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今日のアフリカ

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植民地の過去とどう向き合うか

2023/11/02/Thu

 10月31日から、英国国王チャールズIII世がケニアを訪問している。ケニアは、1963年12月12日の独立から60年目にあたる。国王は、コモンウェルスで最初の訪問国としてケニアを選んだ。訪問に際しての演説で、「ケニアの人々が苦しみを受けた過ちを深く理解するまでに時間がかかった」として、「おぞましく、正当化できない暴力行為が、独立と主権に向けた苦しい戦いを行っているケニア人に対してなされた。これについて言い訳はできない」として、過去の植民地支配、特にマウマウ戦争時の苛烈な抑圧に遺憾の意を表した。ただし、明確な謝罪はしなかった(31日、1日付ルモンド)。
 一方、1日にタンザニアを訪問したドイツのフランク=ヴァルター・シュタインマイヤー連邦大統領は、20世紀初頭のマジマジの反乱(特に1905,1907年)に関して、「ドイツ植民地支配の犠牲者の前に身を屈する。ドイツ大統領として、ドイツ人があなた方の祖先に行ったことに対して、許しを求めたい」と、明確に謝罪した(1日付ルモンド)。
 これまで、ドイツやベルギーが自国の過去の植民地支配について謝罪している一方で、英国やフランスは過去の植民地支配を厳しく断罪しても、謝罪はしていない。
 植民地の過去とどう向き合うかは、アフリカにおいてきわめてアクチュアルな問題である。西アフリカで顕著な反仏感情の噴出は、植民地支配の過去と切り離せない。今回のチャールズIII世の対応をめぐっても、ケニア国内では「不十分だ」という声が上がっている(France 24 11月1日放送)。ヨーロッパ各国では近年、植民地をテーマとした博物館の展示がなされるようになっている。おそらく今後も繰り返し、植民地をめぐる問題が様々な形で問い直されていくだろう。
(武内進一)