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今日のアフリカ

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スーダン内戦の新局面か

2023/11/14/Tue

 スーダンでは、4月15日に国軍(SAF)と準軍事組織RSFの間で内戦が勃発して以降、和平に向けた出口が見えない状況が続いている。西部のダルフール地域で激しい戦闘が続いてきたが、12日付けファイナンシャルタイムズは、ここ数週間の間に、RSFがスーダン第2の都市ニャラやダルフール地域を広く制圧したと報じた。
 これに伴って、住民に対する残虐行為が広くなされた模様である。EUのボレル外相は12日のコミュニケで、ダルフールにおいて2日間で1000人以上が殺害されたとして、「RSFによって、アフリカ系エスニック集団マサリット(Masalit)に対する民族浄化」があったと発表した。ダルフールでは、2003年にも特定のエスニック集団に対する残虐行為が大規模になされ、国際刑事裁判所(ICC)の捜査へと発展した。今回も類似した状況に至っている。
 RSFの首領モハメド・ハムダン・ダガロ(通称ヘメティ)は、ダルフールのアラブ系エスニック集団リゼイガト(Rizeigat)の出身である。内戦の中でRSFが制圧領域を広げていく際に、アフリカ系エスニック集団を放逐する目的で、残虐行為が広がったとみられる。EUはICCを通じて、責任の所在を問う構えである(12日付ルモンド)。
 スーダン内戦において、RSFがダルフールを、SAFがそれ以外の国土を制圧する構図が固まれば、隣国のリビアと同様の状況になる。リビアでは、首都トリポリを中心とする西部を押さえる暫定政権派と、ベンガジを中心とする東部を押さえるリビア国軍(LNA)派とが国土を分割している。そして、LNAを率いるハフタル将軍はヘメティと同盟関係にあり、いずれもロシアのワグネルを利用してきた(12日付FT)。
 RSFがアラブ系ネットワークを通じて西アフリカ諸国から人材や資源を集めていることは従来から指摘されているが、ワグネルを介したリビアから中央アフリカに至るネットワークも重要性を増すかもしれない。
(武内進一)