ナミビア大統領、フィンランド元大統領の国葬に参列
2023/11/20/Mon
フィンランド元大統領でノーベル平和賞受賞者のマルティ・アハティサーリ氏が11月10日、ヘルシンキの福音ルター教会大聖堂の墓地に埋葬された。10月16日に亡くなり、86歳だった。
国葬には、ナミビアからはハーゲ・ガインゴブ大統領率いるナミビア代表団が参列した。他には、スウェーデン国王カール16世グスタフ、コソボのヴィヨサ・オスマニ大統領、アイルランドのメアリー・ロビンソン元大統領、タンザニアのジャカヤ・キクウェテ元大統領などが参列している。
アハティサーリ氏は、1977年から国連代表としてナミビアの紛争調停に携わり、その後も旧ユーゴスラビアの解体やインドネシアの独立紛争などにおいて、紛争の和解に尽力したことで知られる。1994年から2000年までフィンランド大統領を務めた後、危機管理イニシアチブであるマルティ・アハティサーリ平和財団で働き続け、2021年に公職から引退した。
ガインゴブ・ナミビア大統領は追悼メッセージの中で、故アハティサーリ氏に敬意を表し、ナミビア人は追悼しているだけでなく、豊かな平和の遺産と、ナミビアとの消えないつながりを持つ元大統領の卓越した国際的な奉仕を再確認していると述べている(11月12日付ナミビア国営放送)。
ナミビアは他のアフリカ諸国と比べて独立が遅く、1990年に独立した新しい国である。1884年からドイツの支配下、第一次世界大戦後からは国際連盟の委任統治領として南アフリカの統治下にあった。アハティサーリ氏は独立闘争が泥沼化するナミビアの紛争調停に国連代表として携わり、国際連合ナミビア独立支援グループ(UNTAG)の長官として独立移行期の選挙監視などを行った。
この独立の背後には、ナミビアとフィンランド伝道協会との一世紀半にもわたる関係がある。アハティサーリ氏が埋葬された福音ルター教会を母体とするフィンランド伝道協会が宣教の地として初めて選んだのが19世紀後半のナミビアであった。ナミビアの国内人口の約半数を占める民族オヴァンボが暮らす地域に宣教拠点を置き、活動範囲を拡げていった。ドイツのライン伝道協会と友好関係にあったため、ドイツ植民地期に制限を受けることなく活動を続け、オヴァンボ社会の中で基盤を築いた。現在オヴァンボの多くがナミビア福音ルター教会の教徒である。ナミビア福音ルター教会の指導者らは、独立に向けた動きが高まっていた1960年に結成された西南アフリカ人民機構(SWAPO)との密接な関係のもとに、独立運動にかかわるようになった。SWAPOは現在の与党であり、オヴァンボの多くがこの政党の支持者である。
元大統領の国葬参列の事例から見えてくるのは、独立をめぐる国連の関与だけでなく、ナミビアという小国におけるキリスト教の布教の歴史と国政の背後にある教会の動きである。
(宮本佳和)
参考文献
Kjeseth, P. L. 1989 The Church and Politics in Namibia. Africa Today 36(1): 7-22.
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