9月17日早朝、マリの首都バマコでジハディストの攻撃があった。憲兵隊訓練施設(L'ecole de gendarmerie)と空港が襲撃され、70人が死亡、200人が負傷した(9月19日付ルモンド)。同日昼前、アルカイダ系の武装勢力GSIM(JNIM)が犯行声明をだした。
軍事政権下のマリでは西側の報道機関の活動が制限されており、この事件についても目立った続報はない。しかし、この事件は、マリ政権内に深い衝撃を与えていると思われる。事件は独立記念日(9月22日)の直前に起こり、首都の憲兵隊と空港という国防の中核が襲撃され、多大な犠牲者を出した。
ジハディストによるバマコへの攻撃は、2016年以来初めてのことである。GSIMはこの7月末にも、分離主義勢力との共同作戦によって、北部で政府軍とロシア兵(旧ワグネル)に甚大な被害を与えている。今回の事件は、ジハディスト勢力の影響が、いよいよ首都にも迫ってきた可能性を示唆する。
2020年8月以降、マリで軍事政権が誕生し、フランス軍が撤収を余儀なくされた背景には、文民政権とフランス軍がジハディストの進攻に対応できていないという批判があった。その批判が、軍のクーデタ、そしてフランス軍に代わるワグネルの導入に正当性を与えてきた。今回の攻撃は、そうした正当化の根拠に疑問を投げかけることになろう。 (武内進一)
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