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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2024年04月

海外メディア遮断と国内引き締め―ブルキナファソ、マリ

2024/04/29/Mon

   ブルキナファソ政府は、25日~28日に相次いで、BBC、VOA、ルモンド、TV5、ガーディアン、ドイチェヴェレなど、主要海外メディアの放送禁止とインターネットサイトの閉鎖を発表した。きっかけは、国際NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が25日に発表した報告書であった。  報告書は、ジハディストと激しい攻防が続くマリ国境付近のふたつの村で、国軍が今年2月25日、56人の子供を含む223人の民間人を殺害したとして、ブルキナファソ政府にアフリカ連合や国連とともに虐殺に関する調査を実施するよう求めた。今回、HRWの報告書について報道した海外メディアを対象として、放送禁止措置がとられた。政府は27日、HRWによる国軍への批判を「根拠がない」として全面的に否定した(28日付BBC)。  海外メディアの遮断は、国内の引き締めと連動している。隣国のマリでは、2022年以降、海外メディアが禁止されてきた。もともと軍事政権が約束していた移行期間が3月26日に終了した後、国内の政党や市民団体が早期の選挙実施を求めて声を上げていたが、軍事政権は4月10日、こうした組織による政治活動を一切禁止した。「マリは危機的状況にあり、不毛な政治的議論は不要だ」という理由である(11日付ルモンド)。  両国では、国民の不満をすくい取る形で軍がクーデタを起こし、政権を獲得した。その過程で、反仏感情が動員に利用されてきたのは周知の通りである。政権掌握から時間が経過し、国内統制の強化が目立つようになった。軍事政権の本性が露わになったとも言える。両国とも強力な市民運動の歴史を持った国であり、軍事政権はいつまでも抑圧を継続することはできないだろう。 (武内進一)

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英国で「ルワンダの安全」法成立

2024/04/25/Thu

 22日の真夜中、英国議会で、不法移民をルワンダに送致する法律(「ルワンダの安全」法)が成立した。この法律について、23日付けのファイナンシャルタイムズ(FT)紙は社説で、英国の民主主義にとって有害な先例になると厳しく批判した。  英国による不法移民(アサイラムシーカー)のルワンダ送致という考えは、2年前のジョンソン政権期以来追求されてきたものだ。当初は二国間の協定という形を取ろうとしたが、ヨーロッパ人権裁判所や英国最高裁が違法の判断を下すなか、国内法で規定する形に落ち着いた。  同法では、「ルワンダは安全な国である」と規定され、それに対して法的に異議申し立てをすることが禁じられた。ルワンダはアサイラムシーカーにとって安全であり、裁判所を含めた誰もがルワンダをそのように扱わねばならない。ルワンダが安全でないという議論は禁止された。  昨年11月、英国最高裁は、ルワンダがアサイラムシーカーを本国に送り返す可能性があり、安全な国とは言えないとの判断を示した。今回の法律には、裁判所によるそうした介入を阻止する意図がある。  保守党が優越する議会が、司法の介入を封じ、ルワンダが安全だという「事実」を法によって定めたことになる。FT紙は、「この論理に従えば、議会は黒を白だと、あるいは犬をネコだと法律で決めることができる」と批判している。  この4月、トーゴ議会は、直接選挙による大統領選出方法を廃し、議会が大統領を選出するやり方に改めた。政権与党が支配する議会を使って、フォール・ニャンシンベ現大統領の永続化を図る動きである。英国議会での保守党のやり方と大差ない。 (武内進一)

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ルワンダのジェノサイド記念式典とコンゴ東部情勢

2024/04/10/Wed

4月7日、ルワンダでジェノサイドから30年の記念式典が開催された。首都キガリの式典には、ビル・クリントン元米国大統領やニコラ・サルコジ元フランス大統領が出席した。サルヴァ・キール(南スーダン)、シリル・ラマポサ(南アフリカ)、アンドリー・ラジョエリナ(マダガスカル)、アビィ・アハメド(エチオピア)、モハメド・ウルド・ガズアニ(モーリタニア)などの現職のアフリカ元首や、UNESCOの事務局長、世界ユダヤ人会議(WJC)の代表も参加した。  記念式典では、特に2つの点が注目を集めた。第1に、カガメ大統領が1994年のルワンダ・ジェノサイドに際しての国際社会の失敗を強調したことである。これは例年のことでもあるが、特に今年は自分のイトコが殺害された経緯に触れ、その首謀者が現在もフランスで暮らしていると指摘した。この人物(Callixte Mbarushimana)は元UNDPの職員で、国際刑事裁判所から訴追されたが、証拠不十分で取り下げられた経緯がある。現在フランス検察から訴追されている。  第2に、フランスのマクロン大統領のビデオメッセージである。記念式典直前の4日、マクロンはX(旧ツイッター)に、「フランスは他の国々とともに1994年のジェノサイドを止めることができたかもしれなかったが、その意思がなかった」と投稿した。これは、2021年5月にルワンダを訪問した際よりも踏み込んだ内容で、評価の声がルワンダ側から上がった。しかし、ビデオメッセージでマクロンは、フランスの責任を認めた上で、「2021年の発言に付け加えることは全くない」と強調した。  記念式典を契機に、欧米など国際社会とルワンダとの間の認識のズレが生じているように思える。その背景にはコンゴ東部情勢がある。ルワンダのジェノサイドが人類史に記録されるべき、繰り返してはならない犯罪であることは自明である。一方、記念式典と同じタイミングで、コンゴ東部ではM23の攻勢が激化し、膨大な避難民を生んでいる。国連によれば、この攻勢にルワンダ軍が関与している(8日付ルモンド)。  最近ルワンダは自軍のコンゴでの活動を明示的に否定せず、その一方でFDLR(旧ハビャリマナ政権残党グループ)の存在を強調している。FDLRがいるので、コンゴ東部への軍事的進出はやむを得ないと言わんばかりである。この状況から、ガザに対するイスラエル軍の攻撃を想起するのは、私だけではないだろう。 (武内進一)

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チセケディが「国際社会」を批判

2024/04/01/Mon

 30日付けルモンド紙は、コンゴ民主共和国大統領チセケディへのインタビュー記事を掲載した。チセケディはそこで、国際社会への苛立ちを表明している。M23を支援するルワンダを非難する一方で、「国際社会は共犯者だ」と述べている。  インタビューで、コンゴ軍が「ワザレンドゥ」(愛国者)と呼ばれる親政府民兵組織を利用し、そのなかに子ども兵が含まれていることを問われたチセケディは、概略次のように反論している。 西側中心の眼差しで、アフリカ人を苛立たせるのは止めてください。子ども兵になるような人々も我々と同じ人間で、親を殺されるなど過酷な経験をしているんです。私は最初のうち善隣外交政策をとり、ルワンダと協調していましたが、その間ワザレンドゥたちからは裏切り者だと見なされました。この政策はルワンダのせいで立ちゆかなくなり、私はラジカリズムへと政策を大きく転換したのです。  チセケディの国際社会への不満は、結局のところ、ルワンダへの対応に行き着く。 国際社会はルワンダの共犯者です。カガメは、コンゴの天然資源を略奪し、それらを外国に持ち出して加工したことを認めていました。ルワンダ経由でコンゴ産の鉱物資源を受け取ったことを隠匿した国があるのです。  国際社会はルワンダを非難しているが、それでは不十分か、と問われたチセケディは、次のように答えた。 ロシアにどれだけの数の制裁が科されているか、知っていますか?ルワンダには何一つ制裁が科されていないんです。これはダブルスタンダードと言わざるを得ないでしょう。  さらに、チセケディは、ロシアへの接近をほのめかす。 3月27日にプーチンと電話会談しました。コンゴの法律を守るなら、ロシアと関係を持つことはありえます。ただ、我々はロシアのウクライナ侵攻を非難した数少ないアフリカ諸国のひとつだということを忘れないでください。6月にロシア・アフリカサミットがあれば、自分は行くつもりです。  インタビューの最後で、チセケディは西側のダブルスタンダードを再度批判した。 EUは、モザンビーク北部でジハディスト掃討に参加するルワンダ軍に2000万ユーロ提供しています。さらにEUは、ルワンダと鉱物取引協定を締結するとのことです。ルワンダから輸出される鉱物は、コンゴから来たものです。こうした協定は、コンゴ国民にとって理解できないことなのです。  このインタビューはチセケディの政策変化を理解する上で興味深い。チセケディがカガメと善隣外交政策をとっていた時期、彼の国内政権基盤は弱く、カビラ前大統領が依然として強い影響力を保持していた。チセケディにとっては、国際社会の支援が国内政治におけるレバレッジ(梃子)として非常に重要だった。しかしその後、国内政治においてチセケディはカビラ派を一掃し、自らの権力基盤を強めた。そうした状況下で、対外的に強硬な姿勢を取るようになったのである。 (武内進一)

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