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今日のアフリカ

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コンゴの内閣改造と東部情勢

2023/04/13/Thu

 3月末、コンゴ民主共和国のチセケディ大統領は内閣改造を行い、3人の有力政治家を閣僚に任命した。
 まず、ヴィタル・カメレを副首相兼経済相に任命した。カメレは東部のブカヴ出身の政治家でモブツ政権期からの長いキャリアを持つ。2018年の大統領選挙ではチセケディを支援したが、2020年4月に汚職容疑で逮捕、収監された。2021年12月に釈放され、2022年6月には無罪判決を受けた。
 また、ジャン=ピエール・ベンバを副首相兼国防相に任命した。ベンバは先の内戦で反政府武装勢力MNCを率い、和平協定後の権力分有政権期には副大統領を務めた。2006年の大統領選挙に立候補したが、カビラに敗れた。その後、2008年にブリュッセルで逮捕され、中央アフリカでMNCの兵士が起こした残虐行為の責任を問われて、国際刑事裁判所(ICC)に引き渡された。しかし、2018年に無罪判決が確定し、コンゴに帰国した。
 さらに、アンティパス・ンブサ・ニャムウィシを地域統合相に任命した。ニャムウィシは北キヴ出身のナンデ人で、もともとは実業家だが、内戦中は武装勢力を指導したこともあった。
 こうした大物政治家の入閣は、選挙対策という性格が強い。今年末に予定される大統領選挙を控えて、チセケディは大物政治家の支持者の取り込みを図っていると見られる(12日付ルモンド)。
 東部では、4月初め、M23がウガンダ国境の街ブナガナから撤退し、代わって東アフリカ共同体(EAC)が派遣した東アフリカ地域軍のウガンダ部隊が制圧する動きがあった。それ自体はポジティブに評価できるが、M23は部隊を西方に移動させただけであり、弱体化したわけではない。
 キンシャサ政府は、M23を「ルワンダに支援されたテロリスト」だとして、一切の交渉を拒否している。国会議員もほとんどがこうした強硬姿勢を支持している(12日付ルモンド)。内戦の影響がほとんどないコンゴ西部では、こうした強硬姿勢の受けがいいのであろう。
 しかし、コンゴにM23を武力で屈服させる軍事力はない。東アフリカ地域軍も、M23に対して軍事行動を取らないと明言している。国連平和維持部隊(MONUSCO)は、コンゴ政府との関係が悪化し、M23対策では前面に出ていない。軍事行動も、交渉による調停も、いずれもスタックしているのが現状である。
(武内進一)