• アクセス
  • English
  • 東京外国語大学

Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2019年01月

DRコンゴ、チセケディ新大統領の就任式

2019/01/25/Fri

1月24日、チセケディ新大統領の就任式が挙行された。独立から58年目にして、コンゴは初めて選挙を経た平和裏の政権交代を実現した。就任演説にあたってチセケディはカビラ前大統領からコンゴ国旗の柄のたすきを受け取り、数千人の聴衆の前で和解を訴えた。就任式にはアフリカから17か国の元首が招待されたが、実際に来訪したのはケニヤのウフル・ケニヤッタだけで、その他は外相などが代理で出席した。米国やフランスなども現地の大使が出席した。孤立とまでは言えないが、外交的に少々寂しい船出であったことは否めない。 選挙をめぐる混沌とした状況が長期間続いているが、ここまで比較的少ない犠牲で乗り切ってきたことは評価できる。コンゴの「安定」を優先する姿勢は、政権側と国際社会とに共有されていたと言えるだろう。選挙不正の追及をファユルは止めていないし、カビラの後継者として選挙に臨み落選したシャダリもファユルに同調する動きを見せるなど、状況は予断を許さないが、前政権派が実質的権力を保持したことで、当面の政治的安定性は高まった。 大統領就任式の次は議会が開かれ、首相が指名される。カビラ政権期の実力者の指名が取り沙汰されているが、内閣が任命されれば新たな権力分布が見えてくるだろう。

個別ページへ

サヘル地域における気候変動と紛争の増加

2019/01/24/Thu

近年、サヘル地域における気候変動と、貧困や紛争などのさまざまな課題の関係が指摘されている。現在、サヘルの気温は世界平均の1.5倍の速度で上昇しており、不安定な降雨や雨季の縮小などの傾向がみられる。国連の報告によると、サヘル地域の農地のうち約80%において荒廃が進んでいるとされ、推定3300万人が食料不足に瀕しているとされる。生産力の低下により、農村部を中心に基本的な収入の確保ができず、医療サービスや教育サービスへのアクセスが困難な状況が生まれており、なかには武装グループへ加わる事例もみられる。 マリとニジェールにおけるコミュニティ間の衝突も、気候変動と深くかかわっていることが指摘されている。気候変動の影響下における利用可能な土地や水資源の減少は、農耕民と牧畜民のあいだの緊張を高めており、マリではコミュニティの衝突による死者数が急増している。Armed Conflict Location & Event Data Projectの調査結果によると、マリ国内の暴力による死者数は2016年は320人であったが、2017年は949人、2018年には1686人と2016年の約5倍に増加しており、この傾向は乾燥の厳しいマリ北部から中部にかけての地域と、マリ・ニジェール・ブルキナファソの国境近くの地域で顕著だとされている。 世界規模で進行している気候変動は、サヘル地域において暴力を含む多くの課題を生み出しており、解決が困難な状況となっている。各国の温暖化への対応を急ぐとともに、サヘル地域における環境保全・資源管理の体制の整備や地域間の連携を図る必要があると考えられる。

個別ページへ

DRC、チセケディ勝利にアフリカ諸国が祝意

2019/01/21/Mon

19日夜、コンゴ民主共和国の憲法裁判所は大統領選挙をめぐるファユルの再集計要求を退け、チセケディの勝利を確定した。これを受けて20日、南アやケニアの大統領、また南部アフリカ開発共同体(SADC)が祝意を表した。ラマポサ・南ア大統領は、全てのステークホルダーが選挙結果を受け入れるよう声明を発表した。憲法裁判所の結果発表を中断するよう17日に声明を発表したAU議長のカガメは、21日に予定されていたキンシャサ訪問を取りやめた。 この動きは、アフリカ諸国がこれ以上コンゴの選挙結果に介入しないという意思表示であり、AUもそれに同調したということだ。AUはアフリカ域内の民主主義の確立を重視しており、それなりの介入も行ってきた。クーデタで成立した政権は資格停止にするし、ガンビアでジャメ元大統領が選挙結果を覆そうとしたときは強硬姿勢で臨んだ。しかし、今回は同じ対応は取らなかった。「選挙不正が濃厚」というレベルでは介入は難しい、ガンビアの事例とは違うということだろう。カガメが議長であることも、AUとしては動きづらくなった。どう動いても、「ルワンダの意向」を勘繰られるからである。選挙結果発表を停止せよという17日の声明は、カガメの独断とも言い難い。少なくとも、AU委員長のムーサ・ファキ・マハマトは同じ考えだったはずである。 憲法裁判所の決定にファユルは当然反発し、支持者に抗議行動を呼びかけた。街頭での暴力が激しくなる可能性には注意すべきである。ただ、RFIの放送を聴く限りでは、20日夜の段階でキンシャサは静かなようだ。キンシャサは比較的チセケディの支持者が多い。危険なのはむしろルブンバシなど東南部ではないか。この地域は、ファユルを支持したカトゥンビの地盤だし、もともとカサイ州出身のルバ人(チセケディ支持者が多い)を標的とした暴力事件が起こってきた。 大統領選挙のためにあまり報道されていないが、下院選挙ではカビラ派の政党連合FCCが500議席中350議席を占めて過半数を確保した。チセケディの政党(UDPS)と組めば、下院を牛耳ることができる。カビラの勢力は温存されたと言ってよい。

個別ページへ

AUがコンゴ大統領選挙結果発表停止を要請

2019/01/19/Sat

17日、アフリカ連合(AU)のカガメ議長は、コンゴに対して、大統領選挙の最終結果発表を中止するよう要請した。17日に開催されたコンゴに対する討議を受けてのもので、重大な不正疑惑がぬぐえず、アフリカ域外からの介入を招きかねないとの理由である。 コンゴの大統領選挙に関しては、10日に野党候補チセケディの勝利が発表されたが、独自の選挙監視を行ったカトリック教会やリークされた情報をもとに分析したファイナンシャルタイムズなどのメディアがいずれもファユルが圧倒的に勝利したとの見解を公表し、選挙不正疑惑が高まっていた。 17日のAUによる声明は大きな衝撃である。それまでの国際社会の雰囲気は、どちらかと言えばコンゴの選挙結果にこれ以上口出しすることに否定的であった。選挙不正があったことはほぼ確実だとしても、その点を追及すればコンゴ内政が更なる混乱に陥ることは避けられないし、国連安保理はロシアが明確に再選挙に反対を表明しているため実質的に動けない。選挙結果に従えばカビラが政権から去ることになるので、「嘘」を受け入れる方が賢明なのではないか、という雰囲気だった。しかし、AUはこれに異を唱えたわけである。AUの要請に対して、18日、コンゴ政府は、AUに他国の選挙に介入する権利はないと反発した。 AU議長はカガメ・ルワンダ大統領である。アフリカを知る者は誰も、これは厄介な構図だと感じるだろう。ルワンダは1990年代半ば以降、陰に陽にコンゴ内政に関与してきた。コンゴ国内でルワンダに対する反発が極めて強い。選挙結果発表の停止を求めるカガメの発言はAU議長のものであって、ルワンダ大統領のそれではないとはいえ、コンゴ国内でそのようには受け取られないだろう。予定ではこの週末に憲法裁判所が選挙の最終結果を発表し、来週火曜(22日)に大統領就任式が挙行される。コンゴはAUの要請を受け入れず、国際的な孤立を深める可能性が強い。

個別ページへ

コンゴ選挙の不正を裏付けるデータ

2019/01/17/Thu

1月15日付ファイナンシャルタイムズ紙は、コンゴ民主共和国大統領選挙の結果発表に重大な不正があったと結論付けた。同紙によれば、カトリック教会の調査に加えて、同紙が独自に入手したデータがいずれも、チセケディではなくファユルの大差での勝利を示している。カトリック教会の組織であるCENCOは総投票数の43%をカバーする調査を実施しているが、同紙はファユル陣営の人物(名前は明かされていない)から、CENI中央のデータベースから入手した62,716台分の投票機器分のデータ(総投票数の86%をカバー)を入手した。2つのデータを突き合せたところ、相関係数が0.976~0.991を示し、両者はほぼ一致した。いずれもファユルが6割前後の得票率(59.4%、62.8%)で圧倒的勝利を収め、チセケディのそれは2割に満たなかった。選挙管理委員会(CENI)によるチセケディ勝利の発表がいよいよ疑われる事態である。 CENIの不正はカビラ政権の意を受けたものだから、チセケディがカビラと裏取引をしたとの見解はますます強まり、チセケディは人々の信頼を得られないだろう。選挙監視団を送った南部アフリカ開発共同体(SADC)は、挙国一致政権を樹立するよう働きかけている。しかし、ファユル陣営とチセケディ陣営が折り合いをつけることができるか、またこの混乱した状況のなかでカビラ陣営はどう動くのか。先が読めない状況になってきた。

個別ページへ

DRコンゴ大統領選挙で、チセケディの当選発表

2019/01/11/Fri

10日未明、コンゴ民主共和国の選挙管理委員会(CENI)は、12月30日に実施された大統領選挙の暫定結果として、チセケディ(Félix Tshisekedi)の勝利を発表した。CENIによれば、チセケディが38.57%でトップ、第2位が野党候補のファユル(Martin Fayulu)で34.8%、そして第3位がカビラの後継指名を受けたシャダリ(Emmanuel Ramazani Shadary)で23.8%であった(10日付ルモンド紙による)。カビラ陣営が推すシャダリと、カトゥンビやベンバなど野党の大物が推すファユルが優勢と見られ、さらに数日前からカトリック教会の組織(CENCO)がファユルの勝利を示唆していただけに、チセケディの勝利は大きな驚きをもって受け止められた。 RFIやBBCが流す街の声を聴く限り、チセケディ陣営の他にも多くの人が平和裏に選挙結果が発表されたことを喜び、歓迎している。普通の市民としては、大きな混乱なく政権が移行することを望んでいるだろう。 しかし、事態はなお楽観を許さない。シャダリ陣営は選挙結果を受け入れると発表したが、ファユル側はこの結果を拒否した。さらに、CENCO事務局長が記者会見を行い、CENIが発表した結果は自分達が集計した結果と異なると述べた。フランスとベルギーの外相も、選挙結果を疑問視する見解を発表した。10日付ルモンド紙は、カビラ陣営がチセケディと裏取引をし、権力分有を図ったとの見方を紹介している。一方で、南アフリカやルワンダからは、選挙結果を尊重するとの見解が示されている。 ファユルの支持基盤の一つキクウェットでは、抗議行動から死者が出る事態となった。今後、ファユル陣営は最高裁判所に訴えて選挙結果の正当性を問うことになるだろう。ケニアのように、最高裁が選挙結果を認めないと判断する可能性も高い。しかし、もし裏取引が事実なら、最高裁はカビラ陣営に取り込まれているだろうから、そこで選挙結果が覆ることはないだろう。いずれにせよ、暫定選挙は発表されたものの、まだまだコンゴ情勢が一段落したとは言えないということだ。

個別ページへ

ガボンでクーデタ未遂事件

2019/01/08/Tue

7日ガボン政府は、国営放送局(RTG)を占拠した兵士2名を射殺し、7名を逮捕したと発表した。同日未明、共和国防衛隊のオンド・オビアン・ケリー(Ondo Obiang Kelly)と名乗る若い兵士が、国営放送を通じて、「国家再建委員会」(conseil national de la restauration)の樹立を宣言した。無名の兵士が主導するクーデタであった。その後、特殊部隊が放送局に突入して制圧し、事態は収拾された。ラジオ・フランス・インターナショナルやBBCの報道によれば、7日夜の段階で、リーブルヴィル市内は、多数の治安部隊が展開しているものの、平穏なようである。 クーデタ未遂の背景には、アリ・ボンゴ大統領の健康問題がある。10月末、訪問先のサウジアラビアで脳出血により倒れた大統領は、現在も療養のためモロッコにいる。昨年12月31日に新年に向けた挨拶をテレビ放送で行ったが、言語に不明瞭なところがあり、右手が不自由な様子であったという。放送局を占拠した兵士は、「混乱からガボンを救う」ために決起したと演説で述べた。 今回の事件の背景は不明瞭で、どの程度の組織的な支持があったのかもわからない。しかし、事件を受けて政府に対する圧力が強まり、社会の不安感が一層増大することは避けられない。選挙を含め、大統領の長期不在に対応した制度改革を検討せざるを得なくなるだろう。

個別ページへ

スーダンの反政府デモ

2019/01/07/Mon

1月6日、首都ハルツームにて反政府デモが発生した模様。参加した市民は、バシール大統領の辞任を訴え、市内各所から大統領官邸を目指し行進したものの、治安部隊と衝突し阻止された。一部報道によると同部隊は催涙ガスを使用し、参加者を解散させたとのこと。この混乱のなかでハルツーム大学教員ら約20名とジャーナリスト3名らが逮捕された。 スーダンでは、先月19日、同国東部でパン・燃料の価格高騰に対する抗議活動が発生したのち、経済問題を巡るバシール現大統領の辞任要求へと転じ、各地で抗議運動が生じていた。今月1日、野党らは「自由及び変革の宣言(Declaration of Freedom and Change)」に署名しつつ、バシールの退陣を訴え、同月4日の抗議運動に参加するように市民に呼びかけていた(なお、同9日にも抗議活動が予定されている)。 野党らは、バシール政権に代わる移行期政府の設置を目指しているが、他方、30年近く政権を掌握してきたバシールは、現下、辞任の意向を示していない。政府は拡大する抗議活動を受けて、ソーシャル・メディアの使用を制限したり、政治的指導者や活動家を拘束したりするなど沈静化に躍起になっている。 国際NGOによると、一連の抗議活動で既に30名を超える死者と多数の負傷者が出ている。この市民デモがどのような展開を迎えるか。果たして2011年の「アラブの春」のように長期政権の打倒に結び付くか否か。国際的な注目を集めている。

個別ページへ

暫定選挙結果発表前にコンゴ民主共和国の緊張高まる

2019/01/05/Sat

平和裏に政権移行ができるか注目を集めているDRコンゴだが、12月30日(日)の選挙は比較的平穏のうちに実施されたようだ。投票所の開場の遅れなど、幾つかのトラブルは報告されたものの、ひどい暴力や混乱に見舞われることはなかった。選挙前の緊張がかなりのものだっただけに、喜ばしいことである。 この選挙はコンゴ政府がすべて自前の資金で実施し、欧米や国際機関からの援助を受けなかった。その代わり、国外からの選挙監視は、アフリカ連合(AU)と南部アフリカ開発共同体(SADC)から153人しか受け入れなかった。この点で圧倒的に重要な役割を果たしたのはカトリック教会で、4万人が選挙監視活動を行った(1月4日付ルモンド)。 しかし、1月6日に予定されている暫定結果発表を前にして、不穏な空気が漂い始めた。まず、選挙後にインターネットが遮断され、また主要な外国メディアであるラジオ・フランス・インターナショナルが音波妨害を受けた。さらに、1月3日、選挙管理委員会(CENI)委員長が、6日の発表に向けて努力しているが諸般の理由から遅れるかもしれない、と述べたところ、コンゴカトリック司教会議(Conférence Episcopale Nationale du Congo: CENCO)事務局長から、自分達は選挙の勝者を知っている、CENIは予定通り暫定発表すべきだとのコメントがなされたのである。これに対して、CENI以上にカビラ大統領派の与党勢力が激しく反発し、CENCOは偏向しているとの声が上がった。CENCO事務局長は誰が勝者だと特定しなかったが、与党勢力はCENCOがベンバやカトゥンビが推すファユル(Martin Fayulu)の勝利を言外に伝えたと受け取ったのである。カトリック教会はこれまでもカビラ政権に対して批判的な立場を取ってきたが、ここにきて両者の緊張が急速に高まっている。

個別ページへ