、ダム建設はナイル川の水量に悪影響を及ぼさないという主張を繰り返す一方、エジプトはこの主張を認めず、水量の変化に関して十分な根拠が示されるまで建設は中止されるべきだと反論している。 ナイル川の取水権については、1929年にエジプト-イギリス間で締結された条約によって、エジプトが一定の割当水量を確保すること、及びナイル川上流域での河川開発事業に対する拒否権を持つことが認められた。また、1959年にエジプト-スーダン間で締結された条約では、エジプトが、ナイル川の年間平均水量の66%を、スーダンが22%を利用できると規定されている。 ただし、この2つの条約は、ナイル川上流域のアフリカ諸国には相談されずに締結されており、青ナイルの源流に位置するエチオピアは不平等であると主張してきた。2010年、エチオピア、ウガンダ、タンザニア、ルワンダ、ケニアのナイル川上流域の5ヶ国は、流域国は他国に深刻な影響を与えない範囲で水資源を自由に利用してよいとする「ナイル流域協力枠組み協定」(エンテベ協定)に署名した。しかし、下流域のエジプトとスーダンは同協定に調印していない。 今月15日、エチオピア政府は、衛星画像の解析を通じてダム水量の増加を確認したと発表した。同政府は、これは意図的な貯水ではなく、雨期が始まったことで自然にダムに水が貯まった結果であり、すでに初年度の目標である貯水量に達したと説明している。ただし、エチオピア政府は、ダムが満水になるまで今後5~7年かかる見通しであることをすでに公表しており、今回のエチオピア政府の発表は、同意なく実施された貯水としてエジプトとスーダンが強く反発している。 協議の再開にあたり、エチオピアのアビィ首相は、ダムの貯水は誰にも悪影響を与えることはないことを強調している。一方、エジプトのシーシー大統領は、ダムの貯水と管理のルールに関して法的に拘束力のある協定を締結したいという声明を出している。今回の協議再開によって、ナイル川の水資源をめぐる各国の利害がどのように調整されるかが注目される。

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アメリカの「信教の自由」の外交化

2020/07/24/Fri

 7月20日づけで米国の援助開発機関であるUSAIDは「国際的信教の自由(International Religious Freedom、IRF)」の最高顧問であるサマ・ノーキスト氏をUSAIDの管理者として任命したことを報じた。これは6月2日にトランプ大統領により発された「国際的信教の自由を進行させるための大統領令」に基づいた動きである。この大統領令は、世界中すべての人々に対する信教の自由を米国の優先的な外交方針と位置付け、USAIDに5000万USドル/年の予算をつけて計画と実行を命じたものである。  2020年の「国際的信教の自由」についての年間報告では、アフリカ大陸における「特に懸念される国」としてナイジェリアとエリトリア、「警戒リスト」国として中央アフリカ共和国、スーダン、アルジェリア、エジプトの指定が推奨されている。  「合衆国国際的信教の自由委員会」は1998年に設立されたが、米国な主流の外交・援助方針には統合されず実効性の薄さが指摘されてきた。今回の動きによって、外交を通じた「信教の自由の権利」を守る動きが加速することが予測されている。  もともと福音派を中心とするキリスト教団体のロビー活動を背景に成立したこの委員会には、キリスト教を中心とするバイアスの存在が指摘されている。また、信仰だけでなく社会や法を規程する側面を持つイスラームや、家族の伝統として認識されることも多い在来信仰に、個人が自由意志で選ぶものというプロテスタント的な宗教理解を押し付ける可能性や、政治・民族・経済や歴史が複雑に絡み合う紛争を宗教の問題として扱うことで、世界を宗教化する動きになることも懸念されている。「信教の自由」の外交化の促進でどのような介入が各国に行われるのか今後の動向を見守りたい。

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マリで反政府運動の高まり

2020/07/18/Sat

 マリで政府に対する抗議活動が活発化している。7月10日(金)、首都バマコでは大統領辞任を求める群衆が街を埋め尽くした。デモ隊は国会を襲撃し、国営テレビ局を一時占拠した他、一部は略奪行為に及び、治安部隊との衝突で11人が死亡した(7月13日付ルモンド)。  こうした大規模な抗議集会は、6月5日、19日に続いて3回目である。事の発端は3月から4月にかけて実施された下院選挙で、与党議員の不正を憲法裁判所が追認したとの不満が噴出している。デモ隊は、反政府運動が「6月5日運動ー愛国勢力結集」(M5-RFP: Rassemblement des forces patriotiques)の名で組織された。この組織の指導者の一人はイマームのディコ(Mahmoud Dicko)師で、厳格なイスラーム実践を掲げることで知られる。2008年には、家族法改正に反対し、これを撤回させた。M5-RFPには、その他に汚職反対を唱えるNGOや野党勢力なども参加している。  運動の高まりに対して、ケイタ大統領は、11日、憲法裁判所のメンバーを入れ替えると発表し、譲歩の姿勢を見せた。また、ナイジェリアのグッドラック・ジョナサン前大統領をトップとするECOWAS(西アフリカ経済共同体)のミッションがマリを訪問し、調停にあたっている。  運動の直接の引き金は選挙をめぐる不正だが、その背景は複雑である。何よりも、北部から中部にかけての急進的イスラーム主義に関連した治安問題が解決せず、むしろ悪化していること、現政権がそれに対して有効な手を打ち出せないことに対して、国民の大きな不満がある。マリに対しては、国連がPKO部隊を派遣し、フランスも派兵し、また周辺国もG5サヘルという枠組みで介入している。  国際社会はケイタ政権のガバナンス能力の欠如を問題視しているが、マリ社会においては国際社会の関与こそが事態の悪化を導いているという見解が有力で、強烈な反仏、反国際社会の感情が表出している。ケイタ大統領への信任問題が、一見すると北部、中部の治安問題と別の文脈で噴出している現状は、実のところ、事態の深刻さを表している。

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仏裁判所、カガメ側近らへの起訴取り下げ

2020/07/11/Sat

7月3日、パリ高裁は、1994年4月6日のルワンダ・ハビャリマナ大統領搭乗機撃墜事件に関連して、カガメ現大統領側近9名に対する起訴を取り下げる判決を明らかにした。これにより、2018年12月の予審判事による同様の決定が法的に確認されたことになる。10日付ルモンド紙は、61頁に及ぶ判決文のポイントを紹介している。  ハビャリマナ大統領搭乗機撃墜事件に関しては、当時の反政府武装勢力で現ルワンダ与党のRPFによる犯行を主張する説と、逆にフトゥ急進派による犯行説が対立してきた。2006年、ブリュギエール予審判事は前者の立場に立って9人の逮捕状を請求し、フランスとルワンダの外交関係断絶に至った。  判決文は、RPF幹部らへの起訴が根拠のない証言に基づいていたと指摘している。大統領搭乗機撃墜を決めたRPFの会議に出席したとの証言も、証言者の軍内の職階が低く、重要な会議に出席していた可能性は乏しいと判断された。フランス人の軍事アドバイザーであったバリル(Paul Barril)の証言は、虚偽が多く信憑性に欠けると断じられた。撃墜を引き起こしたミサイルの発射場所が論争になっていたが、2010年以降キガリで爆発物、音響、ロケット弾道等に関する専門家多数とともに現地調査を行ったトレビディク(Marc Trévidic)判事の調査を支持し、発射されたのは当時のルワンダ国軍(FAR)が占拠していたカノンベ地区であり、RPFがそこから発射した可能性は薄いと結論付けた。  近年の議論の流れを踏まえれば驚きはないが、ルワンダ史やフランスとルワンダの関係にとって重要な判決である。ジェノサイドの端緒となった大統領機撃墜事件が、ハビャリマナのいわば身内であるフトゥ急進派によって仕組まれた可能性が高くなった。ルワンダの現RPF政権にとっては、フランスの裁判所からお墨付きを得たことになる。一方、フランスは自らがRPF政権にかけた嫌疑を自らの手で否定した。一連の裁判が外交や政治の駆け引きに使われてきたわけで、過去の解明を求める声が強まることになろう。

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コートジボワール首相死去

2020/07/09/Thu

8日、コートジボワール首相のアマドゥ・ゴン・クリバリ(Amadou Gon Coulibaly)が心臓発作で死去した。61歳であった。彼は、2012年に心臓手術を受けており、5月上旬にも治療のため渡仏し、7月2日に帰国したばかりだった。8日、閣議の途中で不調を訴え、病院に搬送された後に亡くなった。  コートジボワールでは10月31日に大統領選挙が予定されているが、3月5日に現職のワタラ(78歳)が不出馬を表明したため、ゴン・クリバリはその後継として有力視されていた。大統領選挙には、ベディエ元大統領(86歳)が出馬すると見られるほか、ICCで無罪判決を受けたバボ元大統領(75歳)も帰国の機会を窺っている。一方、早くから出馬の意向を表明したソロ元首相(48歳)は、亡命を余儀なくされている。  ワタラの不出馬宣言により、コートジボワールの政治指導者が一世代若返るかと見られていたが、ゴン・クリバリの死去によって一気に不透明になった。ワタラが三選出馬することになろうとの見方もある(8日付ルモンド)。しばらくは国内政局の駆け引きが続くだろう。

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台湾がソマリランドを「承認」

2020/07/05/Sun

台湾とソマリランドが相互に外交関係を強化することで合意した。ソマリランドは1991年に独立を宣言したが、国際社会から承認を得るには至らず、数か国が外交事務所を置くにとどまる。エチオピア、トルコ、ジブチが領事館を置くほか、英国とデンマークが事務所を置いている。  7月2日付ファイナンシャルタイムズによれば、台湾とソマリランドは「共通の価値に基づき」二国間関係を強化すると発表し、相互に外交事務所を開設する。  この背景として、ソマリランドの地政学的重要性と台湾の外交戦略を指摘することができる。紅海の入り口に位置するソマリランドは、地政学的にきわめて重要な位置を占める。事実、隣国のジブチには、米国、日本、フランス、中国、イタリアが軍事基地を設置している。日本の自衛隊にとって、唯一の海外拠点である。  独立への道を模索するソマリランドとしては、外交相手を増やすことの意味は大きい。特にアジアでは初めてのケースであり、援助も期待できる。   台湾としては、中国を意識した外交戦略の意味も大きい。アフリカでは、近年中国の外交攻勢が進み、台湾が外交関係を持つのは現在エスワティニ(旧スワジランド)だけになった。台湾にとっては、それだけソマリランドの外交上の価値が高まったと言える。  非承認国家が非承認国家を相互に「承認」したわけだが、これは中国とアフリカの関係強化とコインの裏表にある事態とも言える。アジアとアフリカが様々な形で関係を深めているということだ。

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ベルギー国王がコンゴの植民地支配を謝罪

2020/07/04/Sat

ベルギーのフィリップ国王は、6月30日、コンゴ民主共和国の独立記念日にあわせてチセケディ大統領に書簡を送り、コンゴでの植民地期の行為を深く悔いるとの声明を発出した。コンゴ自由国時代(1885~1908)、ベルギー領コンゴ時代(1908~1960)の双方について、深い悔恨の念を表明した。2013年に即位したフィリップ国王は、「あらゆる人種差別と闘う」ことを表明し、この問題への議論を深めることを促した。  ベルギーとコンゴの関係に関しては、植民地期に、混血児をコンゴ人の母親から引き離し、ベルギーに連れてきて教会施設などで養育した行為について、2019年4月にミッシェル首相(当時)がベルギー議会で謝罪している。また、この件については、当事者から訴えが起こされている。  今回の国王の謝罪声明は、5月以降米国をはじめ世界各地で展開されている「ブラック・ライブズ・マター」(BLM)運動を意識した内容となっている。運動が引き起こした抗議デモの中で、コンゴ自由国時代の国王レオポルドII世の銅像が攻撃の対象となったことも、謝罪の背景にあると言えよう。  謝罪を受けて、チセケディ大統領は沈黙を守り、遅れてコンゴの外相は歓迎する声明を出した。コンゴのカトリック司教団体も歓迎声明を出している。一方で、政府に批判的な市民団体Luchaからは、謝罪だけでなく賠償を要求する声が上がっている(6月30日Radio France Internationale)。初代大統領カザヴブの娘であるジュスティーヌ・カザヴブは、声明が「偽善的」であり、ベルギーの政治家はさらなる自己批判が必要だと批判した(7月1日付ルモンド)。  BLM運動の余波という側面があるにせよ、植民地支配を国王が謝罪したことを前向きに受け止めたい。過去の見直しは、こうした形で少しずつ進むのだと思う。

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