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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2023年11月

フランスの対アフリカ政策見直しで、開発援助に焦点

2023/11/26/Sun

 11月21日、フランス下院議会でアフリカ政策を議論する機会が設けられた。この背景にはマリ、ブルキナファソ、ニジェールのクーデタと反仏感情の高まり、そしてフランス軍の撤退という周知の事実がある。これに先立って、11月上旬に外交委員会に対して二人の議員(Bruno FuchsとMichele Tabarot)の手による報告書が提出された。  対アフリカ政策改革の議論のなかで中心的に取り上げられたのは、開発援助政策の見直しであった。これには、近年のアフリカ政策が軍事面に偏りすぎていたとの反省がある。2012年のセルヴァル作戦(マリへの軍事介入)でジハディストの撃退に成功すると、フランスのサヘル政策は軍事・安全保障に力点が置かれるようになった。それを象徴するのが、2013年4月、憲兵隊出身のジル・ウベルソンがバマコの大使に任命されたことである。2012-17年に国防相を務めたジャン=イヴ・ルドリアンの下で、総じて軍事面の対応が優先された(11月3日付ルモンド)。  フランスの政策担当者の間には、軍事中心的なアプローチが、パターナリステックな姿勢とも相まって、反仏感情を高めたとの反省がある。議会に提出された報告書では、ODA政策が辛辣に批判された。「これまでにない額を出資しているのに、現場での存在感が乏しい」、「地元住民にとってODAの成果が見えにくい。・・・フランスのODAは既存の政治体制の強化が目的なのだ、といった意見が強まっている」。報告書は資金の3割がインフラ建設の大プロジェクトに向けられていることを疑問視し、開発援助実施機関(AFD)の見直しをすすめるよう要求している(11月8日ルモンド)。  サヘルの危機は軍事的対応だけで解決できず、有効な開発援助政策が必要だというのは、言うまでもないことである。一方で、治安が極度に悪化しているなかでどのような「開発援助」が可能なのか、非常に難しい課題でもある。この議論は、日本にとっても他人事ではない。 (武内進一)

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ナミビア大統領、フィンランド元大統領の国葬に参列

2023/11/20/Mon

 フィンランド元大統領でノーベル平和賞受賞者のマルティ・アハティサーリ氏が11月10日、ヘルシンキの福音ルター教会大聖堂の墓地に埋葬された。10月16日に亡くなり、86歳だった。  国葬には、ナミビアからはハーゲ・ガインゴブ大統領率いるナミビア代表団が参列した。他には、スウェーデン国王カール16世グスタフ、コソボのヴィヨサ・オスマニ大統領、アイルランドのメアリー・ロビンソン元大統領、タンザニアのジャカヤ・キクウェテ元大統領などが参列している。  アハティサーリ氏は、1977年から国連代表としてナミビアの紛争調停に携わり、その後も旧ユーゴスラビアの解体やインドネシアの独立紛争などにおいて、紛争の和解に尽力したことで知られる。1994年から2000年までフィンランド大統領を務めた後、危機管理イニシアチブであるマルティ・アハティサーリ平和財団で働き続け、2021年に公職から引退した。  ガインゴブ・ナミビア大統領は追悼メッセージの中で、故アハティサーリ氏に敬意を表し、ナミビア人は追悼しているだけでなく、豊かな平和の遺産と、ナミビアとの消えないつながりを持つ元大統領の卓越した国際的な奉仕を再確認していると述べている(11月12日付ナミビア国営放送)。  ナミビアは他のアフリカ諸国と比べて独立が遅く、1990年に独立した新しい国である。1884年からドイツの支配下、第一次世界大戦後からは国際連盟の委任統治領として南アフリカの統治下にあった。アハティサーリ氏は独立闘争が泥沼化するナミビアの紛争調停に国連代表として携わり、国際連合ナミビア独立支援グループ(UNTAG)の長官として独立移行期の選挙監視などを行った。  この独立の背後には、ナミビアとフィンランド伝道協会との一世紀半にもわたる関係がある。アハティサーリ氏が埋葬された福音ルター教会を母体とするフィンランド伝道協会が宣教の地として初めて選んだのが19世紀後半のナミビアであった。ナミビアの国内人口の約半数を占める民族オヴァンボが暮らす地域に宣教拠点を置き、活動範囲を拡げていった。ドイツのライン伝道協会と友好関係にあったため、ドイツ植民地期に制限を受けることなく活動を続け、オヴァンボ社会の中で基盤を築いた。現在オヴァンボの多くがナミビア福音ルター教会の教徒である。ナミビア福音ルター教会の指導者らは、独立に向けた動きが高まっていた1960年に結成された西南アフリカ人民機構(SWAPO)との密接な関係のもとに、独立運動にかかわるようになった。SWAPOは現在の与党であり、オヴァンボの多くがこの政党の支持者である。  元大統領の国葬参列の事例から見えてくるのは、独立をめぐる国連の関与だけでなく、ナミビアという小国におけるキリスト教の布教の歴史と国政の背後にある教会の動きである。 (宮本佳和) 参考文献 Kjeseth, P. L. 1989 The Church and Politics in Namibia. Africa Today 36(1): 7-22.

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英国最高裁が庇護希望者のルワンダ移送計画に違法判断

2023/11/18/Sat

 イギリスの最高裁判所は、15日、イギリス政府がルワンダとの間で結んだ庇護希望者(アサイラム・シーカーズ)をめぐる政策を不法との決定を下した。5人の判事が一致した決定であった。これは、ドーバー海峡を小舟で渡ってくる庇護希望者をルワンダに送還する政策に対する判断である。  裁判所は、UNHCRの報告などに基づいて、ルワンダが「ノン・ルフルマン原則」を遵守しておらず、庇護希望者にとって安全ではないと論じた。ルワンダはイスラエルとの間でも庇護希望者の受け入れを行っているが、出身国に送還された事例が見られたという。  この政策はジョンソン政権期に浮上したものだが、内外で強い批判に晒され、また保守党政権内でも意見の違いを露呈してきた。ジョンソン政権を引き継いだ保守党政権も、庇護希望者をルワンダに送る政策を実施する方針は変えていない。ただ、スナク政権下で最近まで政策責任者であったブラヴァーマン(Suella Braverman)前内相のように、政策実現のために欧州人権条約(ECHR)を脱退する必要があるとの主張がある。イギリスはECHRの原署名国であり、この条約は北アイルランド紛争の和平合意(ベルファスト合意)の基礎にもなってきた。スナク首相はECHR脱退に反対の立場で、結局ブラヴァーマン氏は判決が出る直前の13日に解任された。  今回の判決ではECHRや人権法に触れることなく、ルワンダが「ノン・ルフルマン原則」を守っていない、庇護希望者を送るには危険な国だという論理で違法判断を下した。この点で、今回の判決を評価する声がある(15日付ファイナンシャルタイムズ)。  判決を受けて、スナク首相は、法律を改定すると述べて、庇護希望者をルワンダに送る方針に変わりがないことを示した。一方ルワンダ政府は、難民や庇護希望者の受け入れに努力しているとしてUNHCRの報告書を批判し、イギリスとともに庇護希望者受け入れに向けて努力するとの報道官談話を発表した。  事の発端となったイギリス・ルワンダ間の「移民・経済発展パートナーシップ」(Migration and Economic Development Parnership)は、簡単に言えば、大量の庇護希望者に悩むイギリスが、援助と引き換えにルワンダに引き取ってもらうという内容である。問題含みのものであることは疑いない。それを政権があくまで押し通そうとし、そのためにECHRからの脱退が議論に上るという状況は、いかにイギリスにとって移民問題が深刻化しているかを余すところなく示している。 (武内進一)

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スーダン内戦続報

2023/11/17/Fri

 スーダンの準軍事組織RSFによるダルフール制圧についてこの欄で紹介したばかりだが、事態はさらに進んでいたようだ。16日付ルモンド紙は、スーダン国土の三分の二がRSFの制圧下にあると報じている。  報道によれば、ブルハン指揮下のスーダン国軍(SAF)が押さえているのは、ナイル川と紅海、北はエジプト国境、南はエチオピア国境に挟まれた部分に過ぎない。首都ハルツームでもSAFは劣勢で、ヘメティ指揮下のRSFがその9割を制圧している。スーダン国軍側は、政府機能を紅海沿岸のポート・スーダンに移した。RSFはダルフールに加えて、コルドファンでも地歩を固めつつある。  RSFは、スーダン国境付近を押さえ、リビア、中央アフリカ、チャドなど、広域から戦闘員や武器を調達している。ロシアやワグネル、リビアのLNA、エチオピア、チャド、そしてUAEなど、巨大なネットワークを利用して武器や兵員を増強させてきた。一方の国軍は、十分な支援が得られていない。エジプトやカタールなど、同盟国からの支援も不十分だという。  ダルフールで残虐行為を繰り返してきたヘメティのRSFが国土の過半を支配する状況は、控えめに言っても恐ろしい。16日付ルモンド紙は、「我々が目にしているのは、ジェノサイドに手を染めた民兵が三分の二を支配し、周りを破綻国家に囲まれた巨大な国が出現することだ。この危険性に十分な注意が払われていない」という米国ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)のキャメロン・ハドソン研究員の発言を紹介している。  スーダン内戦では、既に1万2千人以上が犠牲になっているという。マリ、ブルキナファソ、ニジェールからスーダン、エチオピア、ソマリアまで、サヘル周辺部が次々に紛争に陥り、不安定化している状況は、非常に憂慮すべきことである。 (武内進一)

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スーダン内戦の新局面か

2023/11/14/Tue

 スーダンでは、4月15日に国軍(SAF)と準軍事組織RSFの間で内戦が勃発して以降、和平に向けた出口が見えない状況が続いている。西部のダルフール地域で激しい戦闘が続いてきたが、12日付けファイナンシャルタイムズは、ここ数週間の間に、RSFがスーダン第2の都市ニャラやダルフール地域を広く制圧したと報じた。  これに伴って、住民に対する残虐行為が広くなされた模様である。EUのボレル外相は12日のコミュニケで、ダルフールにおいて2日間で1000人以上が殺害されたとして、「RSFによって、アフリカ系エスニック集団マサリット(Masalit)に対する民族浄化」があったと発表した。ダルフールでは、2003年にも特定のエスニック集団に対する残虐行為が大規模になされ、国際刑事裁判所(ICC)の捜査へと発展した。今回も類似した状況に至っている。  RSFの首領モハメド・ハムダン・ダガロ(通称ヘメティ)は、ダルフールのアラブ系エスニック集団リゼイガト(Rizeigat)の出身である。内戦の中でRSFが制圧領域を広げていく際に、アフリカ系エスニック集団を放逐する目的で、残虐行為が広がったとみられる。EUはICCを通じて、責任の所在を問う構えである(12日付ルモンド)。  スーダン内戦において、RSFがダルフールを、SAFがそれ以外の国土を制圧する構図が固まれば、隣国のリビアと同様の状況になる。リビアでは、首都トリポリを中心とする西部を押さえる暫定政権派と、ベンガジを中心とする東部を押さえるリビア国軍(LNA)派とが国土を分割している。そして、LNAを率いるハフタル将軍はヘメティと同盟関係にあり、いずれもロシアのワグネルを利用してきた(12日付FT)。  RSFがアラブ系ネットワークを通じて西アフリカ諸国から人材や資源を集めていることは従来から指摘されているが、ワグネルを介したリビアから中央アフリカに至るネットワークも重要性を増すかもしれない。 (武内進一)

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エチオピアの脆弱な戦後

2023/11/13/Mon

 2022年11月2日の和平協定でエチオピアの内戦が終結してから、1年が経過した。このところ、和平の先行きを懸念する報道が続いている。内戦終結後も政情が安定しない要因として、和平合意の主体が政府とTPLF(ティグライ人民解放戦線)だけだったことが指摘されている(2日付ルモンド)。内戦に関与したエリトリアは依然としてティグライ州に留まっているし、やはり内戦に参加したアムハラ人民兵組織(FANO)も戦闘を止めていない。さらに、OLA(オロモ解放軍)も政府と交戦状態にある。TPLFとの和平合意は、これら武装勢力の行動によって不安定化している。  加えて、エチオピア政府の行動も予測が難しくなりつつある。最近、紅海への出口を求めるアビィ首相の発言が物議を醸している。アビィ首相は7月の演説で、エチオピアは世界最大の内陸国であり、平和的な方法で港を求めるが、それに失敗すれば武力を用いる、と述べた(8日付BBC)。同様の発言は、10月13日に議会でもなされたという。こうした発言は、周辺のソマリア、ジブチ、エリトリアにとっては脅しである。特にエリトリアとの関係は、同国軍がティグライ州に駐留を続けていることもあって、急速に悪化していると報じられている(9日付ルモンド)。  昨今の状況に国際社会も懸念を深めており、ブリンケン米国務長官は、11月2日、「エチオピアとエリトリアに対して、挑発を止め、地域諸国の独立、主権、領土保全を守る」よう呼びかけた。一方で、アラブ首長国連邦(UAE)などが、アビィ政権に武器を供与しているとも伝えられる(9日付ルモンド)。スーダン内戦も終結に向けた糸口が見えない中で、アフリカの角地域の不安定化が顕著になっている。 (武内進一)

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南アフリカでAGOAフォーラム

2023/11/04/Sat

 南アフリカのジョハネスバーグで、2日から米国・アフリカ貿易サミットが開催され、「アフリカ成長機会法」(AGOA)の資格を持つ、約40のサハラ以南アフリカ諸国が参加した。AGOAは2000年から実施されている米国の国内法で、資格を認められたアフリカ諸国は、多数の品目について、米国向け輸出関税を免除される。ただし、その資格が認められるためには、政治的多元主義、人権尊重、法治国家といった条件を満たす必要があり、この会議に先立って、中央アフリカ、ガボン、ニジェール、ウガンダの資格剥奪が発表された(10月31日付ファイナンシャルタイムズ)。また、マリ、ギニアも既に資格を剥奪されている。  南アでの開催について、バス(Joy Basu)米国国務次官補(アフリカ担当)は、「米・南アフリカ二国間関係へのコミットを示すもの」だと説明した。ただし、この決定までには紆余曲折があった。今年5月、南ア駐在の米国大使が、南アがロシアに武器を違法に輸出した疑いがあると発言し、南アをAGOAから排除すべきだとの意見が米国議会に出てきたからである。それ以降、南アは米国で活発なロビー活動を行い、このサミットを予定通りに実施し、AGOA資格も維持することとなった。  しかし、米国内には依然として不満の声がある。本貿易サミット開催直前、共和党のジム・リッシュ(Jim Risch)上院議員は、ブリンケン国務長官とキャサリン・タイ通商代表に対して、南アでの会議開催を強く批判する書簡を送った。同議員は、南アはハマス、イラン、ロシアと関係が深く、イスラエルを批判しており、米国の国益と外交政策に反する。したがって、来年度以降、南アをAGOAから排除すべきだ、と主張する。  イスラエル・ハマス戦争の勃発後、南アのパンドール外相はハマス指導者のハニヤ氏と電話会談した。また、イランとの間では最近外相が相互訪問している。リッシュ議員は、こうした点を捉えて、米国の外交政策にとって南アは危険だと主張している(3日付Daily Maverick紙)。  AGOAによる貿易は、南アの対米輸出の21%を占め、2021年には20~30億ドルに達した。免税品目は、自動車部品、一次産品、希少金属など多岐にわたる。南ア大統領府は、2日、「AGOAは、アフリカ大陸にとって、経済関係強化と成長・発展の促進に決定的に重要な役割を果たしている」と述べている。  国内法のAGOAを使ってアフリカ諸国の政策を変えたい米国と、AGOAを利用しながら独自の対外政策を維持したい南ア。双方のせめぎ合いがここに見て取れる。 (武内進一)

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植民地の過去とどう向き合うか

2023/11/02/Thu

 10月31日から、英国国王チャールズIII世がケニアを訪問している。ケニアは、1963年12月12日の独立から60年目にあたる。国王は、コモンウェルスで最初の訪問国としてケニアを選んだ。訪問に際しての演説で、「ケニアの人々が苦しみを受けた過ちを深く理解するまでに時間がかかった」として、「おぞましく、正当化できない暴力行為が、独立と主権に向けた苦しい戦いを行っているケニア人に対してなされた。これについて言い訳はできない」として、過去の植民地支配、特にマウマウ戦争時の苛烈な抑圧に遺憾の意を表した。ただし、明確な謝罪はしなかった(31日、1日付ルモンド)。  一方、1日にタンザニアを訪問したドイツのフランク=ヴァルター・シュタインマイヤー連邦大統領は、20世紀初頭のマジマジの反乱(特に1905,1907年)に関して、「ドイツ植民地支配の犠牲者の前に身を屈する。ドイツ大統領として、ドイツ人があなた方の祖先に行ったことに対して、許しを求めたい」と、明確に謝罪した(1日付ルモンド)。  これまで、ドイツやベルギーが自国の過去の植民地支配について謝罪している一方で、英国やフランスは過去の植民地支配を厳しく断罪しても、謝罪はしていない。  植民地の過去とどう向き合うかは、アフリカにおいてきわめてアクチュアルな問題である。西アフリカで顕著な反仏感情の噴出は、植民地支配の過去と切り離せない。今回のチャールズIII世の対応をめぐっても、ケニア国内では「不十分だ」という声が上がっている(France 24 11月1日放送)。ヨーロッパ各国では近年、植民地をテーマとした博物館の展示がなされるようになっている。おそらく今後も繰り返し、植民地をめぐる問題が様々な形で問い直されていくだろう。 (武内進一)

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