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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2018年06月

中国・アフリカ

2018/06/29/Fri

ルモンド紙の報道によれば、6月26日~7月10日に北京で、人民解放軍が中心になって、防衛・安全保障に関する中国・アフリカフォーラムが開催される。フォーラムの第一の目的は、アフリカ軍に対する協力と資金援助メカニズムを設置することだが、武器輸出の促進という目的もある。SIPRIによれば、中国製の武器販売は、習近平政権になった2013年以来、55%の増加を示しており、また2017年にはジブチに最初の軍事基地を開設するなど、軍事面でもアフリカとの関係を強化している。一方中国は、国連のPKOにおいても存在感を強めており、2018年4月末現在で2500人の兵員を提供している。これは世界第11位で、常任理事国では群を抜いて高い。中国はアフリカに対して、経済面のみならず、軍事面、政治面でも関係を深めようとしている。

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西サハラ問題

2018/06/25/Mon

西サハラの法的地位をめぐる問題は長期間にわたって出口の見えない膠着状態に置かれてきたが、近年その状況を変える可能性がある重要な動きが起こっている。2017年1月にモロッコがアフリカ連合に復帰したのはもとより重要な動きだが、6月23日付のファイナンシャルタイムズ紙は、今年に入って出された2つの裁判所の判決を取り上げている。 第1に、2018年2月27日に欧州司法裁判所(European Court of Justice)が出した決定である。この決定は、EUとモロッコの間で結ばれた漁業協定について、それが「EUとモロッコ王国との間の関係を規定しうる一般的な国際法のルール、とりわけ自決原則に反する可能性がある」とした。すなわち、西サハラ沖で水揚げされた魚をモロッコ産として扱うことは国際法上問題があるという根本的な疑問を提示したわけである。 第2に、同じく今年2月に出された南アフリカの裁判所による判断である。ECJの決定の数日前、南アフリカ裁判所は、西サハラから出荷されたリン鉱石の積み荷が、採掘地域に主権を有するサハラアラブ民主共和国(RASD)に帰属するとの判決を出した。このリン鉱石は、モロッコの国有リン鉱石会社OCPによる積み荷でニュージーランドに向かうところだった。 沿岸漁業の水産物にせよ、リン鉱石にせよ、モロッコの重要な輸出産品であり、日本とも関係が深い。これら産品の取引において、RASDの存在を意識せざるを得ない状況が生まれたといえる。RASDはこれらの判決を足掛かりに外交的地位を認めさせるべく、国際社会への働き掛けを強めている。モロッコとの間で外交的綱引きが強まることになろう。

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エチオピアをめぐる国際関係

2018/06/23/Sat

アビィ新首相の登場後、エチオピアをめぐる国際関係が急展開している。20日、アジスアベバで南スーダンの大統領と反乱軍トップが会談したが(「今日のアフリカ」2018年6月21日)、同日エリトリアのイサイアス・アフェウォルキ大統領は、今月5日のエチオピア首相の和平の申し出を前向きに受け止め、アジスアベバへ使節を送る意向を示した。エリトリアは、エチオピアからの脅威を内政締め付けの理由づけに用いてきたため、エチオピアからの申し出に冷淡な態度をとるのではと見られていた。それだけに、エリトリアの好意的な対応は意外感を持って受け止められている。 エリトリアの対応について、6月20日付ルモンド紙は、同国にとって外交的孤立のコストが高くなりすぎたという点の他に、TPLFとの関係を理由として挙げている。エリトリアが最も厳しく対立してきたのは、エチオピアのEPRDF政権のなかでもTPLF(ティグレ人民解放戦線)であった。TPLFは1991年の内戦、政権奪取の過程で、連合組織であるEPRDFを主導してきた。そのため、ティグレ人は人口としては比較的少数であるにもかかわらず、EPRDF政権下で中心を占めてきた。しかし、それに対する不満から反政府運動が激化し、今年2月のハイレマリアム首相の辞任とアビィ新首相就任に至ったわけである。アビィは、EPRDF政権で初めてオロモ出身である。エリトリアとしては、アビィの申し出に好意的に応えることで、TPLFの影響力をさらに引き下げる狙いがあるというのがルモンド紙の分析である。 エチオピアは、エリトリアだけでなく、ナイル川の水問題を巡って対立していたエジプトに対しても関係改善のアプローチをしている。この動きについてルモンド紙は、サウジアラビアの影響を指摘している(6月13日付記事)。サウジアラビアは、イエメン内戦への関与を深めるにつれて、スーダン、エリトリア、ジブチなどアフリカの角地域にも影響力を確保しようとしているという。 エチオピアを中心に、アフリカの角地域の状況が大きく変化する可能性がある現在、念頭に置くべき重要な情報といえよう。

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キール南スーダン大統領がマチャール前第一副大統領と面談

2018/06/21/Thu

6月20日、アディスアベバにて、サルヴァ・キール南スーダン大統領とリエク・マチャール前第一副大統領が面談した。両者の面談は、2016年7月にジュバで戦闘が生じ、マチャール率いる勢力(SPLA/M-IO)がキール率いるSPLA/Mに軍事的敗北を喫して同国を脱出して以来、おおよそ2年ぶりとみられる。 この面談は、アビィ・アフマドエチオピア首相の立会いのもとで実現した。アビィはこの面談について「南スーダンで続く困難に直面し、エチオピアはただ傍観するだけでいられない。さらなる働きかけにより、同国の平和は実現可能」とツイートし、南スーダンの和平実現に対し、外部の関与が重要な役割を果たすとの見方を示した。 上述の戦闘勃発直後、マチャールは第一副大統領職を罷免され、南アフリカで軟禁状態にあったことから長らく政治の表舞台から遠ざかっていた。今般のアビィの仲介によるキール-マチャール面談の実現は、和平協議の枠組みにマチャールを取り込むかたち、すなわち、より包括的な和平調停の実現に向けた第一歩として評価できる。 他方、その後の報道によれば、同面談の結果にアビィは失望したと言われている。両者は重要な権力分掌の問題については議論せず、代わりに2016年7月の戦闘における責任問題について言葉を交わし、また、キールはマチャールに対して第一副大統領復帰を諦めるようにも述べたと言われている。 紙上の形式的合意だけでは何ら意味がないことははっきりしており、今後継続する和平協議においては、双方にとって納得可能、履行可能な和平合意締結が望まれている。そのためには調停国の継続的な関与が今後も必要となるだろう。

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アフリカにおける気候変動の議論

2018/06/14/Thu

6月12日、BBCはジンバブウェやナミビア、南アフリカ、ボツワナ、ザンビアなどで現存するバオバブの古木(樹齢1000年から2500年)が大量に枯死していることを報じた。過去12年のうちに最も古く大きいバオバブのほぼすべてが枯死したと報告されており、その原因は不明とされる。疫病などの可能性はなく、とくに南部アフリカに影響を及ぼしている気候変動が一部関係している可能性があるとされる。 アフリカ大陸ではこのほかにも気候変動の影響とされる環境変化の事例が報告されている。たとえばモロッコでは、気候変動の影響から降水量が減少し砂丘が拡大したことで、20世紀のあいだに国内の3分の2のオアシスが消滅したと指摘されている。 近年、アフリカ諸国の科学者たちが気候変動に関する議論を重ねている。2017年にはアフリカの気候変動に関するワークショップが初めて開催され、アフリカの20の国から80人以上の環境学者が参加し、気候変動メカニズムに関する研究成果を報告した。次回は2019年の開催を予定している。また今月タンザニアで開催された気候変動会議では、医療寄生虫学者や政治学者らが、気候変動によって病気の蔓延や貧困拡大が生じる可能性を示し、アフリカ諸国の政府へ早急な対応を呼びかけた。 気候変動に関してはこれまでも議論されてきたが、近年の干ばつの発生や急速な人口増加も相まって、アフリカ諸国の関心が高まっている印象を受ける。

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ICC無罪判決のコンゴ民主共和国への影響

2018/06/09/Sat

 6月8日、国際刑事裁判所(ICC)で元コンゴ民主共和国副大統領のJ-P. ベンバに関する上告審が行われ、無罪判決が言い渡された。ベンバは、コンゴ内戦中、反政府武装勢力MLCの指導者であったが、2002-03年に隣国中部アフリカが政治的混乱に陥った際、当時の同国大統領パタセの求めに応じて、配下の兵士を同国に派遣した。その兵士が中央アフリカで犯した暴行やレイプなど非人道的行為に対して、ICCが訴追し、ベンバは2008年にベルギーで逮捕された。配下の兵士による犯罪を問われたわけである。2016年の第一審はベンバの責任を認め、懲役18年の判決を下した。これに対してベンバ側が上告し、無罪判決が出たのである。 ベンバの無罪判決は、ICCにとって大きな痛手だとの報道されているが、コンゴ内政に対しても甚大な影響を与えるだろう。コンゴでは2016年に任期が切れた後も、選挙が実施できないとの理由で、カビラが大統領の座にとどまり続けている。しかし、国内野党勢力や国際社会は、今年末には選挙を実施するよう強い圧力を加えている。2006年の大統領選挙の決選投票でカビラと争った実績があるベンバが無罪判決を得たことで、様々な形でコンゴ政治への関与が始まるであろう。有力な野党指導者の一人カトゥンビは、ベンバの無罪判決を歓迎し、野党勢力を強化するだろうとコメントを出した。この先、どのような形で選挙に向けたプロセスが進むのか、注目される。

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ブルンジ大統領の不出馬宣言

2018/06/08/Fri

6月7日、ブルンジのンクルンジザ大統領は、2020年の選挙に出馬しないと発表した。ブルンジでは5月に憲法改正レファレンダムが実施され、ンクルンジザは2034年まで大統領の座に留まることが可能になっていた。新憲法を発布した直後にンクルンジザが次期選挙へ出馬しない旨を明らかにしたことで、国内外に驚きが広がっている。ブルンジは、2015年以降、ンクルンジザの三選問題をめぐって政治状況が混乱し、事実上の紛争状態に陥っている。今回の憲法改正は、自身の三選を正当化するとともに、今後も大統領の座に留まることを意図したものと受け取られてきただけに、不出馬表明をどこまで信じることができるかは不透明である。しばらくは注意深い観察が必要である。

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エチオピア、エリトリア国境線を受け入れ

2018/06/06/Wed

報道によれば、6月5日、エチオピア政府はエリトリアとの国境問題に関し、2002年に常設仲裁裁判所国境画定委員会が定めた境界線を受け入れる旨発表した。これにより、両国の国境問題の収束と関係修復が期待される。 両国においては、1998年に武力衝突が勃発したのち、2000年に現アフリカ連合の和平調停により和平合意が締結されるまで、2年8か月もの間戦争を続けた結果、双方併せて10万人以上の戦死者を出す事態となった。和平合意締結後も、一部地域の領有権を巡る対立が続くなど、両国は緊張関係にあった。 同報道に先立ち、エチオピア議会は、今年2月に発令された非常事態宣言の解除を発表している。アビィ・アフマド首相にとって、今般の境界線の受け入れ及び非常事態宣言の解除は、就任時の公約を着実に履行したかたちとなる。 首相就任からわずか2か月ながら、国内外の安定化対策に積極的に取り組む姿勢は、実行力に長けるといった新首相の印象を国内外に与えるものである。

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中国、対エチオピア投資を減速

2018/06/05/Tue

6月3日付ファイナンシャルタイムズによれば、中国は外貨不足、債務問題を理由として、エチオピアへの投資を縮小する意向を示している。エチオピアは中国の最大投資先の一つであり、2006~2015年に130億ドルの投資がなされたと見られるが、今後は「より注意深いアプローチ」を取るという。中国の貿易保険を担当するSinosureは、以前ほどエチオピアでの投資プロジェクトに貿易信用供与をしなくなっている。これは同国の債務や外為上の問題を懸念してのことであり、2017年1月に開業したアジスアベバ・ジブチ間の鉄道も利用客数が予想を下回っているという。近年のアフリカの高成長に、中国の投資が果たした役割は極めて大きい。エチオピアは、アンゴラなどとともに中国が最も活発に投資してきた国であり、中国が方針転換をすれば甚大な影響を受けるだろう。近年、アフリカの債務増大を懸念する声が高まっているが、中国の対アフリカ政策についても、アフリカ経済動向に影響する要因としてフォローが必要である。

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ルワンダのアーセナルへの広告

2018/06/01/Fri

5月23日ルワンダの政府系新聞New Timesは、英国プレミアリーグの人気サッカーチーム「アーセナル」の観光パートナーとなり、同チームのユニフォームの袖口に"Visit Rwanda"の文字が入ると報じた。これに対して、貧困国で援助に依存するルワンダがそうした投資を行うのは馬鹿げているとの批判が英国などで起こり、日本でもその意見が報じられた(5月30日付朝日新聞)。一方、31日付ファイナンシャルタイムズでは、M. S. Webb記者名で、29日にルワンダ開発局(RDB)局長に対して批判的なインタビューを行ったBBC記者を批判するコラムが掲載された。コラムの主張は、一言で言えば、貧しいアフリカは広告費にカネを使うべきではないという理屈は誤っている、というものだ。 この主張には説得力がある。ルワンダはここ20年ほどの間に高い成長を遂げてきた。予算の援助依存率が17%と報じられているが、2000年代初頭には50%程度であったから、大幅に下がったことになる。New Timesの記事によれば、アーセナルのパートナーになることによって、グローバルな関心をルワンダ観光業に引き付けることができるという。ルワンダは、広告料に十分見合う投資だと踏んでいるのである。紛争後のルワンダは、英国や米国との良好な外交関係を背景に、こうした国々が推進する新自由主義的な政策を実行してきた。投資環境を改善し、世銀のDoing Business指標ではアフリカでトップクラスの評価を得ている。そして、高いマクロ経済成長を達成した。ルワンダは、グローバル化の波に乗るべく努力してきたし、それによって一定の成果もあげてきた。その一方で、こうした政策によって、国内の格差が拡大したとの批判も絶えない。 新自由主義政策によって経済成長率を高めることに成功したルワンダにとって、アーセナルに広告を出すことは、思い切った投資かも知れないが、ロジカルには特別な行動ではないだろう。それを批判的に報じたメディアの側に、アフリカは貧しくて援助に依存しているのだから、アーセナルに宣伝を出すなんておかしいという感覚があったとしたら、それこそおかしいのではないだろうか。今日のグローバル経済は、必然的にこうした投資行動に向かわせるのであり、我々もまた、その中にいる。その意味を考えるべきだろう。

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