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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2023年07月

ニジェール軍事政権にECOWASが厳しい対応

2023/07/31/Mon

 30日、ECOWAS(西アフリカ経済共同体)15ヵ国はアブジャで緊急会合を開き、民主主義体制への復帰を要求。一週間以内にこの要求が満たされない場合は、武力行使を含むあらゆる措置を講じて憲法秩序を復帰させる、との声明を発表した。また、バズーム大統領の即時解放を要求して、ニジェールとの間の「あらゆる商業、金融取引」を停止すると発表した。   ECOWASが加盟国に武力行使の可能性を含む制裁措置を講じたのは、2017年のガンビア以来である(31日付ファイナンシャルタイムズ)。この時は、ジャメ大統領(当時)に対して自らが敗北した選挙結果の受け入れを迫り、彼の国外逃亡と政権交代を実現させた。  ECOWASの強硬姿勢には、ナイジェリアのティヌブ大統領のイニシャティブが強く影響していると見られる。5月末に正式に大統領に就任したティヌブは、ECOWAS議長国として隣国ニジェールの政変に強い態度で臨んでいる。  フランスやEUが援助の即時停止を発表し、アフリカ連合(AU)も2週間以内に民主主義体制への復帰を求めるなど、ニジェールの軍事政権には厳しい対応が相次いでいる。転覆されたバズーム政権の首相は、ニジェールは脆弱な内陸国なので、制裁措置に抵抗することは難しいと見ている(30日付ルモンド)。また、チアニをトップに軍事政権が誕生したものの内実は分裂しており、新たな政変が起こるかもしれないとの見解もある(31日付けFT)。  一方、同様の厳しい制裁はマリのクーデタの際にも科されたが、功を奏さなかったという事実もある。今回はナイジェリアのイニシャティブが大きいが、今後外交的な交渉が舞台裏で進められるとみられる。  30日、首都ニアメでは、フランス大使館前に数千人のデモ隊が押し寄せた。「プーチン万歳」「ロシア万歳」「フランスに死を」と叫び、フランス大使館の看板を外し、代わりにロシアとニジェール国旗を掲げた。マクロン大統領とフランス外務省は相次いで、「フランスに対するいかなる攻撃も許さない」との声明を発表した。 (武内進一)

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ニジェールのクーデタ続報

2023/07/29/Sat

 28日の現地時間13時頃、大統領警護隊トップのチアニ(Abdourahamane Tchiani)将軍が国営テレビで演説し、バズーム政権の転覆を発表した。昨日発表された軍事政権、祖国防衛国民評議会(CNSP)のトップにチアニが就任する見通しとなった。  チアニは、バズーム大統領の前任者の時代から大統領警護隊のトップを務めており、CNSPには軍の重鎮が顔を揃えている。この点で今回のクーデタは、若手の将校グループが中心となったマリやブルキナファソとは異なっている。  28日付ルモンド紙は社説で、西側はこのクーデタから、この地域で繰り返される失敗の原因を探る機会としなければならない、と論じた。サヘル地域にイスラム急進主義勢力が広がり、そしてマリとブルキナファソがクーデタを経て西側に背を向けるなか、ニジェールは数少ない西側の拠点であった。フランスと米国が1000人規模の軍を駐留させ、経済支援とともに軍事支援を行ってきた。その軍が民主的に選出された政権を放逐する結果となったことで、これまで軍を支援してきた国々は深刻な反省を迫られるだろう。  クーデタの報を受け、プリゴジンはクーデタが「ニジェール人民の植民地主義者に対する戦い」だと賞賛し、軍事支援を申し出た。ロシア政府もクーデタを非難しているが(27日付ルモンド)、今後はこの国をめぐる各国の駆け引きが強まるだろう。 (武内進一)

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ニジェールでクーデタ

2023/07/27/Thu

 27日付ルモンドによれば、26日、ニジェールでクーデタが発生した。この日、朝からバズーム大統領が大統領警護隊の一部に監禁されたとの報道が流れていたが、深夜になって国営テレビに軍服姿の男たち10名が現れ、そのなかでアマドゥ・アブドラマン上級大佐(colonel major Amadou Abdramane)が、バズーム政権転覆を発表した。彼らは、祖国防衛国民評議会(Conseil national pour la sauvegarde de la patrie: CNSP)と称している。クーデタの理由については、「治安面の悪化と経済社会的なバッドガバナンス」を挙げている。  依然不明な点が多いが、サヘルの治安にとって、とりわけ西側諸国にとって、いっそうの打撃となることは避けられない。マリ、ブルキナファソ、ギニアでクーデタが相次いだ後、ニジェールはこの地域における西側諸国の拠点になっている。マリから撤退を強いられたフランス軍もニジェールを本拠にしており、今年になってブリンケンが史上初めて米国務長官としてこの国を訪問した。  バズーム大統領監禁の報を受けて、国連を始めとする国際社会はこれを強く批判する声明を発表し、Ecowasがタロン・ベナン大統領を派遣して仲介を試みているところで、CNSPがクーデタを宣言した。まだ誰がCNSPを代表するのかも発表されていないが、この政権がどのように西側の治安維持政策に向き合うのかに注目が集まるだろう。 (武内進一)

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プーチン、南アフリカを訪問せず

2023/07/21/Fri

 19日、南ア大統領府は声明で、「南ア、ロシア両国の共通了解として、プーチン大統領はサミットに出席しない」と発表した。これにより、8月22-24日にヨハネスブルクで開催されるBRICS首脳会議に、プーチンが出席しないことが正式に決まった。ロシアのペスコフ報道官もプーチンはオンラインで参加すると発表し、ラブロフ外相が現地で出席することになった。  プーチンに対して国際刑事裁判所(ICC)が逮捕状を発出して以降、BRICS首脳会議にプーチンが出席するのか、出席した場合に、南アはどう対応するのかが注目されてきた。  18日、南ア野党の「民主同盟」(DA)の要求でラマポサ大統領が署名した法定宣誓供述書が公開され、この決定に至る経緯が明らかになった。ラマポサは、6月17日にウクライナ戦争の和平提案を携えて他のアフリカ諸国首脳とともにサンクトペテルブルクを訪問した際に、プーチンにこの件を打診した。その後、パリで開催された「新たな資金取り決め」会議の際にブラジルのルラと相談し、了解を得た後、中国、インド首脳の了承を取り付けたという。コンセンサスを重視するBRICSの意思決定を尊重したとラマポサは説明している。  ロシア側は、公式には南アの決定に理解を示している。与党「統一ロシア」幹部は、ICCの問題であり、やむを得ないという見解を公表した。(20日付 Daily Maverick)。  一方、同じ南ア紙Daily Maverick(20日付)によれば、国内の受け止めは多様である。DAは、「法の支配を求めるDAの戦いの前に、プーチンとラマポサが膝を屈した」と、法の支配を強調して勝利を宣言した。それに対して、南ア共産党は、「ICCに屈するのは南アにとって避けがたい」と分析しつつも、「今日の多極世界でプーチンは最も偉大な指導者なのだが、西側がその見方を破壊している」と論評した。急進政党の「経済的自由戦士」(EFF)は、AGOA(アフリカ成長機会法)からの排除をちらつかせる米国の対応を念頭に、「典型的な西側帝国主義者のやり方」だとして、今回の結果について、「NATOの圧力に屈した」と評価した。  今回のANCの対応は、各方面に筋を通した、ということであろう。ロシアへの武器輸出疑惑で米国の批判を浴びてから、軌道修正を図っているのかもしれない。欧米の立場は、南ア国内ではDAが代表しているが、これが決して国内的には多数派の声ではないという事実は、認識しておく必要がある。 (武内進一)

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マッキー・サル、次期大統領選挙不出馬を表明

2023/07/05/Wed

 セネガルのマッキー・サル大統領は、3日夜の国営TVで演説し、2024年2月に予定されている大統領選挙に出馬しないことを表明した。  サルの次期大統領選挙出馬問題は、この間セネガルの政治的混乱の重要な要因となってきた。彼は、2012年の大統領選挙でアブドゥライ・ワッドを破って初当選した。この時ワッドは憲法で禁止されている三選目を賭けた出馬であり、サルはそれを批判して当選した経緯がある。2016年には大統領任期を7年から5年に短縮する憲法改正を行い、2019年に再選された。  その後、サルの支持者から、憲法改正の時点から改めて任期をカウントするので、2024年2月の選挙に出馬しても三選には当たらない、という解釈が主張されるようになった。サル自身は三選出馬を口にしたことはないものの、今年3月のL'Express誌とのインタビューでは、法的には出馬可能だと述べていた。  こうしたサルと政権与党の姿勢にオスマヌ・ソンコなど野党側は反発を強め、ソンコがたびたび政治活動を妨害されたこともあって、セネガルの政局は緊張の度合いを高めてきた。6月初めにも、ダカールやソンコの地元ジガンショールなどで、大規模な衝突が起こっていた。  サルの不出馬表明は、セネガルの内外から安堵感を持って受け止められている。政治的安定と民主的な政権運営で知られてきたこの国が、常識的な路線に回帰したという安堵感である。一方、サルはもっと早く不出馬を明確に表明すべきだったという当然の批判も出ている。大統領派の内部では今後後継者争いが活発化するだろうが、与党連合BBY(Benno Bokk Yakaar)がかなりの程度サル大統領の個人的イニシャティブに依存していたことを考えると、分裂する可能性も高い。 (武内進一)

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ボツワナ政府とデビアス社の交渉妥結

2023/07/02/Sun

 ファイナンシャルタイムズ紙(2日付)は、6月30日、ボツワナ政府とデビアス(De Beers)社の交渉が決着したと報じた。両者合弁のDebswana社の鉱業ライセンスを25年間延長し、そのダイヤモンド販売許可を新たに10年延長した。また、ボツワナ政府側に、生産されたダイヤモンドの3割を、国営企業Okavango Diamond Companyを通じて販売することを認めた。契約の最終年には、この比率を5割まで引き上げるという。  2011年の契約では、政府側の販売比率は総生産量の25%だったから、今回の契約では前回よりボツワナ政府に有利になった。実際、ボツワナのマシシ(Mokgweetsi Masisi)政権は、条件の改善がなければ契約を更改しないという強い態度で交渉に臨んでいた。デビアス社はアングロ・アメリカン社の系列で、株式の85%を同社が所有するが、残る15%はボツワナ政府が所有している。  デビアス社はボツワナでの生産に依存しており、昨年は総ダイヤモンド生産量2400万カラットの7割がボツワナ産だった。ボツワナもまたダイヤモンド鉱業に依存しており、同国のGDPの3分の1がダイヤモンド鉱業部門に由来する。ボツワナは1966年の独立後、ダイヤモンドに依存して経済成長を遂げ、2022年の一人あたりGDPは実質値で6500ドル(世銀による)と、アフリカ第6位の水準に達している。  ボツワナは独立以来「ボツワナ民主党」(BDP)が政権を握る一党優位体制が敷かれてきた。民主主義に関する評価も高い国だが、来年に選挙を控えており、今回の交渉で政府側が強硬な姿勢を取った背景にも選挙への考慮があると見られる。おそらく今後も、デビアス側に対してよりよい条件を求める圧力は強まることだろう。 (武内進一)

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