セネガルのマッキー・サル大統領は、3日夜の国営TVで演説し、2024年2月に予定されている大統領選挙に出馬しないことを表明した。
サルの次期大統領選挙出馬問題は、この間セネガルの政治的混乱の重要な要因となってきた。彼は、2012年の大統領選挙でアブドゥライ・ワッドを破って初当選した。この時ワッドは憲法で禁止されている三選目を賭けた出馬であり、サルはそれを批判して当選した経緯がある。2016年には大統領任期を7年から5年に短縮する憲法改正を行い、2019年に再選された。
その後、サルの支持者から、憲法改正の時点から改めて任期をカウントするので、2024年2月の選挙に出馬しても三選には当たらない、という解釈が主張されるようになった。サル自身は三選出馬を口にしたことはないものの、今年3月のL'Express誌とのインタビューでは、法的には出馬可能だと述べていた。
こうしたサルと政権与党の姿勢にオスマヌ・ソンコなど野党側は反発を強め、ソンコがたびたび政治活動を妨害されたこともあって、セネガルの政局は緊張の度合いを高めてきた。6月初めにも、ダカールやソンコの地元ジガンショールなどで、大規模な衝突が起こっていた。
サルの不出馬表明は、セネガルの内外から安堵感を持って受け止められている。政治的安定と民主的な政権運営で知られてきたこの国が、常識的な路線に回帰したという安堵感である。一方、サルはもっと早く不出馬を明確に表明すべきだったという当然の批判も出ている。大統領派の内部では今後後継者争いが活発化するだろうが、与党連合BBY(Benno Bokk Yakaar)がかなりの程度サル大統領の個人的イニシャティブに依存していたことを考えると、分裂する可能性も高い。
(武内進一)