19日、南ア大統領府は声明で、「南ア、ロシア両国の共通了解として、プーチン大統領はサミットに出席しない」と発表した。これにより、8月22-24日にヨハネスブルクで開催されるBRICS首脳会議に、プーチンが出席しないことが正式に決まった。ロシアのペスコフ報道官もプーチンはオンラインで参加すると発表し、ラブロフ外相が現地で出席することになった。
プーチンに対して国際刑事裁判所(ICC)が逮捕状を発出して以降、BRICS首脳会議にプーチンが出席するのか、出席した場合に、南アはどう対応するのかが注目されてきた。
18日、南ア野党の「民主同盟」(DA)の要求でラマポサ大統領が署名した法定宣誓供述書が公開され、この決定に至る経緯が明らかになった。ラマポサは、6月17日にウクライナ戦争の和平提案を携えて他のアフリカ諸国首脳とともにサンクトペテルブルクを訪問した際に、プーチンにこの件を打診した。その後、パリで開催された「新たな資金取り決め」会議の際にブラジルのルラと相談し、了解を得た後、中国、インド首脳の了承を取り付けたという。コンセンサスを重視するBRICSの意思決定を尊重したとラマポサは説明している。
ロシア側は、公式には南アの決定に理解を示している。与党「統一ロシア」幹部は、ICCの問題であり、やむを得ないという見解を公表した。(20日付 Daily Maverick)。
一方、同じ南ア紙Daily Maverick(20日付)によれば、国内の受け止めは多様である。DAは、「法の支配を求めるDAの戦いの前に、プーチンとラマポサが膝を屈した」と、法の支配を強調して勝利を宣言した。それに対して、南ア共産党は、「ICCに屈するのは南アにとって避けがたい」と分析しつつも、「今日の多極世界でプーチンは最も偉大な指導者なのだが、西側がその見方を破壊している」と論評した。急進政党の「経済的自由戦士」(EFF)は、AGOA(アフリカ成長機会法)からの排除をちらつかせる米国の対応を念頭に、「典型的な西側帝国主義者のやり方」だとして、今回の結果について、「NATOの圧力に屈した」と評価した。
今回のANCの対応は、各方面に筋を通した、ということであろう。ロシアへの武器輸出疑惑で米国の批判を浴びてから、軌道修正を図っているのかもしれない。欧米の立場は、南ア国内ではDAが代表しているが、これが決して国内的には多数派の声ではないという事実は、認識しておく必要がある。
(武内進一)