移民大量流入でモロッコ、スペイン関係緊張
2021/05/21/Fri
17日(月)、モロッコ北部にあるスペインの飛び地セウタに8,000人の移民が殺到した事件は、ヨーロッパとモロッコ、そしてアフリカとの、移民をめぐる抜き差しならない緊張関係を改めて浮き彫りにした。この大規模な人流は、スペインが4月18日に、西サハラの解放組織ポリサリオ戦線のガリ(Brahim Ghali)書記長を国内の病院に入院させたことに対するモロッコの反発が背景にある(19日付ルモンド)。昨年12月トランプ政権は、モロッコのイスラエルとの国交樹立と引き換えに、西サハラへの領有権を認めた。モロッコは、ヨーロッパも同様の政策を取るよう要求を強めてきた。この文脈で、ガリ書記長の受入れに反発したのである。
モロッコは、トランプ政権の政策転換以前から、移民を利用してヨーロッパに圧力を加えてきた。20日付ルモンド紙によれば、2020年、スペインに流入する移民が急増した。難民危機が起こった2016年、スペイン経由でヨーロッパに流入した移民は13,246人で、これは全体の3.4%であった。ギリシャから入った移民は全体の45.6%、イタリアからが46.7%であり、スペイン経由の流入は割合としては僅かであった。しかし、2020年になると、スペインから流入した移民は41,861人に増加し、全体の42%を占めるに至った。これは、イタリア(34.3%)、ギリシャ(14.8%)を大きく上回る。
この年にスペインに到着した移民の55%(41,861人中23,025人)はカナリア諸島経由であり、1年間で753%増加している。西サハラ沿岸のこの島に渡るルートは、モロッコ軍によって厳しく統制されてきた。2020年、モロッコは意図的にカナリア諸島への人流の管理を緩めたと言える。モロッコをはじめ北アフリカ諸国は、ヨーロッパにとって移民管理のパートナーであり、協力関係なくして人の流れは管理できない。EUは、2014年以来モロッコに対して、移民対策のために3億4300万ユーロを提供してきた。しかし、これはモロッコから見れば、政治的に利用可能な資源に他ならない。
個別ページへ