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今日のアフリカ

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仏裁判所、カガメ側近らへの起訴取り下げ

2020/07/11/Sat

7月3日、パリ高裁は、1994年4月6日のルワンダ・ハビャリマナ大統領搭乗機撃墜事件に関連して、カガメ現大統領側近9名に対する起訴を取り下げる判決を明らかにした。これにより、2018年12月の予審判事による同様の決定が法的に確認されたことになる。10日付ルモンド紙は、61頁に及ぶ判決文のポイントを紹介している。
 ハビャリマナ大統領搭乗機撃墜事件に関しては、当時の反政府武装勢力で現ルワンダ与党のRPFによる犯行を主張する説と、逆にフトゥ急進派による犯行説が対立してきた。2006年、ブリュギエール予審判事は前者の立場に立って9人の逮捕状を請求し、フランスとルワンダの外交関係断絶に至った。
 判決文は、RPF幹部らへの起訴が根拠のない証言に基づいていたと指摘している。大統領搭乗機撃墜を決めたRPFの会議に出席したとの証言も、証言者の軍内の職階が低く、重要な会議に出席していた可能性は乏しいと判断された。フランス人の軍事アドバイザーであったバリル(Paul Barril)の証言は、虚偽が多く信憑性に欠けると断じられた。撃墜を引き起こしたミサイルの発射場所が論争になっていたが、2010年以降キガリで爆発物、音響、ロケット弾道等に関する専門家多数とともに現地調査を行ったトレビディク(Marc Trévidic)判事の調査を支持し、発射されたのは当時のルワンダ国軍(FAR)が占拠していたカノンベ地区であり、RPFがそこから発射した可能性は薄いと結論付けた。
 近年の議論の流れを踏まえれば驚きはないが、ルワンダ史やフランスとルワンダの関係にとって重要な判決である。ジェノサイドの端緒となった大統領機撃墜事件が、ハビャリマナのいわば身内であるフトゥ急進派によって仕組まれた可能性が高くなった。ルワンダの現RPF政権にとっては、フランスの裁判所からお墨付きを得たことになる。一方、フランスは自らがRPF政権にかけた嫌疑を自らの手で否定した。一連の裁判が外交や政治の駆け引きに使われてきたわけで、過去の解明を求める声が強まることになろう。