ナイジェリアの誘拐の広がりと対処案
2022/05/31/Tue
ナイジェリアのメソジスト教会の最高位の聖職者であるサミュエル・カヌが、南東部に位置するアビア州の高速道路で誘拐された。彼は数日で解放されたが(BBC 5月31日)、高位の聖職者が誘拐されたことは、道徳的な観点からも、セキュリティの観点からも多くの市民に動揺を広げている。犯人は明らかになっていないが、この地域では近年、独立を要求する分離主義者により頻繁に誘拐が行われているため、関与を疑うむきもある。
また、ナイジェリアは北部でもイスラーム過激派やギャングによる誘拐が続いており、先週は、北西部のカツィナ州でローマ・カトリックの神父2人が武装集団に誘拐され、いまだ解放されていない。
一般の人々だけではなく、聖職者や政治家、ビジネスマンに対する身代金目的の誘拐が多発する中で、ナイジェリアの上院では今月上旬、身代金を支払った人に対して最低15年の懲役刑を求める法案を可決した(FP 5月4日)。身代金目的の誘拐を抑え込む目的である。しかし、身代金の支払いは公職に就いている者が手配することも多いため、実効性は薄いとされる。さらに、ナイジェリアの誘拐被害者の親族は、この法案によって家族の解放が困難になることを恐れている。昨年8月、ニジェール州テギナの学校で銃を突きつけられて誘拐された約136人の小学生は、両親が身代金を支払い、誘拐犯のためにバイクを購入することによって解放された。法案が成立することによって、被害家族が誘拐を警察に相談することができなくなり、却って事態が悪化することも懸念される。
誘拐が武装集団の金銭獲得手段となった背景には、経済格差の広がりや国際企業による搾取、警察の腐敗など様々な問題があるとされる。被害家族に更なる負担を強いる方向ではない、包括的な視点からの解決の努力が必要といえるだろう。
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