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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2024年10月

ガボンの憲法草案

2024/10/30/Wed

 10月21日、ガボンで憲法草案が発表された。この草案は、11月16日に国民投票に付される。25日付ルモンド紙は草案について、2023年8月にクーデタで実権を握ったオリギ=ンゲマによる統治を想定した内容だと報じている。  草案には、前大統領アリ・ボンゴ時代の不満が反映されている。大統領は7年任期で1回のみ再選可能とされるが、「任期満了に際して、パートナーや子孫を後継者に据えることはできない」という条項が加えられた。父親を継いで大統領職を務め、父子で半世紀以上も政権を独占したボンゴ一族が念頭にある。  また、立候補資格に国籍条項が加えられた。今後は「少なくとも両親の一人はガボン人で、ガボンで生まれ、ガボン国籍のみを持つ者。そして、少なくとも両親の一人がガボン人で、ガボンで生まれたガボン人と結婚し、大統領選挙の前の少なくとも3年間は連続してガボンに居住している者」が立候補資格を得る。  クーデタを主導した人々を中心に、アリ・ボンゴ時代、特に彼が2017年に脳出血で倒れて以降は、ガボンが外国人に支配されたという意識がある。アリの妻シルヴィアはフランス人で、息子のヌレディンとともに二重国籍を保持する。アリが健康を害すると、妻や息子、そして「外人部隊」と呼ばれる取り巻きが、政治の実権を握ったと言われる。一方、野党勢力は、この条項がガボン人のなかに差別を生み出すとして、反発している。  大統領に強い権限が付与されたことも、この草案の特徴だ。首相職が廃止され、大統領は、閣僚の任免権、議会の解散権、さらに副大統領の任免権を持つ。大統領は、軍のトップも兼ねる。クーデタ後に軍事政権トップを務めるオリギ=ンゲマが、そのまま大統領に横滑りすることを見越した内容とも読める。   ボンゴ一族による政権支配への不満から、オリギ=ンゲマへの国民の支持は高い。国民の支持が期待できる間に大統領に強い権限を付与した憲法を採択し、自分が大統領選挙に出馬して政権を握る。そうしたシナリオが明らかになってきた。(武内進一) 東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターは、アフリカ人留学生招致のためご寄付をお願いしています。

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多発する洪水被害

2024/10/23/Wed

 サヘル地域を中心に、アフリカの広い地域で豪雨と洪水の被害が報道されている。国際NGOのセーブ・ザ・チルドレンが15日に発表した報告書によれば、ナイジェリア、マリ、ニジェール、コンゴ民主共和国などで前例のない降雨があり、多くの被害が出ているという(16日付ルモンド)。  この報告書の主眼は、洪水により学校に行けない子供が急増していることにある。その数は1000万人に上るという。貧困や紛争などのため学校に行けない子供がすでに3600万人に達しており、それに加えての数字である。  今年は雨期の開始以来、各地で被害が報告されている。9月にはナイジェリア北東部で豪雨によりダムが決壊し、マイドゥグリ市全域が水に浸かった。これにより30人が死亡し、40万人が被災したと報じられている(9月11日付ルモンド)。他に、チャド、ブルキナファソ、ギニア、カメルーンなどでも、多雨と洪水による被害が報告されている。  ここ数年、洪水の被害が頻繁に報じられるようになった。気候変動による世界的現象とも言えるが、アフリカの場合、被災者の規模が桁外れに大きい。子供の就学を阻害する状況だとすれば、長期的影響が深刻に懸念される。(武内進一) 東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターは、アフリカ人留学生招致のためご寄付をお願いしています。

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カメルーン・ビヤ大統領の健康をめぐる噂

2024/10/20/Sun

 カメルーンのポール・ビヤ大統領が長く姿を見せず、健康状態について憶測を呼んでいる。ビヤは91歳で、1982年以来同国の大統領を務めている。9月上旬に北京で開かれた中国・アフリカサミット(FOCAC)に出席した後、国連総会や仏語圏サミット(OIF)といった重要会議に姿を見せず、死去したのではないか、という噂が流れている。  10月8日、政府は、大統領は元気でジュネーブに滞在しており、もうすぐ帰国するとの声明を発表し、10日にはメディアに対して、大統領の健康について言及することを公式に禁止した(11日付ルモンド)。  ビヤは以前から頻繁にジュネーブに滞在し、「インターコンチネンタル・ホテルの大統領」との異名を持つ。2004年に3週間不在にした際も、死去したとの噂が流れた。  アフリカは世界で最も平均年齢が若い地域だが、老齢の政治指導者が長期にわたって政権を握ることが多い。ビヤは世界で唯一の90歳を超える国家元首で、アフリカ政治の老人支配の代表格である。他にも、エリトリアのイサイアス、コンゴ共和国のサス=ンゲソ、ジンバブウェのムナンガグワなどが頭に浮かぶ。(武内進一) 東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターは、アフリカ人留学生招致のためご寄付をお願いしています。

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ナミビア、生きたシロサイを米国へ輸出

2024/10/16/Wed

 ナミビアの環境林業観光省(MEFT)は、10月10日、生きたシロサイ42頭の米国への輸出を承認したと発表した。  MEFTの広報担当のロメオ・ムユンダ氏は、輸出は合法的であり、絶滅のおそれのある野生生物の種の国際取引に関する条約(CITES)とナミビアの法律の両方に従っていると強調した。ナミビアでは、絶滅危惧種のクロサイは国有であるが、シロサイは他の狩猟動物と同様に個人所有が可能である。現時点では、個人所有の狩猟動物の取引を禁止する法律は、ナミビアには存在しない。  一方、MEFTは、繁殖目的でのシロサイの輸出に懸念を示している。背景には、南アフリカからナミビアを経由して米国にシロサイを輸出する慣行がある。南アフリカでは米国へのサイの輸出が禁止されているため、その回避策としてナミビアを仲介させているのである。今回の輸出は、DNA分析により全頭がナミビアに起源をもつため、この慣行には当てはまらないが、MEFTは今後、シロサイの個人所有者と協議し、輸出に関する新しい規制を策定することを表明した。  南アフリカやナミビアは、植民地期に起源をもつ娯楽目的のスポーツ・ハンティングが盛んな地域である。ナミビアでは、シロサイをはじめ個人所有の狩猟動物の多くは、植民地期に入植した白人の子孫らが所有する商業用農地で暮らす。共有地と名を変えたかつての黒人らの居住地(ホームランド)においても、独立直後から新自由主義にもとづくコミュニティ・ベースの自然資源管理(CBNRM)が導入されている。  野生動物を取引可能な商品とみなす新自由主義的な発想は、近年の動物福祉や倫理的問題への関心の高まりと相反する。現に今回のMEFTによる声明も、環境保護活動家らによる抗議を受けて出されたものである。人間中心主義の行き着く果てに明るい未来がないことは、他の環境問題をあげるまでもなく明らかだろう。(宮本佳和) 東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターは、アフリカ人留学生招致のためご寄付をお願いしています。

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マリの首都にジハディストの攻撃

2024/10/05/Sat

 9月17日早朝、マリの首都バマコでジハディストの攻撃があった。憲兵隊訓練施設(L'ecole de gendarmerie)と空港が襲撃され、70人が死亡、200人が負傷した(9月19日付ルモンド)。同日昼前、アルカイダ系の武装勢力GSIM(JNIM)が犯行声明をだした。  軍事政権下のマリでは西側の報道機関の活動が制限されており、この事件についても目立った続報はない。しかし、この事件は、マリ政権内に深い衝撃を与えていると思われる。事件は独立記念日(9月22日)の直前に起こり、首都の憲兵隊と空港という国防の中核が襲撃され、多大な犠牲者を出した。  ジハディストによるバマコへの攻撃は、2016年以来初めてのことである。GSIMはこの7月末にも、分離主義勢力との共同作戦によって、北部で政府軍とロシア兵(旧ワグネル)に甚大な被害を与えている。今回の事件は、ジハディスト勢力の影響が、いよいよ首都にも迫ってきた可能性を示唆する。  2020年8月以降、マリで軍事政権が誕生し、フランス軍が撤収を余儀なくされた背景には、文民政権とフランス軍がジハディストの進攻に対応できていないという批判があった。その批判が、軍のクーデタ、そしてフランス軍に代わるワグネルの導入に正当性を与えてきた。今回の攻撃は、そうした正当化の根拠に疑問を投げかけることになろう。 (武内進一) 東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターは、アフリカ人留学生招致のためご寄付をお願いしています。

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