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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2023年04月

スーダン内戦と周辺国

2023/04/29/Sat

 スーダンで、ブルハーンの国軍とヘメティのRSFが衝突するなか、周辺国との関係が改めて注目を集めている。27日付ルモンド紙がこの点に関する記事を掲載しているので、紹介する。  イスラーム主義政党を基盤とするバシール政権が2019年に崩壊したことを受けて、サウジアラビアとUAEは、これをムスリム同胞団を支持するカタールやトルコに対して地歩を固めるチャンスと捉えた。30億ドルもの資金を軍事政権に流し込み、数千ヘクタールの農地を獲得して、農産物、畜産物を自国に輸出させた。  ややブルハーン寄りのサウジアラビアに対して、UAEはブルハーンとヘメティの双方にカネを流した。ヘメティにはイスラーム主義を叩く役割を担わせて、自らが内戦に関与するイエメンに傭兵を派遣させ、ダルフールで採掘される金をドバイに密輸させた。ノルウェー難民評議会の研究者マジューブは、「ヘメティは、ハルツームのフランケンシュタインになった」と指摘している。  エジプト政府はブルハーンに肩入れしてきた。2022年12月に軍事政権と民主派勢力との間で移行合意が結ばれると、それがヘメティを利することを恐れて、エジプトは陰に陽に移行交渉を妨害してきた。エチオピアが青ナイル川上流に建設したルネッサンスダムの一件でも、エジプトはブルハーンが政権を握る方がよいと考えている。一方のヘメティも、何度もアジスアベバを訪問し、アビィ首相と良い関係を結んできた。  ダルフールを本拠とするヘメティは、リビア、チャド、中央アフリカとの複雑な関係の中心に位置する。チャド大統領マハマト・デビィの周辺筋は、ヘメティが政権を握ることは危険だと考えている。ダルフールで非アラブ系住民を激しく抑圧してきたヘメティが権力を握れば、チャドで政治権力を独占するザガワ人の支配が揺らぐ恐れがある。  リビアとの関係に目を転じれば、武力衝突が勃発した当日、ハフタル将軍が支配する東部キレナイカからRSF側に物資供給が数回なされたという。スーダン西部とリビア東部を繋ぐ地域は、以前から物資の密輸ルートであり、そこにヘメティが強い影響力を保持してきた。4月15日の武力衝突の直前、ハフタルの長男がハルツームを訪れ、ヘメティに歓待された。訪問の目的は、RSFが出資しているサッカークラブ(Al-Merreikh)に200万ドルを寄贈することだったという。  広大な面積を持つスーダンは周辺国との間で様々な関係性を構築してきた。そこには、1)湾岸諸国との従属的な関係、2)ナイル川流域国としてのエジプト、エチオピアとの戦略的な関係、3)アラブ系、非アラブ系住民を通じたリビア、チャド、中央アフリカ等サヘル地域との関係、4)南スーダンとの歴史的関係、などが交錯している。27日に開催された緊急講演会で、アブディン・モハメド氏も同様の指摘をしていた。この内戦は、必然的に一国を超え地域的な様相を帯びることになるだろう。 (武内進一)

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スーダンの武力衝突:ブルハーンとヘメティ

2023/04/21/Fri

 スーダンの紛争は、軍事政権トップのブルハーン指揮下の国軍と、政権ナンバー2のダガロ(通称ヘメティ)率いるRSFとの武力衝突である。現在、特に首都ハルツームと西部ダルフールで激しく、収束が見通せない。20日の報道では、ハルツーム市の中心部をRSFが制圧しているという(BBC Africa Today, ルモンド)。RSFは国軍から独立した治安組織で、その規模は8~12万人と言われる。14~25万人の規模とされる国軍への統合は困難で、統合プロセスをめぐる対立から武力衝突に発展した。  RSFは、かつてダルフールで非アラブ系住民に激しい暴力を加えた民兵組織ジャンジャウィードの流れを汲む。2019年のクーデタで失脚したオマール・エル・バシールは、国軍だけを強化することを避けて、ヘメティのRSFをいわば国軍の対抗勢力として重用した。2013年以降RSFはバシールの警護兵の役割を担うようになったが、2019年に反バシールの市民運動が強まると、彼を追い落とすクーデタで、ブルハーンとともに重要な役回りを演じた(4月18日付ルモンド)。  ダルフール出身のヘメティは、同地域にある金鉱山をはじめ国内に数多くの利権を持つ。カネと兵力を利用して、国内外で強力なネットワークを築き上げてきた。イエメン内戦への派兵を通じてサウジアラビアやアラブ首長国連邦と強いコネクションを作り、リビアの反政府勢力ハフタル将軍やロシアの民兵組織ワグネルとも関係を持ってきた。  一方、ブルハーンはスーダン国軍のエリートである。国軍はハルツームの軍事学校出身の北部人が支配しており、ブルハーンもその一人である。エジプトの軍事学校への留学経験を持つ彼は、エジプトと強い繋がりを持っている。フランスの研究者ローラン・マルシャルは、「ブルハーンは、(エジプト大統領の)シーシーのようになりたいのだ」と述べている(17日付けルモンド)。  国連、AU、アラブ連盟などの国際機関や関係国がこぞって停戦を呼びかけているが、見通しは立っていない。国連は、周辺国の介入により紛争が長期化することを恐れている。ヘメティがダルフールを地盤としているため、事態の展開によってはリビアのように国土が分裂する可能性も排除できない。 (武内進一)

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IMF局長、アフリカ向け資金供給増を呼びかけ

2023/04/19/Wed

 14日、ワシントンでIMFのアフリカ担当部長アベベ・セラシエ(Abebe Aemro Selassie)氏が会見し、サハラ以南アフリカ諸国のマクロ経済見通しを説明した。この場で、セラシエ氏は、アフリカ諸国が深刻な資金不足に直面しているとして、資金提供を大幅に増額するよう呼びかけた。  アフリカ諸国の資金不足には、幾つかの要因が影響している。2022年度におけるOECD諸国の政府開発援助は総額でては増加したものの、サブサハラ・アフリカ向けに限れば7.8%減少して297億ドルとなり、2017年と同じ水準であった(12日付ルモンド)。加えて、中国による貸付が、2019年の91億ドルから2021年の28億ドルへと急減している(17日付ルモンド)。  こうした背景もあって、アフリカ諸国の資金調達コストは大幅に増加した。アフリカ諸国向け資金貸付には、先進国に比べて10%程度金利が上乗せされている(17日付ファイナンシャルタイムズ)。2022年6月、ケニアは10億ドルのユーロ債を発行しようとしたが、コストが高すぎて断念した(17日付ルモンド)。  資金の逼迫は、様々な悪影響をもたらす。ガーナ、エチオピア、ジンバブウェ、南スーダンといった国々では、輸入に困難を来すほどドル不足が深刻化した。保健医療、教育、インフラといった投資が阻害されることで、中長期的には社会全体に悪影響が及ぶだろう。セラシエ氏はこのように警告し、国際金融機関を通じたアフリカ向け資金供給の拡大を強く訴えた。  こうした資金逼迫状況のなか、デフォルトを経験したザンビアやガーナでは、債権者との交渉が難航している。かつての債務危機では公的債務が大部分を占めたが、今日アフリカ諸国が抱える債務の大半は民間資金である。資金の出所が多様化した分、交渉も複雑になっている。 (武内進一)

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スーダンで軍事衝突

2023/04/16/Sun

 2021年10月のクーデタ以降軍事政権下にあったスーダンで、15日、大規模な軍事衝突が発生した。副大統領のモハメド・ハムダン・ダガロ(通称ヘメティ)が率いる迅速支援部隊(Rapid Support Force:RSF)と、大統領で国軍総司令官アブデル・ファタハ・アブデルラフマン・アル・ブルハーン指揮下の国軍が衝突したのである。15日、ハルツームの複数の市街で銃撃と爆発音が絶え間なく聞こえたと報じられている(15日付ルモンド、16日付ファイナンシャルタイムズ)。  RSF側は、首都ハルツームで空港と大統領府を占拠したと主張し、国軍側はこれを否定している。ヘメティはアル・ジャジーラに出演し、全土で軍基地の掌握を目指すとして、ブルハーンを「犯罪者」だと述べた。国軍側も、「敵」に対する作戦を行っているとして、「敵」が空港に侵入してサウジアラビアの民間航空機に損害を与えたものの、空港は依然国軍側の制圧下にあると主張している。  2021年10月のクーデタ以来、ブルハーンとヘメティは協力して政権を維持し、市民勢力を抑圧してきた。一方、国際社会から民政移管に向けた圧力を受け、市民勢力との交渉が行われるなかで、ヘメティはクーデタを批判し、市民側に付く動きを見せていた。これに伴って両者間の緊張が高まり、数日前から両軍が衝突するとの噂が町に流れていた(15日付ルモンド)。  衝突を受けて、AUや米国、ロシア、エジプト、サウジアラビア、UAEなど関係各国は、こぞって両者に戦闘中止を呼びかけた。  国軍トップとナンバー2がそれぞれの軍を率いて衝突するのは、南スーダンの状況と同じ構図である。いったん衝突が起これば、南スーダンと同様に簡単には収束しないだろう。 (武内進一)

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コンゴの内閣改造と東部情勢

2023/04/13/Thu

 3月末、コンゴ民主共和国のチセケディ大統領は内閣改造を行い、3人の有力政治家を閣僚に任命した。  まず、ヴィタル・カメレを副首相兼経済相に任命した。カメレは東部のブカヴ出身の政治家でモブツ政権期からの長いキャリアを持つ。2018年の大統領選挙ではチセケディを支援したが、2020年4月に汚職容疑で逮捕、収監された。2021年12月に釈放され、2022年6月には無罪判決を受けた。  また、ジャン=ピエール・ベンバを副首相兼国防相に任命した。ベンバは先の内戦で反政府武装勢力MNCを率い、和平協定後の権力分有政権期には副大統領を務めた。2006年の大統領選挙に立候補したが、カビラに敗れた。その後、2008年にブリュッセルで逮捕され、中央アフリカでMNCの兵士が起こした残虐行為の責任を問われて、国際刑事裁判所(ICC)に引き渡された。しかし、2018年に無罪判決が確定し、コンゴに帰国した。  さらに、アンティパス・ンブサ・ニャムウィシを地域統合相に任命した。ニャムウィシは北キヴ出身のナンデ人で、もともとは実業家だが、内戦中は武装勢力を指導したこともあった。  こうした大物政治家の入閣は、選挙対策という性格が強い。今年末に予定される大統領選挙を控えて、チセケディは大物政治家の支持者の取り込みを図っていると見られる(12日付ルモンド)。  東部では、4月初め、M23がウガンダ国境の街ブナガナから撤退し、代わって東アフリカ共同体(EAC)が派遣した東アフリカ地域軍のウガンダ部隊が制圧する動きがあった。それ自体はポジティブに評価できるが、M23は部隊を西方に移動させただけであり、弱体化したわけではない。  キンシャサ政府は、M23を「ルワンダに支援されたテロリスト」だとして、一切の交渉を拒否している。国会議員もほとんどがこうした強硬姿勢を支持している(12日付ルモンド)。内戦の影響がほとんどないコンゴ西部では、こうした強硬姿勢の受けがいいのであろう。  しかし、コンゴにM23を武力で屈服させる軍事力はない。東アフリカ地域軍も、M23に対して軍事行動を取らないと明言している。国連平和維持部隊(MONUSCO)は、コンゴ政府との関係が悪化し、M23対策では前面に出ていない。軍事行動も、交渉による調停も、いずれもスタックしているのが現状である。 (武内進一)

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ルワンダRPFの党大会

2023/04/06/Thu

 4月2日、ルワンダの政権与党「ルワンダ愛国戦線」(RPF)の第16回党大会が開催され、新執行部が選出された。党総裁のポストは、現職のポール・カガメとアブドゥル=カリム・ハレリマナ(Abdul Karim Harerimana)が選挙で争ったが、カガメが2,102票中2,099票を得て当選した(RPFのHPによる)。任期5年で党総裁を務めることとなる。  この党大会には、外国から政党が招かれて祝辞を述べた。政府系紙New Timesは、招待された政党とその祝辞を簡単に紹介している(3日付)。それによれば、紹介順に、モザンビークのFrelimo、南スーダンのSPLM、エチオピアの繁栄党、ウガンダのNRM、ジンバブウェのZanu-PF、ブルンジのCNDD-FDD、タンザニアのCCM、中央アフリカのMCU(Mouvement cœurs unis:「統一心運動」とでも訳せるだろうか)、コンゴ共和国のPCT、そして中国共産党であった。  いずれも政権与党であり、CCM、MCU、PCTを除いて、すべてRPFと同じくゲリラ組織を出自に持つ。PCT(コンゴ労働党)は1969年に設立された元マルクス・レーニン主義政党であり、CCM(タンザニア革命党)は独立運動を率いたTANU(タンガニーカ・アフリカ民族同盟)を前身とする。  MCUは、2018年に現職のトゥアデラ大統領を支える政党として作られた。新しい政党だが、それが支えるトゥアデラ政権は、治安維持のために、ロシアのワグネルとともにルワンダ軍を受け入れている。  党大会に誰を招き、誰から祝辞をもらうかは、どんな政党と近い関係にあるかを示す。RPFの場合は、自らと同じく、元ゲリラ組織や一党優位体制を維持する政党と近しい関係にあるということだ。 (武内進一)

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